限界耕作地での自営農

私たちの多くは夢を共有しています。この国で各自が気に入った環境のもと、良質で清潔な食べ物を作れる場所を見つけるという夢。家、もしかしたら、激動の時代の隠れ家、避難所、安息の地。素朴なイメージにもかかわらず、土地が高額だったり、手の出せる価格の農場が全体的に足りてないせいで、独立するためのワクワクする努力であるべきものが、挫折を考えてしまうようなものに感じます。でも実際に小さな農場はどんな所でも見つかると分かればどうでしょう?見えない所に存在し、新規就農者に利用してもらえるのをただ待っているとしたら?そして、そんな小さな農園が最も手頃な価格であったとしたら、どうでしょう。

 

翻訳:大本清子

 

うますぎる話に聞こえるかもしれませんが、全ての土地、そう、土地ですが、そこにはだいたい何かが生えています。たとえ手入れがされずに、ほったらかしにされていてもです。そのことに気づくと、農場を手に入れる可能性が突然広がります。現代の農場主は家畜と協力して、痩せて手入れがされていない耕作放棄地を、肥沃で再生可能な生態系に立て直すことができるのです。土と水と反芻動物と、それらを管理する農家がいれば、どんな場所も農場にすることができるのです。

 

くじけてしまう土地探し

 私たちが20年前に知らなかったことがあります。私たちの買った小さな区画は「農地に不適当」とオハイオ州に指定されていたのです。この指定は希望というより絶望です。さらに農場探しは恐怖となっていきました。私たちは買った農場を改修するために貯金をしなくてはいけないと思っていて、土地は予算内に抑えておきたかったのですが、不動産会社は私たちの希望を尊重してくれるようには見えず、予算外の物件を見せようとするので、がっかりさせられました。が同時に、素敵な場所に天文学的な価格を当然のように付ける不動産広告をくまなく探しながらも、実際のところはどうなのだろうと考えるようになりました。私たちが探していたマーケットは非常に小さく、完全に限定されていました。良い土地は全て売約済みのように見えました。

 私たちは車で、大事にされてなさそうな物件をあちこち見て回るようになりました。イバラで覆われた庭をかきわけ、壊れた窓から中を覗き込んだり、蜘蛛だらけの納屋の中に入ったりしました。スーパーやガソリンスタンドの掲示板を見ました。私たちのイメージは絵に描いたような「マクドナルド爺さんの農場」から、もっと手に入りやすくて、現実的なものに変わっていきました。私たちが期待していたものを整理し、納屋やフェンス、貯水システムを、必須アイテムから外しました。こういったものは、後から間に合わせで作ることもできますから。その代わり完全に手の届かない土地ではなく、家付きの土地を探しました。

 まだ私たちが草が生い茂った道を車でゆっくり下っていた頃、「家と17エーカーの土地、1万1千ドル」と簡潔に書かれた地元の広告を見つけました。私たちは考えることなく「これだ!」と思いました。岩だらけの丘の中腹はゴミと木とイバラに覆われていました。小さな家は構造的にしっかりとしていましたが、ドアは蝶番が外れ、窓は壊れ、照明器具はブラブラしていました。私たちの夢の農場とはかけ離れていましたが、町から抜け出すことはできました。修理して後で売りに出し、本物の農場の手付け金にしようと思っていました。ゴミを取り出し、ヤギの繋ぎ綱のために杭を打ち込むことを始めた日、私たちはすでに多様な生態系を築き始めていたとは、夢にも思いませんでした。

 

耕作限界値は改善する価値がある

 思い返してみると、私たちは幾つかの点で幸運でした。それに加え2つの小川が私たちの土地で合流していたので、私たちの傾斜地は汲んだ水をある場所から別の場所へと楽に運べるのです。私たちは南北に走った谷を望んだかもしれませんが、東西に向いた窪地の南に面した所はそれよりも日光を受けとると思います。そして土地の傾斜や方角の違いが、土地の中にたくさんの小さな気候を生みます。暖かい所、涼しい所、湿った所、乾燥した所、日が差す所、日陰になる所が、様々な組み合わせであります。そして最後に、私たちの一番近くの住人も未使用で少々開墾した土地  -—  牧場と呼ぶには何も生えてない、急斜面で岩だらけの  —  を持っていたのですが、私たちに喜んで貸してくれました。

 私たちにはやることがたくさんあったので、すぐ取りかかりました。私たちのヤギが、土地の大部分を覆っている下生えのイバラを楽しそうにムシャムシャ食べるので、当然私たちは、ほとんど毎日新しい食べ物のある場所にヤギ達を移動させようとしました。ジョエル・サラティン(Joel Salatin)、グレッグ・ジュディ(Greg Judy)、アラン・セイボリー(Allan Savory)の本やビデオに巡り会い、道筋が見えました。毎日ヤギを移動させることで高い草木が減り、糞尿が加えられて表土は乱され土地に長い休息の期間が与えられ  —  ヤギの活動が表土を作り上げ日光が当たるようになり、イネ科やマメ科の草の成長を促しました。私たちは輪換放牧の基本を一から作り直したのです!

