自分でリッター40kmの車を作る

Photo By Doug Snodgrass
Photo By Doug Snodgrass

MAX (マザーアースニューズ開発の車)は、燃費40km/lが可能なことを実際に証明した。特に、だれもが自作できるように、限られた予算で達成した。ゼロから車を作る方法を紹介しよう。ほぼ市販品を使って、費用は100万円以下。

 

Build Your Own Car That Gets 100 Miles Per Gallon
By Jack McCornack 

April/May 2013

2008年の夏、壮大なDIY製作プロジェクトとして始まった、予算100万円以内で造る燃費100mpg 100マイル/ガロン:約43km/L のスポーツカーが、コースを一巡して戻ってきた。MAXMother’s Automotive eXperiment)の走行日誌を見ると、現在、走行距離16km以上、時速7289km100mpgをコンスタントに維持している。

 このプロジェクトで証明されたのは、3桁の燃費効率が実現可能だということだ――たとえ予算が厳しくて、その上お手製の車だったとしても。もし、オレゴンの自宅の車庫で燃費100mpgの車を作れたら、大手の自動車メーカーは何をやっているんだということになる。

 とはいえ、あらかじめ理解してもらいたいのは、多くのドライバーが期待する、あらゆる乗り心地のよさを兼ね備えた最新のセダンとMAXは同等ではないということ。でも、セダン並みである必要はない。

 MAXは、セカンドカーとして、あるいはツーシーターの広さ以上のスペースを必要とすることが滅多にない人たちにはメインカーとして、驚くほど実用的だ。スーパーの買い物や通勤用にも使える。子どもたちをサッカーの練習に連れて行くとき、ミニバンの代わりにはならないだろうが、いつもの運転にミニバンが必要だとは思えない。

 MAXは私のような人間には理想的だ。市街地から48kmのところに住んでおり、広範囲にわたる出張で何kmも走る。1人以上乗せることはまずない。MAXは私にぴったりで、多くの人たちの普段の自動車ニーズにもかなっている。

 MAXを運転する際の大問題は、ドライバーの顔が知れてしまうこと。MAXがあると会話が始まる。車愛好者は、旧型のレーシングカーに似ているところが大好きなので、ガソリンスタンドに寄るたびに、興味津々な見知らぬ人たちから投げかけられる質問に首尾よく答える心積もりがいる。

 幸運なことに、そう頻繁にガソリンスタンドに寄る必要もない。この100mpg車はディーゼル、バイオディーゼル、純正植物油で走らせることができる。エンジンは32馬力のターボチャージャー・ディーゼル ――なかでも、クボタD1105Tは通常、RV車で使う発電機から頑丈な芝刈り機まで、何の動力にでもなる。

 

MAXは合法で安全な乗り物か?

 

 どの州のDMV【車両関連を扱う行政の部局】も、カスタムメイドのDIY車両に対する独自の法規を設けている。私は50州すべての交通条例を確認し、そのほとんどで旧式の車やクラシックカーのレプリカに対し緩い登録法規があることに気づいた。多くの州では、レプリカが造られた年の装備と排出ガス基準だけを満たしていればよしとされる。この法規に後押しされて、旧式の車やクラシックカー造りからMAX造りに移った。

  自家製MAXを登録するには、それが1958年式のLola Mark 1か、1960年式のLotus Seven(選んだボディの形による)であることを、地元のDMVの窓口に伝えよう。

 安全性についていえば、MAXは連邦政府基準より、ロードレース基準に合わせて造られている。MAXには優れた安全装備が施されている。車体の両サイドと後部にはチューブ形のスチール製緩衝フレーム(車体はグラスファイバー製)、ロールバー(車体補強のための金属棒)とシート後部のヘッドレスト、レース用の安全ベルト、フロントガラスの後ろには取り外し可能なロールバー(鹿よけ板)がついている。

 私のお手製自動車にエアバッグがないのは、インディ500レース用の車にないのと同じ理由だ。つまり、運転者は股間から両肩に向かう5点式の安全ベルトを装着するのだ。レーサーのようにシートベルトを締めるには数秒余分に時間がかかるが、もし万一MAXが事故にあっても、私は緩衝フレームに囲まれたシートという最も安全な場所にいることになる。

 

作業時間と道具

 手作り自動車の作り方を知りたいが、どこから始めたらよいか分からないのでは?手作り自動車づくりの基本プランは、英国で自動車店を営む講師、Ron Championの著作「Build Your Own Sports Car」(現在は絶版)を元にしている。英国の学生たちは、簡略化したLotus似のボディとFord Cortinasのエンジンを使って、何百となくこれらの自家製カーをつくってきた。それが“Locost”と呼ばれる理由は、Lotus Sevenの面影がありながら“ローコスト”だからだ。

 はじめから自分で車づくりを手がけ、経費を100万円以内に抑えるには、シャーシ(車の足回り)を自分で溶接する必要があるだろう。地元の短大で夜間クラスで溶接の授業を取るか(私がしたように)、溶接工の友人に手ほどきを教えてくれるよう頼んでみるといい。きっと近所の人と(溶接の代りに何か奉仕する)助け合いができる。そうすれば、プロがあなたのために造ったシャーシをいつでも手に入れられる。

 あとは普通の車の作業をするだけ。通常の自動車工具と、特殊な工具(ドリルや角を削る研磨機、鋲打ち機など)がいくつか必要だろう。流線形のボディを選ぶなら、シャーシに載せるボディに合うようグラスファイバーで形を作らねばならない。特に難しい作業ではないが、やることは確かに多い。既成のシャーシを使って熟練した自動車整備士が作業しても、最低100時間はかかる。経験の浅い整備士は、土曜日をほぼ毎週費やせば1年以内で終わるだろう。

