自分の土地で風力発電を見極める

風力発電を考えているなら、時間をとって風車を立てる可能性がある場所を見極めよう。

 

 

左から右へ: アップウィンド  HAWT(最も一般的なタービン)、ダウンウィンド HAWT(珍しいが効果的)、一般的な VAWT 2つ。Photo by James Provost

文:ポール・シェッケル (Paul Scheckel)

翻訳:市岡 秀俊

 

 長い間、私たちは風車を利用して、風を様々な仕事に活用してきました。かつては比較的低い支柱に、ブレードがたくさんついた大きなローターを取り付け、風で生み出された動力と回転力を使って穀物を挽いたり機械を動かしたりしていました。1930年代に入ると農村に風力発電機が広まり、送電線のなかった地方に電気をもたらすようになりました。このころの発電機の発電電圧は低く、主にバッテリーを充電し直流(DC)の家電を動かすために使われました。また、水を汲み上げるポンプに特化したものもありました。

 今日では少数ですが、系統連係用風力発電タービンとオフグリッドのバッテリー充電用のタービンの両方を製造しているメーカーがあります。一般に「タービン」とはブレードと発電装置の組み合わせのことを意味し、一方で「発電機」は特に電気を起こす部分を指します。

 最新の風力発電機では、高効率の発電機やオルタネーターと、洗練されたデザインの新素材のブレードが用いられ、発電効率が最大になるように設計されています。それ以外にも、屋根に取り付ける小形の風車から垂直軸で回転するタービン(VAWT)まで、多種多様な製品があります。このような斬新なデザインも有望で今後が楽しみですが、現時点で効率面で優れた実績を誇るのは昔ながらの水平軸回転のタービン(HAWT)です。以下、HAWTを対象に風力発電の基礎について説明します。

自家製風力エネルギーを使う

 発電機に取り付けられた、2、3枚からなるプロペラのようなブレードが風を捉えて回転して電気を作り出します。タービンは30メートルかそれ以上の高さの支柱に設置し、より速くて強い、乱れの少ない風を受けられるようにします。

 風力エネルギーを利用できそうな場所はたくさんありますが、立地条件であったり季節であったり一日のうちの時間帯であったり、様々な要因が風力利用に影響を与えます。高度や見晴らし、地形、木々やその他の障害物の有無によっても、使える風力エネルギーは変わってきます。
 小型のタービンの多くは「アップウィンド型」です。これは、ローターが風上方向を向き、尾翼がローターから見て風下に位置するように回転するタイプです。これに対し、キングスパン社の製品は注目に値する独特のデザインで、ダウンウィンド型で風下を向き尾翼がありません。ダウンウィンド型のタービンは風変わりに見えますが、性能面でアップウィンド型に負けないくらい優れています。

 発電所規模の大型の発電機や住宅用の系統連係システムでは交流(AC)が作られますが、直流(DC)の風力発電機も多く、バッテリーに蓄電してオフグリッドシステムとして利用されます。いずれの場合でも実際に風力を利用するためには、管理と調整が欠かせません。家庭用風力発電機の場合、ピーク時の発電量は50ワットから10キロワットを超えるものまで幅があり、コストはピーク時の定格出力1ワット当たり3ドルから5ドルになります。

 風力発電機のピーク時定格出力は装置の大きさや容量を知る参考にはなるものの、異なる機種を比較するのにベストとは言えません。なぜなら、時々刻々変わる風のエネルギーを考慮していないからです。

 どんな風力発電システムを購入し設置する場合でも、その前に必ずその場所で得られるであろう風力の見積もりをし、そこからどのくらいの発電量を目指すかを明確にすることが大事です。そして、立地や仕様書をもとに、どの機種が希望に沿うかを調べましょう。いくつかの候補に絞れたら、コストや品質、丈夫さ、騒音レベル、発電量などを比較してください。それから、各メーカーの保証内容についてもしっかり確認しておきましょう。これはそのメーカーが自社製品にどれほど自信を持っているかを知る目安になります。


風力エネルギーを見積もる

 空気の流れから得られるエネルギー量は、風速と受風面積、それに空気密度で決まります。設置場所が決まって機器も決まれば、そこで得られる風力エネルギーは自分で計算できます。その際には、計算で使う単位を揃えておくこと。


受風面積がすべて

 タービンの性能を見積もる上で最も重要な要素は受風面積です。受風面積はローターの回転でブレードが描く円の面積で、平方フィートや平方メートルで表されます。メーカーの仕様書にも記載されていますが、ローターの直径がわかれば円の面積の公式を使って自分で求めることができます:


