「畜産業界の猿ぐつわ法」は、米国の8つの州に存在し、食の安全を確保し、動物を残虐な処置から 守るのをいかに困難にしているか知りましょう。
非持続的で非人道的な食肉生産システムへの関心が高まるにしたがって、巨大アグリビジネス（Big Ag）は8つの州議会で「畜産業の猿ぐつわ（ag-gag）」法として知られる様々な対策法案を成立させることに成功してきた。
これら法のうち最初のものはカンザス州で1990年に可決された、動物の施設や動物の研究所での写真撮影を違法とするものだった。ここ最近では、アーカンソー州が動機を偽って畜産の仕事に就くことを違法とした。他にもアイオワ州、ミズーリ州、モンタナ州、ノースダコタ州、サウスカロライナ州、ユタ州の6つの州に「畜産業界の猿ぐつわ」法が存在する。
米国自由人権協会（American Civil Liberties Union (ACLU)）の立法弁護士ゲイブ・ロットマン（Gabe Rottman）は、より陰湿な例は家畜に対する残酷な行為や他の不正を記録した者はその記録を24時間以内に警察に渡さなければならないというものだという。ロットマンによると「畜産業界の猿ぐつわ」法は、主に報道による事実の究明が行われない点、さらには不正を告発する人を犯罪者にしてしまうという点において米憲法修正第1条で保障された権利、表現や宗教の自由（First Amendment rights）の制限にあたると言う。
報道による事実の究明は食料システムに実際的な違いをもたらし得る。例えば2008年には、米国動物愛護協会（Humane Society of the United States (HSUS) ）による潜入捜査の後、カリフォルニア州の乳牛虐殺施設が農務省（nited States Department of Agriculture (USDA) ）によって閉鎖に追い込まれた。
家畜を虐待していた作業員たちは残虐な犯罪の罪で起訴され、アメリカ史上で最大の不良食品の回収が、安全性への不安に基づいて行われた。もしそこに「畜産業界の猿ぐつわ」法が立ちはだかっていたら、このような結末に至るのは不可能だっただろう。
2013年の4月、エイミー・メイヤー（Amy Meyer）がドレイパー市のデール・スミス食肉加工会社（Dale Smith Meatpacking Co.）で、生きている牛がブルドーザーで運ばれるのを携帯電話で記録した後に逮捕された時、ユタ州は自身のもつ「畜産業界の猿ぐつわ」法の違反を告訴した最初の州となった。メイヤーに対する訴えは取り下げられた（彼女が公共の土地から撮影していたため）が、2013年の7月に報道関係者と活動家が合同でユタ州の「畜産業界の猿ぐつわ」法が米憲法修正第1条で保障された権利、表現や宗教の自由を侵害するとして民事訴訟を申し立てた。
ロットマンによると「畜産業界の猿ぐつわ」法はここ1年程でかなり注目を浴びるようになってきており、食品システムの透明性に不安を持っている人々にとって、状況はよくなってきていると言う。2013年5月にテネシー州知事のビル・ハスラム（Bill Haslam）は社会的関心の広がりを受けて、新しい「畜産業界の猿ぐつわ」法を拒否した。2013年8月現在、新しい「畜産業界の猿ぐつわ」法は11の州で拒否されている。畜産業界が秘密を隠そうとする動きに反対する草の根運動に加えて、「畜産業界の猿ぐつわ」法のマスコミ報道によく使われる虐待された動物の写真は、食肉産業がなにか隠さなければならないようなものを抱えてるのだという社会の認識を植えつけるだけだ。
では「畜産業界の猿ぐつわ」法は裏目に出ているのだろうか？「完全に消え去ったとは言えないが、業界と州がこれらの法案がいかにマイナスな評判を蓄積してしまったかを認めたのだと思っている。」と政府監査プロジェクト（Government Accountability Project）の食品品質運動（Food Integrity Campaign）のディレクターであるアマンダ・ヒット（Amanda Hitt）は言う。
その一方で、「畜産業界の猿ぐつわ」法を成立させてきた州では、家畜の扱いを調査する組織の大半は法律に従うことになるので、家畜に何が起こっているのかということはほとんど誰にも知られていないのだと、米国動物愛護協会の家畜保護の副会長ポール・シャピロ（Paul Shapiro）は言う。なぜなら連邦の動物権利保護法では、家畜である場合の動物の扱いについては規定を定めていないからだという。シャピロはさらに、動物に対する残虐な扱いの証拠や、食品の安全に対する問題が明るみにでるのは、潜伏捜査と不正を告発する人のみに頼りきっているというのが実情だとつけ加えた。だが、クリエイティブな方法で情報を得ようとする試みを始める人たちもいる。例えば2013年の7月カンザス州で、ナショナルジオグラフィックのフリーのカメラマンが飼育用地をパラグライダーから撮影している間、私有地に駐車したとして不法侵入で逮捕された。動物権利団体と調査報道者たちが動物愛護の監視を続けるために無人飛行機を使うことを計画しているという報道もある。
動物科学者のテンプル・グランディン（Temple Grandin）は「畜産業界の猿ぐつわ」法を、「畜産業界が今までにしたもっとも馬鹿げたことだ」と2012年のアイオワ農業会連合会会議（Iowa Farm Bureau meeting）で発言した。民衆の心理も同様の見方に動いてきているように見受けられる、ましてや健全で安全かつ虐待のない食品システムを養うには、多くの人々が透明性をより減らすことではなくより増すことを促す法を求めている。
How ‘Ag-Gag’ Laws Undermine Our Food System
By Joanna Poncavage
December 2013/January 2014
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