人類の叡智(その2)

  テスラモーターズ(Tesla Motors)社の電気自動車が自動車産業にもたらした変革について考える上で、同社創業者のイーロン・マスク(Elon Musk)をヘンリー・フォードにたとえる向きもあるだろう。しかし、このたとえは十分でないと思われる。というのも、マスクは太陽光発電による充電ステーションを2017年までに全米にあまねく配備しようとしているだけでなく、並行して、米国屈指の太陽光発電の請負会社を率い、さらに世界で最も有望な宇宙旅行会社も経営しているのだから。まるでヘンリー・フォードとジョン・D・ロックフェラーとアルバート・アインシュタインが三位一体となったような人物、それがマスク

  彼の人となりを表すのが、その卓越した先見の明。目指すところは単に製品を作ることにとどまらず、はるかに壮大だ。例えば、彼が掲げるゴールは洒落たテスラ車を製造することではない。目標はあくまで、最も効率のよいエネルギーを動力源に、今あるどんな車よりも優れた最高の乗り物を作ることであり、そのための充電ステーションの全国網を構築し、サービスステーションと販売店を全米各地に設営することにある。

  ソーラーシティ(SolarCity)社を創設したのは、1世帯でも多くの家庭が太陽光発電を利用できるようにするため。また、宇宙旅行会社では人類の火星への移住を目指している。さらに8月には、新たな事業を立ち上げることを公表した: これは「ハイパーループ(Hyperloop)」と呼ばれる、太陽光発電による高速鉄道で、減圧されたチューブの中を走行し、乗客を乗せてロサンジェルス-サンフランシスコ間を30分で結ぶ。

  もちろん、いずれの偉業もマスク1人の力で成し遂げてきたわけではない。彼の会社には何万人もの従業員がいる。彼の右腕となるデザイナーたちは美しい車や宇宙船をデザインし、会計士は帳簿を管理し資金調達を担っている。ライターはマーケティング用のパッケージを制作し、アーティストはロゴやイメージを生み出す。こうして完成したもの一つひとつが創意工夫の賜物なのだ。

  私がテスラ モデルSを初めて試運転した時に同行してくれたのが、テスラモーターズ コロラド店のデントン・ホルト(Denton Holt)だった。その名刺には「シニア・オーナーシップ・アドバイザー」という肩書きが刷られていた。大学を出たには、まさか自分が車を売ることになろうとは思いもしなかったという彼だが、今ではこの先も長く車を売っていきたいと考えている。

  「我が社ができることを全部見届けるまで、テスラを辞める気はありません」と彼は言う。また、将来、大半の車が太陽から生み出された電気で走るようになった暁には、テスラがこの地球上で最先端を突き進む自動車メーカーになっているはずだと確信している。彼のボスに負けず劣らず、ホルト自身も自信に満ち溢れている。卓越したビジョンは人を夢中にさせる。実績が伴えばなおのこと

  3年前に書いた拙著の中で、自分の農場で太陽光発電し、その電気を用いて充電した電気自動車に乗って通勤する、という未来像を描いた。その時点ではまだまだ先のことだと思っていたが、今日、すでに現実のものになっている。今なら間違いなくもっと壮大な夢を思い描けるだろう。

  マザーアースニューズが常に何にも増してフォーカスしてきたのは、より良い未来を創り出すことである。本誌は過去10年間で北米で最も急速に部数を伸ばした雑誌となった。これもひとえに、私たち一人ひとりが ― イーロン・マスクほどの先見性はないとしても ― より良い未来を創ることに強い関心を寄せてきたから。私たちは誰でも皆、程度の差こそあれ、より良い世界を思い描くことで未来を予見することができるのだ。

  環境問題への取り組みや人類の未来予想のこととなると、もう無関心ではいられない。皆さんは未来をもっと良くしたいと望んでいる。そして、日々、良くなるのを目の当たりにしている。 

 

Environmental Problems Are No Match for Human Ingenuity, Part 2

11/7/2013 10:08:00 AM

By Bryan Welch