あなたの状況に見合うベストな栽培手法を選ぶ。
文:スコット・A. J.・ジョンソン (Scott A.J. Johnson)
翻訳:長谷川 伸
ジャガイモは正当に評価されていませんが、育てるのが容易な園芸作物です。ジャガイモはさまざまな土壌や気候で成長し、栄養価も高く、保存がききます。売っているジャガイモは安いので、多くの家庭菜園では育てようとは思いません。しかし、ジャガイモの育て方を決めるのは一つの挑戦となりえます。栽培の情報源は、ジャガイモを育てる上でのアイディアに満ちていて、栽培方法の選択肢の多さに呆然とします。主な原因は、各々の方法に、驚異的な収量をあげた支持者と誤りであると雄弁に語る反対者がいること。良いものと悪いものを分けるために、私は最も代表的な ジャガイモの育て方 5 つをテストしてみました。
ジャガイモの栽培方法
ジャガイモはアンデス原産で、そこでは、インカとその子孫が、予測できないエルニーニョ現象によって引き起こされる雨、多様な生態系と著しく異なる標高といった複雑な環境下で品種を耕作してきました。伝統的な耕作方法は,土とリャマのふんの植え床を何条もつくるために溝を掘ることです。掘った溝に様々な品種の種いもをリャマのふんと一緒に埋めます。これによって食糧安全保障が確保されます。というのは季節の状況がどのようになろうとも、たとえ他はダメになったとしても、少なくともいくつかの品種はよく育つからです。
西洋の栽培者は、このアプローチを溝畝法(trench-and-hill method)に取り入れました。幅 15 cm の深さの溝をジャガイモの列をつくるために掘ります。堆肥は溝の底に施し、種いもは 30 cm 間隔で蒔いてマルチと土で覆います。ジャガイモが成長したら、列の間の土を成長中の苗のまわりに寄せます。これは茎を支えイモが緑にならないようにするためです。収穫時には、できたジャガイモを掘り起こすためにガーデンフォーク (spading fork) を使って溝を掘り起こします。
ジャガイモの最新の栽培方法は、準備した土の表面上に種いもを蒔き、それを堆肥とマルチで覆うものです。なかには藁や木材チップの下に、新聞紙や段ボール紙の層をシート状のマルチとして設ける栽培者もいます。苗が育って来たら、さらにマルチを茎のまわりに溝畝法と同じ方法で加えます。溝畝法との違いは、収穫時に掘り起こす必要がないことです。マルチを引きはがしてジャガイモの塊茎を土から引き抜くのです。
他の栽培方法としては、苗木プランターがあります。袋やプラスチックバケツ、トートバッグ、樽、木箱(タワーと呼ばれているもの)、さらには自動車のタイヤを積 み上げたものが地面やテラス、バルコニーに置かれてジャガイモを栽培するために使われて来ました(しかしながら、タイヤは化学物質が染み出してくるので避けてください)。このアイディアは、苗木に土寄せするのに向いているので、栽培者は繰り返しプランターを上方へ積み重ねて苗木に土をかぶせていけば、より深い根の構造になり、より多くの収穫を得られます。この方法はより柔軟で、土を掘り返すことなく簡単です。収穫する時には、プランターをひっくり返してジャガイモを集めるだけですから。植物をひっくり返すことなく根に手を伸ばすために、側面を構成している垂直の板を取り外すことができるようにして、植物を枯らさない設計のタワーもあります。
実験
私たちのテストグループは、南ウィスコンシン(耐寒気候区分 4b、5a、5b の地区)の農産物直売所に出荷する生産者から自宅の菜園で栽培する者までの 10 人の生産者により構成されていました。小規模生産者にとって最も収量があり、最も労働節約的な方法はどれかを見極めるために、私たちは 5 つのジャガイモ栽培法をテストしました。第 1 は、溝畝法で、これを対照実験の対象となるグループ(統制群)としました。また、2 つの表面植え付け法(surface-planting)、藁マルチと藁に新聞紙を重ねるマルチ、そして、2 つのプランター法、袋と木製タワーをテストしました。
他の変数は一定にしました。栽培者は全員、十分な日照が得られる下で、5 つの 8 フィート (2.4 m) 四方の植え床を設けました。それぞれの区画に 3 ポンド (1.4 kg) の種いもを植え、2.8 リットルの有機肥料(Purple Cow Organics Activated Compost、0.7 – 0.3 – 0.3)を植え付け時に、0.95 リットルは育っている間に与えました。それぞれの区画は 2 つの藁のブロックで覆い、同じだけの太陽光、雨、注意が与えられました。生長する間、栽培者はそれぞれの栽培方法にかかる労働時間を記録し、草刈りや水やり、マルチの積み上げ、コロラドハムシの駆除を行いました。生長期の終わりに収穫し、それぞれの栽培方法ごとにジャガイモの重さを量り、数を数え、労働時間を合計しました。
結果
一言で言えば、結果はまちまちでした。収量だけでなく労働時間とコストにも私たちは注目していました。結果は「全てのデータ」と「汚れていないデータ」に分けることができます。4 人の参加者は収穫物の一部にハタネズミによる害や水害を受けたために、結果の解釈が困難になりました。しかし、まとめて見れば、全データの統計はより現実世界を表現しています。一方で、もしハタネズミと低地を避けることができたなら、栽培者の期待通りの「汚れていないデータ」となるでしょう。最も生産性の高い栽培方法は、溝畝法でした。全参加者でみると平均して 0.82 kgですが、ハタネズミの被害に遭わなかった区画だけを取り出してみると平均して 1.15 kgのジャガイモを収穫することができました。藁マルチ法、藁と新聞紙のマルチ法、タワー法では、全参加者で見ても、汚れていない参加者で見ても、平均よりも 0.22 kg少ない収穫となりました。プランター法については、全参加者で見て 0.45 kgを越えただけ、ハタネズミの被害に遭わなかった参加者だけで見ても 0.77 kgで、明らかに最も低い収量でした。全ての苗は重さ約 76.5 グラムの種いもから始まりましたので、最も低い収量になった栽培方法でも 7 倍に増え、最も優れた区画では種いもの 20 倍以上の重さの食用となるジャガイモを得たことになります。
しかし、労働力は種や資材のコストと同様に栽培者にとっての投資なので、収穫量が全てではありません。苗あたりで見てみると、全ての栽培者は平均して藁マルチ法、藁と新聞紙のマルチ法には少なくともそれぞれ 8 時間 39 分、7 時間 42 分かけました。袋法には 10 時間 30 分、溝畝法には 11 時間 21 分、タワー法には容器の組み立てに時間がかかるため 16 時間 59 分でした。たとえ溝畝法区画が 2 つの表面法と比較して収穫が約 139 % あったとしても、溝畝法は 2 つの表面法と比較して約 140 % の時間がかかっています。もし汚れていない区画に目をむけるなら、以下の通りその差はもっと広がります。栽培者は溝畝法のための時間が 2 つの表面法と比較して苗木あたり 178 % 近くになる一方で、収量は 130 % だけです。。。
コメントをお書きください