ローンズ・トゥ・レギュームズ|ミネソタ州における花粉媒介者の保全事業

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州全体で取り組む保全活動は、芝と景観の「美(Bee)化」。環境保全上のメリットが存ブンに詰まった、花粉媒介者にやさしい生息地をつくりだす活動。

 

文:トム・オーダー(Tom Oder

翻訳:浅野 綾子

 

 2017 年にラスティーパッチド・バンブルビー[マルハナバチの一種、学名 Bombus affinisが絶滅危惧種のリストに入ったことは、アメリカでマルハナバチが初めて、そしてアメリカ中でハチが初めて絶滅危惧種のリストに入った以上の影響がありました。絶滅危惧種入りが知られたことで、バンブルビー以外の花粉媒介者の減少についての懸念も広がりました。昆虫の個体群の減少が、食料生産や傷つきやすい生態系にもたらす影響についての認識が高まり、ミネソタ州が州全体で革新的な花粉媒介者保全プログラムに着手するきっかけにもなりました。

 ミネソタ州議会は 2019 年にラスティーパッチド・バンブルビーを州のハチとして定め、同じ会期に経費分担の試験的事業を承認しました。事業には、「ローンズ・トゥ・レギュームズ (Lawns to Legumes:芝をマメ科に)」という一般に受け入れやすい名前がつけられました。「ローンズ・トゥ・レギュームズ」事業のスローガンは「Your Yard Can BEE the Change(自分の庭からハチまる変化)」。この事業では州全体の住民を対象として、在来植物[特定の地域や生態系で、数百から数千年かけて築かれた、自然界における均衡の一部である植物]を利用して、芝や景観を花粉媒介者が好む質の高い生息地に変えることを推奨しています。

 ラスティーパッチド・バンブルビーは、すぐにローンズ・トゥ・レギュームズ事業のマスコットとして採用されました。このことはミネソタ州に 450 種以上いる、在来種のハチのデータ収集への関心を高めることになりました。というのもマルハナバチは、それ以外のハチの個体群について、その健康状態の指標となる可能性があるからです。これらのハチの個体群の状態は、この事業がその長期的目標を達成できるかの鍵となります。長期的目標とは、気候変動や農薬、植物の病原菌、栄養の不足で生息地を失っていく、潜在的に絶滅の危機に晒されているハチやその他の花粉媒介者・昆虫の数を減らすことです。

 

Bee」・ザ・チェンジ

 ミネソタ州水・土壌資源委員会(Minnesota Board of Water and Soil ResourcesBWSR)が運営するローンズ・トゥ・レギュームズでは、ワークショップや植えつけ指導、植えつけガイド、さらには「インディビジュアル・サポート(Individual Support)助成金」の支援を組み合わせて州民に提供し、保全目標を達成しようとしています。同助成金では、花粉媒介者の生息地をつくる費用の補填に役立てるものとして 350 ドルまでを支給します。この事業には、「デモンストレーション・ネイバーフッズ (Demonstration Neighborhoods:デモンストレーション地域)」もあります。これは大規模な保全区域のことで、地方自治体と BWSR の支援を受けた非営利団体が運営します。

 この事業では、場所の状況やガーデニングの経験にもとづいて柔軟な植え込みづくりができるように、花粉媒介者の生息地づくりに 4 タイプの取り組みを用意して支援しています。在来植物ポケットプランティング[花粉媒介者の餌となり、隠れ場所になる在来植物をいくつかの小さなグループにした植え込み。同事業でガーデニング入門者に推奨]、花粉媒介者をよぶ芝、花粉媒介者をよぶ牧草地、有益な樹木と低木、この 4 つのタイプです。この事業では、住民が地域の慣行に合う取り組みを判断できるように支援もしています。事業初年度には、「インディビジュアル・サポート助成金」の 2 回の申請期間を通じて、ミネソタ州の 87 の郡のうち 84 の郡から 7,500 人の申請がありました。そのうち助成金を受けたのは 1,000 の個人や団体。50 以上の提携団体と、100 名の熱心なボランティア指導者がこの取り組みに参加しました。さらには 33 千人がこの事業のウェブサイト www.BWSR.State.MN.us/L2L にアクセスしました。届いた申請は助成金をはるかにオーバーする数で、花粉媒介者の生息地を支えるこの事業に対する、一般の人々の強い関心を示していました。

「州全体から良い反応がありました」と言うのは、BWSR の上級生態学者で植物専門家のダン・ショー(Dan Shaw)。「早い段階で住民の人たちと話をしましたが、花粉媒介者の減少を含めて話に聞く環境問題の解決に、自分も何かしたいという思いがあることは明らかでした。こうした問題を解決するために個人で何ができるのか。それを一般の人たちが判断するのは難しいともいえます。この事業は、一般の人たちが環境改善に直接かかわれる、ひとつの手段になっています」とショーは言います。。。

 

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