料理油と油脂の作り方

 

食料自給に向けて新たな一歩を踏み出すために、種やナッツから栄養のある油を抽出し、ラードと獣脂を精製し、新鮮なバターを作る。

もしあなたが食料をほとんど買わずに自宅の庭で調達できる環境にあるならば(トマトも卵もイチゴも自家製という具合に)、料理用油脂を作ってみてはどうだろう。クリーミーなバターを作ったり、豚肉や牛肉からラード(豚脂)やタロー(牛脂)を精製したり、ナッツや種子から搾油したりするそうして得られる自家製の油脂は手間ひまかけるにふさわしい液体の恵み。

 

バターの作り方

  バター作りは簡単。まずは搾乳。牛を飼っていないならば地元でヘビークリーム 乳脂肪分の多いクリーム。生クリーム。】 を売ってくれるところを探すとよい。ヘビークリームを1クオート1リットルのびんに3分の1の量まで入れる。ふたを閉めびんを振ると、バターとバターミルクと言われる水分に分離してくる。ブレンダーやフードプロセッサーを使用すればより手早くできる。

  できあがったバターを濾してバターミルクを搾り出し、ボールに入れる。この時、流水にさらしながらバターをへらで押し固めるとよい。流水が濁らなくればOK。書物などによっては、ここで食塩を加えれば、最後の一滴までバターミルクを濾せると書いてある。約1リットルの生クリームからできるバターの量は約450グラムだ。 よりおいしい発酵バターを作るには「風味豊かなバターの作り方」をご一読あれ。

 

ラードの精製

  豚肉から精製する油はラードと呼ばれ、何世紀にもわたり、料理や明かりとり、また潤滑油や石鹸として使われてきた。ラードが炒め物に向くのは、焦がすことなく高い温度で加熱できるからだ。ラードに含まれる飽和脂肪酸の量はバター以下。また、人の手で新鮮な空気と草で育てられた豚から作ったラードは、より身体にやさしい。養豚場の柵の中で抗生物質と成長促進剤まみれで育った豚から作ったラードは、脱色、脱臭され、加えて水素化常温で固体にする処置】までされているのだ。

  「かつて養豚業者は豚肉そのものより豚脂の精製でより多くの収入を上げていた。」とGrit誌編集長のオスカー・H・ウィル3世(Oscar H. Will III)は言う。しかし、今日多くの養豚業者が反対の状況にある。ラードの古くから伝わる使用法やレシピ(ラードパイの皮レシピなど)についてはGrit誌の本「失われしラードの料理術」の書評を読んでほしい。(この本はマザーアースニューズホームページにて購入可  マザー)

 

タロー(牛脂)の精製

  オレゴン州サザリンのワ―ディ・ハーモン(Wardee Harmon)は近年家族とともに肉牛を育て、地元の肉屋に精肉を依頼した。ジャージー種とアンガス種の混合種であるその牛をハーモンはジャージーミルクと高品質の干し草と牧草で育てた。「うちの牛はすばらしいの。肉はどこにも負けないぐらいおいしく脂肪はとっても風味豊かなんです。精製したらびっくりするぐらいたくさんタローができたの。」とハーモンはいう。彼女はリアルフード(real foods)と伝統料理についてブログを書いている。

  「タローは野菜を炒めたりサワー種を衣にしたオニオンリングを揚げたりするのに最適。」と彼女は言う。「キャセロール料理やソテーなどバター代わりに何でも使えるの彼女はその他スキンケア用品や石鹸も作っている。

 

精製の基本

  ラードやタローを精製する時、まず大事なのはできるだけ高品質の脂肪を手に入れること。代々受け継がれてきた品種を育てている地元の農家や近くの肉屋が良い。オーブンを100度で予熱し、挽くか細かく切った脂肪(写真参照)を重いキャセロールかダッチオーブンに入れる。蓋はせずオーブンに入れて45分おきにかき混ぜる。脂肪分が解けて、クラックリング(cracklings」と呼ばれるカリカリとしたタンパク質の塊が浮までゆっくりと加熱する。鍋をオーブンから取り出し少し冷ます。脂肪分を濾し布で濾して、蓋付きガラス瓶に入れ、完全にめるまで待って蓋をする。冷蔵庫で2か月、冷凍庫で1年は保存できる。さらに詳しい作り方は「ラードの作り方」を参考に。

