小さな農園で 本当の利益

オレゴン州のこの半エーカーの自作農園は、利益についてはサイズは問題でないと明らかにしている。

 

カリーご近所農園 (Cully Neighborhood Farm)  はオレゴン州のポートランドにある都市農園の成功例です。PHOTO BY JOSH VOLK

 文:ジョシュ・ボルク (Josh Volk)

翻訳:ドレイパー愛

 

生産量を増やすためや農家としてまともで持続可能な暮らしをするために広い土地は必要ありません。アメリカ中で、都会の屋上や田舎の借地を利用して、良い土と良い水そして良い仲間がいれば小さなスペースでも作物を育てることができることを証明しようとしています。

 カリーご近所農園 (Cully Neighborhood Farm) は励みになる一例です。この成功した都市型農家は、オレゴン州のポートランドで1/2エーカー(2023平米)の都市農場を経営しており、会員が割り当て分の野菜を買い取るCSAプログラムを通して様々な野菜を販売しています。友人であるミッシェル・テヴリン (Michael Tevlin) とマット・ゴードン (Matt Gordon) は2010年に教会の所有地に付属していた都会にある一区画でカリー  (Cully)   を始めました。教会の役員会や教会の指導者との話し合いの後、ミッシェルは借地契約のための提案を書きあげました。その同意書では、カリーで働く人々が収穫の一部を教会の食料貯蔵庫へ寄付すること、教会の学校が生徒のために土地の一部を菜園として耕す手助けをすること、土地の全般的な管理をすることを条件にカリーの営業を認めるという内容でした。最初の年、1/4エーカー(1012平米)だけ土地を耕し小さな農家市場で販売しました。2年目には、ミッシェルとマットが教会学校の生徒のための農園教育プログラムの始動を手伝いました。それはカリー・ヤング・ファーマ―・プロジェクト (Cully Young Farmers Project)  で、イースト・ムルトノマの土壌と水源の保護地区から資金援助を受けていました。2期目が終わると、ミッシェルはカリフォルニアに引っ越しましたが、マットはこの農場を続けゆっくりと規模を拡大し様々な市場で試行錯誤を続けています。

 教育は二人の最初の構想にはありませんでしたが、その土地にとてもよくマッチし、地域のコミュニティーへの恩返しをしたいという二人の希望に沿ったものでした。プロジェクトは二人のそもそもの目的である地元で小さな都市農場をすることと、近隣にある多くの広い土地や庭を使い空閑地を有益に使用することを証明するという目的にピッタリ合致しました。これ以降で述べるのは2016年と2017年のカリーご近所農園の概要です。おそらく、コミュニティーを育てるという大きな望みを菜園家に抱かせ、途方に暮れている農家の人々に規模縮小も選択肢の一つであることを示すでしょう。そして、既に小規模農家に携わっている人々が素晴らしい仕事を続けるよう勇気づけることでしょう。

 

基本

 敷地の一角は子供の農園として別に運営されていますが、同じ農場によって支えられています。ほとんどの教育計画において生徒は子供の農園を使いますが、全ての参加者がシーズン中どこかの段階で農場全体を回ります。それぞれのクラスが春と秋の間、1週間に1度農園を訪れます。 

 小規模都市農場のCSA会員の数は増しており(2017年時点て60会員)、近隣の農家市場に商品を卸しています。CSA会員はほとんどの割り当て分を農場で受け取り、7人分のみ箱詰めされ近隣の非営利団体で働く従業員に送られます。CSAは5月中旬から11月の中旬までを活動期間としています。

 全ての労働者はパート労働者として雇われ、他の仕事に就くことや他の活動に参加することが許されています。5月から10月の繁忙期には、この小規模農場では一日に3人から4人が働き、月曜と木曜の週2日が稼働日となっています。稼働日はCSAの配達日でもあります。活動期間中、マットは週に20時間から30時間働きます。ほとんどが稼働日の2日間ですが、時には水やりのために他の日に働くこともあります。12月、1月、2月中は、マットは週に10〜15時間農場に関連する活動を行い、多少の手助けを必要とするため従業員を雇います。春には従業員の数が増え、秋にはまた減ります。

