職人並みの自家蒸留

小さなポット蒸留器を使って、自分のフルーツワインからeau de vie(ブランデー)を作って、熟した果実の風味を抽出しよう。

 1800年代に入ると、ヨーロッパと北アメリカの家には、女性がハーブや花を薬や香水に変える為に蒸留器を使った「蒸留室」があった。農場でもまた、発酵した穀物をお酒にしたり、フルーツワインをブランデーにする為に器材を持っていた。

 

  現代でも、プラムブランデー、または自家蒸留酒(東ヨーロッパでスリボビッツ、フランスでミラベルと呼ばれるブランデーを含む)で歓迎されることなく、ヨーロッパの田園地帯の大半を旅することは難しい。

 

Eau de Vie (ブランデー)って何?

  「厳密に言って、どんな蒸留酒でもブランデーです。」と、1998年にニューヨークタイムズで、現代の食品権威R.W. Appleは言った。「コニャックは、 [ブドウ] ワインから作られるブランデー。カルヴァドスは、 [リンゴ] サイダーから作られるブランデーだ。スコッチウイスキーはモルト大麦から作られるブランデーで、その名前はゲール人の言葉uisge beathaが語源。意味は、 -ご推察の通り- 「命の水」。しかし実際には、ブランデーという名は通常、フランス人もクールブイヨンまたは『白いアルコール類』と呼ぶ透明な果物ブランデーに限定される。」

  他の蒸留された飲料と違ってブランデーは、蒸留された物の香りを保つ。プラムブランデーの香りに包まれたあなたは、夏のただ中にいて、カッと熱くなる熟したプラムを手にしている。ブランデーは、熟した果物の香りを保存する唯一の方法だ。ジャムはそうならないし、フルーツワインもまたそうではない。自家製のブランデーは、ビンの中の夏の記憶だ。

 6月に果物が落ちる裏庭のミラベル・プラムの木のおかげで、私はDIY蒸留を始めることができた。私は数週間、毎日プラムを食べる。(タルトを作り、プラムジャムを作り、ワインを作る。)それでもこの1本の木からプラムは落ち続ける。だからプラムブランデーに蒸留する為のワインを作り始めた。プラムはヨーロッパ中で自家蒸留用の選り抜きの果物だ。発酵させてワインにしたり、目が覚めるような芳香で満たされたアルコールにすることが簡単なのだ。プラムから始めることを提案する。 

 自家蒸留は果実収穫もできる一石二鳥の新しい安全な趣味だ。蒸留は、温まるし、付き合いに素晴らしい広がりを加える飲み物を作り出す。順をおった説明は、http://goo.gl/5ymNpへ。

 

自家蒸留の復活

 この頃、禁酒法が抑制した伝統蒸留の復活がある。この復活は、急成長している小規模で酒類販売認可を受けた蒸留酒製造業者界を含んでいる。果物や穀物のアルコールを作ることで農業経済を回している農場ベースの蒸留酒製造業者、そして、経験を定期的に共有する熱心な愛好家と技術情報で互いに助け合うオンライン自家蒸留ボード(詳細は、40ページの「追加情報」を参照)。

 アメリカ合衆国では、19世紀の禁酒運動の高まりが頂点に達した1919年、アルコール飲料生産を違法とする禁酒法が制定された。蒸留は地下に行き、そして木のアルコール(メタノール)の質の悪さと有毒な蒸留物は、蒸留アルコール類の評判をひどく傷つけた。今日でさえ、オンライン自家蒸留サイトは、蒸留の危険性をしばしば警告している。実際は、果物ブランデーを作る際に危険はない。危険なしでポット蒸留器(ポットスチル)に入るワインを飲むことができる。蒸留は、化合物を加えない。むしろそれらを追い出す。

 合衆国では伝統の蒸留がとてもひどく中断されたので、生き残った伝統蒸留は、そのような秘密主義のままなのだ。長年の伝統蒸留が強く残るヨーロッパに目を向けることは、役立つはずだ。 

 

 ヨーロッパ諸国では、果樹栽培者は、売り物にならない果物を蒸留して、堆肥になっていたような物から利益を生み出している。移動蒸留酒製造業者は、農場から農場へ旅をする。

  

