エコな選択肢: 子供無しの暮らし(GINKs)

ある女性が子を産まないという選択の善し悪しについて考察。

 

文 リサ・ハイマス(Lisa Hymas

 

 

1969 年、卒業生のステファニー・ミルズ (Stephanie Mills)が、全国ニュースの見出しを飾ったのは、学位授与式の演説。演説で宣言したのは、差し迫った環境破壊に直面し、子供を持たない暮らしを選ぶこと。「とても悲しい事実ですが、私にできる一番人道的な事は、子供を持たないこと。」と彼女のクラスメイトへ言った。

 エコな選択をするのは、犠牲、口論、出費のような気がしすぎるものだが、この場合は、心地よい免罪符のようで、私にとってはるかに少ない費用で、炭素であふれた環境にとても少ない負担で済む。私は自分のことを「GINK(エコ好み子 供無し)」と呼ぶ。

 

子を持つ親たちへ

まず、ずばり言うと、私は子供が好き ― まあ、誰でもみんな。私の大親友は、私の両親。私が病気をしないのは、生みの親のおかげ ― 過去、現在、未来も。 私は、道義的、倫理的に優位に立ちたいとは思っていない。

 あなたの選択を尊重するし、親になるのがある種の憧れや計画であったり、既に船出している旅路だったりするなら、幸せを願う。どうぞ前へ進んで、幸せで健康な子供を育ててください。喜びや達成感をもたらすだろうし、社会の生産的な一員となり、社会保障税を忠実に払うだろう。

 もちろん、親ないし、親になりたい人たちは、私の励ましは不要。なぜなら、社会は既に圧倒的にあなたの決断を支持しているから。はい、そう、合衆国は、有給の家族休暇、児童手当(universal child care)、子のある同性のカップルの基本的人権が不足していて、これらの欠点を直すべき。でも、税制上の優遇措置から家族主体の仕事場の利点まで、熱心な祖父母から子供はいつできると尋ねるまだ祖父母になってない人まで、「恋愛だけじゃダメかしら?【原題:What to Expect】」症候群から増えているママやパパのブログまで、私たちの文化は、子を持つと強く決めさせる ― あらゆる方法で、ほとんど命令だ。それから ― 些細なことでなく ― 生物的にもそうだ。

 だから、この記事は読者の皆さんのためではない。意図的に子を持たなかったり、子無しの暮らしに関心があったりする人で、社会にそれほど歓迎されない人たちのためだ。親である人は、良ければ読み続けてください。でも、自分の子を持ったら違った気持ちになると他のみんなに言わないと約束してください。

 

なぜ子を持たないか 

 これが少々いかがわしい秘密: 子の無い暮らしにはたくさん特典があり ― 汚染され過密な地球の上に送り出す人類を少なくすることから来るたくさんエコなことがある。

 そう、子を持たないことで経験し損なうこともある:子が生まれる奇跡(でも、実を言うと、私は、経験しなくてもそれほどいやな気持ちにならない)。子供ならではの感覚で言う陽気なこと。ハリーポッター シリーズを読み返すもっともな理由。子供が自分よりも賢く素敵で外見が良くなるよう望むこと。もっと騒々しい休日のお祝いごと。誰が家族の名を引き継ぐかということ。(子がもらう名前をかけてパートナーとやる腕相撲対決で私が勝つことを想定してるけど)。十分教育を受け、良く順応した大人に育つよう子供を助ける満足感もあるかも。それから、年老いたら私の世話をしてくれるのではというちょっとした期待も。

 でも、親が失うものもたくさんある(初めて読者のみなさんに伝えるものもいくつかあるだろう):友情やロマンチックな愛情にかける時間と感情のエネルギー。キャリアアップ、教育、趣味に集中する余裕。邪魔されずに盛り上がる会話。本当に衝動的、レジャー的、冒険的な旅行(ちなみに動物園は除外ね)。土曜の夜に無計画に町中で、日曜にはブランチにお出かけ。もっと政治や地域に関わる機会。 静かな読書、書き物、くつろぎを引き伸ばせること。子供に安全でなく、オモチャがちらかることなく、金魚スナック【Goldfish-cracker:金魚型のスナック】のカスだらけで無い家。邪魔されない睡眠。しかもこれ全部、子供と質の高い時を過ごすべきという気のとがめがない。