 市営の水はカリーご近所農園 の主な出費です。2016年には水道料金として約2,000ドルを支払い、使用可能な蛇口から出る水量が限られているため、従業員は多くの時間を水の供給場所を切り替えることにさかれます。

 農場の水は一般的に使われている庭用のホースの蛇口から供給されて、使用料が正しく測れるように(水道代が別々に払えるように)最初にサブメーターを通ります。そして水は19mmのポリチューブの中を通り農場のあちこちにまかれます。電池で作動するタイマーが水の使い過ぎを防止します。圧力制御器を使うことで用途に最適な圧力にしています。点滴灌漑(Tタイプ)とスプリンクラー(DripWorksから購入できるK-RainやWing Sprinkler)両方です。一度に2.3mの線を20本ほど並べ、一つの植床に2本の線を引きます(1つの植床の中心から隣の植床の中心までを122cmとする)。スプリンクラーは一度に4つから6つの植床に水やりすることができ、一度に2.3m分のスプリンクラーのみが作動します。夏の間は1週間に2度全ての植床に散水が必要です。

 この農園では、オハイオ州にあるローガン検査場 (Logan Labs) で土壌検査を行い、土壌の改善をするためにオーガニックカルク (Organic Calc) を定期購読することで土壌改善のアイディアを得ます。ここで得たアドバイスに基づいて、マットは窒素分を補うため羽毛粉、リンを補うために軟岩リン、カルシウムを補うために農業用石灰、カルシウムと硫黄分を補うために石こう、微量のミネラルを補うためにアゾマイトや昆布、またホウ素を補うために時折 Solubor を少々加えます。この全ての材料は地元でいくつもある小規模有機農家専門の農業用資材店で購入することができます。

 マットは植え付け前に植床に少なくとも6mm厚のコンポストを加え、販売用の作物用に使わない時には植床に被覆作物を植えます。マットは庭や台所から出る生ごみを分解している地元の会社からコンポストを買います。寒い時期の被覆作物には、クリムゾンクローバーまたは穀物のライムギとベッチを混ぜて使います。クローバーは10月の中旬まで種まきすることができます。10月中旬以降にはライムギとベッチの種をまきます。夏には、被覆作物としてソバやスーダングラスをまくのが彼のお気に入りです。

 

道具と基礎構成

 植床の準備。マットはブロードフォークと共にロータリー耕と30インチ (76cm) のパワーハローを備えたBSCウォークビハインド型トラクターを使います。土壌の健全性と構造を保つため、この小規模都市農場から回転式耕運機の使用を完全に廃止しました。マットは最初の耕作の後に発芽を助け雑草を枯らすためにサイレージタープ (silage tarps) も試しています。植床にたくさんの植物原料がある時には、土を砕いて均す前に草を刈り取ります。BCSウォークビハインドトラクターにBerta 34 インチフ (86cm) レイルモーワー (flail mower) を取り付けて使います。

 グリーンハウスと繁殖。マットは幸運にも農場から1ブロックのところに住んでおり、大きい裏庭と6m x 6mの加熱式ではないグリーンハウスがあります。グリーンハウスには電気が通っているため電熱マットや小さな発芽室を使っています。電熱マットの上には合計で10個の種まき用トレイが並べられ、発芽室には9トレイ置くことができます。土壌用の短針付きのサーモスタットで温度が制御されています。土壌の温度が設定温度を下回ると探針により電熱マットの電源が入り、設定温度を上回ると電源が切れます。

 グリーンハウスの植物の水やりは手と頭上に設置された自動潅水で行われます。マットは DripWorks から購入したDIG 電池式タイマーで作動するEin Dor スプリンクラーをぶら下げています。マットは作業する週の内に植物を観察し、天候や苗のニーズに応じて調節します。

 サーモスタットで温度制御された換気扇や通気口によって自動的に冷却され、夏には日除けのクロスや両側がくるくると巻き上げられるタイプのブラインドが室内の換気や冷却に役立ちます。

 土壌改良材。羽毛粉や石灰などの改良材を散布するために、マットは22インチ (56cm) 幅の散布型のドロップ式スプレッダーを使います。それぞれの植床に散布しやすく、また隣接する床には散布されなくなっているためとても使い勝手が良いのです。広範囲に散布する場合は、60ポンド (27kg) の肥料が入るプッシュタイプの散布機を使います。コンポストの散布には一輪車、シャベル、レーキを使います。

