自家製全粒粉のパン|素晴らしいレシピを試そう!

Photo By Tim Nauman
Photo By Tim Nauman

この素晴らしいレシピを試さなくちゃ

より美味しくて、ずっと栄養価の高いパンを、1ローフたった1ドルで?私を信じてみて!

文章 Tabitha Alterman

写真 Tim Nauman

 

多くの人が感じるように、自家製のローフはスーパーマーケットの食品よりはるかに良い味がする。また、全粒パンははるかにずっと栄養豊富だが、時には風味と食感を損なう。この用途の広いレシピで、一石二鳥をお見せしよう:精白小麦粉の自家製パンよりもむしろ良い味で、且つ、超栄養豊富なパンの作り方。

  編集スタッフが味見したところ、みんな感動した。100パーセント全粒粉のパンはこんなに美味しいと。

  桁外れの風味と歯ざわりを持つだけでなく、店で買うパンよりも多くの繊維、ビタミン、ミネラルをもたらす。基本的な自家製全粒粉パンを作った後は、発芽穀物や様々な穀物の提案を取り入れてみよう。

 

手法

 私たちのレシピは、過去現在のパン屋さんからの長年実証された技術を用いている。特に全粒パン焼き専門家(Whole Grain Breads の著者)Peter Reinhart の手法を使用。この手法は3部構成で、スポンジ、ソーカー、締めの練り粉だ。

 スポンジ。世界中のパン屋は、スポンジを使って、パン作りを始める。多くの人はパン種 levain について聞いたことがある。イタリア人は biga(重量比で65%が小麦で35%が水)がお気に入りだ(私たちのスポンジは biga)。フランス人は poolish(小麦と水が等分)を使う。これらスポンジの役割は、出来上がりのパンに風味と抜群の食感を加えることだ。

少量の酵母(パン種の野生酵母、biga と poolish の酵母)でも働くのに長い時間がかかるが、それで、小麦粉の中の酵素が、無味な澱粉を風味豊かな糖へ換える。酵母の入ったスポンジは、たいてい冷蔵され、酵母がゆっくりと発酵するようにする。

 ソーカー。ソーカーは、全粒/粗挽き穀物あるいは小麦粉を水に浸したものとバターミルクあるいはヨーグルトのミックスだ。水に浸すことで、穀物を柔らかくして、糖分を引き出す酵素を働かせる。穀物のままの場合、ソーカーが発芽の開始を助ける。挽いた穀物、全粒の穀物、小麦粉、いずれで作っても、ソーカーは練り粉を甘くして、ずっと満足のいくクラストを創り出す。

 練り粉。スポンジとソーカーは、最終段階で、小麦粉と酵母を加えて混ぜ合わされる。スタンドミキサーを使ってやるなら、これが最も簡単。まず、パドルで5分間付け合わせる。それから、練り粉がまとまり始めたら、ドウフックに切り替える。数分間手で練って練り粉は終了。

 

新鮮な小麦粉を使う

 いつも一番新鮮な小麦粉を確保して、一番思い出に残るパンにする。全粒小麦粉を買う量は冷蔵庫に保存出来る程度にする。全粒小麦粉は栄養のある油を含んでいて、正しく保存しないと腐臭を放ち、どぎつい味になる。他方で、挽いて無い穀物は20~30年保存出来る。

 自分自身の穀物を挽くと、とびきり新鮮な小麦粉が出来る(ビデオを見よう。2人のマザーアースニューズ編集者が、革新的な自転車駆動の製粉機を動かしている 。ビデオはこちら。)。質の良い製粉機は約200ドルから、でも、最適な食品を食卓に本気で出すなら、賢い投資だ。基本的なパンの成分表は短い:小麦粉、イースト菌、塩、水。だから、最高品質の成分が存在感を示す。更に、驚くべきことに、自家製ローフは、最高品質の小麦粉で作っても、費用は1つあたり、たったの1ドル程度。

 

どの小麦粉も同じ訳じゃない

 30,000種類を越える小麦粉が存在するので、栄養のある小麦粉は多数あると思うだろう。しかし、そうではない。Donald R. Davis 博士は、テキサス大学を退官した栄養学者で、過去50年でいかに小麦の栄養価が減少してきたかを研究してきた。この減少は、農家の工業手法への移行に伴ってきたもの。

 「1960年頃に始まった選択的育成、近代生産手法で、約3倍まで徐々に収量が上昇した。」とDavidは言う。「不幸なことに、この有名なグリーン革命は、ほぼ未知の副作用として、小麦のミネラル含有率を減少させた。減少の測定値は20~50パーセントの範囲で、現代の小麦について文書で証明されてきた。対象は、マグネシウム、亜鉛、銅、鉄分、セレニウム、リン、硫黄で、多分、他のミネラルにも当てはまる。これらは、おそらく、世界中いたる所の人々の健康に影響する。なぜならば、多くのミネラルの不適切な摂取が、先進国と発展途上国双方で、十分証明されているからだ。」

