果樹の育て方大全

果物ほど甘いお返しをくれる植物は他にない。リンゴやサクランボといった耐寒性のものから亜熱帯のかんきつ類にいたるまで、果樹はおよそ全ての気候で育つ。果物を育てるには剪定とこまめな病害虫のチェックが欠かせないし、あなたの地域の気候でもよく育つタイプの果物から始めるべき。

あなたの地域の社会人講座が推奨する品種を選ぼう。というのは、ある程度の寒さにさらす必要のある品種が中にはあるからだ(約7℃以下)。家庭果樹園の計画と維持の詳細を網羅するには、マイケル・フィリップス(Michael Phillips)著果樹園全書(The Holistic Orchardをお勧めする。

試すべき果樹の種類

  自家稔性の植物だと説明されている果樹でも、近くに別の種だが親和性があり授粉する樹を植えるほうが、果実がよりよく実る。【訳注:自家稔性 ―自家受粉ができるということ。一株だけ、一輪だけでも実がなり種ができる。】広報や育苗カタログには、相性の良い品種のリストがよく載っている。

リンゴ(学名Malus domestica)は樹になる果実としては最も人気のある果物である。様々な地域に植樹でき、比較的育てやすく、定番の美味だからだ。リンゴに最適な土壌酸性度はpH6.5だが、もし肥沃で水はけのよい土地なら酸性度がさらに高い土壌でも適応できる。

リンゴの品種のほとんどは(耐病性の品種FreedomLibertyを含む)、耐寒ゾーン47年平均最低気温が-34-12℃の地域:アメリカの気候区分に基づくにまで適応できる(もしお住まいの地域のゾーンが分からなければ、後出のあなたの耐寒ゾーンを知ろうを見よう)。しかし冬の気候が穏やかな地域では、”Anna”や”Pink Lady”といった耐寒性の低い品種を知っておく必要がある。気候のいかんにかかわらず、良い実りを得るには親和性があり受粉可能な2本の樹を選ぶことから始めよう。シーズンの最盛期から終わりにかけてのリンゴは、早生の品種に比べて、より風味豊かで保存もきくことが多い。サクランボ(甘いPrunus aviumと酸味のあるP. cerasus)は明るい黄色から黒に近いものまで多様な色に富み、二つのタイプに分類される。‘Stella’のような小振りで甘い品種と「Montmorency」や「North Star」といったサワーチェリーまたはパイチェリーと言われる品種である。サクランボはゾーン4から7に最もよく適合し、肥沃で中性に近い土壌と風通しの良さが必要だ。二つのタイプのどちらでも、高さ3.5mほどの矮化栽培のサクランボの樹ならば病害虫や害鳥から守るのも楽だ。ネットで覆うことができるし、硫黄やカオリンを散布するのも簡単だから。

 かんきつ類(かんきつ交雑種)には、キンカン、ミカン、温州ミカン(satsuma)そしてマイヤー(Meyer)レモン【レモンとオレンジの自然交雑で誕生したと言われ、一般のレモンより酸味が少なくマイルドな味。】などがあり、ゾーン8b10で有機農法で育てるのには最も簡単な果樹である。かんきつ類の葉と表皮に含まれる香りのよい油は病害虫を防いでくれるが、耐寒性には限界がある。ナガミキンカンや尾張ミカン、マイヤーレモンの果樹は、気温が氷点下に落ち込んだ時などには毛布をかけてやる必要があるが、自家栽培のかんきつ類は手間をかけるだけの価値がある。

 桃とネクタリン(学名:Prunus persica)は、誰もが欲しいものリストへ載せているが、オーガニック栽培するには素晴らしい栽培地、害虫の予防管理、いくらか運が必要。他の果樹以上に、桃とネクタリンは深い土壌に固められていない心土や硬土層が要る。桃とネクタリンはゾーン58に最適だが、特別種はそれより寒くても暖かくても育てられる。果樹は木に穴を空ける昆虫のためにたいてい短命。だから、10年毎に新しい木を植る計画をする。