 私たちはこの方法を、彼ら専門家のアドバイスに従い改善し、異例の早さでイバラをなくしていきました。最初、雑草が生えてきましたが、そのうち自生のクローバー、オーチャードグラス、ペレニアルライグラス、背の高いブルーグラスの厚いカーペットに取って代わられました。私たちは乳牛と子牛、次に数匹の羊を加えました。各動物が必要とする飼料は違うので、飼葉の成長を補完する効果があります。以前は岩だらけで侵食が起きていた斜面は、この動物達のもと、ごつごつした表面が消えて行きました。土に落ちた草の種は時期が来ると発芽し、厚い緑で急斜面をなだらかにしながら根付いていきました。最初は明らかに信じがたい様子であった隣人は大喜びし、自分たちの手入れをしていない牧草地を使うよう申し出てくれました。その牧草地も、家畜の定期的な放牧が提供する炭素と肥やしの投入にすばやく反応しました。

 私たちの土は痩せて石だらけだったので、レイズドベッド(上げ床)で野菜を育てなくてはいけませんでした。無料で私たちが拾ってこれそうな土壌改良材ならなんでも使って  —  近所から出た不要な馬の糞尿の山や、地元の製材所から出た腐ったおが屑も含みます  —  私たちの土壌改良プログラムは始まりました。最終的に私たちは、農場の労働力として豚を投入しました。彼らの分解された寝わらは、私たちがトンネルで冬の葉物野菜や根菜類の周年栽培をしている上げ床を作り上げました。最初、菜園の外でフェンス飼いしていた鶏を、フェンスごと菜園にいれるようにして鶏を使って何も植えていない菜園をきれいにさせ、厚い草のマルチをひっくり返させ、緑肥を植えた植え床の草を食べさせ、土を耕作させました。菜園での作業に加えて、牧草地でこの鶏達は、種や虫を探そうと堆肥の山を引っ掻き回しつつ、肥料を撒く仕事もします。また私たちの朝の食卓のために、黄身がオレンジ色の卵も産んでくれます。

 

電気を使わない水の供給

 放牧し続けるため、私たちは牧草地で家畜に水をやる方法を考えなくてはいけませんでした。ロープで繋がれたヤギのためにバケツで水を運ぶのは良い運動になるかもしれません。でも乳牛は毎日、はるかに多くの水を必要とします。井戸は私たち世帯が必要な量に対して全く足りませんでした。2つの小川沿いで行う非常に短期の放牧   — 私たちは水流放牧と呼んでます  —  は、野ざらしの土をなだらかにし、草を水面に届く所まで成長させ、岸辺を強くして洪水から守ります。しかし私たちはこの小川から離れたところに牧場を持っていて、そこで一年を通して放牧するのは難しいことでした。そこで私たちは穴の空いたフレンチドレイン用のパイプを牧草地の高所にある常に湿った箇所に設置し、そこで集めた水を1㎥の容量がある使用済みの安価な輸送容器に向けて流しました。私たちは水を重力式給水で、普通の庭用のホースからバルブを取り付けた(樽を半分に切って作った)桶の中に入れました。桶は私たちの子供でも牧場のどこへでも移動させることができました。厄介な帯水層を利用しなくても、農場のどこにでも水がありました。納屋の中で水を出すことまでできたのです!

 

太陽の光がロケット燃料に

 私たちのヤギのミルクは、朝のオートミールが入ったボールに注がれたり、フェタチーズのタルトになったりする、美味しくて新鮮な脂肪とタンパク質のもとになる有難いものでしたが、ジャージー牛のイザベルとその子牛は、農園に更なる革命を持ち込みました。私たちの土地に毎日注ぐ太陽は、ロケット燃料に形を変えていました。

