土くれほどに安い家

マザーアースニューズ 自然 自給 農

 アースバッグ(土のう)で、自然で安価な方法で、自分の個性を反映した住居ができる。

文と写真:モーガン・キャラウェイ(Morgan Caraway)

翻訳:沓名 輝政

 

 2009 年、妻のメアリー・ジェーンと私は、マザーアースニューズの本『Earthbag Building』に触発されて、初めてアースバッグの家を建てました。直径 6m の円形の家は、ガラス瓶の壁(bottle wall)と廃品利用のフレンチドア(観音開きのドア)を取り入れました。建築期間は 5 ヶ月弱、総費用は 5,000 ドル以下でした。この建築物はソーシャルメディアで話題になりました。

 それ以来、私たちは、アースシップにヒントを得た家や、本誌で紹介した湧水を利用した地上プール(「大地に根差したプール」2021年6月/7月号)など、多くのアースバッグプロジェクトに取り組んできました。その過程で、私たちはアースバッグを使った建築のプロセスを効率化する方法について多くのことを学びました。

 アースバッグ構造とは、土を入れた袋を積み重ねて作る構造のことです。私の経験では、これは最も強く、最も汎用性があり、かつ最もコストのかからない自然建築技術のひとつです。土の材料はどこでも手に入りますし、安いか無料です。土を詰めた土のうは、木材やコブ、ヘンプクリート[ヘンプの麻幹と石灰とを混ぜ合わせ、ブロック状に成型したもの]、ストローベイルでは適さない高水分の用途に使用できます。地上・地下の温室、地下貯蔵庫、嵐の避難小屋、ベンチ、貯水槽などに最適です。土のうは防カビ、防火、防虫、防弾、防腐の機能を備えています。この建築媒体は丈夫で適応性があります。土のうがどれだけ長い間、洪水対策や軍事要塞として使われてきたか考えてみてください。

 自分の家を建てることは、人生を豊かにする素晴らしい経験になります。私たちが 11  年以上にわたって使用してきたアースバッグ建築の技術をご紹介する前に、地域の建築基準法や適切な安全手順を熟知することは、読者のみなさんの責任ですのでご了承ください。十分に注意してください。

 

アースバッグのタイニーハウス

 タイニーハウスのような小さな建築物は、初心者に適したプロジェクトです。まずはグラフ用紙に設計図を書いてみましょう。私たちが選んだアースバッグ・タイニーハウスを建てる場所は、何年も前に不要と判断した地下貯蔵庫のために掘削されたもので、すでに設置面積が確立されていました。 

 アースバッグプロジェクトの最初の大きな決断は、基礎の種類です。瓦礫のトレンチ(rubble trench)、コンクリートスラブ、フーチング基礎などが考えられます。コンクリートを使用した基礎は、他の選択肢よりもコストが高く、内包エネルギーも大きくなりますが、建築基準法で義務付けられていることがよくあります。お住まいの地域の建築基準法の例外規定をご確認ください。多くの地域では、一定の面積以下であれば、許可なしに建築することができます。ほとんどの地域では、スラブ基礎(べた基礎)にアースバッグを埋め込んだ柱と梁の構造を認めていると思います。私たちの小さな家では、アースシップハウスに使われているような、地下のフローティング基礎[建物重量を排出する土の重量以下として、排土によって生じる浮力から建物の支持力を得る]を採用しました。 

 正面の柱と梁のフーチングには、亜鉛メッキの柱固定金具を鉄筋コンクリートに沈めて使いましたが、我が家の湿気の多い気候では、処理済み材の柱でも腐るのです。中身の詰まった袋の圧力に耐え、横揺れにも耐えられるように、柱には筋交いを施しました。

 設計した構造体の後ろ側のカーブの内側を描くために、敷地の後ろ側の中心に短い鉄筋を打ち込み、一端を鉄筋に、もう一端を棒に結んだナイロンロープを使って、カーブの内側を描きました。続いて、その区域を水平に均しました。

 

位置について、用意、ドのーン 

 すべての準備が整ったところで、ワークショップを開催しました。このワークショップは、参加者が自分のアースバッグ建築に挑戦する前に、貴重な手を動かす体験をしてもらうためのものであり、また、私たちにとっても足りない手を貸してもらうものでした。まず、防湿シートを敷き、その表面上に後ろの壁の内側のカーブをマジックで書き込んでいきます。作業中は、必ず古いビニールシートや防水シート、ホッチキスのない段ボールなどで防湿層を保護してください。

 私たちは、14 × 26 インチ(37 × 65cm)の土のうを使ってアースバッグを作っています。漆喰を塗ると 30cm の厚さの壁になります。一度に 1,000 袋以上をオンラインで購入することが多いです。紫外線防止効果の高い袋を探します。土のうの角が壁からはみ出さないようにマチ付きの袋もありますが、入手しにくく、値段も高いです。私は好んで手で折ってマチを作っていますが、マチを縫うのが好きなビルダーもいます。

 次に、袋の上部から約 20cm のところまで袋を詰めます。詰め物をする必要はありません。私は土の山にしゃがんで、柄をへし折って短くしたシャベルで土をすくって袋に入れています。また、32 オンス(950ml)の金属缶を使うこともできます。いずれにしても、この動作を何度も繰り返すことになるので、体に負担のない方法で行いましょう。。。 

 

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