薪暖房を選ぶとき|クリーン、再生可能、効率的

家庭のみなさん、薪による暖房は、スマートな、持続可能な方法。あなたの家で暖房に薪ストーブを使うための利益とコストについて学ぼう。

エネルギー資源としての薪暖房の重要性は小さな街や田舎道を車で抜けると見られる。庭にうずたかく積み上げられた薪の長い壁は薪による暖房がいまだ利用できる選択肢であることを示している。

 

 

 毎年冬には薪による暖房を選んだ人たちは時間をかけて丸太を玉切りする。春にはこれを薪にして並べて積み上げ、お日様の光で乾かすのだ。秋には薪を家の中に入れ、再び積み上げる、そして冬には次の冬に備えてまた木を切りながら薪で暖を取るのである。

 なぜ、森林地区のとても多くの家庭が、薪の暖房を選ぶのか - かざばり、ごちゃごちゃし、体力勝負の燃料源なのに?薪は家庭で作れるエネルギー源で家計にもやさしく、地域経済を活性化させ、長く続く伝統を守ることができるのだ。

 

薪暖房|賛否両論 

厳しい経済状況の中で多くの人々が薪暖房に切り替えている。2012年10月の米国エネルギー情報局データではこの年2600万以上の世帯が薪で暖房したという。これは前年比3%の増加である。

 にもかかわらず、薪については、エネルギー政策議論に入っていない ― ほとんどの政治家は、薪利用のメリットの話し合いやその戦略的な利用についての計画をしていない。(しかしながら産業用としては薪のエネルギーはいくらか注目されるようになってきた。ディユーク大学の最近のレポートでは最新の薪燃焼技術を使えばクリーンな発電ができると指摘している。レポートではこの再生可能エネルギー資源はアメリカにおいて、現状の水力発電よりも多くのエネルギーを供給するものにすぐに発展させうるものだと指摘している。詳細は「Cleaner Energy From Firewood【薪によるクリーンエネルギー】」を参照。オンライン http://goo.gl/7zR8d)

 環境汚染について考えるとき、薪暖房は多くの注目を集める。薪を燃やしたときの煙は北アメリカ中の小さな街や大きな都市で実際のところ問題を引き起こしている。数多くの活動家たちが薪燃焼による大気汚染を理由にコミュニティーでの薪の使用を禁止するよう訴えている。一部の環境保護主義者は、薪使用の増加が森に損害を与えると警告している。その結果、薪の利用はそのメリットよりも解決すべき問題の方がクローズアップされるようになった。

 薪は多くの政府や再生可能エネルギー擁護団体でさえ心配を拭い去ることができない再生可能エネルギーなのだ。私の意図は、薪利用による環境影響を矮小化させることや他のエネルギー源による汚染を強調して問題をすりかえようとすることではない。しかしながら、薪の燃焼技術はこの25年で大きく改良されており、私は薪利用についてもまだエネルギーの議論の中に入れるべきだと考えている。例えば、最新の薪ストーブにすることで家庭からの煙の排出は実に90%も減らすことができる。

 

薪ストーブの熱効率 

古い従来の薪ストーブでは平均で少なくとも1時間当たり25グラムの煙微粒子(ほぼ1オンス)が排出される。古い、屋外用の薪ボイラーは大体1時間当たり50~100グラム以上排出する。その一方で、環境保護局(EPA)は認定された薪ストーブは1時間当たり7.5グラム以上排出しないよう規制している。この規制が1988年に成立して以来、認定ストーブの平均排出量は企業間の競争と技術の革新により着実に減少してきている。今日ではほとんどの新しいモデルの薪ストーブは1時間当たり2~4グラム程度しか排出しない。目に見える煙の減少と同様に注目すべきは新しいストーブがエネルギーが豊富な煙を無駄にせずに燃やし切ることによって熱効率が向上したことだ。熱効率は薪の持つエネルギーに対する家の中に取り込まれる有効な熱量として表される。古い薪ストーブの熱効率は、(鋳鉄製のストーブや炉で)35%から(1980年代の機密型ストーブで)55%程度である。ほとんどの屋外用ボイラーは50%未満の熱効率である。一方で認可された薪ストーブは平均で70%の熱効率であり、少なくとも60%以上の効率になっている。次世代型のEPA認可の屋外ボイラーもまた高い熱効率となっている。(EPA認可ストーブの利点についての詳細は『Woodstove Buyer’s Guide(薪ストーブ購入ガイド)』を参照。 http://goo.gl/h45D6)

 

再生可能エネルギー資源としての薪 

最近、化石燃料から排出される二酸化炭素による気候変動に対してどのように対処すべきかという議論が多くなされるようになってきた。しかし、文字通り薪は木が育つことでできるものであるが、再生産を行う植林地の能力は再生可能エネルギー資源の1つとして の位置付けが認知されていない。木は重量の約半分が炭素である。しかしながら燃料としてこれを使った場合、ほぼカーボンニュートラルである。これは木が育つときに二酸化炭素を吸収するからだ。森で木が倒れて、朽ちる時に排出するのと同じ量のC2が、熱利用で燃やされる時に放出される。