 今日の品種の中には、昔の品種の半分のたんぱく質を含むものもあると、David は言い、一方で、古い小麦品種は、しばしば、本質的に有用なフィトケミカルをより多量に含んでいる。最近の商用の小麦粉の中には総たんぱく値が高いものもあるのだが、良いパンにとって重要な特定のたんぱくを必ずしも含むわけではない。

 いくつかの職人会社は、このトレンドに逆行している。Wheat Montana Farmsは、そのひとつで、小麦の実を販売している。マーケティング・ディレクターの Bo Maurer によると、同社の2品種(Prairie Gold と Bronze Chief)は、パンに合うたんぱく値が高い。

 Pleasant Hill GrainThe Urban HomemakerHeartland Mill、それから Daisy Organic Flours もまた、遺伝子操作せず、高品質な穀物(多くは有機的に栽培されたもの)を提供している。わくわくすることに、地域で育った在来の小麦品種が益々利用出来るようになっている。例えば、「Turkey Red」、「Red Fife」や「Redeemer」は、農家、パン屋双方にとって良い性質を有している。もし、近所のパン屋が素晴らしいパンを作っているなら、どこで小麦粉を買うのか尋ねて見よう。個別注文に対応する小さな製粉業者は多い。

 

 私たちのレシピは、King Arthur の Traditional Whole-Wheat 小麦粉と Unbleached Bread 小麦粉を使って試した。同時に用いたのは、Wheat Montana の‘Bronze Chief’と Pleasant Hill Grainの堅くて赤い冬の小麦の実を自分たちで挽いた小麦粉だ。どれも、十分に活躍した。

 

科学を知る

 練り粉にゆったり熟成する時間を与えることで、実際あなたの労力を節約出来る。ほとんどのパンレシピでは、練り粉を混ぜて、こねる。撚り糸状のグルテンが整うことで、弾力性を持ち、構造化される。そのおかげで、焼き上がりまでに相当速く膨らむ。

 私たちのやり方では、練り粉の固まり2つを混ぜて、中身が完全に組合わさり、風味を生み出し始めるようにする。でも、こね過ぎないこと。初期の発酵でほとんど構造化される。また、練り粉(あるいは、その分けた固まり)を少し寝かせる(時には数分、時には一晩)。そうすると、混ぜてこねる全体の時間が減る。よって、栄養分をダメージから保護できる。こね過ぎると酸素をたくさん取込むことになるからだ。

 「追加の発酵時間が、更なる風味につながる。なぜなら、時間が十分あり化学反応が起こるから。これらの反応が『風味粒子』を生成する。」と Emily Buehler (パンの風味の専門家) は言う。Buehler、は化学の博士号を持ち、6年間パン屋として働き、Bread Scienceの著者だ。「発酵は基本的に、糖を二酸化炭素とアルコールに変換するもので、これにより風味が加わる。」と彼は言う。「実際、プロセスはもっと複雑:酵素が澱粉を分解し、砂糖化合物に、それから、砂糖に変わる。更に多くのステップを踏んで、砂糖が二酸化炭素と風味に変わる。そこで副次作用が起こり、アルコールだけでなく多くの有機的な風味分子ができる。練り粉はもっと酸性になる。酵素には、酸性条件下でよく働いたり、酸に誘発されれたりするものもあるので、酸性度が増すと反応が活発になる。長い発酵時間で、このプロセスがしっかり進む。」

 パン酵母が多すぎると、発酵し過ぎて、くずっぽくなる。直観的には、ずっしりと粘りのある全粒小麦パンは、パン酵母をたくさん加えれば良くなるように思うかもしれない。でも、実際のところその反対が正。より少ないパン酵母で、より長い発酵が、軽い、全粒ローフになる。酵母が張り切り過ぎないように、冷たい水を使い、スポンジを冷蔵して、ゆっくりと発酵させる。

 練り粉の前段階で小分けした物に、長い反応時間を持たせると、最大限に、風味と酵素が引き出された自家製の全粒パンになる。ソーカーは、パン酵母無しで、室温で寝かす。スポンジは、パン酵母を添えて、冷蔵庫の中で寝かせる。

 酸性度が増加するのは長い発酵によるもので、同時に、グルテンの作用を促進する。そのおかげで、良い形、歯ざわりとなり、少ないこねで膨張する。そして、しっとりしたパンが出来て、防腐剤無しで通常よりも長く持つ。私たちが作った各種穀物のパンは、キッチンタオルにしっかり包んで、カウンターの上で5日間もった。最後の混ぜの時に、多めにパン酵母を加えることで、比較的速く膨らんで、最高に、しっかりとして、歯ざわりが良くなる。

