唐辛子を保存するための激辛な発酵食

市販の調味料とは違い、このスパイシーな調合は

栄養と乳酸発酵で出来上がる風味が豊か。

 

新鮮で多種多彩な唐辛子が木製のキッチンカウンターにどっさり並べられている。これらの唐辛子は香辛料として料理に使われる。

 

発酵物の上に置いたジッパー袋の中に水をそそぐと、野菜をすべて塩水の中に沈めるのに役立つ。

文:クリステン・K・ショッキー (Kirsten K. Shockey)

翻訳:大本 清子

 

 

 いつも最初は問題なくいきます。あなたは赤唐辛子を育てようと思いました。6つの青唐辛子、それにフレズノチリを1つか2つ。それにもちろんチョコレートハラペーニョも育ててみたくなりました。そうだ、ポブラノも好きだから、それも少し追加。唐辛子はどんどん育っていきました。そしてあなたは1ペックから2ペック(1ペック=約9L)もの唐辛子を見つめています。それでどうしますか?標準的な保存法では、冷凍したり、乾燥させたり、ビン詰めにしたりしますが、器具を使ってフリーズドライにすることも可能です。

 ビン詰めについて話しましょう。野菜のビン詰めの中には、最高の熟練者でさえ、まごついてしまうものも。唐辛子がその一つです。発酵を知る前、私は何でもビン詰めにする女子でした。自家栽培のハッチ [ニューメキシコ州ハッチバレー発祥の品種] のチリを作るため、青唐辛子を焼いてビン詰めにしました。唐辛子は酸度の低い野菜なので45分も圧力ビン詰め器の中に入れる必要があります。瓶の中に入っているのを見ると、とても素敵ですが、初めてチレ・レジェーノを作ろうとした時、ぐちゃぐちゃに潰れてしまいました。もし唐辛子のビン詰めを作りたいなら、最初にピクルスにしないといけません。唐辛子を酢の中に沈め(安全な保存食の鍵は酸性にすることだから。ピクルスの定義。)、それからお湯の中に瓶を沈めて作ります。そして確かにどれも美味しいのですが、たくさんのビン詰めを食べられるのは私一人だけです。

  

乳酸菌の効用

 もう1つの保存法について入っていきます。あなたのために(沸騰したお湯で満たした容器を使うことなく)仕事をさせるため、微生物群の全てにとって良い環境を作ります。バラエティに富んだ、チャツネ、調味料、ピクルスやソースを作るために、乳酸発酵で唐辛子、スパイス、ハーブ、そして他の野菜のあらゆる組み合わせで、酸性にすることができます。微生物は全てを均等に酸性化するので、あなたは、自由に探求し、欲しい風味を作り出せます。発酵した野菜のpHが、4.5以下になったら、長期間安全で、安定した状態になります。保存期間は野菜によりますが、発酵した唐辛子は冷蔵庫に入れずに、無酸素状態で、開封しなければ、1年以上持ちます。とはいえ、冷蔵庫に入れるのが一番。これでバクテリアの働きが落ち、発酵が安定し、風味を損なわずに済みます。 

 乳酸菌発酵はこの数年の間で、色んなものを多くの人が作るようになりました。しかしその核となるものはシンプルで、確実に数千年にも渡り保存法として使われてきた、費用をかけずに作れるものです。今私たちは21世紀の始まりにいて、私たちのルーツに立ち戻っているのです。今では発酵食品は、その風味や色、そして栄養価を保持するために、職人的で伝統的な手法と科学的な知見を結合したものだとみなされています。

 

 野菜の乳酸発酵は、あなたの庭からの新鮮な恵みを保存する、まさに最高の方法。ただ栄養(そして、バイオアベイラビリティ:生体利用効率)を保持するだけでなく、栄養を増やし、驚くべき風味も生み出します。みじん切りやさいの目切りしたり、シュレッダーにかけたりした野菜に少しの塩と無酸素状態の環境を容器の中に用意し、少し時間をおけば、すでに野菜に付いている乳酸菌が働くでしょう。乳酸菌は野菜の炭水化物(デンプンや糖)を消費し、葉酸塩やリボフラビンを含むビタミンBといった栄養を生産し、その間に、酸や消化酵素や二酸化炭素に転換します。そう、この微生物自体も語らずにはいられませんね。それらはマイクロバイオームに関する全ての新しい研究によ って注目されるようになりました。野菜を、本当に信じられないくらい、簡単で、安全な工程で、健康的で美味しく保存するのです。