 

お金と幸せ

 子供無しの暮らしはまた、経済的な自由を意味する。子供にどれほどお金がかかるのか? 302,000ドルが 2012年生まれの子供一人に。家計収入が年間60,000から105,000の親に対してのもので、合衆国農務省の数値による。これは最初の17年のみで、大学は含まれず。もっと稼いでいる場合は、もっと費やす傾向がある。年に105,000以上稼ぐ夫婦は、子供一人で最初の17年に501,000ドルという平均を押し下げることが期待できる。

 子を持たないことで幸福の面でも豊かでいられそう。ハーバー ドの心理学教授で幸福専門家のダニエル・ギルバート(Daniel Gilbert)はこのように説明している:

 「おそらく本当ですが、子が無いことで、もっと日々の満足感があるという意味で夫婦生活はより幸せになるかもしれません。人々はこれを知って驚きます。なぜなら、何にも増して自分の子供を愛して大事にしているからです。」では、どうしたら子供たちが大きな幸せの源でなくなるのでしょうか?」

 「理由のひとつは、子供は幸せの源だが、他の幸せの源をかき消す傾向があること。初めて子を持った人は最初の 1、2 年で分かることが多いのは、以前自分たちを幸せにしていた他のことの多くをしていないこと。映画や劇場に行かない。友達と出かけない。配偶者と性交渉しない。」

 ギルバートはこの話題について更に自著「幸せの過ち (Stumbling on Happiness)」で語っている。「入念な研究で、女性が日々の活動に向かうのにどのように感じているか示されていますが、食べたり、運動したり、買い物したり、昼寝したり、テレビを観たりする時よりも、子供の世話をする時の方が少し幸せではない。ただ、子供の面倒をみることは、家事をするよりもほんの少し嬉しいと見受けられる。」

 「何一つ驚くべきことではないです。どの親でも知っていますが、子供にとても苦労 ― 本当に大変な苦労 ― します。 子を養うと、たくさん報われる瞬間がありますが、その多くは面白くない無私の奉仕で、控えめに言って養った分だけの人物になるまでに何十年もかかります。」

  さらに、扇動者である卒業生代表のステファニー・ミルズは、 子を持たない決断を最初は自己犠牲と考えていたものの、近年言っている。「個人の良い選択だとはっきりしてます。」と言い 「私は強情なくらい自立していて、孤独と自由を愛してます。私の知る他の女性は、きつい仕事と母親を両立できている。私の特性を考えると、仕事の責任と子を育てる錯乱は、ほぼ間違いなく、ライターとしての仕事を追求するのを妨げるでしょう。とても 大きな価値がある仕事を。」

 彼女が子を持たないことに全く思いを巡らせなかったと言うわけではない:「今ではおばあちゃんになれるほど年をとり、時には、孫娘と仲良くできたらなと思いますが、見所のある若者と友達なので、彼らから学び、また、私の培った知恵は何でも伝えています。それがやるべきことでしょう。」

 結局、ミルズが言うように、人生は取捨選択の連続。意図して子を持たない暮らしの意味するところは、ドアがいくつか閉ざされているが、他のドアは開いていて ― やっかいなドアノブはない。

 

子供たちが泥(炭素)の足跡を残す

 きらめくドアノブからさらに、子を持たないことの環境面での利点を考慮しよう。

 世界の人口は 2011 年に 70 億人を越えた。これと比較して、 36 億人が地球にいたのは、ミルズがみんなを怒らせた 1969 年 のこと。私たちは、温室効果ガスを大気中へ噴出して来た。多く の気象科学者が同意する安全域を越えるに十分なほど押し進め、 二酸化炭素が 350ppm となった; 今は 400 で急上昇中。しかも、 合衆国の居住者が地球上で最も汚染している。合衆国民の平均で、バングラディシュの平均より 66 倍多くの二酸化炭素を放 出している ― 20 トンに対して 0.3 トン。

