コブハウス建築: 土と藁のDIYハウス

 1999年初め、あるフロリダの若い女性が、オンラインの記事を偶然目にした。泥の家で彫刻する古代イギリスの手法近年復活しているというものだった。興味をそそられ、彼女は貯金をはたいて、5日間のワークショップのためにヴァーモント旅行した。そこで、粘土、砂、藁を足で混ぜて、材料の塊をこねてコンクリートと同程度の耐久性がある固い壁にする方法を学んだ。

フロリダに戻った後、彼女が習った技術を使い、友達数名と、両親の裏庭に小さな陶器用の小屋を建てた。フロリダの湿った空気や豪雨で「泥の小屋」が大地に帰すると予想する人もいた。ところが、2002年のハリケーン・リリの後、この頑丈で小さな小屋は、費用わずか数100ドルで夏に少し作業しただけだが、近隣で崩れずに残った数少ない建物となった。クリスティーナ・オット(Christina Ott コブ建築というもの理解していたのだ

 

コブ建築の起源

  コブ建築という名は、「塊」という意味の古い英語の言葉からとっている。藁と混ぜて踏み固めて一枚岩のような土壁にする粘土質が豊富な土の塊のことだ。石炭や石油輸送が安くなる以前は、何でも身近に手に入る材料から家が建てられた。材木が希少な場所では、最も手に入る建材は足下の土ということがよくある。

  土で建てることは、歴史的に長い間成功して来た。コブ建築は特に容易に学べ、凝った道具は不要で、地域の材料を使い、時間の許す範囲で細かく分けてできるので ― 非常に幅広い人たち取り組み易い(後述のDIYコブ建築技術を参照)。コブでの最初の成功の後、オットは、オレゴンへ旅行し、コブ・コテージ社(Cob Cottage Companyで実習をした。彼女の家族がテネシー州のナッシュヴィルの山脈の東に転居した際、オットは新たな技術を使い、ほんの8,000ドル足らずで、小さなコブ・ハウスを建てた。23才の頃には、ローン無しとなり、「裸足で建てる人(Barefoot Builder)」として、合衆国中でコブ建築ワークショップを講習していた。

  イギリスでは、何万というコブ建築がまだ使われていて、500年以上のものもある。1700年代と1800年代に、イギリス人が、合衆国、オーストラリア、ニュージーランドへ入植し、技術を持ち込んだ。アフリカ、アラビア半島、アジアの一部、今では合衆国南西部で、コブは土着の人々により独自に開発された。イエメンでは、9階建てで700年以上になるコブ建築が立っている。

  ところが、産業時代に、工場と安い輸送が西洋にもたらされ、レンガ、製材した木、セメント、金属が容易に入手出来るようになった。大量生産は、新建材が進歩の象徴とするマス・マーケティングと拡販につながった。「貧しい人々の家」としてコブが認知され、崩壊につながった。1985年まで、60年以上にわたりイギリスで、少なくとも120年以上にわたり合衆国で、新たなコブ建築が建設されなかった。

 

現代のコブ建築

  今日、自分の家を建てるは、規準から外れる事で、地域の資材で建てるは、ほとんど聞いたこともない。その代わり、高価な道具と高価な資材を用い、専門家により建てられた家は、環境コストが甚大であることが多い。産業資材には、多くの利点 ― 性能、計画性、スピード、設置の容易さ ― があるが、製造した会社が利益を生まなければならない点が共通している。

  合衆国の世帯人数の平均は、過去50年間で、半分以下なった。だが、同じ期間で、家の平均サイズは、2倍以上になった。私たちは、歴史上のどの時点よりも、居心地良く暮らしているが、実際は支払いで奴隷になっている(「ローン」はフランス語で「死の契約」)。幸い、私たちには他の選択肢がある。

  オットの住む郡では、低所得者の住宅は、暖めたり冷やしたりすることが難しく維持費が高くつく、老朽化し易いトレーラー・ハウスであることが多い。彼女は、くつろぎのコブ・ハウスの中で薪ストーブのそばに座っているので、朝手早く火を焚いて、コブの壁を暖め、たいてい1日以上家を暖かく保てると言う。彼女は年に1コード3.6立米以下の木を使う。一方、彼女の「泥ハウス」を笑った隣人たちは、自分の土地の木を割り、ゴミを燃やして、凍えないようにしている。年に15コード程の木を使う人もいる。多くの人の頭金より少額で、オットは家を持ちしかも現代の標準よりもむしろ良い性能の家だ。

  コブの熱収支は気候帯によって変わる。コブは比較的断熱に乏しい反面、多くの熱量を吸収する。この特性は、南西部【温暖な地域】では価値があるが、冷え込む北東部では、例えば、得た熱がすぐに失われ、欠点になるだろう。このコブの欠点は、外壁に良い断熱材を使う一方で、熱量を溜めるためにコブで内装の壁を建てることで解決できる。

