食糧自給を確立するのに最適な主要作物

菜園をたよりに、家族の食料をまかなうには、主要作物(人間の食の基本となる食物)を育てる必要がある。

この記事では、いかに食料庫を満たし、食料保障を高めるかを説明する。空間効率が良く、カロリーが高い主要作物を10品目育て、たくさん収穫して、化石燃料を使わずに保存する。

 

家族が食べるのに菜園に頼るなら、主要作物(ヒトの日常食の基本となる食物)を育てるべきだ。食料自給を確立するのに最適な主要作物は、収穫や保存が容易で、よく採れるものを。また、カロリーがつまっていて、日々必要な炭水化物から食料のエネルギーを提供するものを。ここで焦点をあてる10作物はまた、他の栄養分も豊富。

 自著「The Resilient Gardener」で、農的暮らしをする育苗家のCarolDeppeは、主要作物について深い情報を提供し、ジャガイモ、トウモロコシ、豆、スカッシュ、卵を「生きて繁栄するのに必要な5作物」としている。私は、このリストに、小麦、サツマイモ、ピーナッツ、キャベツ、コラード、ケールを加えた。これら主要作物間の生産高の比較を示すために、私の以前のマザーアースニューズの記事「食料自給の計画」(2012年10月/11月号)の表から、平均作物生産量と重量あたりの提供量の数値を用いた。カロリーの参照元は、John Jeavons著「How toGrow More Vegetables」で、食料自給に関心ある人なら誰にとっても価値ある情報源だ。

 食料保存と品質維持は、家庭の食料保障を高めるために主要作物を選ぶ際、考慮すべき要点だ。私は、維持や保存するのに化石燃料が必要ない食物を育てるのが大好きだ。それで、どこに、どうやって保存するかというなぞなぞになる。家を注意深く確認して、食品保存に良い場所を探す。私は、キッチンの床下収納が、冬の間はキッチン自体よりも、5、6℃度涼しいことを発見した。そこで、ジャガイモ、サツマイモ、スカッシュを保存する。常に涼しいゲストルームのクローゼットなども良い。「食品保存:20種類の作物の保存と貯蔵の仕方」で、もっと創造的な食品保存のアイディアを見つけよう。

 

ジャガイモとサツマイモ

 ジャガイモ(トウモロコシと共に)は、省スペースで大きなカロリーを得られる。育てやすく、いくつか芽の出た卵大のジャガイモのかけらを10cmの深さで埋めるだけで良い。夏涼しい気候では、早生、中生、晩生の品種を、春の最後の霜が降りる日の数週間前に植える。ジャガイモは、品種にもよるが、65~90日で収穫出来るようになる。

 サツマイモは、ベータカロチンを多く含み、最も健康的な食品のひとつだ。サツマイモは暑さを好むが、カナダのような北部でも育てられる。

 ジャガイモをカゴに入れ、新聞紙を被せて、家や倉庫の中で、保存出来ることが分かっている。10月には、ジャガイモを、風通しが良いように穴を空けたプラスチックの箱に移し替える。それから、家の床下のスペースで箱を保存する。カゴに入れたサツマイモは家の中の比較的涼しい場所で保存している。一般的に、ジャガイモは、4~13℃で最適に保存出来、サツマイモは、13~16℃で最適に保存出来る。

 参照: ジャガイモの栽培ガイドはhttp://goo.gl/dHgAT を参照。サツマイモ栽培(涼しい地域でも)の詳細はhttp://goo.gl/YvWg3 を参照。

 

穀類のトウモロコシ

 穀類を食卓に供すると申し分ないし、トウモロコシを育てるのは簡単だ。トウモロコシは主に3種類(フリント、フラワー、デント)ある。フリントコーンは、冷涼で、湿度の高い気候に適し、最も粉を挽きにくい。フラワーコーンは、南西部のアメリカインディアンに育てられたもので、最も粉を挽きやすい。デントコーンは、穀粒にあるくぼみが特徴。一般の農場のトウモロコシはデントコーンで、残念ながら、ほぼ全てが、今では遺伝子操作品だ。