 プラム(Prunus種と交配種)は果実を不規則に作る傾向がある。なぜなら遅い凍結や病気でよく果実を失うから。良くなる年には、プラムの木はジューシーな果実をたわわに実らせる。明るい緑から深紫まで様々な色で。ゾーン48に最適なプラムの木は、近くに相互授粉する品種が最低1株必要で、受粉を確実にする。場所によっては、北東部のビーチ・プラムや中西部のサンド・プラムというように、在来種を選ぶと、自家栽培のプラムとなるかもしれない。

 西洋ナシ(Pyrus種と交配種)は、リンゴより若干耐寒性が劣るが、広い気候帯でオーガニック栽培が容易。ゾーン47では、ハニースィート(Honeysweet)やムーングロウ(Moonglow)などのfire blightに十分耐える品種。ゾーン58では、決まった手入れをすれば美しいサクサクの果実が成るアジアのなしの木。最も良い状態で食卓に上げるには完熟前に収穫すると良い。

 

植え方

 ゾーン37での果樹の一番良い植え時は初春で、地面が雪解けした後。冬の休眠から目覚めたばかりかのような果樹は、急速に新しい根を伸ばす。ゾーン810では、2月に新しい木を植える。良く肥えた日当たりの良い場所を選び、凍結しやすい低地でなく水はけが良い土で。木は苗床と同じ深さに植える。主幹に接ぎ木した結合部(膨らんだ部位)を埋めないように気をつける。水をよくやり、金網製か渦巻状の樹脂カバーを幹の一番低い位置に取付る。昆虫、げっし類(ネズミ、ウサギ、リスなど)、

葉焼けや傷から保護するため。安定するよう杭で緩めにとめる。木のチップ、かんなくずやゆっくり腐敗するマルチで根の位置に覆いをする。最初の2年間で乾燥する時期には水を特によくやる。

 植えて1年後、マルチや混合有機肥料を土の表面をかいて入れて(ラベルにある使用料に従うこと)、春に施肥する。それから、深さ10cmで木の回り120cm径の丸形に木質マルチを加える。2年後に、幹のカバーを使うのをやめ、代りに、幹を白いラテックス塗料で被覆し、冬の損傷から守る。砂を塗料に加えて、ウサギやハタネズミを防ぐ。

 

果樹を剪定する

 剪定は果樹を育てるポイント。果樹剪定のねらいは、葉や果樹が光や新鮮な空気に触れるようにすること。理想的な枝振りは品種によって変わり、リンゴや洋ナシの木の中には、スペースを節約するために剪定してフェンスや壁にかけた木枠仕立てエスパリエ伸ばせるものもある。最初の年に形を整えられるよう、果樹の剪定を始め、それから毎年、芽がふくらむ前に冬に選定する。疑わしい枝は少し多めに剪定した方が、控えめすぎるよりも良い。

 多くの果樹がたくさん実をつけすぎるので、超過分は間引くべき。アジアの梨の木は、10セント硬貨大の頃に70%の青い実をもぎ取り、リンゴは、25セント硬貨サイズになる前に互いに15cm離れるよう間引くべき。どんな種類の果樹でもたくさん実を付けたら、青い実をいくらか間引いて果実のサイズを大きくし、大枝が折れるのを減らし、代りに結実するのを防ぐ(木には毎年ちゃんと実が成る)。

 

収穫と保存

西洋ナシを例外として、果樹はちょうど完熟したころに収穫し、だめになるのを遅らせるため冷蔵保存すべき。ほとんどのリンゴの風味は冷蔵保存2週間後に高まるので、2つ目の冷蔵庫や地下貯蔵庫が便利。リンゴと西洋ナシは冷蔵庫で何カ月も保存できる。でも、柔らかい核果(チェリー、ネクタリン、桃、プラム)などは、長期保存するには収穫後数日以内に、ビン詰めしたり、乾燥させたり、冷凍したり、ジュースにしたりすべき。。。

 

和訳全文は3月末発行予定。

 

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All About Growing Fruit Trees

By Barbara Pleasant 

February/March 2014