 

ベジタブル油に夢中

  あなたはベジタリアンやビーガン?あるいはラードやタロー、バターを作るのに必要な家畜を飼っていないのなら、さまざまなナッツや種子を圧搾して野菜油を作ってみてはどうだろう。アーモンドや麻の実、かぼちゃの種、ウォールナッツなど種類は豊富だ(後述の「圧搾を始めよう」参照)。ナッツや種子の種類によってできる油の量は違う。約1リットルの油を作るのにウォールナッツなら約1.3キロ、ヘーゼルナッツなら約1.6キロ、ピーナッツなら約2キロ、菜種、かぼちゃやひまわりの種なら約2.4キロが必要。

  油精製を目的にパンプキンを育てる場合大切なのは油料種子品種を育てること。ウィリアム裸性種パンプキン(Williams Naked Seeded Pumpkin)などがよい。グレープの種の油に興味があるなら地元のワイナリーを訪ね、グレープの種を求めると良い。ワイナリーではグレープの種よく捨てられているからだ。これら新鮮な材料からつくられた高品質な自家製調理油にはビタミンやミネラルが含まれる。こうした微量栄養素は最上の健康を手に入れるためには不可欠だ。「トーストしたパンプキンの種の油は抜群においしい。パンに塗ればケーキのような風味になります。」とライル・エスティルは言う。ライルは油精製のエキスパートで、資源の枯渇に応えるべくコミュニティ主導の解決法について Small Is Possible という本を著している。

  農的暮らしをするシンディ・コナー(Cindy Conner)は、味ばかりではなく新鮮であるという点から自家製油を賞賛する。彼女はブラックウォールナッツ、ヘーゼルナッツ、ひまわりから自家製油を作っているが、「自宅で油を作ることで、少なくとも自分の食べているものが何からできているかをたどることができるのです。」と言う。(更なる情報はコナーがブログに綴る油抽出の奮闘記を読んでみよう

 

ヒマワリの種子から油を搾る

  全てのヒマワリの種子から油がとれるが、その中で最も多くの油がとれるのは黒色の油料用品種だ。また、この品種の種子は、縞模様をした食用種子よりも小さいので、圧縮しやすい。

  保存がきき毎年まくことができるヒマワリ種子を探しているなら、ロシア産の 「ペレドヴィク(Peredovik)」という品種がお勧めだ。「南向きの種交換所(Southern Exposure Seed Exchange)」でなら少量買いができ、「ハンコック種苗会社(Hancock Seed Company)」では23kg弱の袋入りで買える。栄養価の高いハイブリッド品種なら、「ヌサン(NuSun)」が良い。伝統的な育種法で開発された品種で、オメガ3脂肪酸とビタミンEを多く含む。ヌサンについてより詳しく知りたい場合は、全米ひまわり協会(National Sunflower Association)を訪ねよう。「ペレドヴィク」やその他の品種は「種苗検索(Seed and Plant Finder)」で検索できる。

  鳥の餌として売られている黒油ヒマワリ種子を大量に買えば良質の油が得られると考える人もいるかもしれないが、ミズーリ大学の植物学科准教授、ロブ・マイヤーズ(Rob Myers)によると、それにはリスクが伴うようだ。「食品用に比べ、鳥の餌用の種子への規制は緩い。また、種子を高温で保存すると、油から風味が失われる」という。

 ヒマワリには、成長するのに十分なスペースとたっぷりの日光、そして適量の水とよく肥えた土を与えよう。種が熟したら、花の部分を茎から切り取り、種を完全に乾燥させる。乾いたら、細目の金網に強くこすりつけて種をこそげ落とす。ヒマワリ種子の栽培、収穫、圧搾についてのさらに詳しい情報は、「ヒマワリを育てる:その歴史から栽培まで(Growing Sunflowers: From History to Cultivation)」を参照しよう。

 

