日陰、湿地、乾燥環境下で元気に育つ薬用植物を選ぼう。
文:Richo Cech
翻訳:内野 清美
菜園家はさまざまな生育環境に直面する。幸いにも優れた菜園技術は排水の悪い土壌、日陰、または極端に乾燥した状態など一見困難な状況を緩和することができる。堆肥、砂、および軽石を排水不良の土壌に加えると、ヒソップの成長の可能性が高まる。木を剪定し利用可能な光を増やすことで、カノコソウに適した領域が広がる。遮光布と灌水チューブを設置することにより砂漠でゴボウが育つ。
しかしこの記事では、このような集中的な手入れがなくても旺盛に育つ最適なメディカルハーブを提案する。ありのままの自然を観察してみると、沼の端には鮮やかなアヤメが咲き誇り、森の深い木陰ではエンレイソウが堂々とたたずみ、ホウセンカは進んで湿地に立ち、遅い冬のまばらな雨は砂漠に命をもたらす。自然は緑の毛布で自らを覆い守る術を持っている。私たち人間は環境に適した植物を取り入れることによって、自然のハーブガーデンを育成することができる。
困難な気候の下に暮らしている者でさえ、メディカルハーブを育てることができる。以下に記すハーブと、この記事の最後にある「最適なメディカルハーブ」のリストにあるハーブ全てに治癒または鎮静の作用がある。
日陰に適したヒーリングハーブ
種子会社の経営者として、考え得る全ての環境下に暮らす菜園家からの問い合わせを受け、不満を聞きいつも驚いている。「私の地域では日照がないんです! 日陰で何が育てられますか?」日陰は素晴らしい!日陰は通常木陰によるもので、木々はその葉を地面に落とし、豊潤な土へと変わってゆく。ブラックエルダーベリー(学名 Sambucus nigra、ゾーン4〜7)は、このような条件下でよく育ち、その果実は昔から寒さやインフルエンザを防ぐための免疫システム強化に使われている。 ,根鉢のない株または鉢植えの状態で購入した場合、大きな樹木の下に植え成長にしたがって刈り取ることができる。
また、日陰を好むブラックコホッシュ(学名 Actaea racemosa、ゾーン3〜9)は容易に移植でき、すべての点において管理が楽だ。安全な医学的使用のためにドイツコミッションEにより承認され、ブラックコホッシュの根は月経前不快感および更年期症状を治療するために使用されている。種子から育てることは難しく、鉢植えで調達するか秋に休眠根として移植し翌春に元気に発芽させる。 犬や鹿から茎を保護するために根を深く植え、少なくとも1m20cmは離す。 なぜならブラックコホッシュは大きくなるから!
耐陰性のあるグラウンドカバーについて質問を受けた時、私は良くハーブのグラウンドカバーを薦めている。ビューグル (Bugle)(学名 Ajuga reptans、Zones 3〜9)は傷の治癒で知られる植物だ。華やかな紫色の花でトラブルフリーの絨毯となり、定着後には特別な維持の必要がない。60cm 間隔で植え付ければ、1年から2年で地表を覆う。ニオイスミレ(学名 Viola odorata、Zones 5〜8)も半日陰で良く育ち、適した土に植えるとこれもまた目の保養になる小さな紫色の花を咲かせ、咳、特に気管支炎に対する治療薬として使用することができる。日陰で湿った場所には、オオバコ(学名 Plantago spp、すべてのゾーン)の種子を広く蒔き、棘のあるネトル(学名 Urtica dioica、ゾーン3〜10)はあまり歩かない場所に蒔くことができる。ネトルは非常に栄養価の高い春の食用植物で、オオバコはよく傷の湿布として局所的に使用する。早春にオオバコとネトルの種子を蒔くか、挿し根か鉢植えを使用する。 ネトルは窒素が豊富な堆肥の表土を好むが、追加施肥をしなくても毎年生えてくるはずだ。収穫する時は手袋の着用を。しなければ1日2日はヒリヒリした刺激の楽しみ方を学ぶことになるだろう。
湿地や沼地に適したヒーリングハーブ
ある日、オーキフェノキー湿地帯でボートを漕ぎながら、私が乗った浅い底の船が、手首程の太さがある巨大な白いスイレンの根を追しのけ、黄色い腹の魚が跳ねた。その後、湿地に突きでた波止場に座り、鶏の骨を鰐に投げ、湿地でのガーデニングについて考えを巡らせた。菖蒲(学名 Acorus calamus、ゾーン3〜8)がまず思い浮かんだ。この香り高い単子葉植物は池や流れの弱い水中で成長し、小さな魚やアヒルに保護的な生息環境を提供しながら水を濾過し浄化する。種子から育てるのは難しいので、成長した株の根を根挿しするか、鉢植えを買うことをお薦めする。水際の泥や浅い水面に菖蒲(「甘い旗(sweet flag)」 としても知られる)を植える。菖蒲の根は胃腸のトラブルに対して内服することができる。
