夏のカバープランツ

カバープランツ栽培の恩恵は大変幅広く、数ある作物栽培法の筆頭格といえる。春夏秋冬季節に合ったカバープランツ栽培の重要さは、食べる野菜の栽培に匹敵する。私たちは、作物を栽培すれば土が痩せると思いがちだが、実は植物を生育し続けるほど、土は豊かになっていく。


土壌生物の栄養となる成分が根から分泌されるのだが、例えば菌根の働きなどは驚くべきものだ。(「菌根菌 (Mycorrhizazl Fungi):土中に隠れた畑地改良の秘訣」参照)。 根を深く伸ばす植物が土の下層部から吸い上げたミネラルは、地表面近くで再分泌されて浅根の植物の栄養分となる。枯れた植物や地中の根は、腐敗して、次に植えられる作物の栄養分となる。また大雨等による土の流出を防ぎ、分解した根が酸素や雨水の通り道となり、ミミズや様々な微生物もここを伝って土の中を移動する。有機物の分解を何シーズンも繰り返すうちに、土壌炭素 (いわゆる「腐植土」)が豊富になる。このおかげで、肥沃でふかふかと柔らかく保水性に優れた土が作られていくのだ。

 カバープランツが生態系に及ぼす効果は、土壌改善にとどまらない。植物の有機質や肥やしを鋤き込むと、土中に広がった栄養分を、カバープランツはかき集めるように取り込む。また、汚染物質の流出を防ぐとともに、余分な栄養分を将来の作物のために「貯蔵」する。こうして畑とその周辺には、生き物たちの豊かな生態系が育まれる。植物の病気や虫害を自然の力で防ぐ上で、この生態系は重要な存在である。しかも、カバープランツの多くは家畜類の飼料にもなり、市販の肥料に頼らない農的暮らしに一役買ってくれる。

 一般にカバープランツの栽培といえば、冬場の土壌保護のようなオフシーズン作業で、夏にやることではないと思っている菜園家は多い。が、実は逆で、夏に栽培するメリットは想像以上に大きい。

 

夏のカバープランツならではの試練

 日照りと高温。日照りがちな夏に対抗するため、高温だけでなく乾燥にも耐える品種選びは必須だ。熱をもった乾いた土は発芽にも適さない。育てる人の愛情があってこそ、夏のカバープランツは生き延びることができる。

 種をばら播きするなら、土をかけた後、レーキを使って上から軽く叩く。ひとつひとつ手で播けばなお良く、くわの刃角を使って畝と畝の間を細く耕し、種を落とし、土をかけては叩いておさえる、という作業になる。播種直後とそれ以降のこまめな水やりを忘れずに行い、表土 (深さ5mm分) が常に湿った状態を保つ。苗が定着したら軽くマルチを被せ、土の温度上昇と水分蒸発を防ぐ。収穫を終えた株(例えば春まきブロッコリーなど)を引き抜く数週間ほど前に、その陰を利用して同じ畝に播種するのも一考である。ほとんどのカバープランツは密植に適しており、またそのほうが、隙間のない日除けが早く完成する。

 場所作り。夏のカバープランツ栽培で何より困るのは、必ず真っ先に聞かれるこの問題だ。「畑は野菜でフル回転中なのに、空きスペースなんて作れるのかね」そこをなんとか、カバープランツ専用の畝を、夏の初めから終わりまで最低ひとつは確保したいのだ。通年あればなお結構。一年中カバープランツに覆われると、土は驚くほど豊かになり、これから植える作物にもたらされる恩恵も計り知れない。

 実は工夫次第で、カバープランツを増やすことができる。例えば、作付時期が異なる作物を連続して育てる場合、土に休耕期間ができてしまうのは害の元。そこにカバープランツを植える。ただし、短期間で育ってくれる品種だ (おすすめ情報は後述)。棚もののトマトや支柱が必要なマメ類など、高さのある作物の根元には、ゆっくり育つ品種を間植してもよい。スペースを有効利用しつつ、カバープランツの力を存分に活かすことができる。

 

夏のカバープランツならではの長所 

 豊富なバイオマス。夏と言えば、バイオマスが豊富。特に、野菜の成育期に合わせてカバープランツを刈り取れば、再び成長が促される。これを土に混ぜて肥料に、あるいは家畜の餌、堆肥、腐葉土などに使うことができる。冬越しのものでも同様の効果はあるが、夏のカバープランツの場合、家畜用の自家製飼料としての用途がさらに広がり、何度も繰り返し食べられる草、穀類、タネ類になるほか、乾燥すると干し草にもなる。。。

 

 

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Best Summer Cover Crops

By Harvey Ussery 
August/September 2014

 

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