持続可能な農業の5つの方法

持続可能な農業に打ち込む人たちは、その農業をどう定義し、どうあるべきかについて明確な考えを持っている。私たちは、次のような言葉で表す。「土地の肥沃化」、「水質保全」、「空気洗浄」、 「人への尊敬」、 「栄養強化」、 「動物への敬意」。これらの言葉が伴い、地球にやさしい農業のための素晴らしいリトマス試験になる。

 しかし、もう一つ他の基準、「規模は自在」、を追加したい。25年程前から、持続可能な農業に従事している人から彼らの会議で講演するようお願いされるようになった。その会議で、私が歌とダンスを終えた後、最必ず最初に聞かれる質問は、「ジョエル、それは素晴らしい。でも、拡大可能かな?」というものだ。

 それは、もっともな質問だ。当時、 Polyface Farm(ポリフェイス農場)は100エーカーの広さで、両親が1961年から所有していた土地だった。両親は農場を支えるため、外で仕事をしていた。しかし、私は専業農家になると決めていた。私たちは、家畜からたった200程の世帯に畜産物を届けていた。私たち家族が、唯一の労働力だった。配達はせず、レストランに納品はせず、顧客が事前に注文を入れ、予定された引き渡し日程で農場来る条件だった。

 それは、風変りで、家族経営規模で、非常に儲けが多く、そして、想像以上に楽しいものだった。かなりの作業量だった。確かに。だが、立派で、神聖で、家族中心の仕事だった。過去25年間でたくさんの変化があった。最近は、講演後の最初の質問で、よく「ジョエル、それは素晴らしい。でも、それは縮小可能かな?」

と聞かれる。

 

持続可能な農業の拡大

 25年間に何が起き、質問が変わったのか?私たちの農場が成長したことだ。現在は9つの土地を借りている。1,200エーカーの土地を管理し、豚が森(更に800エーカー活用)でドングリその他のご馳走を食べている。1,000頭の牛、1,000匹の豚、4,000羽の産卵鶏、25,000羽の食肉用若鶏、2,000羽の七面鳥を飼育している。配達運転手、マーケティングスタッフ、会計士、下請け、実習生、実習マネージャー、インターン、事務を含め20名のスタッフが働いていて、今では5,000世帯、飲食店50店舗、小売り店10店舗に商品を提供している。

 私がの情報を提供するのは自慢する為ではなく、私たちが経験して来た成長に焦点を当て、ほんの1つの持続可能な農場経営を大規模にできることを強調する為だ。私たちは大規模化することを心に描いたわけではなかった。ビジネスプランもなく、ただ起こっただけだ。

 しかし、私たちは大規模化したために、現在、周りからはビジネスとして見なされている。農業を始めた人や小規模農園主が私たちのモデルを見ながら、「私たちはどこに当てはまるのですか?」と質問してくる。私は規模の問題について熟考し、実のところ大規模化は成功した持続可能な農業の模範の判断基準であるという結論に至った。私たちの農場の成長の良い所は、ほとんど借金が必要なかった点だ。ちなみに農場施設は未だに価値がない。少なくとも銀行にとっては。

 説明しよう。「エッグモバイル」というあだ名をつけている最初の移動可能な鳥小屋は、6 x 8フィートの長方形で高さ3フィートだった。自転車の車輪付で、50羽の産卵鶏を収容可能。この鳥小屋は廃材でできていて、100ドル程費用がかかった。手で押して移動させるのに十分な軽さだった。電気柵はまだ開発されていなかった為、1/4インチのスチールロッドから、4フィート高、10フィート長の金網パネルを作った。3つのエッグモバイルを2セット作ったため、6角形の形になるようにエッグモバイルを配置できるようになった。

 それがとてもうまくいったので、次年、トラクターの三点リンクに取り付けできるように鶏小屋を再設計した。エッグモバイルとトラクターを連結することにより、牛の通った後に鶏をを走らせ、どこでも自由に歩き回らせられるようになった。鶏は牛糞だんごにまっしぐらで、引き裂いて、ハエの幼虫を残らず食べていた。何かいい結果が出そうなことを実感した。

 鶏小屋を三点リンクに取り付ける作業が大変だったので、翌年はもっと大きい鶏小屋を作り、トレーラーハウスの車軸の上に載せた。小屋の中の鶏は、100羽に達して大所帯になった。しかし、その次の年は、効率化することにして、小屋の数を増やし、鶏の数も増やした。その上、顧客には卵は好評で、もっと欲しいという声があった。

