ココナッツコイアは世界を救えるか? 

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この地味なココナッツの副産物は、ピートモスに代わる環境に優しい代替品であり、その他にも多くのものを提供する。

 

文:ケニー・クーガン(Kenny Coogan)

翻訳校正:沓名 輝政

 

グローバル・サステイナビリティの学位を持ち、食虫植物の育苗園を経営する者として、私は当初、ピートモスに比べてココナッツコイアを園芸に使用することに疑問を感じていた。COVID-19の大流行時には特にそうで、大型量販店の棚からピートモスの俵が消えた。

 保水性が高いため、ピートモスは市販の培養土や育苗土の多くに含まれている。 また、食虫植物や、ブルーベリー、ツバキ、ツツジ、トマトなどの酸を好む植物の土壌改良材としても使われる。

 ピートモスは、部分的に分解された植物が湿地(ピートモスがある場合は「泥炭地」と呼ばれる)の底に堆積して形成され、何千年もかけて徐々にピートモスに変化する。 泥炭地には酸素がないため、植物が完全に分解されることはなく、二酸化炭素が大気中に放出されることはない。 その結果、泥炭地は森林よりも多くの二酸化炭素を大気中に蓄え、地球規模の「炭素吸収源」として認識されている。 泥炭地は地球上の陸地の約3%を占め、世界の泥炭地の大部分は北半球の北方地域と温帯地域にあると考えられているが、コンゴ盆地や東南アジアなどの熱帯地域、さらには海洋性の南極地域など、すべての大陸で泥炭地を見ることができる!

 ピートモスを使うことの問題点は、持続可能ではないということだ。 泥炭地を伐採し、ピートモスを採取するプロセスは、泥炭地特有の生物多様性を破壊する。 さらに、ダメージを受けた泥炭地は炭素排出源となり、気候危機をさらに悪化させる。 こうした環境問題から、イギリスでは今年から園芸用ピートモスの販売が禁止されている。

ココナッツが救世主?

 ピートモスに代わるものとして、アフリカやアジア諸国でよく使われているのが、ココナッツ産業の副産物であるココナッツコイアだ。 ココナッツコイアは、ココナッツの外皮から採取された繊維で構成されている。 ここ数十年、ココナッツコイアはペット爬虫類の業界では寝具の代用品として宣伝され、最近では園芸におけるピートモスの代用品として宣伝されている。 しかし、私が学んだように、これはココナッツコイアが提供できることのほんの始まりに過ぎない。

 マシュー・グレクセック(Matthew Grecsek)は、農業をベースとしたクライメートテック事業を展開するグローブ・エコ(www.Globe-Eco.com)の創設者兼CEO。彼はフィリピンにココナッツ・プランテーションを所有し、ココナッツコイアをテーブル、椅子、床、壁に加工している。森林破壊を食い止めるため、ココナッツコイアを木材の代替品に変えるプロセスを持っている。

 グレクセックは、泥炭地から水を排出する際、埋め込まれている多くの炭素も撹乱することを理解している。「ココナッツコイアの場合は、いずれにせよ廃棄物です」とグレクセックは言う。

 「木はすでに炭素を吸収し、植林の材料に変えていたのです」

 「ココナッツの木はある高さまで成長すると、それ以上成長しなくなります」とグレクセックは続け「光合成と二酸化炭素の除去はすべて果実に費やされ、果実は地面に落ちて廃棄物となるか、枝が落ちるのです」

 「根系、葉、茎に炭素を蓄える普通の木と比べてみてください」「木は成長するにつれ、どんどん大きくなります。しかしココナッツの木は、年に14回葉を落とし、年に2回実をつけます」

 「つまり、莫大な量のバイオマスを生み出すということです」「これは建築資材や植栽資材の原料になります。このようにする木は地球上で他にはありません」

 ココナッツの殻から植栽資材への最初のステップは、植物材料を乾燥させること。グレクセックの推定によると、含水率は60%程度で、彼の会社では殻をハンマーで叩いて水分を取り除く機械を使っている。工程によって、一般的に「ココナッツコイア」と呼ばれる繊維状のものと「ココナッツ・チップ」や「マルチ」と呼ばれる大きな破片が残る。

 グレクセックによれば、殻はココナッツの重さの約30%を占めるという。「ココナッツの産地では、殻はゴミとして捨てられ、燃やされるのが一般的です」とグレクセックは言う。グレクセックは、ココナッツの殻を燃やすことで毎年約1000万トンの二酸化炭素が発生すると推定している。彼の会社では、その繊維を建築材料として標準化された製品に変えている。その建材は100年はもつはずなので、グレクセックと彼のチームは大気中の炭素除去量を計算することができる。

 グレクセックの会社は現在、XPRIZE Carbon Removalコンペティション(www.XPRIZE.org/Prizes/CarbonRemoval) に参加している。このコンペティションの目標は、人類最大の脅威である気候危機との戦いに取り組み、地球の炭素循環のバランスを取り戻すことだ。最優秀賞受賞者には、ビジネスや組織の発展のために1億ドルが贈られる。

 グレクセックは数字を重視している。「環境からどれだけの二酸化炭素を除去し、どれだけのコストをかけるかということです」と彼は説明する。彼は年間約3万トンの二酸化炭素除去を目標にしている。しかし、二酸化炭素の除去だけが彼の関心事ではない。。。

 

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