藤のテープで椅子の座編み

マザーアースニューズ 自然 自給 DIY

昔ながらの技術で座面を修復して、お気に入りの椅子の物語に次の章を加えよう。

文と写真:ブランディ・クレメンツ(Brandy Clements)

翻訳:沓名 輝政

 

 すべての椅子にはストーリーがあります。私の大好きな椅子愛好家、ベノ・フォアマン(Benno Forman)は「椅子は文書であり、職人は何世紀にもわたるデザインや技術を保存する歴史家である」と言っています。家宝を修復するにしても、蚤の市で見つけたものを再生するにしても、椅子の座面を編むことは、楽しくて機能的な最終結果を得るための瞑想的なプロセスです。

 

作業プランの概要

 椅子を織る材料や模様はさまざまです。このプランでは、熱帯の木である藤から採取したリードスプリント[splint reed:テープタイプの座編み材料]を使います。スプリントは、木の内部の髄を 1/2 インチ(1.3cm)の短冊状に加工したものです。藤は、木製のスプリント(副木)に代わる一般的な素材ですが、木製のスプリントは使い勝手が悪く、入手も困難です。スプリントには様々なサイズがあり、色も生成りと染めたものがあります。

 今回の作業では、職人がヘリンボーンツイル(杉綾織)と呼ぶ模様を織ることになります。スプリントの織り方は、経糸と緯糸で構成されています。経糸とは、前後のシートレールに巻き付けられたスプリントのことで、これが織りのベースとなり、緯糸とは、経糸の上や下に織り込まれ、サイドレールに巻き付けられたスプリントのことです[英語原文には「これらの用語は紛らわしいので、ここでは経糸を『the warp』、緯糸を『the weaver』 と呼ぶことにします」とありますが、本和訳では、経糸、緯糸と呼びます]

 4 本の丸いレールが良好な状態の椅子が必要です。ほとんどのサイドチェアには、1/2 インチ(1.3cm)のリードスプリントが 2 巻き必要です。全体の作業には 2、3 日かかります。1 日目は 4~6 時間、2 日目は 1 時間程度で座面のシーリングを行う予定です。 

 

道具・材料

  • プラスチック桶やバケツ( リードスプリントのコイルを浸すのに十分な大きさのもの)
  • タオル
  • ハサミ
  • 留め具
  • ワイヤーカッター
  • ニードルノーズプライヤー
  • 水を入れたスプレーボトル
  • 小型ハンマー
  • マイナスドライバー
  • バターナイフまたは小型パテナイフ
  • 絵筆 
  • 1/2インチ(1.3cm)のフラットリードスプリントを 2 巻き
  • 1 インチ(2.5cm)の座張り用オープンセルスポンジ(小)
  • AWG 23 ゲージ(0.26 SQ)の亜鉛メッキ鋼線
  • セラック[ラック虫がアカシヤ属の木に寄生して分泌した樹脂質を精製した橙黄色の固形物]またはポリウレタン 

作業スペースと材料の準備 

 私は、椅子をテーブルの上に置き、座面が肘の高さになるようにして、立って作業するのが好きです。材料に付着する可能性のある床のゴミを取り除く。

 小さな桶やバケツに温かい水道水を入れる。紐をスプリントの 1 つのコイルに巻き付けるが、巻いたままにしておく。タオルを使ってスプリントが水に浸かるようにしながら、15~20 分ほど浸す。

 スプリントを浸している間に、テーブルの上にスポンジを置く。椅子を逆さまにして、スポンジの上に置く。座面の内側、レールから 1.3cm のところをなぞる。スポンジを切り取り、四隅をクリップで留める。椅子が完成したときに、レールや角に沿ってスポンジが見えないようにフィット感を確認する。スポンジを置いておく。(スポンジは座る人の体重を分散させ、座面を長持ちさせる。椅子が一般的な住宅の湿度以上の湿気にさらされる場合は、スポンジを使用しないこと)。

 浸したスプリントを水から取り出し、余分な水を桶に流す。スプリントの束の端を持ち上げる。短いものは外れるので、湿らせたタオルの上で脇に置いて、中・長のスプリントと分ける。長いものは 1 本残しておく。残りのスプリントを巻き戻し、乾燥しないように湿らせたタオルの上に置いておく。

 リードスプリントには、表側と裏側がある。どちらかを見極めるには、スプリントを U 字型に曲げてみる。繊維が飛び出していれば、それは裏側で、座面の内側に向ける。表側は滑らかで、表面に出す。両側が毛羽立っているように見える場合は、別のスプリントを用意する。リードスプリントは天然繊維なので、色や形に多少の違いがあるのは当前。

 

経糸

 経糸には長いスプリントを使用し、前レールと後レールに巻いて、後レールを覆うところまで巻き付ける。(前後のレールはサイドレールと高さが違うことが多いので、適切な張力をかけるのが難しいが、この工程では留め具が大活躍する。経糸がきつすぎると、織りにくくなる。緩すぎると、経糸が前レールに沿って飛び出してしまう。ほとんどの椅子では、上下の経糸の間隔は 4、5cm  が理想的。これは、経糸が完成したときに、2 つの層の間でスポンジを動かせるから。

 椅子を直立させ、自分の方を向いた状態で経糸をスタートさせる。用意しておいた長いスプリントの表側を見つける。表側を上にして、スプリントの端を前レールの上に掛けて、後レールを越えて一周し、座面の下に約 20~25cm 通す。スプリントを後レールに留め具で留めて、一時的に固定する。

 次に、スプリントの長い方の端を前レールの下に回して、座面の下にある端と合わせる。スプリントを一緒に挟み、椅子の後ろでスプリントが V  字型になるようにワイヤーで巻く(前ページの画像を参照)。ワイヤーを巻いてスプリントの端にぴったりと沿わせるが、ワイヤーの端はスプリントの中央にくるようにして、作業中に手を切らないようにする。ペンチでワイヤーを軽くつまんで、2 枚のスプリントを固定する。

 スプリントが足りなくなるまで、後レールの周りと上、前レールの周りと下にスプリントを巻き続ける。

 新しいスプリントを継ぎ合わせるには、まず古いスプリントを前レールに留め具で留めて一時的に固定。新しい長いスプリントを手に持ち、表側を探す。表側を下のテーブルに向かせ、前レールと後レールの中間地点でつなぐ。継ぎ足しは必ず椅子の下側で行う。新しいスプリントを古いスプリントの上に 15cm ほど重ね、ワイヤーで固定する。ワイヤーから 8cm 弱のスプリントを残して、古いスプリントから余分なスプリントを切り取る。

 後レールが埋まるまで巻き付けを続ける。もし、最後のスプリントを巻くのにスペースが足りない場合は、ハンマーとドライバーを使ってスプリントを叩き、スペースを作る。スプリントは重ねないこと。

 最後に、最初に行ったのと同じ方法で、最後の 1 本を前後のレールの中間でつなぐ。V 字型になるのは前側の近くになる。張り具合を調整する必要がある場合に備えて、8cm 弱残して余分なスプリントを切り取る。

 スポンジを経糸の間にスライドさせる。

 織り始める前に、経糸が前レールに対して垂直になるように調整する。長方形の椅子でない限り、前レールは後レールよりも幅が広いので、経糸の左右に露出してしまう。織り終わった後に、短いスプリントを使ってこのスペースを埋めるので、心配無用。。。

 

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