熊手の教え:訓練で上達する

マザーアースニューズ ジョエル・サラティン 農

自給自足スキルを確立するには、

今どこにいようが、ただ始めること。

 

文:ジョエル・サラティン (Joel Salatin)

翻訳:浅野 綾子

 

向上心あふれる農家や自営農の人たちからよくもらう質問のひとつは、「どこに行けば自営農の技術を学べますか」手っ取り早く答えるなら、「マザーアースニューズフェアに行ってこらん」だ。

 本当にこれだけで済むなら困らない。この質問を掘り下げて考えるのに、私自身の話をしよう。人それぞれで話は違うが、共通のテーマは存在する。そうしたテーマをここで引き出したい。

 まず、私は農業のトレーニングを早くから始めた。現在経営する農場で私は育った。父と母が農地代を農場外の仕事(それぞれ会計士と学校の教師)の収入で支払ったことは確かだが、私と妻のテレサが結婚して農場に戻ってくるまで、この農場はいわゆる「ゴーイングコンサーン」にはならなかった。

 初めの 2 つのテーマは、早く始めること、農場ビジネスの規模や採算を心配するのをやめることだ。とにかく始めるのだ。思春期の遅くになるまで、私は我が家の農場がビジネスではないと気づかなかった。そう言えば、我が家ではガレージセールで子牛を売っていた。でも、それで生活費を稼ぐということは一切なかった。税金を払うのに十分な売上げがあったと思うが、給料のような金額とは言えなかった。それでも、子供時代を過ごし、いろいろな農業の取り組みを経験したり、売り買いの腕を磨いたりするには不自由のない場所だった。

 父と母は、置かれた境遇を理由として、子供たちの取り組みの応援を諦めなかった。兄はうさぎを育て、私は 10 歳で初めてにわとりを飼った。

 時々、私が農業ビジネスに注目していることで、非営利の農場や自営農に敬意を払わないと思わせてしまっているのではと思うことがある。まったくの見当違いだ。すべての取り組みは無から始まる。私たちは皆、どこに向かうものであれ、何かしらの過程にいる。現時点がツリーハウスを建て、小川にダムをつくり、野菜を植えるという重要な過程なら、それは素晴らしいことだ。

 大切なことは始めることだ。何でもいい。今いる場所で始めるのだ。Google で検索しても経験はできない。そして、経験に勝るものはない。利益の有無や規模の大小にかかわらず、その何かをしながら本を読んだり、セミナーに参加したり、動画を見たり、夜間講座を受けることはできる。私は、何か学問をすると同時に実践することの大切さを固く信じる人間だ。学問と実践は互いに相容れないものではなく、普通は互いに共生するようにできている。

 だから、自営農の技術の実践を始めてみよう。自分が楽しめること、楽しめないことがわかるようになる。自分にある才能、ない才能がわかる。植物を育てることが得意なのか、それとも家畜の世話なのか。それぞれ面白半分でもやってみないことには、才能や情熱の在りかがわからない。

 時々、どこで、または誰からトレーニングを受けるかにこだわってしまうことがある。それが重要だとしても、自分で経験するのに勝るものはない。早く始めれば始めるほど、失敗するのも早くなる。それが成功への道を学ぶ方法だ。

 私の一番のメンターは父だった。父の父(私の祖父)は、1940年代に出版された「ロデール・オーガニックガーデニング&ファーミング(Rodale’s Organic Gardening and Farming:ロデール有機園芸と有機農業)」という雑誌の定期購読者だった。その雑誌は 我が家の屋台骨だった。だから、私はその哲学と世界観という巨人の肩の上に立っている。父と母は、その生涯で農業の「ゴーイングコンサーン」を築くことはなかったかもしれないが、考え方や作業、農地において、私やテレサが始める基礎を作ってくれた。ささやかに始めて申し訳ないなどと言って欲しくない。数々の礎を決して軽く見て欲しくない。

 我が家にはこうした環境保護の道徳的価値観があったため、地域のエコファーマーと友達になり、ヒッピーとも親しい交友関係を築いていった。マザーアースニューズが出版されるやいなや、この雑誌も我が家の屋台骨となった。ティーンエイジャーながらも、その内容に魅せられたことを覚えている。マザーアースニューズのトップページに掲載されていた農夫インタビューのセクションで、アラン・セイボリー、ビル・モリソン、エリー・プルース (Ellie Pruess)  A.P.トムソン (A.P. Thomson) という大権威を知った。旅をするお金はなかったが、こうした優れた雑誌のページを通してまるで自分が旅をしたように感じることができた。

 

 その後、本を読むようになった。今までに投じた最大の時間投資の 1 つは、忙しくなかった頃、ひと秋を読書にあてたことだ。その時は、サザンステイツ Southern States:農業関連製品全般を扱う小売業者) の地元の販売店で、ハモン・プロダクツ・カンパニー (Hammons Products Company) のクロクルミの買取所を管理していた。4 週間の仕事で、月曜日から土曜日、午前 8 時から午後 5 時までそこにいなければならなかった。ほとんどの年がまあまあ忙しいのだが、この年は特別で、地元ではクロクルミがほとんどとれなかった。袋を 2 3 つもってくる人が、1 日にほんの 23 人だけだった。でも、この時間と条件で約束してしまっていたから、本を持ち込んで時間を過ごしたというわけだ。。。

 

記事全文はバックナンバーでどうぞ。

 

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