水辺に最適な木としてバビロンしだれ柳(学名 Salix babylonica、ゾーン5〜9)をお薦めする。樹皮に含まれるサリシンは天然の鎮痛剤で抗炎症薬だ。そして揺れる柳の枝がペパーミント(学名 Mentha x piperita、ゾーン3〜10)をなで、風にその鮮やかな香りを乗せる。ミントの何種類かの根は、湿った土壌にすぐに根付き侵食を防ぐ丈夫なグラウンドカバーに成長し、池のほとりの美味しい噛み物となり、華やかな花で楽しませてくれる。湿地に育つ背の低いハーブのグラウンドカバーを探している?ウツボグサ(学名 Prunella vulgaris、ゾーン3〜10)は、とても優秀なシソ科イヌゴマ属の植物で、湿地になじみ低く成長し、旺盛に広がり、花は美しく、そして他のハーブと仲が良い。ウツボグサは直播きしたり、鉢で栽培し移植でき容易に帰化する。 タチオランダゲンゲ(学名 Trifolium hybridum、すべてのゾーン)は、湿地でも厚いグラウンドカバーを作る。この植物は、セイヨウトウキ(学名 Angelica archangelica、ゾーン 4〜9)やウスベニタチアオイ(学名 Althaea officinalis、ゾーン 3〜9)など背が高く湿地に適した植物と共生する窒素固定種だ。これらの自立したハーブは、ハーブ愛好家たちに愛され、湿度のある薬草園で栽培されたものは並はずれて魅力に満ち有用だ。セイヨウトウキの根は食欲不振や胃腸の痙攣を治療するために使用でき、ウスベニタチアオイの根、葉、および花に見られる自然の粘液は、尿および呼吸器官の炎症を和らげる。
乾燥地または砂漠に適したハーブ
砂漠の風景を見渡すと、茶色とぼんやりした赤で瞳は疲弊してしまうかもしれないが、陰った溝や峡谷の水路から明るい希望を放つ緑に引き寄せられる。自然の中に砂漠環境に対する手がかりを探していこう。
ニンジンボク(学名 Vitex negundo、ゾーン5〜9)は乾燥地帯に適応できる私の好きな低木の一つだ。 「Chinese chastetree(中国の素朴な木)」とも呼ばれるこの植物は、種から育てるのも容易だが鉢植えの株も手に入る。新しく植え付けられたニンジンボクは自立するまでの1年から2年はマルチと水を必要とするかもしれないが、成長した木は乾燥地帯で良く育つ。木には香りの良い花が長く咲き、その果実、葉、茎は伝統的な中国医学でマラリア予防薬や風邪の症状を治療するために使用される。
厳しい気候に暮らす者でも、薬草を育てることはできる。
ニンジンボクは小さな水場に影を落とすかもしれない。砂漠地帯では水は特に貴重なものとして考えられ、小さな池に循環する水を供給することができれば、あらゆる種類の生物(蜂、蝶、トカゲ、ハチドリ、小さな哺乳類、さらには鹿やコヨーテ)が段々と集まるだろう。そんな水辺に、ヤーバマンサ ( yerba mansa ) (学名 Anemopsis californica、ゾーン7〜10)はとても魅力的な植物だ。種子を水辺の湿った土壌に埋め込んだり、鉢植えを定植したり、成長したランナーを移植することができる。
ヤーバマンサは密で香り高い群生を作り、季節的な乾燥に耐える。円錐形に真っ白な花をつけ、枯れるとその場に多量のバイオマスとして落ちるので、アルカリ分を減らし環境毒性を分散させながら新鮮な土壌を作る。ヤーバマンサは抗菌剤であり、その根は膿瘍や一定の排液が必要な傷に使用できる。
オシャ ( Osha ) (学名 Ligusticum porteri、ゾーン6〜9)は、乾燥した土地で丈夫に育つ。 春の発芽にむけて秋に播種し、森の腐葉土でマルチをする。苗に影を落とし草を抑えるために近くにソバを育てよう。根付けば自ら水分を探し、毎年花を咲かせ種を残す。オシャの根は鼻の粘液をクリアにし呼吸系のトラブルを緩和するのに役立つ。
砂漠であっても、土壌にはわずかな雨の刺激で発芽、成長し、開花する花、ハーブ、そして樹木の種が眠っている。 スイートアニー、ワイルドベルガモット、カリフォルニアポピー、フランダースポピー、カリフォルニアチア(チアシード)、エパソーテ、そしてデザートマリーゴールドの種子は、秋や冬の入り口で砂と混ざりあい散らばって、発芽し花を咲かせ、自然の中で癒しの力を発揮する。
日陰、湿地、乾燥地帯に最適なメディカルハーブ
私の著書「Making Plant Medicine」では、これらの薬草の癒し成分の活用方法を学ぶことができる。
【以下の一覧の表記 ・英名(学名)】
日陰のハーブ
手始めのハーブ:
• Black cohosh (Actaea racemosa)
• Black elderberry (Sambucus nigra)
• Bugle (Ajuga reptans)
• Nettles (Urtica dioica)
• Sweet violet (Viola odorata)
多様性のハーブ:
• American ginseng (Panax quinquefolius)
• Balm of Gilead (Cedronella canariensis)
• Bloodroot (Sanguinaria canadensis)
• Blue cohosh (Caulophyllum thalictroides)
• Bowman’s root (Gillenia trifoliata)
• Celandine (Chelidonium majus)
• Goldenseal (Hydrastis canadensis)
• Lily of the valley (Convallaria majalis)
• Morning glory (Ipomoea spp.)
