農業実習|農業従事者を絶滅させない

技能があり、小規模な農業従事者(必須でやり甲斐のある職業)と実習生を世界は必要としている。

小規模農家や農的暮らしをする人(ぢきゅう人)は、食糧システムに必須の変革をもたらす強力な位置付けにいる。食物を地域で持続的に育てることで、農家は、コミュニティーの物質的、経済的、エコ的な健全性を向上している。

  今日の平均的な農業従事者は、50代後半。代わりの人が必要になるだろう。そして、その数は、劇的に増加するはず。彼らの知識を未来の農業従事者に伝承するのは、生まれつつある持続的な食糧システムの拡大に不可欠。

  工業的な農業は、土壌と環境、動物の繁栄、地域経済に災いをもたらす ― 言うまでもなく人体の健康にも。多くの北米人は、このシステムに頼って、自分の食料を得ている。しかしながら、そのシステムが突然崩壊すると大災害となり得る。専門家の中にはこう主張する人がいる。3つの崩れ易い条件(安い石油、豊富な水、安定した気候)に依存しているが故、現状の食糧システムの崩壊は差し迫っている。

  モンサントと大規模農業は、工業的農業のみが世界を食べさせられると、私たちに信じ込ませたいのだ。真実は、実際、逆だ。Food and Development Policyは、27ヶ国の利用可能な農場の生産性データを調査し、小規模な農場(多様な作物と家畜を一緒に育てる)の生産性は、単位区域あたりで、工業的な規模の単一農場よりも2~10倍高いと結論づけた。これは、次のようないくつかの要因によるものだ。

•  小規模農場は、よりわずかなスペースを使って、様々な作物を植える。このような複雑さが、単位区域あたりの総合生産量の面で大きな違いを生み、機械では成し得ないものだ。

•  作物と家畜を合わせることで、植物は肥料で恩恵を受けて、他方で動物は、人が消費しない余剰作物で恩恵を受ける。

•  小規模農家は、土地に多くの手作業労働を施す。手作業労働の質は、小規模農場では、より良くなる傾向がある。なぜなら、農家は、集約的に世話をする区画に、注意とエネルギーをささげることが出来るからだ。

 

農場研修制度

  百姓になると決めたなら、大学、本、 ― これが最も重要だが ― 実践経験など、沢山の情報源から役立つ知識を拾い集めることが出来る。

  実績のある農業従事者とつながる最適な方法として、研修プログラムを通じる方法がある。あなたは実践経験と手頃な土地へのアクセスが必要だろうし、経験豊かな農業従事者は、働き手、時には、農場を買えるほど習練を積んだ人が必要。研修制度は、契約を通じて、この2つのグループをつなぐ:知識豊富な食物栽培者は、食物を育てるのを学びたい人にノウハウを伝えて、代わりに、追加で、農場で熱心に働く手と精神を得る。

  それでは、このような協力関係で、両者(経験豊かな農業従事者と就農希望者)が、いかに恩恵を受けるのかみ見てみよう。

 

農業従事者への助言

  小規模農業従事者として、自分の専門技能は、現在進行形で複雑な学習の積み上げの結果であると認識ください。あなたの貴重な知識を農業初心者と共有すると、彼らが成功する確率が増える。オハイオ州アレクサンドリアにある Garden Patch Produce の Patricia Mumme は、13年間、Ohio Ecological Food and Farm Association (OEFFA) を通じて、研修生を受け入れてきた。彼女の観察では、研修生の作業の早さと効率はシーズンを通して顕著に向上し、彼らが自分自身で農業をする初年度に、利益が出るようになる。

  利他的な動機だったのが、研修生が提供する腕力と援助の手が加わって恩恵を受けることになるだろう。夫と私は、何シーズンも研修生を雇ってきて、雑草を抜いたり、上の階へ干し草を置いたりする時、いまだに若い人の助けに感謝している。また、彼らのエネルギーと熱意にも感謝している。(ビニールハウスのように高い)トンネル栽培、アクアポニクス、バイオダイナミクス農法など、昼食時のお話は刺激を与えてくれる ― 特に、新しいことを試すのに自分で何でもする必要は無いと思える時に。

  Annie Warmke(オハイオ州フィロにある Blue Rock Station のオーナー)は、OEFFA のメンバーでもある。彼女が言うには、研修生の感化力、考え、勤労、情熱は、彼女の事業を前へ進めて、彼女を感情的に、経済的にも、進み続けさせている。

OEFFA には、他の組織と同様に、農業従事者と農業志望者が互いを見つけるオンラインサービスがある。ただ、ウェブサイトでリストに載っている農業従事者や研修応募者を認証している組織は無いことを知っておこう。個人個人が、会話や訪問を通じて、良いマッチングになるか状況判断すべきだ。近くに住む人とつながるには、州や地区の組織を選ぼう。世界の他の地域の人と働くには、Worldwide Opportunities on Organic Farms (WWOOF)のような国際組織を選ぼう。

  夫と私は、比較的近くに住む若い人を育てることに関心があるため、州の組織を利用している。将来、私たちが働けなくなった時に、農場の世話をしてくれるような研修生と働く機会をより良く得られると思っている。私たちは、土地が区分けされたり、従来の農地になったりするのを考えるのは嫌だ。何年も研修生を受け入れることで、同じような価値観を持つ、将来、私たちの農場を守ってくれる人が見つかるかもしれない。ここで農場を続けない研修生であっても、とても必要とされる将来の農業従事者の人口に加わることになる。

