アヒルやガチョウを育てる: 自作農場主の水鳥ガイド

趣味であれ実利であれ、いずれにせよ水鳥は農場の新メンバーとして大変オススメ。彼らはほとんどの食料を自分で調達してくるし、虫や雑草をよいタンパク源にできる。保護するための簡単な住処と囲いさえあればいい。ガーガー鳴いたりヨチヨチ歩いたり水しぶきを上げる様子はかわいいが、アヒルやガチョウが家族にもたらす特典は何だろう?

 卵: アヒルは、種にもよるが鶏よりもたくさん卵を産む。卵の味は鶏もアヒルもそれほど変わらない。キャンベル(Campbells)やランナー(Runners)のような小さなアヒルの方が大型種よりも多産だ。(水鳥の種を選ぶときは、種の分類表の「俊敏なアヒル14品種」と 「群居性のあるガチョウ12品種」をチェックするといい。)ガチョウはアヒルほど多産でない。しかしガチョウの卵1個でびっくりするほど大きなオムレツが作れる。ガチョウの卵はよくとっておいて孵化させたり、アーティストが中身を取り出して、その殻で装飾的な宝石箱や工芸品を創ったりする。

 肉: どんな水鳥も食肉用に飼育できる。種によっては、食べる餌は少なく他よりも早く大きくなるものもいる。ただ肉と卵の生産は両立しない。食用に適した大型の種は、新鮮卵用に広く飼われている中小型の種ほど並外れてたくさん産卵しない。肉屋のカウンターで売られているアヒルの多くは北京ダックで、ガチョウはだいたいエンデン(Embden)だ。中型のムスコビー(Muscovy)アヒルの身は、柔らかい赤身肉で上質の子牛の肉に勝るとも劣らない。溶かしたアヒルの脂肪は焼きもの料理をするときに素晴らしいショートニング(*訳注 クッキーなどをサクッとした食感にする添加物)となる。食用アヒルの飼育は、種によるが2~4ヶ月で終わる短期プロジェクトだ。ガチョウは約6ヶ月で食用になる。

 雑草と害虫の抑制: 庭でアヒルは、生えてくる雑草や種、虫、ナメクジやカタツムリをむしゃむしゃ食べる。若芽や熟しつつあるイチゴなどは柵で囲っておけばいい。ムスコビー種はダニ、ハチ、蚊、ハエ、コガネムシなどの害虫を駆除してくれる。ガチョウもまた雑草の抑制が得意だ。特に若い中国ガチョウはとても軽いので食料探しの際に土を踏み固めない。むしゃむしゃ食べた雑草と虫はリンに富んだ肥料になる。土にまみれた住処の寝床にコロコロと転がって堆肥となるのを待っている。

 羽毛: 皮をむかずに鳥をローストするつもりなら、白い羽毛の種の方が、濃い色の種よりも羽をむしったときにきれいに見える。一方でカラフルな羽毛の水鳥は捕食者に見つかりにくい。鳥の柔らかな羽やダウンは、色に関係なく掛布団や枕やベストの詰め物にできる。楽しみと魅力: 水鳥は観賞用になる。珍しい種を保護したり、彼らのおかしな行動や美しさをただ楽しむ。たとえばセバストポール(Sebastopol)ガチョウは豪華な長い柔らかい羽を持っている。印象的なトサカやふさふさした羽を持ったいろんなアヒルやガチョウがもいる。

 

好きになれないところは?

 水鳥をじっとさせるのは難しい。種によっては飛ぶことを好むが、片方の翼の羽を注意深く切羽すればコントロールできる。アヒルはだいたい優しい。ガチョウは攻撃的になることがあるが、それは財産を守るのに向くと言われるガチョウの持って生まれた性質だ。ひっきりなしにガーガー鳴いたりヨチヨチ歩くのがご近所の苦情の種にならないか心配なら、ムスコビー種がいい。ガーガー言わないアヒルとしてよく知られている。

 

どの種を何羽?

 家畜アヒルは2種類ある。ムスコビー種(学名Cairina moschata)とマガモ(学名Anas platyrhynchos)から作られた種だ。

 マガモはペアで飼われることが多いが、オスのカモを少なくすればエサ代が節約できるし、メスも性欲の強いオスがいない方が安心するだろう。子アヒルが欲しくなければメスだけ飼えばいい。経験則だが気立ての優しいメスのムスコビー種なら庭は平和だ。ムスコビーアヒルはペアにならない。オスとメスは分かれて生活する。すべての種のオスは貪欲な性衝動を持っている。しかし少なくとも5羽のアヒルのグループで生活すれば、それほどメスを悩ますことはない。ムスコビー種とマガモ種のカップルから生まれた子は通常は子供を産まない。ガチョウはペアやトリオを作る。一方、小型のオスのガンは最高6羽までメスを獲得し、大型のガンは最高で4羽を引き受ける。ウェルシュハルクイン(Welsh Harlequin)のような小型のアヒルの中には年に300個もの卵を産むものがいる。エムデン(Embden)ガチョウは年に15-35個しか大型の卵を産まないが、6ヶ月で6,350グラム(14ポンド)のと体【鳥をと殺し放血、脱羽したもの】体重になる。草刈としてなら、46㎡強(500平方フィート)の庭に2羽のアヒルを飼えば害より益が勝る。2羽の大人のガチョウでは害が大きくなることもあるが。子供のガチョウなら春の草刈に最高だ。

 

