スローマネーで地域の食物を支援する

Maine Grainsは地域産の穀物を挽くビジネス。スローマネー出資者の支援を受けている。
Photo Courtesy Maine Grains

一昔前は、農家が作物の刈り入れや納屋の改築などで人手を必要とすると、地域の人々が集まって助けてくれたものだ。お返しとして簡単な手料理がふるまわれることもあった。今日必要なのは、小屋の改築について調べるためのアプリといったところだろう。現代社会の農業へのつながりはどうみても弱まっており、たとえ農業従事者と知り合うことがあっても、その仕事をどう支援したらよいか見当もつかないに違いない。そんなとき、地元生産者からの購入以外に、地域の農業を直接サポートできる方法がある。「Gatheroundギャザーラウンド」と呼ばれるものがそれだ。「Slow Moneyスローマネー」として知られる運動の創始者、Woody Tasch氏が発案した仕組みで、地域のフードビジネスに投資する共同基金に、人々が日常的に小さな額を寄付できるようにする。

 タッシュ氏は元投資家で詩人でもあり、「Inquiries Into the Nature of Slow Money: Investing as if Food, Farms and Fertility Mattered(仮題:スローマネーの本質を探る:食物、農家、豊穣の問題に投資する)」という本を上梓している。リアリストとアーティスト両方のレンズを通して金融を見つめ、旧来の経済様式の中から新たな道を探りつつ進む同氏は「複雑な金融が日々の現実から乖離しすぎていることに常々疑問をもっていた」と語っている。

 スローマネー運動は、タッシュ氏が自身の著書の宣伝のために全米を回った2009年に根付いた。自分のわずかなお金を地域のフードビジネス支援のために投資するという彼の力説は、強い共感をもって受けいれられた。折しも住宅ローン危機、銀行破綻、高失業率の時期。行く先々で、手に負えなくなった金融市場で失敗した人々に出会ったという。そうした人たちは行動を起こす気はあるものの、何をしたらよいのかわからなかった。

 タッシュ氏は志を同じくする住民らと協力し、スローマネーの支部を設立。12を超える拠点で、メンバーが金融取引を取り仕切る。スローマネーの投資クラブもいくつか作った。こちらはメンバー各自が年間5000ドル以上を寄付し、小規模フードビジネスに共同投資するものだ。このような小集団は、人々の生活に大きな変化を生む。たとえばCarol Peppe Hewitt氏の協同組合青果店「Chatham Marketplace」で、「どこか遠くの銀行」から受けた融資への返済額が膨らみ助けが必要になったとき、スローマネー・ノースカロライナ支部代表のHewitt氏は16人の地産地消支持者を見つけ、それぞれから25000ドルずつの寄付を受けてBringing It Home Chatham(チャサムに店を取り戻そう)基金を設立した。スローマネー・グループは金利を下げて融資を更新すると同時に、協同組合の月々の返済額を3分の1に減らした。すべて地元のお金によるものだ。

 しかし皆がそうした投資基金を利用できるわけではないので、タッシュ氏はギャザーラウンドを作り、誰もが地元で効果的に投資を行える方法を構築した。住民らが地域経済をテコ入れする手助けをする、非営利と投資の新型ハイブリッドといえるだろう。【貧困層などへの融資である】マイクロクレジット、慈善事業、【不特定多数に業務委託をする】クラウドソーシングというものがあるが、ギャザーラウンドは25ドルという少額から寄付ができるという点で、そうしたものに近い。ギャザーラウンドへの寄付は、税額が控除される。地域のギャザーラウンドに寄付したら、ほかの参加者たちと一緒になって、どの企業家を支援するかを決める。タッシュ氏は「スローマネーは投資を取りまとめ、地域の投資家たちと共に有効な使いみちを考える。リターン(利潤)は基金に戻り、再投資される。これは『投機資本』に対する『育成資本』だ」と述べている。

 スローマネーの投資やギャザーラウンドの寄付は、投資リターンよりも生活の質を重視する。地元の食にほんの少し投資することで経済が潤い、金銭よりもはるかに価値のある見返りがある。ギャザーラウンドについてさらに学び、スローマネーのEニュースレターとウェビナー(ウェブ上のセミナー)への参加を申し込もう。 

 

Support Local Food With Slow Money

By Jean Weiss 

June/July 2013