大人気のキャノーラ油

  「カナダ(Canada)」と「油(Oil)」から名付けられたキャノーラ油は、菜種を品種改良して作られたセイヨウアブラナ(アブラナ属)から採取した油。セイヨウアブラナには春まきと冬まきの品種があり、マイヤーズによると、春まきのものは早めにまく必要がある。他方、冬まきの品種は秋に開花するのを防ぐため、夏の終わり(たいていの地域で9月)にまく。

  マイヤーズによれば、セイヨウアブラナの小さな苗を手で収穫するのは時間がかかるが、難しくはない。刈り取ったら、地面に敷いたシートに打ち付けるか、足で踏みしだいて種を取る。種を綺麗にするため、ざるで洗い、できるだけ異物を取り除く。そして昔ながらの方法でもみ殻と種を選り分ける。「風の強い日に外に出るかまたはファン(送風機)を用意し、種を容器から容器へ何度も移しかえます」とマイヤーズ。

  セイヨウアブラナは、水はけが良く肥沃な沈泥質の土壌(シルトローム)でよく育つ。マイナス面は、セイヨウアブラナが鹿の好物であること。勝手に生える(小さな種全てを発芽させないのは難しい)こと。また、少量の種の中から遺伝子組み換えでないものを見つけるのは難しいこと。その土地に適した非遺伝子組み換え種子を探すには、地域の公開講座に頼るか、有機農業の団体にコンタクトしよう。

 

手間をかける価値あり - クルミ油

  最も広く栽培されていて割りやすいセイヨウクルミからは、木の実の風味を持った軽めの油がとれる。調理せず生のまま使うのに適しており、熱すると苦みが出る。クロクルミは北米の東部で自生し、香りの良い油を採取できるが、殻が固く割りにくい。取り除くのが大変なスポンジ状の緑色の皮と、頑丈で固い殻を持つ。「ナッツ割り名人(Master Nut Cracker)」という道具を使えば、クロクルミも割れる。

  大ぶりで、比較的砕きやすい実をつけるセイヨウクルミとクロクルミの苗木は、ジョージア州カータースヴィルの「ウィリス・オーチャード社(Willis Orchard Co.)」で入手できる。いずれも同じ株の花同士で受粉する自家稔性だが、接ぎ木をして他家受粉させると実りがよくなる。小規模なクルミ栽培の場合、通常は十分生長して実をつけ始めるまでに7年ほどかかる。ウィリス・オーチャード社が提供する接ぎ木した品種か品種「改良」された種類なら、たったの3年で実がなる。

 

クルミ油の魅力

  ナッツから搾油したら、後に残った高タンパク質の部分は家畜の餌にもなるし、料理に使うこともできる。

 油脂を家庭で作れるようになれば、買い物リストの主要品目を1品減らせるだけでなく、栄養価の高さという恩恵も得られる。新鮮で風味豊かでおまけに体にも良い、まったく新しい食品の世界への扉を開こう。

 

油を搾ってみよう(ビデオ付き)

  搾油器「ピテバ(Piteba)」は、少量の家庭用の油を搾るのに重宝する。オランダ生まれのこの便利な手動の搾油器で1時間に搾れる油の量は、アーモンドやヘーゼルナッツなら2.3kg弱、ピーナッツやヒマワリ種子なら3.6kg、麻や紅花の種なら5kg弱だ。

  非営利組織「豊潤な庭(Bountiful Gardens)」で入手できるピテバは、キッチンカウンターに直接取り付けるか、頑丈なボードをカウンターに固定してその上に取り付ける。らせん状のキリがナッツを細い管の中へ押し込む。ナッツは、より多くの油を取るために小型オイルランプでほんのり温められる。肝心なのは水分量だ。ナッツが水分を含みすぎていると、油は取れない。逆に乾きすぎていても搾油器の動きが悪くなる。種はできるだけ綺麗にし、搾油器の金属物質が移らないようにする。通常のナッツなら、外皮は取り除かなくても大丈夫だ。ピテバを使った搾油の仕方は、ビデオ「搾油器で家庭用油を搾る」で紹介している。 

 

How to Make Cooking Oil and Fat

By Joanna Poncavage 

December 2013/January 2014

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