化石燃料の補助金:税金で環境破壊が援助される時

何千億円もの納税者のお金が、政府の補助金を介して、特定の産業に注ぎ込まれる。石炭、石油、ガス業界の場合は、化石燃料の補助金が、二酸化炭素を排出するのに資金を出している。

 

文 レスター・R・ブラウン(Lester R. Brown

  合衆国政府の740億ドルにのぼるエネルギー補助金は、毎年化石燃料産業に与えられている。この補助金を持続可能な産業へシフトすれば炭素排出量の削減に役立つことだろう。

  アース・カウンシル(Earth Councilの報告「持続可能でない開発の補助金(Subsidizing Unsustainable Development)」が指摘したように、「自信の破滅のために毎年世界が何千億ドルも費やすという信じられないようなことがある。」

  このようなアンバランスを正す方法は税金の配分:特定の状況で税金を上げると、環境を壊す活動を行う価格が真のコストに反映し始め、これが所得税全体の削減と相殺される。その他の方法としては、政府の補助金を持続可能でない業務から外すよう移すこと。

  気候変動の最前線では、多くの国は、化石燃料の補助金を無くすことで炭素排出量を削減できた。極端な補助金の例としてイラン。歴史的に石油の価格設定があり、国内用途を世界の価格の10分の1にしているため、車の所有とガソリン消費を強力に促進している。仮に、年370億ドルの補助金を段階的に廃止するとすれば、世界銀行の試算では、イランの炭素排出量は驚愕の49%の落ち込みとなる。お金を移すと、国の経済開発への投資に使える公共収益が増えて、経済を強くもする。

  イランだけではない。世界銀行は、エネルギー補助金を取り除くことで、インドで14%、インドネシアで11%、ロシアで17%、ヴェネズエラで26%、炭素排出量を削減できる計画を立てている。

  既にこれをやっている国もある。ベルギー、フランス、日本は、石炭の補助金を全て段階的に廃止して来た。ドイツは、1996年の67億ユーロという高さから2007年の25億ユーロまで石炭の補助金を削減し、石炭の使用が1991年と2006年の間に34%落ちた。ドイツは、2018年までに石炭の補助金を完全に廃止する計画。石油の価格が上昇しているため、多くの国(中国、インドネシア、ナイジェリアを含む)が、世界の市場価格より十分低い燃料価格を保つ補助金を無くしたり、大幅に削減したりすることで、重い財政費用を削減している。

  いくつかの先進工業国が化石燃料の補助金(特に石炭、最も気候を乱す燃料)を削減してきている一方で、合衆国は化石燃料産業への支持を増している。Earth Track(環境を破壊する補助金を調査する団体)創設者のドウ・コプロウ(Doug Koplow)が2006年の報告書で試算しており、これらの産業への合衆国政府の年間のエネルギー補助金は、合計で740億ドル。

  私たち納税者は、石油ガス産業に390億ドル、石炭80億ドル、原子力90億ドル与えたことに。コプロウの注釈では、今日、この数字は高くなっている見通しだ。汚染が少なく、持続可能なエネルギー源へ移行し、石油資源を保つという喫緊の必要性に直面しているにもかかわらず、議会は、これを義務づける不可欠な法律の制定に失敗して来た。だから、合衆国の納税者は、気候変動に一番寄与しているものへ補助金を払い続けている。

  気候変動に直面している世界は、石炭と石油の燃焼を拡大する補助金をもはや正当化できない。この補助金を気候に優しいエネルギー源(風力、太陽光、バイオマス、地熱など)の開発へ移し替えると、気候の安定に寄与するだろう。補助金を道路建設から鉄道建設へ移し替えることで、事実、多くの地域で機動性を高めつつ、炭素排出量も減らせる。また、補助金を伐採道路建設から植林へ移し替えることでも、排出を削減しつつ、世界中に広がる森林を保護し修復するのに役立つ。

  問題のある世界経済で、税金と補助金の移し替えは、政府が帳簿のバランスを取り、素晴らしいエネルギー効率と炭素排出量の削減、環境破壊の低減をもたらす ― 一挙両得だ。 

 

Fossil Fuel Subsidies: When Taxpayer Dollars Subsidize Environmental Destruction

By Lester R. Brown 

December 2013/January 2014