 自分の子供の炭素排出量だけではなく、子供の子供の、そのまた子供のというように考えていくと、この数値は更に丸裸になる。

 子孫の代まで長期的な影響を考慮している世界環境チェンジ(Global Environmental Change)誌の 2009 年の研究によれば、合衆国の子供はそれぞれ、概算 9,441 トンの二酸化炭素を親の炭素遺産に上乗せする ― 遺産はその 5.7 倍。

 「多くの人は指数関数的な人口増加のパワーを気にかけていないのです」と共同研究者でオレゴン州立大学の統計学教授のポール・マートウ(Paul Murtaugh)は言い「将来の人口増加が、今日の子孫繁殖の結果を増幅するのです。複利で預金残高が増えるのと同じよ うに。」(極端な事例として、子の無い自分と比較してみよう。ニューヨー ク州モンローのイッタ・スチュワーツ(Yitta Schwartz)は、子供 15 人、孫 200 人、概算で全子孫 2,000 人を残して、2010 年に 93 歳で逝去。ニューヨークタイムズによる。)

 住み易い環境を維持するよう注意している人には、自分の分担を果たすのに無数の選択肢がある。こちらは全て読者のみなさんが聞いたことがあるもの: 省エネな家に住む。自分で食物を育て、残りは地域でオーガニックのものを買う。肉は少なめに食べる。自転車に乗 り、歩き、公共交通機関を可能な限り利用する。燃費の良い車を運転する(決まった一台を運転する場合)。飛行機は少なめに。消費材 の購入は限定する。LED や蛍光ランプに変える。気候変動を懸念する候補者に投票し、選挙公約を果たすよう注視する。でも、総和であっ たとしても、これら全ての行動は、新たな人 ― 特に合衆国民 ― を世界に増やさないことによる影響には及ばない。これがシンプルな真実: 私のような平均的な人にとって、子の無い暮らしは、綺麗でエコな世界のために私にできる最も意義ある貢献だ。

 

声をあげよう

 子を持たないはっきりとした理由は、なぜ大胆不敵な気がするのか? もし公然と子供無しと判定されたら、私たちは実際は存在しなかっただろう。でもそうではなかった: 合衆国のほぼ 20% の女性が、子供を産まずに 40 代を迎えている。

 親はいつでも子育ての苦労と喜びについて ― 他の親や残りの人に ― 語るが、私はうらやましくない。子供の無い夫婦は、一方で、子供の無い暮らしの良い点悪い点について公衆の面前でめったに話さない。これは変えるべきこと。もしあなたが意図して子供が無いなら、「で、いつ子供を作るの?」と何度聞かれてきたことだろう。ごまかしてぼそぼそと答えて、「あぁ、分からないわ。」や「う~ん、ちょっと無理そうね。」や「そのうちきっとね。」 ― 本当に意味するところは「絶対無い」 なのに。

 子供の無い人たちは、子を持つ親たちを入念に踏みにじる。なぜ違った選択をしたのか真実を言う場合に、まるで彼らの気持ちを傷つけるかのように。でも、私たちは、彼らの選択が非常にもろく不安定だと考えることで侮辱して ― 子を持たない正当な理由を公然と話さないことで自分と社会に対してごまかしまくる。

 子供についての質問に正直に答えたらどうなることだろう? 「いいえ、今まで通りの暮らしで幸せ」、「子供は人生計画に合わない」、「子供たちは全く自分と無縁」、「既に地球上にたくさん人がいると思う」。

 私たち皆が本当に思うことを言ったら、実際、GINKS その他の同じような(少なくとも共感の)気持ちがたくさん出てくる気がする。世の親たちと、気持ち良く素直で喜ばせるような会話をしてもよいかもしれない。それから、親になるか決めていない人たちへ、理解させてあげられそうだ。意図して子供無しで暮らすことは実に妥当で ― 孤独ではないということを。天からの(お荷物のような)授かりものは万人のためでは無い ― 今が声を上げてそう言う時。

 

リサ・ハイマス(Lisa Hymas)は環境ニュースのウェブサイト Grist.org のシニア・エディター。サイトにこの記事の初版が登場。 彼女はまた GINKs ブログを www.GINKThink.WordPress.com に て書いている。

 

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