 薪の持つ相当なメリットにも関わらず、すべての世帯が薪暖房によって暖房費の高騰とグローバルな温暖化の問題を解決できるわけではない。人口密度が高い都市では他の暖房に比べて薪暖房は排出量が多く、すでに工場や自動車からの汚染がひどいため適してはいない。しかしながら北アメリカの大部分は比較的人口密度が低く、豊かな森がある。このような地域は薪暖房が理ににかなっているといえよう。森は持続可能な形で利用されなければならないが、その方法はよく知られている。選択的な伐採、低密度での立木管理、低質な木の間伐、存在するすべての品種の種木を残すこと、野生動物の住処として枯れ木を残すこと、などである。

 

薪暖房のコストとメリット 

経済学者たちはエネルギーの貨幣原価に注目している。しかし、正味のエネルギーコストは環境コスト、貨幣原価の根底にある理由を知る手がかりとなる。「正味のエネルギー」とは取出して、加工して、市場にエネルギー商品として搬送された後に利用できたエネルギーの量をいう。自然の薪は加工する部分が少なく、加工自体も人の手でできるので他のエネルギーと比較して正味のエネルギー効率が高い。このことは将来の薪の価格の安定化にとってよいことだ。薪の価格の安定性は化石燃料とは異なる。化石燃料は簡単に入手できる産地が枯渇していくにつれて小売価格は上昇し、正味のエネルギーは減少するからだ。正味のエネルギーの減少は石油価格が今もとても高い大きな理由だ。正味のエネルギーについて詳しくは「How Much Energy Does It Take to Get Our Energy?【エネルギーを得るのにかかるコストはどれくらい?】」をご参照されたし。従来の燃料のコストの高騰を考えると、大都市の中心から離れたところにあり、森へのアクセスが容易な家庭は薪暖房にすることで暖房費を下げることができるだろう。薪で暖房する家庭は自分で作業を行えばさらに費用を下げることができる。気候帯や他の利用できる燃料にもよるが、薪を自分で生産する家庭は年間2000ドル以上節約することができるだろう。さらに、目に見えないお金に換えられない利益がある:

・ガラスの扉越しに見える炎が作り出す独特の雰囲気と美しさ。

・リビングに設置された薪ストーブが放つ特別な暖かさ。

・労働と創造性を発揮して家庭の燃料を自給自足する技を習得する時、大いに感じる満足感。

・エネルギー価格の安定という点と、停電時でもエネルギーを得て居心地良いままでいられるという両面での安心感。

しかし、恩恵をあずかるにはいくらかのコストが必要だ。

・新しい薪ストーブ、必要であればあたらしい煙突への投資

・家の外には冬の間使う薪をストックするためのスペースが必要

・家の中にも数日間使えるだけの薪を置くスペースが要る

・薪を割り、運んで、積み上げる体力と筋力、また、他から木を探したり、買ってくる努力も必要

・燃料を確保し、火の面倒を見て、定期的なメンテナンス、例えば木のチップ、皮、灰の処理などをする時間

 

地域の燃料の購入

薪を生産し、販売する植林地のオーナーは雇用と地域 の収入を生み出す。生産者が持続可能な森林経営を行 うのであれば、植林地の質と価値は上がっていくだろう。 近所から冬の燃料を買うのであれば、地域の中でお金が回っていくので経済活動は 相乗効果が得られる。これにより地域の収入が 増加し、雇用が生まれる。  多くの人々は薪が人類最初の燃料であると認 識しているだろう。しかしながら比較的近代にそ の支配的な地位を失ったことはあまり知られてい ない。木は石炭が一般的に使用されるようになっ た 20 世紀中ごろまで北アメリカの多くの田舎で 唯一実用的な暖房燃料であった。  今日の薪による暖房は過去に比べて非常に よくなっている。平均的な薪ストーブでも熱効率 は当時の倍の70%程度になっている。最新の ストーブであれば濃く立ち上る青黒い煙を生じる ことはない。煙突の技術、安全性も向上した。 (複雑だとしたら)明確な安全基準もあり、訓練 された専門家が規制に従って家主をサポートし ている。  便利なタッチスクリーン、ポケットサイズのコン ピュータ、温湿度が調整された環境といった世 の中で、薪暖房はあらゆる点で粗雑で、ベーシッ クな、そして断固として実践的な物だ。責任感 のある薪燃料の生産者たちや消費者たちは温 室効果ガスの低減や再生可能エネルギーの使 用を進める活動に参加している。その結果、か つてないほど高値の化石燃料の供給が減って 行く圧迫感から開放されるのだ。薪暖房は原子 炉や山を崩していくような石炭鉱業と比較して エネルギーを取り出す方法としてはマイルドな 手法だ。

 薪による暖房はある意味家庭暖房以上のもの だ。薪燃料は究極的な大衆向けの資源であり、 最も入手しやすく安価な再生可能エネルギー だ。薪燃料を買う人は自宅の近くで雇用を創出 し、地域コミュニティを強化する。植林地のオー ナーの家庭はときどき燃料を近所に供給して収 入の一部を得ることができる。薪で暖房をする 人たちは単に公共料金を支払っている人たちよ りもエネルギーの生産と消費の因果関係につい て良く知ることができる。そして、責任を持って 薪燃料を使う家族は薪を燃やすことそのものが 恩恵であることに気づくだろう。

 

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When to Choose Wood Heat

By John Gulland

 

February/March 2013