農家の仕事に終わりはない。ジョエルが将来にむけた壮大な夢の達成を心に描く。
翻訳:浅野 綾子
私は変なじいさんになりつつあるかもしれないが、頭の中には将来の夢がまだどっさりつまっている。マザーアースニューズの編集者たちがこの夢のいくつかを記事にしてほしいと言ってきた。そこでこの記事では、私が将来叶えたい夢を 10 個ご紹介することにしよう。
1️⃣ 農場のパートナー企業を増やす。「何? 1 ダースじゃ足りないのか?」って?まだまだだ。表面をかすってもいない。自分たちは自律した生産事業主と組みたいと思っている。農場には土地も、堆肥も、機材も、マーケットも、人手もある。ポリフェース[ジョエルが運営するポリフェース・ファームのこと]は放牧で育てた家畜で知られているが、自分たちはジャガイモも、ブラックベリーも、ズッキーニも食べるんだ。
どんな企業でも成功するには情熱が必要だ。動物と野菜の両方に同じだけ情熱をもっている人はほとんどいない。こうやって 2 つに分けてしまう傾向は、一年生植物と多年生植物にさえ及んでいる。協同して利益を得ながら、互いに補完しあえる企業を発展させていくことは、コミュニティの土台だ。これがレジリエンスと安全保障の確立にいたる道筋だ。
顧客の買い物袋をパンパンにさせることができれば、大口客へと育ってくれて、「ワンストップ農場」である自分たちへの依存度が増す。果樹園に完璧な場所をいくつか選んであるんだ。果樹園の草を絶え間なくきれいにしてくれる家畜や、剪定係になってくれるピーチク鳴く鳥たちもいる。ブドウ園なんてどうだろう。特産ベリーもいいんじゃないか。こうしたもののほとんどはあるのだが、農場仲間全員に食べさせられる程はなく、もっと欲しいという多くの顧客もいる。だからパートナーを探しているんだ。
2️⃣ キッチンカーをスタート。実のところ、これを今年の夏にはじめるかもしれないんだが、長い間付加価値の高い飲食スペースに参入したいと思っていた。多くの食品チェーン店に自分たちの生産品を持ち込めるようになればなるほど、売上高のプレッシャーは低くなっていく。
もっと多くの食品チェーン店から収入を得られれば、収入の安定に役立ってくれると思う。祭りや野球の試合、ケータリングイベントへと動ける移動型飲食ブースができれば、自分たちのブランドを生鮮食料品業界に売り込んでいくことができる。マーケティングの視点から、ポリフェースの農場チームは顧客をみつける確かな方法を 2 つ心得ている。お客さんに農場に来てもらうか、自分たちが育てた食べ物をたべてもらうかだ。お客さんは見るか、食べるか、どちらかが必要だ。一度そのいずれかを体験すればすっかりファンになってしまう。私がまだマーケティングについて 考えなければならないということを、想像できない人たちがいる。もちろんまだ必要さ。毎日、いつもだ。自分の私的「黙示録の四騎士[新約聖書のヨハネの黙示録に出てくる4人の騎士。疫病、戦争、飢饉、死を象徴している]」がいつも脅してくる。離婚、死、公民権剥奪、それから関節脱臼。マーケティングをやめる日は、ビジネスが終わる日だ。
3️⃣ 「きれいな食べ物でファーストフード」に着手。これは 20 年間夢見ているから、新しい夢ではない。マクドナルドが今ある場所全部で、地元産の無農薬の甘いポテトフライとコンブチャに、グラスフィニッシュ [生まれてからずっと母乳と牧草または干草で育った牛] の牛肉バーガーをパッと手につかみたいと思わないか。これは大きな夢だ。でも夢を書き出しもせず、誰にも話しもしなければ、実現することは決してない。だからいつかこの第一号店をはじめられるようにと願いながら、この夢を語り続けている。
4️⃣ 農場という陸上基地をフル稼働。自分たちの農場には、マーケットがあれば明日にでも生産を倍増できるインフラも、専門技術も、資源もある。マーケットに働きかけているが、いわば操舵室のような生産設備に実際にテコ入れするのは、現実にお金が入った時になる。どこかの時点で、もっと多くの人口割合が「本物」の食べ物を受け入れる必要がある。私は工場式生産のチキンや、膨大な量の乳製品のような偽のオーガニックについて話をしているわけではない。バーガーキングがこれから数年後に平飼い卵を使用する計画を公表した時、なぜ誰も大声で叫ばないのか。「平飼い[ケージはないが、農家 1 人で平均 2 万羽を小屋で過密に飼育し、卵を産ませるために狭い箱に入れている]の卵よりもずっといい卵を生産しているポリフェースが 10 分も行けばあるじゃないか。何で今日からポリフェースに切り替えられないんだ?」と叫ぶはずもない。報道機関も株主も、チェーンが 10 年のうちに平飼いにするという、つまらないなまぬるいことに熱狂してしまうんだな。
真に本物の食べ物を生産するポリフェースの生産能力は極めて高い。私は消費者が本物をほしがるのを待っている。本物の卵を「今すぐ」購入できない企業の称賛をやめるのを待っている。ポリフェースの生産能力をフル稼働させなければならない。
5️⃣ さらなる本の執筆。頭の中で飛んだりはねたりしている題名がたくさんあり続けている。今年発売予定なのは 2 つあって(両方とも共同著作の大作だ)、次の本(になると思う)の題名は「自営農の家畜ハンドブック」のようなものになるだろう。読者のみなさん、この題名をお披露目したのはこれがはじめてなんだ。今から 30 年以上前にはじめて講演を始めてから、話し終わるとよく人からこう言われたものだ。「まあ、それは賢いね。だけど、どうやって規模拡大するんだ?」今では話終わるとこういわれる。「うーん、それはすごい。でもどうやって規模を小さくするの?」小さな、そして今では大きな農場を経営してみて、大規模と小規模の間をスムーズに動くのに何の問題もない。でも、ほとんどのみなさんはこの変化ができない。400 ヘクタールに 500 頭の牛ではなく、1.2 ヘクタールに 2 頭の牛しかいなかったら、適切な放牧管理はどのようなものか。健康と衛生管理についてはどうか。最近ポリフェースの原則を 2~4 ヘクタールの場所に応用すべく多くの時間をかけている。この本でそれができるだろう。私はいつもみなさんから聞かれること、関心の強いことを本に書いている。この本も何ら変わりはない。
もっとも、別の本の見出しにはマーケティングやおもしろ話も入っている。「これは本当に自分に起こったことだ。今考えればおもしろいが、その時は面白くなかった」(たとえば、警察から電話が来た時はひどい日になるのはおわかりだろう)。数年前、小説に盛り込む 4 章を書いて、あきらめた。フィクションは難しい。ノンフィクションなら何も作り出さなくていい。フィクションだとすべてを作り出さなければならないから大変だ。さあ、どうなるかな。
。。。(全文はバックナンバーを購入してお楽しみください)
たのしい暮らしをつくるマザーアースニューズ
10 Dreams for Future Farm Projects
By Joel Salatin| April/May 2020
コメントをお書きください