裏庭にある材料でルートビアづくり

 

ジメジメした天気の時に地面から生えてくるキノコのように、地酒醸造所がいたるところに出現する地域に引越してきた私たちヨーロッパ系の家族。アメリカならではの手作りルートビアに挑戦することになったのは当然の成り行きでした。ヤギのミルクや、圧搾したリンゴジュース、素晴らしい茶畑。こうした自営農園の営みから自然の恵みをすでに得ていた私たちですが、子供のお気に入りの飲み物は目下ルートビアなのです。サイモン[著者の子供]が学校で何かを発表することになった時、彼がルートビアの作り方をはじめから知りたいと言ってきたのは当然の成り行きでした。サイモンにルートビアづくりを教えてみて、自然の草木から材料を少々拝借して醸造の基礎を学ぶことは、子供の学びにとても役立つと思うようになりました。 

 今ではルートビアは甘い炭酸飲料だとわかりますが、昔は必ずしもそうではありませんでした。人が植物を煎じて調合するようになったのは、おそらく人類が火を使い始めたときからだと思います。でも、サッサフラスは北アメリカ由来のもの。サッサフラスの入ったルートビアは海外で目にすることはあまりありません。ヨーロッパでは、「スモールビール」を作る伝統がありました。アルコール濃度がとても低い発酵飲料です。ヨーロッパの人々は北アメリカに移民してきた時、多くのアメリカ先住民部族の間で飲まれていた薬効があるサッサフラスの飲みものを作る時や調理の際に、スモールビールをつくる技術を利用したのです。このスモールビールの醸造技術とアメリカ先住民の飲料の組みあわせはゆっくりと発展して、私たちが今日知る市販のルートビアになりました。

 最初、ルートビアは、英領植民地時代のアメリカにおける数多くあった低濃度アルコール飲料の1つでした。こうした低濃度アルコール飲料はすべて、汚染がよくみられた表層水よりも安全だと考えられていたのです。また、薬効のあるハーブが添加されていたため、健康に良いとされていました。このルートビアは数世紀の間広く飲まれていましたが、はじめて販売用レシピを考案したのは19世紀の薬剤師チャールズ・ハイアー (Charles Hires) だったので、一般的にはハイアーがルートビアの生みの親と言われています。ハイアーは、乾燥した「ハイアー・ルートティー (Hires Root Tea) 」を自分の店で袋売りしていました。1876年のフィラデルフィア万国博覧会では、労働者層へアピールしようと、ハイアーは商品名を「ルートティー」から「ルートビア」に変更しました。その後、ハイアーは濃縮液を開発し、ついには完成した炭酸飲料をボトル詰めして売り始めました。

 1960年代、アメリカ食品医薬品局は、市販のルートビアや他の食品にサッサフラスの使用を禁止しました。研究で、サッサフラスの根皮の主成分であるサフロールに発ガン性があるとわかったのです。サッサフラスに似た香りがある、ヒメコウジが代わりに使われるようになりました。サッサフラスやヒメコウジは常温保存が難しいため、現在では、ルートビアづくりからほとんど姿を消しています。代わりに人工香料が使われています。

 自営農園の話に戻りましょう。私たち家族が好んでつくるルートビアは、自家栽培と自然採取したハーブや樹皮、実で作るアルコール度数が低いもの。市販のルートビアよりも伝統的なスモール・ビールに近いです。醸造後2週間くらい冷蔵保存すれば、子供が飲むにも何の問題もありません。それより長く置くと(我が家ではほとんどありませんが)、アルコール度数が上がりはじめます。以下のサイモンのルートビアレシピには、サッサフラスやサルサパリラは使わないことにしました。その代わりに、クロモジと黒樺を入れています。両方とも我が家の裏庭に生えていて、香りも風味も伝統的な材料に使われる植物に近いです。

 

サイモンのルートビア

黒樺の樹皮、またはヒメコウジの葉 17g

クロモジの若い小枝の樹皮 17g

セイヨウタンポポの根 9g

すりおろしたショウガの根 小さじ1

白樺の樹皮 9g

セイヨウミザクラ、またはブラックチェリーの樹皮 9g

スペインカンゾウの根 9g

セイヨウネズの実 9g

シナモンスティック 1本

パック詰めのホップの花 大さじ1

水 2.4L

粗糖 1カップ

エールの上面発酵に使用される醸造用イースト、または市販のパン用イースト 1袋

ちょうつがい式の押し上げ蓋がついたボトル 4~5本

 