最高のスタート

フランスのブランデーは世界に名高い。なぜなら、蒸留されるワインを作る時、フランスの蒸留酒製造業者は、果物に砂糖を加えないからだ。ほとんどの果実酒(ブドウを除く果物すべて)のレシピで砂糖を使う。加糖は、ワインのアルコール含有量を増やす。大半のレシピでは果実酒をブドウ酒のアルコール含有量まで増やす為に十分な砂糖を加える。それは11~14パーセントだ。

  プラムは、5~6パーセントのアルコール範囲で、自然なワインとなる。アルコール度数を2倍にする為に砂糖を加えれば、蒸留でアルコールの量を2倍にできるが、風味は薄くなる。アルコール度の高いワインで蒸留しても芳香があるが、アルコール度の低いワインほどではない。

 プラム、リンゴと西洋ナシはビールのアルコール度に発酵する「高果糖」果物と分類される。おいしいブランデーにはそれで十分だ。もし低果糖果物(例えばブラックベリーまたはキイチゴ)からブランデーを作りたいなら、 家庭レベルで最も実用的な方法は、ワインにする時、5~6パーセントのアルコールを目指して砂糖を加えることだ。もし公表されているレシピを見て作るのであれば、おそらく砂糖を半量に減らすことを意味する。

  

ん?待って!違法じゃないの?

 あまりバラ色の絵を描かないこと:自家蒸留は世界(合衆国とカナダを含む)の大半で違法であるが、個人消費の為だけであれば、ふつう、大目に見られもする(合衆国とカナダを含む)。

 合衆国では禁酒法の廃止以来、商業蒸留を阻んだ法律は緩和されていて、小規模蒸留所が州の許可を得ることは、より簡単になっている。

 米国の州とカナダの行政区のいくつかは、現在、農場でアルコールを生産して売ることが容易になっている。たとえば、ワシントン州は現在、蒸留酒製造業者に1年につき1万円の技術免許を与えて、1年につき最高20,000ガロン【約75,700リットル】のアルコールを生産すること、そして建物内での試飲と販売を認可している。

 これは、手作り食品と地域生産物の販売に対する関心の復活という背景があって起こっていることだ。地域農場が商品を生産して、私たちが買うということは、ますます本当になっているのだ。

 

自家蒸留に必要な設備

 たとえ蒸留器を見たこと(まして使ったこと)がなくても、最も重要な原理は知られている。なぜなら根本的な概念が、私たちの言葉の中にあるからだ。「蒸留する」ことは、エッセンスを見つけることだ。ブランデーのエッセンスは、アルコールではない。フルーツワインをブランデーに蒸留する時、熟した果物自体の味と香りに目を向ける。

 蒸留するには、プラムのプラムらしさや、洋ナシの洋ナシらしさを澄まし、増やす為に、すべての蒸留器の中で最も単純な「ポットスチル」を使う。アランビックスタイル(古代のポットスチルの種類)は、風味を大切にする全ての蒸留酒製造業者が選び抜いた蒸留器だ。ポットスチルは、5つのパーツから成る:ポット、ポットから冷却器内のコイルに蒸気を運ぶチューブ

 ポットスチルは、程よく非効率に働く。とても効率的な蒸留器(還流や復水器のような)は、エタノールを分離させる為にすべての不純物を取り除くことができる。エタノールは味気のない、無臭の精神活性アルコールだ。このアルコール度が、ビール、ワインとスピリッツの瓶に表記されている。

 味無し臭い無しがウォッカを蒸留した後。しかし、熟した果物のエッセンスは、その味と香りだ。だから、過度な効率でこれら混合物を取り除きたくない。

 成功の為の秘密が3つある。:低アルコールのフルーツワイン(およそ5パーセント)から始めて、できるだけゆっくり蒸留器を動かし、そしてあなたの感覚を頼りにする。自家蒸留は、蒸留器以外に技術的な器材を( 温度計さえ)必要としない。ブランデーは、夏の果物を褒めたたえ書かれた詩のようだ。必要とする物は、あなたの感覚と概念だけだ。

 

蒸留器はどのように動く?