 トウモロコシ全種類とも粉を挽けてコーンミールになるが、フリントコーンはポレンタ【濃いかゆ】、 トウモロコシパン、プディングに最適で、フラワーコーンはパンやパンケーキに最適。私は、デントコーン種の「Bloody Butcher」を少なくとも20年は育ててきて、主にホットシリアルに使っている。Deppeは、彼女自身のトウモロコシ種を特定用途のために開発している。例えば「Cascade Ruby-Gold」といったもので、トウモロコシパンや即席のポレンタに使う。

 自分で育てて加工するトウモロコシは、買うものよりも栄養豊富で、100平方フィート【9.3㎡】に植えると、およそ30,000カロリー収穫出来る。「Floriani Red フリント」は、北米原産の品種で、イタリアへ伝えられ(何世紀も繁殖して)、今では合衆国に戻って来ている。実験で「Floriani Red フリント」が高い栄養価を持つことが示されている。スーパーマーケットで買える胚芽を除いた黄色いコーンミールと比べて、蛋白質はほぼ2倍、マグネシウムとリンは3倍以上だ。(様々な品種、栽培方法、調理方法の詳細は、市場販売菜園家のAnthonyBoutardが著した新刊の「BeautifulCorn」を強くおすすめしたい。注文は79ページ。 ― マザー) 放任受粉の品種を見つけて、採種しよう。慎重に保管すれば、フリント、デントの品種は、5~10年以上保存出来る。

 参照: トウモロコシを収穫し、粒をとる方法は、私のブログ http://goo.gl/cPPhs を参照。特に優れたトウモロコシである「Floriani Red フリント」について、http://goo.gl/ajzGy で全て学べる。

 

自家栽培の小麦

 近年、栽培者の間で、在来種の小麦に対する関心が出てきた。試すには自分の庭が最適。在来種は、高く育つ傾向があり、根をよく張って、有機的なしくみで近代の小麦よりも高い生産高になり得る。グルテンに普通に耐性のない人もいて、在来種を食べているという報告がある。HeritageWheat ConservancyのダイレクターのEli Rogosaは、このような古い種をより広く利用出来るように、広範囲にわたる活動をしている。詳しくは www.GrowSeed.org を参照

 在来種によくあることで、少量の種に多くのお金を払いがち。でもその後は、自分次第で収穫量を増やせる。冬の小麦は、秋に植えられ、次の夏に収穫される。私の住むゾーン 7【米国の 気候区分で、平均最低気温-18~-12°Cの地域】では、6 月に小麦を収穫する。 冬の小麦にとって冬が厳しすぎる地域 では、菜園家は代りに春の小麦を選 ぶことができる。 小麦を植えるには、植床に種をばら まいて、熊手か耕運機で種をすきこみ 土を被せる。私は、日本式の鎌を使っ て茎を切っている。最初に採れる麦わらと穀物を分離、つまり「脱穀」するのに、プラスチック製の野球のバットや自分の足を使うことができる。それから、風で吹き飛ばして、殻を取除く必要があり、小麦と殻を扇風機の前で、カゴからカゴへ移すことで実現できる。小麦を収穫した後、植床に残った刈り株は、弱くなり、土は柔らかくなる。刈り株を取除かずに、次の作物を育てることが出来る。
 100 平方フィート【9.3m²】あたり 6 ポンド【2.7kg】の生産量なら、ちょうど 800
平方フィートで十分な小麦を育てられ、1 年にわたって毎週、新鮮なパンを 1 ローフずつ得られるだろう。全粒小麦をビンに入れ、涼しく、乾燥した場所で保存する。必要に応じて挽いて、つまり、大量にまとめて穀物を挽いて小麦粉にして、冷蔵庫で保存する。

