自給農地に合うチェーンソーの選び方

農的暮らしを実践している人や植林のオーナーにとって、チェーンソーは、間違いなく最も使用頻度の高い、必要不可欠な動力工具だ。倉庫や納屋やトラックの中を見回しても、これほど求められ、熱く語られ、恐れられ、けなされる工具は他にない。それもそのはず、手入れの行き届いたチェーンソーがあれば、冬を暖かく過ごせるし、木製のフェンスや木材を安く自作することもできる。それに嵐で倒れた大枝や木の処理も楽にできるし、植林管理も容易になる。効率的で経済的かつ安全にチェーンソーと付き合うためには守らなければならないルールがある:切る対象にあったサイズと形式のチェーンソーのガイドバー(chainsaw’s bar)を選ぶことと、使用前後に必ず、ガイドバー、スプロケット(エンジンの回転をチェーンに伝達するための歯車)、それにチェーンの点検と手入れを行い、忘れずにその記録を残しておくことだ。

文:Joseph Love 

翻訳: 市岡 秀俊

  

ガイドバーとチェーンの選び方

 正しい使い方をすることがチェーンソーを良い状態に保つ最善のテクニックだ。まずは、これから切ろうとする木の種類や幹の太さを知ることがベストなチェーンソーを選ぶための第一歩。もし、何を切るか決まっておらず様々な使い方が想定されるなら(実は私自身もそうなんだが)、複数のチェーンソーとチェーンを用意してみてはいかがだろう。例えば、熟練したユーザーであれば長さの違う2組のセットを持ち、12または14インチ【30または36cm】の短いモデルを使って細い木の枝払いや剪定や伐採を行い、22インチ【56cm】以上の長いチェーンソーは大きな木を倒したり、丸太を切り出したりするのに使うとよい。

 多くのメーカーやプロによれば、ガイドバーの長さと木の太さの比は 1 : 2 くらいになる。例えば、18インチ【45cm】のガイドバーなら直径36インチ【90cm】までの木の幹を切ることができる。この限りにおいては、チェーンもガイドバーもモーターも痛めることはない。もし上限ぎりぎりの太さの幹を頻繁に切るような使い方をするのであれば、一回り大きなガイドバーとエンジンに変えた方がよいだろう。そのまま使い続けていると負荷がかかりすぎてチェーンソーの寿命を縮めることになる。

 使いたいガイドバーの長さによって必然的にエンジンの最小サイズが決まる。とはいえ、「余裕を持って」と、大きすぎるエンジンを選んではいけない。重いチェーンソーと格闘してへとへとになるのがオチだ。その結果、あなた自身も周りで作業している人も危険にさらすことになる。だから、作業に適した機種を選んで、安全で確実な仕事をさせること。自分がやりたいことに関して必要となる情報がわかったところで、いよいよ高品質のチェーンソーを取り扱っている評判のよいディーラーに相談してみよう。自分の作業に合った大きさの機種を見つけ、それが実際にあなたの体格や体力、好みにマッチしているかどうか確かめるとよい。

 

チェーンの切れ味

 優れたチェーンソーユーザーはチェーンのことを知り尽くしている。ガイドバーの長さに加え、ピッチとゲージはチェーンソーの切れ味を決める基本的な数値だ。チェーンのピッチとはドライブリンク【小さい刃がついた金属のパーツをつなぎ合わせてチェーン状にするための金属片】の間隔で、何分の何インチか(例えば1/4インチピッチ)、あるいは1/1,000インチ単位(例えば0.404インチピッチ)で表す。同様に、チェーンのゲージ、すなわちドライブリンクの厚さは1/1,000インチ単位で表現し、スプロケットの歯車の歯とぴったり噛み合うことによってチェーンを回転させる。チェーンやガイドバーを交換する場合は必ずピッチとゲージが同じものを選ぶこと。すべてのチェーンのピッチと、すべてのスプロケットのゲージを書いて保管しておけば、間違った組み合わせによってスプロケットとガイドバーを痛めることもなくなる。

 刃の形もあなたのニーズに合ったチェーンソーを選ぶ決め手の一つだ。一般向けのチェーンソーは跳ね返りや振動を起こりにくくするために、角が丸くなった刃になっている。一方、プロはノミのような角刃のチェーンを使う。両者は木目を断った後の木繊維の排出の仕方に違いがある。丸刃が切り口を丸ノミですくうようにかき出すのに対し、角刃は角ノミでそぎ落とすように切り、より素早く木繊維を取り除いていく。どちらが良いかについては様々な意見があり、決め手はない。それぞれに目的は果たせるし、刃の目立てがしっかりできている限り、どちらも良い働きをする。丸刃のチェーンは枝払いややぶを切り拓いたり、切り株にしたり、硬木や凍ったり泥で汚れた木を割ったりするのに向いている。加えて、丸刃で太いものを切る際にはエンジンから大きなパワーを引き出せる、短いガイドバーが適している。一方で、角刃のチェーンは長いガイドバー(24インチ【61cm】以上)で凍ったり汚れたりしていない軟木を切るときに本領を発揮する。  

