エコな裏庭埋葬の計画方法

マザーアースニューズ 自然葬

自然葬は環境への影響を最小限におさえた埋葬方法

 

自然葬の専門家のアドバイスをもとに、裏庭埋葬の法律および実践の検討にそなえよう

 

裏庭埋葬の穏やかな雰囲気が多くの心をひきつける。Photo by Adobe Stock

文:エリザベス・フルニエ (Elizabeth Fournier)

翻訳:浅野 綾子

 

 

 環境にやさしい生活スタイルを構成する驚くほど多くの要素と同様に、自然葬(green burial)もそのはじまりは大地に負荷の少ないシンプルな慣わしに遡ります。自然葬は自然の営みをささえ、自然を癒す埋葬様式を築いていく行為そのものであり、自然を破壊し傷つける行為ではありません。町の教会墓地や家族埋葬地では、かつて遺体は布に包まれるか、微生物に分解されて土に戻る箱に納められて土に埋められました。今日、火葬や自然葬は、遺体に防腐処置を施して生物分解されない棺に納められる従来の手段に代わる方法としてますます広まっています。自然墓地 (green cemetery:土地の保全が主目的の墓地) は以前よりも一般的になっており、私有地上の家族埋葬地へ埋葬してもらうことに対しても多くの人が関心を寄せています。アメリカでは家族埋葬地に埋葬する風習に長い伝統があります。かつて暮らした土地に一族の全世代が埋葬されるのです。

 

裏庭埋葬とは?

 「裏庭埋葬 (backyard burial) 」では、居住地または公式墓地として承認されていない私有地に遺体を埋葬します。裏庭埋葬を規制する法律は、各州のみならず、各郡ごとに異なります。開設墓地ではなく、私有地での埋葬を許可する法律は、農村地帯においてより多くみられます。

 裏庭埋葬を検討しているなら、それが埋葬される土地自体と所有者にとってどのような意味をもつか慎重に考えましょう。私有地に遺体を埋葬すれば、将来その土地の売買に影響することは確実です。また、土地を売却して大切な故人の眠る場所が自分の所有地ではなくなる心配がほとんどなくても、その場合にあなたはどのように思い、どのような行動をとるかを考えておかなければなりません。土地の種類によっては、埋葬された遺体がどこかに移されなければ基本的に売却できないこともあります。移された場合でも、遺体埋葬地とのレッテルが残ってその区画の売却が困難になるかもしれません。それだけではありません。遺体を発掘して輸送するのは高くつきます。では、遺体の移動が求められずに土地が売却されたとしましょう。家族や友人にお墓参りに行く手段が必ずしも残されるとは限りません。売却された不動産はそれまでとは異なった使われ方をする可能性もあり、それは不動産用地の性質にも影響するかもしれません。

 あなたが家族埋葬地に埋葬してほしいなら、またはあなたの大切な人を埋葬したいなら、こうした注意を聞いてあきらめてはいけません。決断の前に起こりうるすべての結果についてよく考えさえすればよいのです。それから、法律の説明を聞いたり法律相談を受けたりしないで決断してはいけません。先に入念な計画準備からはじめましょう。というのも大量の書類作成が必要になるからです。慎重に計画を立てれば確実にスムーズな土葬ができ、現に、私が計画に協力した多くのご家庭は、大切な人の埋葬に自然葬以外の方法を選ぼうとはしませんでした。

 

法律の検討

 裏庭埋葬を適法にするには地域の規則が適用されますから、自宅埋葬を計画する前に地域の保健所に相談しましょう。私は、問い合わせ客のすべての住所について最寄りの郡の都市計画局 (zoning and planning department) に確認します。埋葬許可が下りるよう確実にするためです。自宅埋葬を計画する前に確認すべき事項を一般化することは難しいのですが(というのも規則は郡や町によって異なるので)、基本的には私有地埋葬の許可要件は各地域で小さな違いにすぎないことがほとんどです。

 適法性についての例として、オレゴン州での自宅埋葬は一定の環境基準に適合しなければなりません。表層水や土地排水が他の水源(池や小川、井戸、川の支流のような)に流れ込む土地はオレゴン州環境局 (Oregon Department of Environmental Quality) の書面による許可がなければ埋葬目的に使用することはできません。私が目にした他の規則には、私有埋葬地は「水源から46m、掘削された井戸から30m、送電線から8m離れている必要があります。…土地のセットバックの線から少なくとも6m離すのが得策です。」と定められていました。おしまいに、あなたは私有地での葬儀に料金を請求することはできません。ほとんどの人はそのような請求をしないと思いますが、こうした規則は裏庭埋葬を計画する前に地域の規則を調べることが重要な理由を示す良い実例です。