 参照: http://goo.gl/UzZumで小麦の創造的な脱穀プロセスの秘訣が分かる。冬の穀物を育てるガイドは、http://goo.gl/75d3J へ。


主要作物:乾燥豆

 乾燥豆(食用のマメ科の植物)は、食糧計画の主力だ。100平方フィート【9.3平米】あたりの平均生産量1.4~2.3kgでは、市場に出す作物としては十分な収穫ではないだろうが、自分の食料保存を豊かにすることだろう。豆はポンド【0.45kg】あたり1500カロリー以上を含んでいて、ポンドあたり13 人前~ソラマメ 17 人前を期 待できる。低木の品種は、つる性の品 種よりも成熟期間が短いので、集中 的に収穫したいなら低木の品種を育 てる。寒冷な気候に良いマメ科の作 物は、エンドウ豆、ソラマメ、ガルバン ゾ、ヒラマメ。他の豆は全て温暖な気 候で良く育つ。適切に保存すれば、 豆の種は何年ももつが、調理には 1 年以内がベスト。 

 楕円形に小斑点から、小型で明る い色まで、豆の品種は、巷に非常に 多くあり、説明書きの長いリストができ ることだろう。黒豆、赤豆、ライマメは、 人気の品種。自分の菜園でよく育つ 品種が見つかるまで実践しよう。 食料室用に育てる乾燥豆を求めて、 インゲン豆を試したが成功しなかった。 インゲンは湿度が低く、日中暑く、夜 涼しい地域でよく育つ。私は、自分の 地域に最適なものを見つけるのに注 力したが、何でもうまくいった。分かっ たことは、カウピー(時には“Southern Peas”や“Crowder Peas”として知られ る) は、ここヴァージニアの暑く、湿った気候にあうこと。それから、マメ甲虫 に悩まされることもない。合衆国でのイ ンゲンの平均収量は、100 平方フィー ト【9.3m²】あたり 1.8kg だが、カウピーは 一般に、100 平方フィートあたり 1.4~ 2.5kg の収量で、自己最高記録は 2.8kg。

 Deppe は、彼女の菜園“Oregon’s Willamette Valley”で、“Fast Lady Northern Southern Pea”という早成り の北部に合わせた カウピー を繁殖さ せた。Tepary bean(干ばつに強い品 種)は、南西部の暑くて、乾燥した気 候でよく育つ。

 豆のさやが乾燥したら収穫し、袋に 入れて保存し、小屋の中で吊り下げ ておく(古い枕カバーがうまく使える)。 脱穀するには、袋をたたいて、さやか ら豆を分離する。きれいにとれた豆を ビンに入れて、食料室の中でトウモロ コシと小麦のそばに置く。

 参照: 多種多様な品種の豆を育 てる方法は http://goo.gl/RfZDH を 参照。


たんぱく質の詰まったピーナッツ

 米国から熱帯の南アメリカにかけて、 ピーナッツはどこでもよく育たない。よく 育つには大量の水と 110~140 日の 暑い日が必要だからだ。伝統的には、 合衆国南部でよく育つものが、気候 変動で栽培時季が長くなった。つまり、 今では、北部であっても、以前よりよく 育つようだ。自分で育てれば、やり甲 斐がある。タンパク質が豊富で、パントテン酸(ビタミン B5) ― 炭水化物、 タンパク質、脂肪を分解するのに必 要なもの ― をレバーを除けば他のど の食品よりも多く含んでいる。最後の 霜が降りてから 1 ヶ月後に植え、最低 110 日間成熟させる。殻をむいて食 べたり、圧搾して料理油にしたりできる。 

 ピーナッツを掘り出すと、さやが植物 にくっついていて、束全体をぶら下げ て乾燥できる。数週間後、ナッツをつ まんで採れる。私は、食料室の古いか めに(殻に入ったままの)ピーナッツを 入れて保存している。数ヶ月以内に食 べよう。