 最初それがもたらす量に、少し恐れを感じていたのですが - 牧草を食べる(グラスフェッドの)ジャージー牛は倍のミルクを1年のほとんど毎日生産できるのです - 私たちは間も無く、牛乳は農場の全ての食欲に応える高品質で自家製脂肪とタンパク質の一番の供給源だと気づきました。私たちの食卓はバター、ハードチーズ、ソフトチーズ、ヨーグルト、ケフィア、サワークリームなどで溢れかえりました。それに加え毎日の余剰物と副産物は、農場にとって計り知れない栄養を提供しました。ミルクは農場全体を養いました。子牛、豚(この家畜達は乳ばなれした後から屠殺されるまでの間、乳清(ホエー)と草だけで育つことができます)、そして家禽(凝固した生乳以外の、タンパク質補助食品は不要ですが)、幼い鳥が生乳で栄養価を高めていると、コクシジウム症に対する抵抗力が増します。我が家の犬と猫、家の番人と害獣駆除のシステムもミルクから恩恵を受けました。

 薄く希釈した生乳は、菜園で抗真菌液となることが証明されています。希釈した乳清もまた、追肥でも葉面散布でも、植物にとって素晴らしい栄養になります。そしてコンポストの山の中の細菌活性に影響を与え、糖類やタンパク質、そして有用微生物を爆発的に増やします。

 

ついに、農園での自給自足

 私たちの農場経営は牧草で育つ牛の出現で全く新しい局面を迎えました。私たちはもはや、趣味人の素人ではありませんでした。私たちの家禽や菜園は、牛のミルクを与えられ、驚いていたかもしれませんが、牛の出現によって、私たちは豚を買うことを思い立ちました。菜園から出る残渣や家の食べ残しは堆肥にしていましたが、豚に食べさせるようになりました。それはベーコンやポーク・チョップに変わりました。また大量の窒素と飽和炭素の固い豚の寝わらは、堆肥になりました。私たちの食卓に上ったほとんど全てのものは、私たちの小さな土地からやって来ました。私たちは新鮮な野菜、ハーブ、果物、卵だけでなく、牧草だけを食べる動物から作られた、肉、バター、ミルク、チーズの品々がたくさん並んだ食卓の前に日常的に座るようになりました。食事の味と品質が跳ね上がると同時に、食料や食事にかかる費用は急落しました。私たちの土地は、今まで食べたことがないくらい最高品質の食料を与えてくれ、同時に農場での私たちの作業は、土地を養い、見える形で土を育て、豊かにし、多様性を生み、干ばつや洪水に強くしました。

 地産地消のできる場所を築くことは、現実離れした夢ではありません。最初の一歩は一番近くにある耕作放棄地くらいの距離でしかありません。環境科学の学士号を持っている必要もなく —  何か植物が生えている所から、数頭の反芻動物と、少しの作業から始めてください。まず始めに土を育てることで、私たちは環境を保護する、持ちつ持たれつの関係を再スタートさせることができるのです。実のところ、それが今世紀における投資の秘訣なのです。成功と豊かさを、この地球から直に築くのです。ということで、ようこそ新入りの農場主さん!手に入れられる農場は私たちのすぐ近く、どこにでもあります。私たちは始めさえすれば良いのです。

 

土地の基本チェックリスト

 一度も土地を所有したことのない私たちは、何を探すか知るのに少し困惑させられるかもしれません。優先リストを作ることが役に立つと分かりました。

 場所。家族と仕事から気候や文化的な条件といった要素に焦点を当てることを基本に、自分がどこに居たいのかを知ることです。もしあなたが何かを作ってそれを売ろうと思っているなら、顧客はどこにいるでしょう。あなたが考えている場所に、市場が形成される可能性を把握してください。

 交通の便。募集に申し込む前に、自分がその土地に行き来する方法を把握しているのか確かめてください。また考えている大きな設備(例えば、風力タービンとか、トラックの荷台に積まれ建設資材一式)をその土地に搬入・搬出ができるルートを考えてください。。。。

 

全文はバックナンバーでおたのしみください。) 

 

。。。おまけの景品。予想外の資産について目を光らせておいてください。木は木陰、材木、薪を産みます。河川や湖沼などの地表水は灌漑用水、貯水池、釣り場、遊泳区域として利用できます。近所の人からは家畜の糞尿をもらえるかもしれませんし、彼らが使っていない土地を貸してくれるかもしれません。すでに植えてあった果物やナッツの木やベリーの潅木は、あなたが新しく植えた作物が収穫できる何年も前から、実を付けてくれるでしょう。南に面した斜面や、防風設備や防風林も全て実在する資産です。

 

ですから、あなたが農地を探しているのなら、あなたが命を吹き込めるかもしれない辺鄙な場所にも、鋭く目を向けてください。土地はあなたが思ってるよりもあります。

 

Homesteading on Marginal Land