 今あるレシピを自己流にして、長い発酵を活かすことが出来る。始める時に、小麦粉、液体、塩の半分をソーカーにして、他の半分の小麦粉と液体、それに、約10パーセントのパン酵母をスポンジに変える。もし、天然酵母(パン種)スターター【発酵天然酵母】があるなら、レシピのスポンジの代用にする。もし、スターターが特に湿っているなら、最後の練り粉にするのに、もっと小麦粉を追加しなければならない場合もある。

 

更に栄養満点にする

 他のやり方で、自家製全粒パンに栄養と風味を加えるには、レシピにある穀物をいくらか芽吹かせる。

 穀物を浸して、ぐんぐんと多くの化学反応し始めるようにする。酵素の活動(炭水化物の消化を助ける酵素が含まれる)で6倍まで増える。溶解性繊維とオメガ脂肪酸をもっと活かせるようになり、また、たくさんのビタミンやミネラルもそう。A、B化合物、CとE、カルシウム、鉄分、マグネシウム、マンガン、カリウムやセレニウムだ。発芽は、栄養分の消化吸収を阻害する酸を中和させ、練り粉の形成に有用な他の酵素を解き放つ。更に、溶解性繊維を多く含む全粒食品を食べることで、消化を遅くするので、パンの栄養分を全てより良く吸収できるようだ。

 パンのレシピを自己流にアレンジして、100パーセントまでの小麦を発芽小麦にしてみよう。なぜなら、発芽小麦のパンは、濃密で、練り粉にグルテンを加えて膨張を促進するからだ。450グラムの乾燥した小麦の実あたり30グラムのグルテンを含む。

 栄養のあるパンを作るには、発芽穀物の他にもまだある。ナッツ、種、全粒穀物をお気に入りのレシピに加えられる。それにより、栄養と風味が高まる。小麦粉の重量でおよそ半分を生と調理済みの穀物を組合わせた物と置き換えるところから始めよう。より大粒で、堅い穀物は、下ごしらえで、始めに柔らかくすべきだ。

 

良いことを急いでやらない

 酵素の活動は、パン焼きの初期の段階で、信じられないほど活発だ。生の練り粉がオーブンで過熱されると、澱粉が糖に変換され、パンの表面はキャラメル状になり始める。オーブンに蒸気を加えるのは、素晴らしいやり方で、クラストの形成を遅らせて、最大限に風味を高める時間ができる。

 家庭のオーブンでは、簡単に蒸気を加える方法として、オーブンへ入れる直前に水を吹きかける;ほぼ同時にオーブン内の熱せられた容器に熱湯を加える。また焼き上げる間に、霧吹きでオーブンの壁に水を吹きかけてもよい。手早く、吹きかけは始めに1、2回と限定する(メリットとなる蒸気が使い果たされるのは、焼き時間の3分の1まで)。覚えておこう。オーブンのドアを開けるたびに、熱を逃していることを。だから、練り粉へ初回に十分スプレーするよう努め、ドアは閉めたままにしておく。電球やガラスドアへの霧吹きは避けて、壊れる元としないようにする。

 誰もが飛びつく焼きたての暖かいパン。香りがとてもそそるので、我慢できそうにない。でも、パンから最大限風味を引き出すには、最後の最後で台無しにしないようにする。30分から2時間寝かせると、最後の風味が引き出せる。寝かせるのは、組成の面でも重要(蛋白質は冷めるまでしっかり安定しない)。

 

ゲームに加わろう

人類は、少なくとも6000年間、発酵パンを焼き続けている。パン製品は、近年、悪評を受けてきて、炭水化物が多く、西洋人の腰回りに良くないと言われている。しかし、31ページの表に示すように、全粒パンは、「パン」として流通している精白小麦の製品よりも、はるかに多くの栄養価がある。

 Amy's Bread(ニューヨークの職人のパン屋)の Amy Scherber は、私たちに思い出させてくれる。「パン作りは、崇高な生業なのです。なぜなら、人々に仕える方法のひとつであり、喜び、精気、栄養を与えるものだからです。」今、全粒穀物から風味を余す事なく上手に引き出す、長年実証された秘密のワザを学んだところだから、今まさに、現在進行中の先祖伝来の世界に加わって、パンを焼いてみる時ではないだろうか?

 

抜群に美味なる全粒粉のパンのレシピはこちら。

 

Homemade Whole-Grain Bread: You Have to Try This Amazing Recipe

 

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