 

農業を始める人への助言

  将来の研修生として、自分に合う農場と農業従事者を見つける時に、直感を信じよう。農場の手法や労働環境の詳細について質問しよう。美しい場所、動物との密なふれあい、農業従事者の態度、労働条件は、すべて決定要因に入れるべき。あなたの労働は価値があるので、見返りにたくさん学ぶのを期待して良い。やることを楽しむのが重要で、自分の農場を持った時にやるようにする。農業従事者は、天候が悪い時や疲労がたまっている時でも、続けるためには、労働を楽しむ必要がある。

  もし、あなたが、どんな種類の農業をやりたいのかはっきりと思い描けないのなら、興味深い選択肢をスモーガスボード料理式【バイキング形式】で提供する農家で研修するのを検討しても良いかもしれない。野菜の園芸、果樹、養蜂、家畜、牧場管理の経験を得られることだろう。この体験は、自給自足のツールをもたらすだけでなく、自分で利益の出る農場を作る際、どの分野に集中すれば良いか見定めるのにも役立つ。

  何を生産したいか既に分かっているなら、その分野で既に成功しているメンターを選ぼう。労働を提供する代わりに、食物や動物の育て方、市場開拓、免許取得、財務の仕方などの知識を得よう。同じシーズンの間に他の農場を訪れて、可能性のあるものの理解の幅を広げよう。

  Aaron Jimenez(オハイオ州フィロ)は、研修生から農業従事者へ移行している。彼は、研修制度から、失敗しても大丈夫なことを学んだと言う。「失敗することで、着想をもっともっと試す自信がついたんですよ。この経験が、農業だけでなく、人生においても、優先度を決めるのに役だったんです。」

  経験に加えて、小規模農業は、知識にお金や時間をかける。知識は、読書や勉強会への参加で継続的に更新する必要がある。ほとんどの小規模農業従事者は、農業を始めた頃から日付の始まる読み物が詰まった本棚がある。私たちの本棚にあるのは、Helen & Scott NearingGene LogsdonJohn & Sally Seymourの独自の農的暮らしの本と、何年かかけてやっている新案件(養鶏、養蜂から牛やフープハウス【日本のビニールハウスに相当】)それぞれの本が何冊かある。日々の作業をするには暑すぎたり、湿度が高すぎたりする午後には、本やジャーナルを研修生たちと共有するとわくわくする。

  大学教育は、農業を始めたい人にとって役立つだろうか?この話題に関して私が聞いてきた一番の賢者の言葉は、カンザス州立大学でDr. Rhonda Jankeから聞いた。彼女は、若者に、土壌科学の基礎知識を得るために、農場での経験を構造的な教育の機会で補うよう奨励している。「土壌の物理、化学、生物学の基礎を理解すると、様々な農業慣習のなぜを理解するのに役立つです。どうやっては、農場での経験から得る必要があるとしてもですね。」と彼女は言う。

  学位は不要だが、科学の講義によっては、農業従事者に良く対応するものもある。Dr. Janke の推奨するコースに含まれるのは、基礎科学(化学、生物学など)と応用クラス(土壌はもちろん、昆虫学、植物病理学など)。これらのコースで、農業従事者は、本などで読む内容の妥当性を理解し評価できる。正式な科学の背景知識はまた、有機農家が不要な改善品をたくさん買うのを避けるのに役立つ。なぜならば、植物が本当に必要なものをより良く理解できるからだ。

  利用可能な就農希望者向けの補助金を確実に確認しよう。合わせて、米国農務省の Beginning Farmer and Rancher Development Program(次世代の農業従事者の講習に専念するプロジェクト向けで財政援助をする)も確認しよう。

 

農業研修を成功させるためには

  農家にとっても研修生にとっても、初めて一緒に仕事をするやりにくいかもしれない。ある日突然家族の一員が増えた農家側と、新しい家族の一員となった研修生。誰が食器洗いをして、誰が洗濯をするのかなど、双方の明確なコミュニケーションがあれば問題は起こりにくい。相性が単純に合わないというケースも稀にはあるが、その場合はどちらかが契約を終了できる。私達は経験したことがないが、例えば家畜のゲートを頻繁に閉め忘れてしまう人は、家畜への危害のリスクが高まるので、その人がいたら上手く行かないだろう。逆に農家が研修生の要望を無視し、除草作業だけさせて他何も教えない研修生契約解除をしてもおかしくはない。

  問題を避ける為には決断をする前に経験して得たい事をしっかりと伝える事である。部屋、賄い又は給付金は支給されるのか、各個人の食事の嗜好はあるのか、プライベートな時間はどれ位要するのか。たいてい寝床と食事と教育の提供は労働に対する妥当な対価である。しかし研修生が学費や車のローンの返済がある場合は給付金を考慮すべきである。事前に話し合う事で後々のトラブルを回避できる。

  世代が違う者同士の共同作業は一緒に未来を思い描ける素晴らしい機会である。農家同士が近隣に住めば互いを支え合うコミュニティが生まれる。労働も農機具も社交の時間もシェアするネットワークを共に築き、皆が休暇を取ることだってできる!この様なつながりで農家の暮らしの質を上げながら循環的な食料供給が可能になる。

 

Farm Apprenticeships: Keeping Farmers From Going Extinct

By Mary Lou Shaw 
August/September 2013