 最後に、チェーンの刃の構成には、フルカッター(full-complement)、ハーフスキップ(half-skip)、それにフルスキップ(full-skip)の3種類がある。フルカッターチェーンは最大限に刃がついている。ハーフスキップは一つ置きにスペーサー(刃のないリンク)があるもので、フルスキップはスペーサーが二つずつあり、その結果、フルカッターに比べて刃の数は3分の1になる。フルカッターは刃が多いので、力を入れずにきれいにカットすることができる。思い通りに扱えるので、細かい枝ややぶ、細い木を切るのに最適だ。また、フルカッターチェーンは、各刃にかかる負荷が少なく、ハーフスキップやフルスキップのものより刃の減りが少ない。反面、フルカッターは刃の間隔が詰まっているために切り屑が多く生じ、刃の進みが遅くなる。これはエンジンを痛める要因になる。 

 その対極にあるフルスキップチェーンは大きなカット用で、たまにチェーンソーを使う一般的なユーザーの手には負えないだろう。刃が少なく、幹に食い込んでいるときも持っていかれることが少なく、エンジンもスムーズに素早く回転するが、刃が少ないために細い木や枝を切る際に安定せず、跳ね返りやひっかかりが多発しやすい。加えて、刃が少ない分、それぞれの刃にかかる負荷が大きくなるので、頻繁に目立てをする必要がある。

 農的暮らしを楽しむほとんどの人や植林管理者に私がおすすめするのは長いガイドバーとハーフスキップチェーンの組み合わせだ。この構成のものはフルカッターより粗い切れ味になるが、フルスキップのように深い木々の間を素早く切り拓いていくことができる。また、ガイドバーの長さと木の太さの比の上限近くの太い幹でも楽に切れるのもありがたい。にもかかわらず、ハーフスキップチェーンに交換する人は意外なほど少ない。これはおそらく、フルカッターを使っているユーザーはそのままフルカッターに交換し、プロはそもそもフルスキップを好むので、どちらのユーザーもその中間を選ぶという冒険を敢えてしないためだと思われる。

 

刃の基本的な手入れ

 自分自身の安全とチェーンを長持ちさせるためには、切り屑がチップ状ではなくおがくずになっていたり、焦げる匂いがひどかったり、刃がすっと楽に入らず、切り口にチェーンが引っかかって弾かれるような手ごたえを感じたら要注意。いずれも刃が鈍っているサインだ。自宅でチェーンの目立てをするための道具は山ほどあるが、本当に必要なのは目立て用のヤスリと明るい環境と時間だけだ。目立てをする前に、チェーンを万力で保持、あるいは倒木に2、3インチ【5、6cm】の切れ目を入れて、そこにガイドバーの中ほどを差し込んで固定する。目立ての際には二つの角度に気を付けること。サイドプレート【横刃】の角度と、アンダーカットと呼ばれる、トッププレート【上刃:チェーンの上部に水平についている刃】の角度だ。適切なアンダーカットを維持する(すなわちスムーズな切れ味を得る)ために、丸ヤスリの上部がトッププレートからわずかにはみ出すようにする(1/8インチ【3mm】くらい)。目立てをしている間は、片手でカッティング角度をキープし、もう一方の手でアンダーカットがずれないように押さえる。ヤスリを動かす動作自体は難しくはない。力を入れて数回押し出したら、それでおしまい。目立ての際には、多くののこぎりの刃がそうであるように、真っ直ぐ切るためにチェーンソーの刃も交互に向きが違うことに注意しよう。刃の高さは必ずしも完全に揃っていなくてもよい。つい低い刃に合わせて高さを揃えたくなるが、そこはぐっと我慢しよう。それでもどうしても均一に仕上げたければ、目立て用ガイドを使うこと。