• Skullcap (Scutellaria lateriflora)
• Tibetan gentian (Gentiana tibetica)
• Trillium (Trillium erectum)
• Twinleaf (Jeffersonia diphylla)
• Virginia snakeroot (Aristolochia serpentaria)
• Wild yam (Dioscorea villosa)
湿地または沼地のハーブ
手始めのハーブ:
• Alsike cover (Trifolium hybridum)
• Angelica (Angelica archangelica)
• Babylon weeping willow (Salix babylonica)
• Calamus (Acorus calamus)
• Marshmallow (Althaea officinalis)
• Peppermint (Mentha x piperita)
• Selfheal (Prunella vulgaris)
多様性のハーブ:
• Blue flag (Iris versicolor)
• Boneset (Eupatorium perfoliatum)
• Brahmi (Bacopa monnieri)
• Bugleweed (Lycopus virginiana)
• Butterbur (Petasites spp.)
• Camus (Camassia quamash)
• Cardinal flower (Lobelia cardinalis)
• Chickweed (Stellaria media)
• Datura torna loco (Datura ceratocaula)
• Devil’s club (Oplopanax horridus)
• Gravel root (Eupatorium purpureum)
• Plantain (Plantago spp.)
• Sundew (Drosera rotundifolia)
• Sweetleaf bergamot (Monarda fistulosa var. menthifolia)
• True unicorn root (Aletris farinosa)
• Venus flytrap (Dionaea muscipula)
乾燥地または砂漠のハーブ
手始めのハーブ:
• California poppy (Eschscholzia californica)
• Crimson clover (Trifolium incarnatum)
• Desert marigold (Baileya multiradiata)
• Epazote (Dysphania ambrosioides)
• Nirgundi (Vitex negundo)
• Sweet Annie (Artemisia annua)
• Yerba mansa (Anemopsis californica)
多様性のハーブ:
• Ashwagandha (Withania somnifera)
• Desert willow (Chilopsis linearis)
• Fennel (Foeniculum vulgare)
• Fernleaf biscuitroot (Lomatium dissectum)
• Gumweed (Grindelia robusta)
• High Desert Four o’Clock (Mirabilis multiflora)
• Manzanita (Arctostaphylos spp.)
• Mexican elderberry (Sambucus mexicana)
• Mormon tea (Ephedra nevadensis)
• Ocotillo (Fouquieria splendens)
• Passionflower (Passiflora incarnata)
• Savory (Satureja spp.)
• Scented geranium (Pelargonium capitatum)
• Southernwood (Artemisia abrotanum)
• Stillingia (Stillingia sylvatica)
• Torch aloe (Aloe arborescens)
• White sage (Salvia apiana)
• Wild bergamot (Monarda fistulosa)
• Za’atar (Origanum syriacum)
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Best Medicinal Herbs for Difficult Growing Conditions
By Richo Cech
April/May 2017
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