 不動産証書の名義が誰であっても、抵当権者や担保権者がある場合はその人たちから書面による同意を得る必要があります。また、死亡証明書の作成には州の要件をすべて満たす必要があり、その上輸送許可やその他の必要な書類もそろえければなりません。マザーネイチャーネットワーク (Mother Nature Network: www.MNN.com) には以下の的を射たアドバイスが掲載されています。「私有地に遺体を埋葬するなら、埋葬地がどこにあるかを記載した地図を書き、不動産証書と一緒にしておくことが必要です。そうすれば、将来、遺体の場所がどこにあるのか他の人たちにも明確にわかります」。不動産が売却される場合、その土地に遺体が埋葬されているなら不動産所有者は開示する必要があります。不動者所有者は土地内での遺体処理についての記録も維持保管し、不動産売却の際にはこれら記録の開示に同意しなければなりません。

 

墓所準備の基本

 伝統的に、教会の管理人が墓地での墓掘りや墓所準備を行っていました。墓掘りや墓所の準備は、教会の構内や建物の維持管理という教会管理人の一般的な仕事の一部でした。今日では、墓地ではこうした職務を手伝う人を雇うのが普通です。自分で裏庭埋葬をとりしきるなら、自分自身で墓穴を堀り、墓所準備をする計画を立てることが必要です。

 目につく大きな石や木の根がない墓所を選び、掘る土の性質にも注意を払いましょう。重い粘土質は軽めのロームや砂質の土よりも掘りにくいです。ですが、希望する場所の土が強い砂質なら、掘りすすめるうちに墓穴が崩れてしまうかもしれません。そのような場合は、土が固めの他の場所を選ぶのが無難です。

 墓穴を「180cmよりも深く」掘る必要はなく、90~120cmの深さで足ります。墓地で墓穴を180~210cm掘るのは、同じ場所に遺体を2つ埋葬する計画がある時だけです。場所を選ぶ際は、掘りはじめる前に、遺体を埋葬する墓穴にどれだけの深さが必要か地域の規則を調べておきましょう。

 

墓を掘る

 墓掘りは重労働です。墓掘り人は数百キロの土を掘ることになり、それには多くの時間とエネルギーが必要です。2人以上の人がシャベルで掘るとして、深さ120cm、幅90cm、長さ210cmの墓穴を掘るのに平均で3時間かかります。裏庭埋葬や自然葬では標準的な遺体容器のかぶせふた (grave liner) や棺 (casket) が使われませんから、墓掘りをはじめる前に、埋める予定の伝統的なタイプの棺 (coffin) や遺体容器のサイズを測っておきましょう[標準的な棺と伝統的なタイプの棺の違いには、形状や水分を通さないように密封するかどうかなどがある]。短すぎたり、狭すぎたりする墓穴が困りものであるように、必要な大きさよりもはるかに大きい墓穴を掘る必要もありません。裏庭埋葬では、選んだ埋葬容器が墓穴にほどよく納まる限りは、墓穴を定型外の大きさにすることもできます。

 墓穴はバックホー[油圧ショベルと総称される掘削にも使用する建設機械のうち、アームに取り付けるショベル( バケット)をオペレータ側向きにした形態のもの]かショベルで掘ることができ、この二つの異なった方法は作業も所要時間も全く異なります。どちらを選ぶかは、自然葬[埋葬地の利用]をするかどうかに左右されるかもしれません。ほとんどの自然葬の墓地では、自然環境をできるかぎり保護するため重機の使用を禁止しています。

 手で掘るなら、腰の痛みや、長時間立ったり、しゃがんだり、ショベルで掘ったりする動作の負担を抑えられるよう長い柄のついた鉄製のショベルを使いましょう。先が角型のショベルは、土や小石を動かしたり、墓穴の隅を直角にし、壁や床を作るのに理想的な道具です。堀り上げた土は墓穴から遠く離して置きはじめましょう。墓穴から出るのに使うはしごも用意しましょう。

 バックホーを使う予定なら、前面に排土板がついているゴム製キャタピラーを装着した小型のホーの使用がおすすめです。小さなブルドーザーは360度回転でき、通常は、コンパクトトラクターのついたバックホーよりも大きなバケットを装着できます。墓穴の隅を直角に掘るのを簡単にするため、墓掘り用の特殊堀削バケットを買うこともできます。深さのある墓穴を掘る必要があるなら、アームの到達距離と掘れる深さが拡張された油圧ショベルがあると良いかもしれません。

 

埋葬と墓穴を閉じる作業

 遺体容器を下ろす土葬用のプロ用機材を持つつもりのない方がほとんどだと思います。ということは、ロープまたは革ひもの準備と、手間取ることなく容器を下におろすのに十分な人手の手配が必要になります。通常は、肉体的にこの作業に耐えうる人が6~8名で、それぞれが自分用の革ひもかロープを持ち、遺体容器を下ろす作業を行う必要があります。重さが気になるなら、遺体容器の持ち手かロープを増やし、人手も増やしましょう。人手は少なすぎるよりも多すぎる方が困りません。そして覚えておくこと。遺体はゆっくり、落ち着いて下ろします。