 

発酵のコツ

 器材と重し。ここにあるレシピでは、始めるにあたって器材はほとんどありません。一度も発酵をさせたことがなく、特別な器材を買いたいとはあまり思わなくても、ご安心を。瓶とジップ付きの袋が1つあればできます。プラスチック製の袋に水を入れてそれを重しにし、酸味のある塩水に、量の大小を問わず野菜を浸すのです。私はこの方法で55ガロン(約204L)のドラム缶を使ってザワークラウトを漬けている人たちを知っています。彼らは単に、とても大きくて丈夫な袋を使っているだけです。この方法で重要なことは、瓶の中に、この袋を入れるスペースをとっておくこと。瓶には3/4程、野菜と塩水で満たし、上部の1/4は袋のために開けておきます。

 瓶に発酵させるものを入れて沈めた後、クオート (0.95L) サイズのジップ付きの袋(冷凍用の丈夫な袋が一番)を瓶の中の開いてる上部に置き、袋を開き、野菜や溶液の表面の隅まで押さえつける。袋に水を入れる:重さが加わると、袋が野菜たちの表面を密封するのがわかるでしょう。袋に入れた水の水位が瓶の入り口と同じになったら、袋を閉じます。

 野菜が発酵している間、空気が溜まっている所をよく見ましょう。空気が溜まった部分が大きくなるかどうかは、発酵中の野菜が出す、二酸化炭素の量によります。空気溜まりは、大きくならないこともあれば、大きくなることもあります。袋を調整して、空気は抜くようにすしましょう。定期的に袋を取り出し、野菜たちを押し下げる必要があるかもしません。外に出した袋は水で洗い流し、元の場所に戻します。

 いつ出来上がるのか?クッキーの様に180℃で15分という訳にはいきません。発酵の仕上がり具合は日ごとに変化します。それが普通なので心配することはありません。ただ変化に気をつけて見ていれば、いつ完了したか分かるでしょう。確かな兆候があります。鮮やかな緑がくすんだオリーブ色というように色が変化したり、匂いがピクルスらしくなったり、または味に酸味が出て酸っぱくなり、塩辛さがなくなったり、野菜がしぼんだり。

 この発酵を成功させるための温度は、幸運なことに、ほとんどの室内の気温に合致しています。16℃から24℃なら完璧。もちろん、夏の台所はもっと高くなるでしょう。でも心配無用。ただ発酵はとても活発で早く終わるということです。

 私は唐辛子を保存するため、旬の時期に発酵唐辛子を作りました。自分たちのトマトのビン詰めを使って新鮮な発酵サルサを一年中作るために、ピコ・デ・ガロ・サルサ・スターターを考え出しました。発酵青唐辛子ベースが頭に浮かんできたのは、ポブラノ、ハラペーニョ、青唐辛子が全て同じ時期にとてもたくさん成熟したためです。私は、この唐辛子トリオで料理するのが大好きですので、だったらまとめて発酵させない手はないですよね?

 これらの発酵サルサの辛さの範囲は、甘口から辛口まであります。辛い鍋物や、ほとんどどんな料理にも合う、辛い付け合わせで、便利な風味の素です。

カースティン・K.・ショッキ (Kirsten K. Shockey) と共著者であるクリストファー・ショッキ (Christopher Shockey) はオレゴン州にある約49,000坪の自作農場で生活し、40種類以上の野菜やハーブを栽培しながら、発酵技術の教育に精力的に取り組んでいる。本記事で取り上げたレシピは、Storey Publishingの協力により「Fiery Ferments」から抜粋させて頂いたが、「Fiery Ferments」はマザーアースニューズのサイトで購入できる。

 

 

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Fermented Salsas for Preserving Peppers

By Kirsten K. Shockey | August/September 2017