始めよう

 子アヒルや子ガチョウを飼育するのは鶏よりもずっとやっかいだ。水鳥は水の中で遊ぶのが好きだ。清潔で健康的な環境にするためには、しょっ中寝ワラを変えなければならない。育雛機に段ボールは使えない。極度の湿り気が必要なので(拭きとるのにモップがいるほどだ)プラスチック製の大きな保管容器がいい。それに鋼製金網で作った床を敷いて底上げする。金網は鳥が足を引っかけないよう切り口を下へ曲げておく。飲み水を清潔に保つために水遊びしないような給水機が必要だ。広口のボールや平鍋に水を入れ、防腐処理をしていない清潔な木材を浮かべる。木材を容器よりもわずかに小さ目に切ると鳥は木との隙間からしか水が飲めなくなる。食料や水は育雛機のそれぞれ両端に置いて、餌が水びたしになったり水が泥だらけになったりしないようにする。市販の水鳥ヒナ用配合飼料がなければ、鶏の雛用粉クズ餌(crumble)を使えばいい。ただし抗コクシジウム剤(鶏の腸の寄生虫駆除の薬で水鳥には不要)が投薬されていないものを使い、家畜用ビール酵母(約11キロ一袋の雛用餌に1.36キロのビール酵母)を足して、ナイアシン不足を補う。ナイアシン不足は骨や関節の病気を引き起こす。だいたい赤外線熱ランプか電球で育雛機を温める。しかし熱くなったガラスの電球は冷たい水がかかると割れてしまう(テフロンやPTFEでコーティングされた割れ防止電球は、鳥が死んでしまうので要注意)。水鳥の飼育を続けるなら、インフラサーム社(Infratherm)のスイーターヒーター(Sweeter Heater)のような、密封されたペット用赤外線ヒーターが安全で買う価値がある。マガモ系の子アヒルなら7~10週間、ムスコビー種や子ガチョウなら16週間、全身が羽でおおわれるまで雨や風や熱い日差しを遮断する。

 

アヒルやガチョウをリラックスさせる

 アヒルとガチョウは相性がいいので、両方とも農場で飼ってみたらどうだろう。ガチョウは侵入者に攻撃的だが、家畜のアヒルは飛ぶのが下手だったり全く飛べなかったり、中には体が重くて早く歩けないアヒルもいる。ガチョウと一緒に飼えば捕食者からある程度は守ってくれるだろう。小さな庭で水鳥と鶏や七面鳥を一緒に飼ってはいけない。アヒルやガチョウは濡れた環境を好むので、鶏や七面鳥の健康によくない。

 

フェンスで水鳥を安全に閉じ込める

 90cm~120cm(3~4フィート)の高さの狭いメッシュのフェンスは、ほとんどの種に適合する。モスコビー種(フェンスの上にとまりたがる)や小型のガチョウは150cm~180cm(5~6フィート)のフェンスの方がいい。

 コヨーテやアライグマのようなほとんどの捕食者は夜に徘徊する。保護のためにしっかりした住処を建てて日没には鳥がそこに入るよう訓練する。メスはその中で卵を産み、風雨や直射日光をさける。パイン材のかんなクズで寝床を作れば、掃除が楽になり卵は清潔に保てる。鳥を閉じ込めているとき水は置かない。置けば退屈と水の魅力で住居は水浸しになってしまう。また夜の間寝床では何も食べない方がいい。ぐっすり寝て朝食をとても楽しみにする。アヒルやガチョウは水の中に飛び込んだり跳ね回ることが大好きだ。より大型の種は交配と産卵に水がいる。小さな池も貴重だ。水と接することで鳥は清潔に羽毛を整えることができる。セバストポールガチョウは派手な羽の手入れのために水を必要とする。唯一ムスコビー種だけは水浴びや交配のために池なしでもやっていける。水場があれば小型種なら手軽に利用できるし掃除も簡単だろう。子供用プールでも清掃用の配水口と傾斜台(小さな泳ぎ手がよじ登って水に出入りする)がついていれば十分だ。

 

人が餌を与えるか鳥が餌をあさるか

 マガモ系のアヒルは必要な食料のうち90%は植物で満足する。残る10パーセントは蚊やおたまじゃくしのような生きてるスナックから摂取する。ムスコビー種の食事は、ナメクジやカタツムリやホリネズミの赤ちゃんなど肉系のおやつが多い。ガチョウは完全なベジタリアンだ。

 水鳥は、卵や肉の生産のために食べさせられるのでなければ、必要な栄養のほとんどを自分で調達できる。穀物や市販 の飼料で食事を補うことは、鳥が冬の時期をすごしたり産卵の 時期に生産性をアップするのに役立つ。豊富な食料が身の 回りにある鳥には、朝と夕方に 15 分以内で食べきる量の市 販飼料をやれば十分だ。

 庭に流水の泉や小川がなければ、鳥のためにたくさんの飲 料水を用意しなければならない。水分補給に加えて、アヒル やガチョウは鼻孔から水を噴出してくちばしをきれいにする。 水飲み桶は洗い易いもので、かつ鳥が頭全体を入れることが できるものでなければならない。水を餌の中に入れないため、 また餌を水の中に入れないために、餌と水の間に少なくとも 180cm の距離をおく。 水鳥は見て楽しいがよく散らかすものだ。 

 

ゲイル・ダムロウ(Gail Damerow)は、「Hatching & Brooding Your Own Chicks: Chickens, Turkeys, Ducks, Geese, Guinea Fowl」の著者(2014 年 3 月 31 日まで割り引きで利用可; 注 文は 96 ページ)。彼女と彼女の夫は、テネシー州の農場で、 ヤギ、家禽類、果樹、実り豊かな菜園の世話をしている。 

 

Raising Ducks and Geese: A Homesteader’s Guide to Waterfowl
February/March 2014
By Gail Damerow

 

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