 

とにかく簡単に

 MAXが燃費100pmgの目標を達成した主な理由は2つ。まず、シンプルにするという基本設計だったこと。MAXは小さくて軽い流線形のものを望んでいたので、必要最小限の馬力で高効率なエンジンを選んだ。次に、ゼロから作らないこと。Locosのシャーシ、32馬力のクボタ/ディーゼルエンジン、トヨタ/カローラの駆動装置(トランスミッション、車軸、ブレーキ)を使うのだ。

 Kinetic Vehiclesという自分の店の在庫にあったので、既製のLocostの車体を用いて2年間、MAXに乗った。その間に、100mpgを達成するには、より優れた車体を作らねばならないだろうと分かった。しかし、何千マイルもテストするうちに、エンジン容量、駆動系、シャーシの相性(適合性)について多くのことを学んだ。その段階で、私の唯一の発明品は、クボタのエンジンをトヨタの駆動装置に適合させるためのアダプターだった。

 この「とにかく簡単に」の原則は、代替燃料車両で競う2008年の3日間のロードラリー、Escape From Berkeleyのときに効果を発揮した。出場資格を得るために、MAXの燃料システムを改造し、植物油で走るようにしたのだが、それすら開発する必要はなかった。Plant Driveが改造用キットを作っているのだ(詳細はこちら。 www.PlantDrive.com)。1,280km以上あるBerkeleyからVegas までのレースで、唯一僅差だったライバルはWayne Keithだ。彼もまた、木ガスで走るトラックに乗って(http://goo.gl/

ueECvを参照)、「とにかく簡単に」の姿勢で取り組んだ。鼻の差でMAXKeithのトラックに勝ち、われわれ二人が3位を上回って1日を終えた。

 MAXEscape From Berkeley の走行中、植物油で70mpg30km/L)を記録した。その後、100mpgに近づけるために、より優れた車体デザインを見つける時が来た。この仕掛けを仕込むのに十分に流線形をしたレース用のビンテージカーとして ――Lotus 11 Lola Mk1―― の2つの車体があった。私はLolaを選んだ。レースの結果がわずかに上を行っていたからだ。Lolaの鼻先を広げ、他もすべて引き伸ばすことによって、DMVで“レプリカ”扱いになる程度の車体をつくり、MAX90mpgを上回る燃費の車に増強した。風除けのため、ダッシュボードに向けて隆起させた部分を二つ加え、運転席の乱流を防いだので、実際に同乗者は運転中でも地図を見ることができた。

 100mpgに達するまでの最後の数マイル分は、車の細部と適正化にかなりの注意を払った。Goodyear Fuel Maxのタイヤで転がり抵抗を減らした。Drag DR-9ホイールで回転の慣性を小さくした。Lucas Syntheticの潤滑油で、エンジン、トランスミッション、ホイールベアリングの抵抗を最小限に抑えた。すべての白熱灯(ヘッドライトを含む)をTruck-Lite社のLEDに換え、ラジエーターの空気吸入口のほとんどをダクト・テープで覆った。決め手となったのは、運転席からテールランプの位置まで、車の底に薄いベニヤ板をはめ込み、ボディの腹部を流線形にしたことだ。こうしてMAXはハイウェイを100mpgで走る車になったというわけだ。

 

快適性とフィット感

 大手の自動車メーカーは、自社の車が誰にでも合うよう妥協するものだが、手作り自動車は設計者の寸法やセンスに合わせて作ることができる。私は、自分専用の車を作ったので、仕立てたスーツのように体にフィットする。これまで、あちこちのんびりドライブするために所有した車の中で最も快適な1台だ。

 MAXのバケットシートは、私の体型とぴったり合っているし、ペダルとハンドルは、まさに私の望む位置にある。フロントガラスとオープンカーの構造上、わずかに走行可能距離が削られている ――MAXは現在、95mpgまで到達している―― でも、今のラグトップより無駄のないカーブ曲線をかたどったグラスファイバーの屋根をつければ、残りの距離は取り戻せると期待している。取外し可能な屋根にして、おそらく夏の時期には取外すだろう。

 1ガロンあたり5マイル分のロスを減らすのはとても難しいように思えるが、MAXなら2,000マイルごとにわずか1ガロンずつ減らせばよいのだ。

 

自分仕様のMAXを作ろう

 100mpgの車を自分の手で作ってみたいと思わない?『Build Your Own Sports Car: On a BudgetChris Gibbs著(81ページ参照)という本で勉強するといい。必要な設計案はすべて、『Kinetic Vehicles

www.KineticVehicles.com/MAX.html。もちろん、私の店でもお客さん用にシャーシを作ります)で探すといい。そして、MAXコミュニティの一員になろう。得する情報や裏技、実際のやり方などをオンラインフォーラム(

http://goo.gl/6SuFU)でやり取りすることができる。

 MAXとそっくりな車を作る必要はない。MAXの電気自動車もすでに公道を走っているし、他に自作している人たちはどこまで予算を切り詰められるかを考えている。MAXをたくさん作れば作るほど、共有したくなる情報が増えるというわけだ。

MAXの全ストーリーは http://goo.gl/qE5SNを参照。John McCornackのマザーアースニューズへの初投稿は1979年で、エタノール燃料の軽量飛行機について書いた。