 外が寒い時、水を沸騰させるとキッチンの窓は湯気で曇る。たくさんの水を沸騰させれば、窓ガラスのしずくは下へ落ちる。そのしずくが蒸留水だ。それを自由に部屋に流出させずに、蒸気をヤカンからチューブに直接噴出させる。そして、巻いたそのチューブをバケツ1杯分の冷たい水に通す。その時チューブから出てくる物が、蒸留水だ。水でなくワインでヤカンを満たし、ブランデーを作る。

 蒸留液の流れは、3つに分けられる:初留液、本留液、そして余留液。初留液は、小さな蒸留器では大さじで測れる程度だ。ワインから気化する最初の合成物は、沸点が水より低いアセトン(そう。マニキュア剥離剤)とメチルアルコール他の混合物だ。

 はっきりした境界線はないが、アセトンが臭わなくなったら、本留液の段階に入る 。(一部の人々は次のバッチで再蒸留する為に初留液と余留液をとっておく。) きれいな容器で本留液を集め始めよう。本留液は長く続く。あるポイントで、臭いと味は、悪化し始める。また、出てくる物は、もはや澄んでいない場合がある。私は、蒸留液をいくつかの瓶に分けて集めて、大きな瓶で大事な本留液が余留液と混ざるリスクを最小限にしている。蒸留器から出てきている物を検査する為に、定期的に臭いをかぎ、味見しよう。あなたの味見で、もはや満足な物でなくなったら(それが余留液に至った時だ)、すぐに液の流れを止めよう。お気に入りを保存し、残りを捨てる。

 

こちらがポットスチルの働かせ方

(順をおった説明はオンラインのhttp://goo.gl/5ymNpを参照):

1.氷か冷水で凝縮集液器内のコイルを覆う

2.アランビックポットをワインで満たし、蓋とチューブを付けて、電気バーナー、携帯燃料やアルコールランプで、ワインを熱する。小麦に水を混ぜた練り粉で隙間を全て塞ぐ。

3.アルコールは78度で沸騰し、水は100度で沸騰するので、アルコールが気化してスチルのキャップの中へ上昇する。スチル内は100度より低く保つ。

4.チューブを下って移動し、気化したアルコールは冷えた凝縮コイル内で凝縮して、収集管の中へ滴り落ちる。全行程12から24時間ほどかかる。

5.出来た物をオーク材の樽やオークの木炭のかけらを入れたガラス容器の中で寝かせても良い。風味が深くなる。 

 

蒸留器を選ぶ

 私は、2つのサイズの蒸留器を推薦する。まずは小さな蒸留器を使おう。それが、あなたの技術練習になるので。1本のワインを買って、新たにすりおろしたオレンジピールと一緒に蒸留器へ注ぎ、つなぎ目に小麦粉と水でできたのりで封をして、水をコンデンサーに入れて、ポットの下で火をつける。そして準備完了、稼働可能だ。

 私は、送料含め170ドルくらいで2リットルの蒸留器を買った。2リットル蒸留器は、ハーブと花の蒸留を、望めるサイズでもある。(両方に同じ蒸留器を使うことができるというわけではないが)。5ガロン【約19リットル】のフルーツワインが良さそうなら、25リットルの銅のアランビックポットスチルが必要だろう。コスト(輸送を含む)は、およそ500ドルだ。太陽エネルギー蒸留器を自分で作る方法の説明を「ソーラー浄水器の作り方」で見つけることもできる。

 新しい果物ブランデーは、クリアーで、若干のえぐみとともに「ホット」だ。年月と共に多少の混合物が気化して柔らかくなるだろう。

 お客様に小さなグラスで自家製の果物ブランデーを出すことは、多くの人々が復活させている古い習慣だ。自家蒸留ブランデーが、もう一度客を歓迎する方法となるよう願おう。

 

フードライターの William Rubelはカリフォルニア州サンタ・クルズ在住。彼は Stone Soup (子供による雑誌) の共同創設者で、The Magic of Fire and Bread: A Global History の著者。彼について詳しくはwww.WilliamRubel.com で。

 

追加情報

この古い技術に手を付けてみるのに興味ある?これらの情報源で自家製蒸留について詳しく学ぼう。

オンラインのフォーラム

The Home Distiller Forums:
活発な電子フォーラムで、初心者用情報と上級知識がうまくミックス。

Artisan Distiller:
部分的には初心者用だが、この会はベテランで技能のある自家製蒸留者に人気。

書籍

The Home Distiller’s Workbook: Your Guide to Making Moonshine, Whisky, Vodka, Rum and So Much More! by Jeff King

Traditional Distillation Art & Passion by Hubert Germain-Robin

Distilling Fruit Brandy by Josef Pischl

銅製のアランビックスチル 

Destilarias Eau-de-Vie 

再蒸留器 

Mile Hi Stills 

 

たのしい自給

マザーアースニューズ

購読はコチラ。

 

Artisan Home Distilling