 現在、エッグモバイルをペアにして繋げ、それぞれに400羽入れて、800羽の産卵鶏の群れを作っている。6つのペアがあり、内いくつかはそんなに大きくなく、500羽の群れを作っている。補助的な飼料代と人件費以外に、雌鶏が一番の出費だ。若い雌鶏に置き換えるのに1羽5ドルかかる。卵1ダースを4ドル50セントで販売しているので、人件費等を差し引いた利益は1ドル程だ。

 

ポリフェイス農場での最良な実践方法

 エッグモバイルの設備費がほぼゼロな為、このやり方は小規模な裏庭農園の模範としては儲けが多い。その後の大きなエッグモバイルも安く作れ、需要の拡大に伴い増やせばよかったので、事業からの現金収入で拡大していくことができた。即日で1つエッグモバイルを完成させる必要はなく、私たちのスキルと需要の拡大に合わせて数を増やしていった。

 このやり方を工業的農業と対比させてみる。もし商品市場の為に卵を生産したかったとしたら、始めるのにケージ飼い施設にざっと100万ドル程の投資が必要になったことだろう。悪臭、廃物、動物福祉等の懸念をいったん除外したとしても、工業モデルは初めから莫大なお金がかかり、多くの人が参入を阻まれ、農場主は借金が必要となる。そのモデルは、規模を縮小できないので、小規模で始めることができない。

 大規模の場合のみ効率的且つ機能的な量産モデルは、資本が少ない新米者に参加する余地を与えない(エリートでさえも)。私が考える理想的なやり方は、参加したい人が誰でも参加できるものだ。

 逆に、量産モデルが小規模の場合のみ有効だとすると、存続できる事業としての信用を失う。空き時間を利用した生産は素晴らしいが、事業を小規模に制限すると農業システムの非主流に収まることが運命付けられる。私は小規模(とは言え、小規模生産者をたくさん集めるときちんとした生産量になるだろう)がとても大好きだが、フルタイムの給料を提供し、たくさんの家族経営者を支援できる仕組みも必要だ。

 持続可能な農業ビジネスの規模の拡大・縮小は、スムーズに上下でき、やる気と知識があれば誰でも参加して、生業にできるるべきだ。工業的農業だけが、たくさん人数を養うのに有効な経済アプローチだと言う仮説には反対だ。反対しつつ、持続可能な農業を立証するには、銀行をつぶさず、持続可能な農業生産者を借金に追い込むことなく、私たちの能力を拡大していかないといけない。

 ポータブルな設備。これには小屋、水、フェンス、家族経営に必要な特別な機器も含まれる。ポータブルなシステムは、安価なことが多く、農家から買った土地、近所で借りている土地に関わらずどこにでも設置できる。土地を購入するコストが無くなれば、農業を始める上で大きな助けになるだろう。この柔軟性が農業経営者間の協力を促進する。

 DIYの設備。基本的な建築、製作、溶接を進めるスキルがあれば、多額の資本金が必要な懸案を低予算で試せる。必要な作業を自分でやる場合と誰かを雇ってやってもらう場合の先行投資の違いが、利益の有無につながる。

 大きな建物よりは部分的増築。大きな建物は小さな建物より坪単価が安い。その規模の経済性が、より大きなものを建てるよう私たちをかりたてるが、初期には必須。もし、事業拡大を、大きなものより部分的増築で実現できれば、初期の巨大な建物も経済的な魅力を失う。どれほど大きなものを建てられるか構想するよりも、順調に機能と利益を残しつつどれだけ小さくできるかを考える。もし、最小単位で機能すれば、それをもっと増やせば良い。

 多目的な設備。もし、機械を購入したり、常設の建物を建てたりしないといけなくなったら、それらが複数の目的を果たせるか確認する。一つの目的しか果たさない物を買ったり建てたりしてはダメだ。道具を付けることによりトラクターを多機能に使う。単一機能専用の機械を購入してはいけない。

 使うこと。機械や建物を働いていない状態にさせないこと。減価償却は、使われているいないにかかわらず起こる。もし所有物があるなら、使いなさい。土地、機材、機械はできるだけ長く借り、購入にかかる経費を正当化できるだけのvolumeが整ったら最後の手段として購入すること。シームレスに、大規模から小規模、小規模から大規模へ移行できる持続可能な農業モデルは、最善の農業実践方法を意味する。

 

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5 Ways We Can Scale Sustainable Farming

By Joel Salatin 

February/March 2015