 播種と植え付け。Earthway の播種機はマットの直播きの第一の手段として役立っています。 彼は手で畑に移植を行いますが、トマトなどの植物のために大きな穴を開けるのに小さなシャベルを使います。 Earthway の播種機を使って植えるための線をひき、植え付け中に植床の長手方向に沿ってリールテープを引っ張って間隔を決定します。この小規模な都市農園でも、ルッコラ、ニンジン、サラダカブ、ラディッシュ、およびその他の作物に、Johnny’s Selected Seeds の6列播種機を試しています。

 作物の世話。トマト、キュウリ、ピーマンなどの高温が好きな作物は両脇がロールアップできる加熱式ではない 6m x 14m のトンネルの助けを借ります。畑では、霜よけや害虫防止にべたがけの Agribon AG-19(平方ヤードあたり1/2オンス [1平米あたり17g])を使います。

 マットはT形の杭を使ってトマトの格子棚を作ります。アーチ支柱のハウス内では、屋根の長さに合わせて吊るしてある1/2インチ (1.3cm) のコンジットまで麻糸をはわせます。トマトの苗が摘み取るには大きすぎるほど成長した時は、バイパスタイプのせん定ばさみで枝を切ります。

 耕作と除草には、ガーデンレーキ、いろいろな種類の鍬(一輪鍬 (wheel)、あぶみ型鍬 (stirrup)、T型鍬 (collinear) など)、草焼きバーナーを使います。

 収穫と流通。小規模農業のため、マットは様々な道具を使い、手で収穫することができます。レタスナイフ、折り畳みナイフ、バイパスタイプのせん定ばさみなどです。収穫した作物は Rubbermaid 製収納箱 (Roughneck storage boxes)(10、14、25ガロン)、Ropak製の重ねて保管するコンテナ、深さ9インチ (23cm) の球根の木箱 (bulb crate) などに入れられます。

 カリーご近所農園での洗浄や包装をする場所は、ツーバイフォーの木枠に再利用のバスタブとラスのトップをツーバイフォーの木枠で支えているスプレーテーブルが置かれています。5ガロン (19L) の手回しクランクサラダスピナーでサラダ用の緑の野菜を乾かします。必要な時に農産物を数日または数週間保存するために、予備の冷蔵庫がマットの車庫に置いてありますが、ほとんどが収穫したその日のうちに冷蔵庫で保存されることなく出荷されます。

 配達と販売。CSAの割り当ては農場で配布されます。会員がそれぞれの作物をどのくらいもらえるかが分かるようにラベリングされた容器に入れます。品目を量れるように、マットは11ポンド (5kg) のキッチン秤を持っています。

 

 事務所、情報伝達、記録。作物の計画にはマイクロソフトのエクセルを使用し、やることリストを印刷し、グリーンハウスの種まき、畑の植え付け、地図に用います。農場での記録には紙のやることリストや地図にメモを残します。植え付けや収穫の時期の地図への記録、収穫重量の日付や作物の種類には特に気を配ります。簿記や送り状にはクイックブックス (QuickBooks) を使います。カリーご近所農園での彼自身の労働時間の記録をするために TimeTrack というアプリを iPhone にダウンロードし使っています。

 

ジョッシュ・ボルク (Josh Volk) はアメリカ国内で20年にわたって小規模農場を経営しています。この記事は彼の著書「 Compact Farms: 15 Proven Plans for Market Farms on 5 Acres or Less」から引用したものです  。

 

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Small Farm, Real Profit

By Josh Volk |  October/November 2017

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カリーご近所農園の2016年度予算サンプル
自身のニーズを網羅できるように納得できる区分で予算を立ててみましょう。このサンプルには私だったら含めない項目(他の農家から購入する作物費)もあれば、私には必要だけれどもサンプルにはない項目(広告の印刷費)もあります。それぞれの農家の予算の区分は少しずつ異なりますが、このサンプルはとてもいい例になります。
MENJ_OctNov17_P34.pdf
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