 詳細: Piteba の油圧搾機を使って ピーナッツから料理油を作る情報は、 私のブログ記事 http://goo.gl/PyDrB を参照。


冬カボチャ

 冬カボチャ、食物繊維やビタミン A と C が豊富で、様々な品種(Cucurbita maxima、 C. mixta、 C. moschata や C. pepo など)がある。ここヴァージ ニアで、私は「Waltham Butternut」と いう Moschata 種を育て、いくつかは食 べる前に 1 年間ほど保存している。 Moschata 種は、つる食い虫(Vine Borer)や病気に耐性があるが、たいて い、Maxima や Pepo よりも温暖な時季 が長い間必要。オレゴンの涼しい夏の 間に、Deppe は 7~11kg にも達する 「Sweet Meat ― Oregon Homestead」 という Maxima 種を育てるのが好きだ。

 冬カボチャは、100 平方フィート【9.3 m²】あたり 23~41kg の平均収量だ。 私は、バターナッツ種を堆肥の山の 下部に植えて、つるが覆うようにして、 雑草を抑えている。この手法を使って 出した自己最高は、100 平方フィート 【9.3m²】あたり 80kg だ!

 冬カボチャを小屋の中で凍結するま では保存できる。結局は、気候が寒く なる時期までに、凍結しない場所に移 動することになる。カボチャをしまうス ペースが不足しているなら、ただキッ チンに置いてカラフルな秋冬の飾付 けに使う。数週間おきに、カボチャを (ジャガイモやサツマイモも一緒に) チェックして、傷み始めたものを使った り、取除いたりする。 詳細: 冬カボチャを育てるノウハウ やオススメ品種については http://goo.gl/BTBKW を参照。


キャベツ、コラード、ケール

 寒さに強く、健康に良いので、キャベ ツがこのリストに載っている。晩秋でも 菜園で育ち、地下倉庫やグリーンハ ウスで保存できる。塩漬けキャベツ、 ビタミンやプロバイオティクス(体に良 い微生物)が豊富な発酵食は、キャベ ツの伝統的な保存手段で、塩漬けでかめに入れて数カ月保存できる。

 コラードとケール(キャベツ属の一種)は、切ってもまた生える作物で、保護 機能が少なく、場所によるが、冬の間 中収穫できる。ある意味では、冬の菜 園が自分のためにこの作物を「保存」 してくれていると言えよう。寒さに強い おかげだ。枯れた冬でも、新鮮な青 物が手に入ることで、主要作物の計 画を素晴らしいものにしている。

 コラードとケールは、驚くほどカルシ ウムを含むので栄養価が傑出してい る。成人の 1 日の推奨カルシウム摂 取量は 1,000mg で、大半がそれほど 摂取していない。コラードを調理したも の1カップで266mgのカルシウム、 つまり推奨摂取量の 26%を採れ、牛の 全乳 1 カップ分のカルシウムに相当する。ケールを調理したもの 1 カップ は 93.6mg のカルシウムで、推奨摂取 量のおよそ 9%だ。 詳細: キャベツの育て方ガイドは http://goo.gl/QtMkA を参照。ケール の育て方とオススメ品種については http://goo.gl/xTLew を参照。


品種を選ぶ

 始めるのに良い品種は、30 頁の Recommended Staple Crop Varieties for Your Region を参照。これらの実証済みの品種を育てるところから始めて、食料供給を確立し、それから栽培、収穫、保存、調理について学び続け よう。自分によく合うものを見つけたいだろうから、それと後に試す新品種を 比較すれば良い。種カタログを注意 深く読み、地域の農業普及サービス 局に尋ね、他の菜園家に話して、どの 作物の具体的にどの品種が自分の地 域で一番育つのか知ろう。どの品種を 好んで選んでも、食卓用に主要作物 を育てれば、菜園と食事に新次元の 満足感が加わると実感することだろう。


Cindy Conner は、バランスの良い持続 可能な日常食を最小スペースでいかに 育てるか、調査、報告している。詳細は www.HomeplaceEarth.comを参照。彼女の新著「Grow a Sustainable Diet」は 2014 年に出版される。 

Best Staple Crops for Building Food Self-Sufficiency

By Cindy Conner 

June/July 2013