 受風面積 = 円周率 x 半径の二乗


 例えば、ローターの直径が10(単位は長さの単位のいずれか)だとすると、半径は5になり、受風面積は 3.14 x 52 = 78.5 平方になります。

 受風面積はローターの直径が大きくなると急激に増えます。10のローターと12のローターとを比べてみましょう:


 3.14 x 62 = 113 平方


 この例からわかるように、ローターの直径が20パーセント大きくなると、受風面積は44パーセント増えます。ローターのブレードの長さが倍になると受風面積は4倍になるといった具合です。同じ風の条件であれば、単純に受風面積が大きくなるとより多くのエネルギーを作ることができます。スライドショーにあるグラフは、受風面積が倍になったときに出力も倍になることを示しています。

 

空気密度

 空気密度は立方フィート当たりのポンド数や立方メートル当たりのキログラム数で表されます。高度や気温、湿度が上がると空気密度は下がります。メーカーが示す出力値は、15℃の標準的な気温で海面と同じ高さの場合のものです。

 空気密度は風速に比べると得られるエネルギー量に与える影響は小さいですが、基本的に低地の冷たく乾燥した風の方が山地の温かく湿った風よりも多くのエネルギーを生み出します。ほかの条件が同じであれば、300メートル高くなると空気密度はおよそ3パーセント小さくなります。

 

風速と出力

 風速は時速〇〇マイル(mph)や秒速△△メートル(mps)で表されます。時速1マイルは秒速0.447メートルに相当します。逆に秒速1メートルは時速2.24マイルです。

 風力は速度の3乗に比例します。そのため、風速が倍になると得られるエネルギー量は8倍になります。風速のわずかな変化でも発電量には劇的な変化をもたらします(スライドショーの「出力ー風速相関グラフ」を参照)。実際のタービンの出力は受風面積や発電機容量により様々ですが、この風速と出力の関係は常に成り立ちます。

 注意:多くのタービンは慣性のため、概ね秒速3から4.5メートルの一定風速になるまで回転を始めません。これをカットイン速度と言います。秒速3.5メートル以下の風は意味がありません。また、秒速13メートル以上の暴風の中、発電を続けるとタービンを破壊してしまいかねないので、ほとんどのタービンは強風に対して速度を抑えるなど保護機能が働くようになっています。秒速2.5メートル以下の性能を謳っている製品は疑ってみた方がよいでしょう―そんな低速で発電なんてできませんから!同様に、秒速13メートル以上の強風時の性能を売りにしているメーカーは、強風で壊れても知りませんと言っているようなものなので注意しましょう。


風力エネルギーを計算する

 ここでいうエネルギーは、ワット時で表され、時間内に生み出された電力(ワット数)の総量です。風力発電で生成されたエネルギーは4つの要素で決まります:

 

1. 支柱のある場所の平均風速 

2. 支柱の高さ(高いほど速くて安定した風を受けることができます)。

3. 風速の頻度分布。風速の範囲ごとに年間を通じて何時間吹いたかをまとめたデータのこと(この風速の範囲のことをビンデータ (bin data) と呼びます)。 

4. タービンの出力曲線。風速に対して発電機が発電する電力を示したもの。


 風力は次の式で求められます:

 風力 = (空気密度 ÷ 2)  x 受風面積  x (風速の3乗)

 

出力曲線とエネルギー曲線

 メーカーは自社の製品が様々な風速に対して発電できるワット数を示す出力曲線を公開しています。このグラフはどのくらいの強風の際に保護機能が働き始め、どのくらいまで耐えられるのかを見極めるのに役立ちます。例えば、出力曲線が秒速11メートル以上で急激に落ち込んでいれば、タービンの高速回転保護機構が働き、ローターが自動的にたたまれるか風を受けない向きに回転して、発電をやめるのがその風速だと考えてよいでしょう。出力曲線の小さな起伏や平らになっているところは、ブレードが回転数を上げたりローターが最高速度で頭打ちになる風速を示していると読み取れます。

 出力曲線より役立つのがエネルギー曲線です。これは本当に重要な情報で、設置場所でのタービンの価値を見積もる際に必要になります。エネルギー曲線は、タービンの設置場所の平均風速に対して、ある期間に何キロワット時のエネルギーが生成できるかを示しています。

 

風速を見積もる

 最大出力だけを見て、どの風力発電機が優れているかを判断したくなりますが、この数値は特定の風速で測った、メーカーにとって都合の良い測定値に過ぎません。あるメーカーは秒速10メートルの場合の出力を書いているし、他のメーカーは秒速12.5メートルで測定していたりします。強い風の方が出力が大きくなるので、12.5メートルの風速で測定した発電機の方が良く見えますが、この定格出力値が実際に生成されるエネルギーをそのまま示すというわけではありません。。。。(つづきは定期購読にてどうぞ) 

 

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August/September 2018 



By Paul Scheckel