 さあ、ここからがお楽しみ。サイモンと私は、裏庭や裏庭の周囲からできるだけ多くの材料を集めることにしました。まるで自然の中で借り物競争をするみたいです。サイモンは材料毎に保管できるようにそれぞれのバギーズ[保管袋]につけるラベルを用意しました。セイヨウタンポポの根を掘り、白樺の樹皮を削ぎ取り、ホップを集め、みずみずしい黒樺の小枝(おやつにしました)やクロモジの若い小枝を探し出し、セイヨウネズの実を一握り採るのにヤギ[セイヨウネズの実を好んで食する]にも戦いを挑んだ私たち。

 キッチンに戻り、私がレシピを大声で読み上げる間、サイモンはヒメコウジとクロモジの小枝から樹皮を削ぎました。引き続いてサイモンはセイヨウタンポポの根を刻み、しょうがの根をすりおろし、黒樺やセイヨウミザクラやワイルドチェリーの樹皮と、乾燥したカンゾウの根を粉砕。セイヨウネズの枝からは実を採り、シナモンスティックも平らにつぶしました。

 自然採取した材料をそれぞれ測ってから、サイモンが1つずつ大きな深鍋に入れ、分量に測った水を足しました。コンロに火をつけたのは私。お湯が煮えくり返ったところに2人で全部の材料を入れました。煎じた汁が1度沸騰したら、火を弱めてフタをしたまま20分そのままに。それから火を止めて、煎じた汁が冷めて濃く出るまで一晩置きました。

 次の日、煎じた汁から煮詰めたかすを慎重に濾しました。濾した汁は1カップの粗糖を加え、すべて溶けるまで攪拌。サイモンは、こぼさないように注意しながら、濾した煎じ汁をリサイクルのちょうつがい式ソーダボトルにそれぞれ注ぎました。フタをする前に、それぞれのボトルにドライイーストをひとつまみ。ボトル詰めの前には、雑菌が入るのを防ぐため、煎じ汁に触れるものは全部消毒することをお忘れなく。すべての器具や容器は、食洗器のお湯の温度を最高にして洗浄し、ヨードチンキ[消毒液]またはグレインアルコールに浸けるか、10分煮沸しましょう。

 フタをしたら、発酵がはじまるようにボトルを温かい場所に2、3日置きます。ちょうど良い発酵具合になったら、イースト発酵のスピードを弱めるか、止められるようボトルを冷蔵庫に入れます。

 いくつか見つけられなかった材料があったので、地元の健康食品店で購入しました。代用したものもあります。例えば、サッサフラス。ニューヨーク州北部にはまったく生えていませんが、クロモジならたくさん生えています。クロモジはサッサフラスに似た香りがあります。また、セイヨウネズは生えていませんが、健康なエンピツビャクシンの見本のような木が敷地内に何本か生えています。大きさは大分違いますが、どちらもビャクシン属の種類で、小さな青い実をつけます(専門用語では「球果 (cone) 」と言います)。ここまでの話で、自家製ルートビアの材料は臨機応変に代えが利くことがおわかりになったでしょう。あなたの場所で採取できる素材や好みにあわせてレシピは改造できるのです。というよりも、むしろ改造するのは当然のことです。

 これはまさに昔行われていたこと。多くの地域ではルートビアづくりの秘訣が代々伝えられ、その地域で好まれる独自のルートビアレシピがあったのです。さあ、これであなたも我が家スペシャルのレシピをつくる準備は万端です。あなたの自営農園の歴史に刻まれるルートビアをつくりましょう!。。。(全文は購読登録してお楽しみください

 

スーザン・ベルベルグはビール醸造者で、ニューヨーク州フィンガーレイクス地域の自営農園主。スーザンが新たに取り組む中世のビールづくりについてはこちら:www.MedievalMeadAndBeer.WordPress.com

 

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Brew Backyard Root Beer

 

By Susan Verberg