 刃の形状に合わせて目立ての仕方を少し工夫する必要がある。丸刃は、サイドプレートが丸くなっているのでクエスチョンマークのような形になる。チェーン毎に、どのサイズの丸ヤスリを使えばよいか、指定があるはずだ。チェーンを上から見ると、刃のついた部分は35度の角度がついているのがわかる。目標は終始この角度をキープして研ぐこと。何かの理由で多少ずれてもやり直せばよい。角刃を持つチェーンは数字の7の形をしていて、目立てにはより忍耐強さが求められる。角が3つあり、2面が斜めになったヤスリが最適だ。ヤスリの角をカッターのコーナーに当てる。位置が正しければ、トッププレートの角度とアンダーカットとコーナーがぴったり合うはずだ。カッターの刃にしっかりあてがってヤスリを動かすこと。ヤスリがわずかでもぶれると、全部の角度がずれてしまう。だから、角刃の目立てではゆっくりかつ躊躇することなく動かすことがポイントだ。コーナーに向かってヤスリをかけ、刃の目のところ(gullets)を綺麗に仕上げること。

 サメの背びれのような形をしたレイカー(rakers: 別名デプスゲージ)によって、どのくらい刃が木に食い込むかが決まる。トッププレートには角度がついているので、カッターの高さは目立ての度に低くなっていく。チェーンソーが正しく切れるようにするためには、レイカーの高さを調整する必要がある。目見当で調整することもできなくはないが、レイカー専用のゲージと目立て工具を使う方がよいだろう。軟木や枝払いにはレイカーを低くし(0.035から0.050インチ【0.89から1.27mm】)、硬木や太い枝を切るのなら高くレイカーを設定する(0.02から0.030インチ【0.51から0.76mm】)。

 点検の際に、欠けたり曲がったりした刃やチェーンによじれがあれば交換する必要がある。それには、ちょっとした工具とスペアのリンクや刃があればよい。リベットの丸い頭の部分をヤスリをかけて落としたら、リベットを細いパンチで打ち付けるか、ピンがピン穴から抜け落ちるようにチェーンの継ぎ目の位置を動かして、ピンを完全に外す。そして、新しい刃とドライブリンクとその他の部品を正しい面を上にして、新しいピンで留める。ハンマーを使う場合は、丸くなった面で丸いリベットの頭をたたくこと。チェーンが固くなっていると、リベットがきつくなるが、そのうちに緩んでくる。

 

ガイドバーとスプロケット

 ガイドバーはチェーンやモーターよりずっと長持ちする。様々な状況に対応するなら、複数の長さのガイドバーを揃えておくとよい。一般論として、ひとつのエンジンで3つの異なる長さのガイドバーを扱える。今持っているガイドバーに加えて、それよりワンサイズ短いものと長いものをそれぞれ用意するとよい。エンジンに過度の負荷をかけるような長すぎるガイドバーを装着すると、確実にエンジンを痛める。ただし、フルスキップチェーンは例外で、引っかかりが少ない分、より長いガイドバーを扱うことができる。ガイドバーとスプロケットを買い足す方が、長さの違う3種類のチェーンソーを購入するよりずっと安くて手軽だ。

 ピッチとゲージと同様に、ドライブスプロケットは新しく取り替えたガイドバーやチェーンに常に合ったものでなければならない。定期的にドライブスプロケットとバースプロケット【ガイドバーの先端にある歯車】を点検して潤滑油を差し、ガイドバーをたまにひっくり返すことで、劇的にガイドバーが長持ちするようになる。ガイドバーの長さに応じたピッチ、ゲージ、スプロケットサイズを記録として書き留めておくこと。これはチェーンソーオーナーの心得として非常に大切なことだ。

 

ハードな作業に備えた手入れ

 曲がったガイドバーや鈍って欠けた刃やたるんだチェーンは大事故を引き起こしかねないので、チェーンの目立てがうまくできないのであれば、最低でも、切れ味の悪くなったチェーンの交換を怠らないこと。これは本当に重要なポイントだ。使わないときに棚にしまい込んだまま、次回使う時まで全く気にも止めないことになりがちなので(人によっては何年もそのままのこともある)、毎回使い始めるときには注意深くチェックすること。

 エンジンのメンテナンスは、一般的なメンテナンスとは違い、ごく普通のDIY好きのレベルのユーザーの手には負えないだろう。私の友人や同僚にはエンジンの調子が悪い時にはプロに任せるように勧めている。多くの場合、チェーンソーを最大限に活用するために必要なのは、チェーンの種類を増やしたり、よく理解した上でエンジンとガイドバーを組み合わせたり、新しいテクニックを習得したりすることであり、必ずしも新しいチェーンソーを購入することではない。

 

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How to Choose and Maintain Your Homestead Chainsaw

By Joseph Love 

October/November 2016