  個人的観察による証言や最近の試験が、コブの壁は非常に地震に強いことを示している。地震でバラバラに揺れる傾向のセメントや日干しレンガと違い、コブの塊は、建設時にまとめて作り上げ、藁で強化された大きな質量の一塊に成形される。また、セメントと異なり、コブは簡単に、建材で補修できて、崩れ落ちたら、捨てるような廃品が皆無 ― 地面に還り、水に溶け込み、他の部屋や家に再利用される土のみ

 

オレゴン・コブ建築手法

  オレゴン州コキール(Conquille郊外、実証建築が集まってコンスタントに拡張しながら立ち並び、愛情たっぷりに「コブヴィル(Cobville」として知られている。彫刻されたコブのガーデン・ウォールが、小さなコテージとコテージの間や周りに作られ、開放感を持たせている。ここでは、実習生とワークショップ参加者が、混ぜる成分、手法、仕上げについて、学んで経験する。ここは「コブ・コテージ社(Cob Cottage Company」の本社で、同社は合衆国のコブ建築の再生を主体的に担っている。イアント・エヴァンス(Ianto Evans)、妻のリンダ・スマイリー(Linda Smiley)、マイケル・G・スミス(Michael G. Smith)が創設したコブ・コテージ社は、根本的な考えから始まった。それは、少しの指導で、ほぼ誰でもコブ・ハウスの建て方が学べるというものだ。

  エヴァンスは、今70代の快活なウェールズ人で、生まれ故郷のコブを、より効率のよい形で再考してきた。伝統的なイギリスのコブの手法は、一般に手近などんな粘土の塊でも踏み固めるもので、強度を出すのに分厚い壁が頼りだった。対照的に「オレゴン・コブ」は、より少ない資材でより効果的に強くなる。建設者は、粘土と砂をぎっしり詰めて混合し、強化のために藁をたくさん使うことで、薄くても非常に強い壁を作る。「私たちは、ほとんどの人が自分自身で作れる、ほぼ無料の建材で、オレゴン・コブを作ってきたんです。建材は、液状で、健康素材で、汚染せず、地域でとれる。生み出す建物は、彫刻的で、ほどよくて、永続的」とエヴァンスは言う。建設作業をほとんど自分自身でできるので、コブは非常にお手頃だ。

  しかし、エヴァンスはコブと「自然建築(natural building)」(彼が普及させた語)を、コブ建築の手法という意味よりも、コブ建築の社会的なムーブメントが起こってきたという意味で語っている。「自分の家を10,000ドル以下で建てるのは革命的。そう、皆さんにもできるのです」と彼は言う。「諸外国の何百万人もの人や私たちの祖先が証明してきたのです。」エヴァンスは、大地から自分の家を作ることで人々を力づける方法を間近に見てきたのだ

 

コブ建築のコミュニティー

  創設から30年を経て、コブ・コテージ社は、報告すべき進歩がある。エヴァンス、スマイリー、スミスの本手彫りの家(The Hand-Sculpted Houseは、世界中で30,000部以上売れている。CobWeb というニュースレターは、コブ技術の18年間の経験と進歩(と失敗)がまとめられており、コブ・コテージ社のサイトで利用できる。複数の非営利団体、例えば自然建築ネットワークNatural Building Network)などが、コブ建築の普及促進を続け、承認プロセスを簡素化するよう条例を作る役人への働きかけを継続している。毎年、自然建設家は、地域で学会を主催し、技術交流や同志愛を育んでいる。中には何百マイルも旅行してテントで寝て、プロジェクトをお互いに手伝う人たちもいる。

  コブ・コテージ社の卒業生は、世界中で建設や教育をしている。世界経済の下降にもかかわらず(あるいは、もしかしたらそれが理由で)、コブのワークショップはかつてないほど人気がある。初めての建設プロジェクトで、オットの一番の支持者は、初めての家をハリケーンで壊された後自分のコブ・ハウスを作ろうとする職の無いシングルマザーだった。彼女たちは一緒に、おしゃべりしたり、庭を走り回る子供たちを見守りながら、家を建てた。建設現場は遊び場ではないが、重機の騒音も危険もなく、クギの散乱もないので、コブ建築の現場はとても家族に優しい。自然な家の建設者の多くは、働く現場の雰囲気を保つために全く労をいとわない。私は、何度も有難い気持ちになったことがある。友人の新しいベッドルームのコブの壁を作ろうと、下の娘が率先して懸命に働くのを見てきたからだ。

 

  読者のみなさんが、真剣にコブで建てようと思うとしたら、エヴァンスは、ワークショップやプロジェクトの手助けなどで、手で触る機会を見つけることを強くおすすめしている。家の近くのワークショップを見つけるには、イベントカレンダーを参照。

 

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Cob Building Basics: DIY House of Earth and Straw

October/November 2013

By Chris McClellan