 遺体を遺体用の布に包むかソフトな容器に納めて埋葬するのであれば、重さが均等にかかるように遺体を木の板に寝かせることを考えましょう。遺体用の布にツーバイフォーを縫いつけて、目立たない方法で重さを分散させるのもよいかもしれません。どの方法を選ぶにしても、葬儀の日の前に、実際の段取りについて対処しておきましょう。遺体を運ぶ人たちにも同様に準備してもらうことを忘れないようにしましょう。

 葬儀の後は、墓穴を埋め戻す必要があります。土を戻す作業は葬儀自体に組み込まれていることがよくあります。参列者が儀式として一握りの土を遺体の上にかけたり、順番にショベル一杯の土をまるごと墓穴に戻したりすることがあります。

 墓穴を埋め戻して閉じるには、前もって取り除いた土をすべて戻します。容器と遺体が分解されるので土が安定するように、墓所には土をいくらか盛り上げておきます。取り除いた芝生の片を元に戻すか、自生の植物種を墓所に植えても良いでしょう。

 

アドバイス

 以下のアドバイスは、イギリスの2014年墓掘人大賞 (Gravedigger of the Year) ジョニー・ヤックスリー (Jonny Yaxley) のアドバイスをもとにしています。

• 砂やひも、その他有機物で墓穴をかたどりましょう。

• 鋤を使って墓所の輪郭に切れ込みをいれ、芝生を細長い片にして慎重にはがします。近くの場所にベニヤ板何枚かを敷いて、はがした芝生の片をパズルのように元の形に合わせて板の上に置き、後で元に戻すのが簡単になるようにします。

• 墓穴の深さが十分になったら、底をショベルで平らにならします。墓穴の縁に立って横の壁もなめらかにしましょう。

• 墓穴の底に、おがくずや小枝、葉を敷きます。

• 遺体を運ぶ人たちの足場がしっかりするように、墓穴の四辺に木の板を置きましょう。

• 人工芝やキャンバス地のロールや、細長いアップサイクルのじゅうたんを使って、土や参列者に目障りになるかもしれない場所の上にかぶせましょう。

• 横木を二本用意し、墓穴の前にある、遺体を納めた棺か包んだ布を置く場所に配置します。横木の上には、遺体を墓穴に下ろすのに使用するネットかロープ、または革ひもを広げておきます。

 

埋葬地の種類

 従来型の墓地 (Conventional cemeteries) では、生物分解される棺の上にある土が下に沈んで墓所が陥没していくのを防止するため、遺体容器を納める外箱 (vault) が通常必要とされます。従来型の墓地では、遺体防腐処理も許可されています。埋葬による生態系への影響を最小限に抑えたいとの思いがあなたやあなたの大切な人にあるなら、以下に記載する他の埋葬地を検討してみましょう。

 混成埋葬地 (Hybrid burial grounds) は、従来型の墓地の中でも、遺体容器を納める外箱と蓋(コンクリート製)や墓石、または遺体容器のかぶせふた (partitioned liner) を不要とする埋葬オプションを提供している墓地です。遺体防腐処理も必要とせず、遺体を包む布を含めた環境に負荷の少ないあらゆる埋葬容器を許可しています。米国のいたるところにある従来型の墓地は、自然葬について考慮(かつ場所も用意)していますから、気軽に問い合わせてみましょう。

 自然葬用埋葬地 (natural (or green) burial grounds) を使用するには、エネルギーの節約、ごみを最小限にする埋葬方法、有毒な化学物質の使用禁止に対応する必要があります。この埋葬墓地では、埋葬容器は自然素材または植物由来の材料で作られたものでなければならず、おおむね埋葬は遺体容器を納める外箱やコンクリートでできた墓石を一切使用せずに行われます。害虫管理計画を用意して自然な外観にデザインされ、維持管理がされています。生態への影響を最小限に抑えるために自生の植物種や資材を使用し、地域の生態系に似せた地形パターンを取り入れています。

 保全埋葬地 (Conservation burial grounds) では、自然葬用埋葬地の要件に土地の保全目的が加えられています。保全埋葬地ではその土地が永久に保護されなければならず、土地の保護を目的とする地役権を有する保全団体の設置か、長期の土地管理を保証できるよう不動産譲渡が規制されている保全団体の設置が義務づけられています。

 

エリザベス・フルニエ (Elizabeth Fournier) は、オレゴン州ポートランドのはずれにあるCornerstone Funeral Services and Cremationのオーナー兼経営者。自然葬協議会 (Green Burial Council) の諮問委員会の委員を務める。自然葬協議会では北アメリカにおける自然葬の基準を決定している。夫、娘、多くのヤギと農場で暮らす。インターネット (https://www.thegreenreaper.org/) でエリザベスを見つけよう。

 

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How to Plan an Eco Backyard Burial

By Elizabeth Fournier