都会の農的暮らしのガイド

都市近郊の農的暮らしのワザを学ぼう。例えば、小型のコンポスト、都市型養蜂、雨水収集システムの設置法など。

都会に住んでいて、いつか土を耕す農的暮らしをする人になることを夢見ている人は次のことを考えてみよう。待つ必要なんてない。都会でも簡単にできる農的なことはたくさんある。庭には自分の小麦やトウモロコシを栽培するための十分なスペースがないかもしれないが、プランターを並べて多様な作物をびっくりするほどの量、収穫できる。

自分の乳牛を飼う選択肢はなさそうだが、裏庭に鶏を飼うのは確かにできる。さらに、街の中では道具や知識、友情を共有でき、同じ志を持つ近所のコミュニティを作るのははるかに簡単。

 こんな感じだ。カリフォルニア州ペタルマの組織「デイリー・アクト(Daily Acts)」と共に活動する6世帯が1年でやったこと。1,350kg以上の食料を作り、900kgの地元の果物を採り、堆肥やマルチとして使用する都市の有機性廃棄物を1,800kg以上集め、185本以上の果樹を植え、雑排水や雨水を集水するシステムを5つ導入し何万リットルという水を節約。蜂、ニワトリ、アヒル、ウズラ、ウサギの世話し、エネルギー使用量を削減し、公共交通機関を使う機会を多くした。この全てが6世帯で出来たこと! (都市型自立の別の例については、ネイバーフッド・ガーデンズ・クリエイト・コミュニティ・フードセキュリティ(Neighborhood Gardens Create Community Food Security)の「ホームステッドハムレット」を作り上げた中西部の地域市民の記事を参照)。

 缶詰、発酵、スープ作り、種子保存、縫製、編み物、養蜂、キャンドル作り、水とエネルギー管理といった伝統的なスキルを学ぶことはあなたと隣人を建設的な方法で結びつける。それらの都市型の農的な手仕事は、お金を節約し、豊かさを作り出し、創造性を活かし、生活の必需品と触れ合わせてくれる。講座や講演、近所の年長者、地域活動、図書館の資料本で、これらのスキルを学ぶことができる。

さあ、あなたの地域で、学び直しを始めてみませんか? 以下の手順で、より持続可能な都市生活への道を歩むことが可能になる。

 

1. 観察と交流

 スローダウンして、行動する前に、今住んでいる場所でじっくりと見よう。観察を通して、あなたは長く続く成果を出す自宅についてより賢く、責任のある選択を行うことになる。バイオリージョン(生態地域)について出来る限り全てを学ぼう:蛇口から出る飲料水の水源を追跡することができるか?誰があなたの食物を育てているのか?ゴミや汚水はどこに行くのか?

 観察は、住んでいる自然資源(水、太陽、風、作物を育てるための使用可能なスペース) を明確に評価するだけでなく、地域の住民との交流も含めて行うべき。例えば、あなたが鶏小屋を設置したい場所と隣人がどれだけ近いかを考慮する。群れを共有し、雑用や恵みを共有する方が効率的かもしれない。

  さあ、始めよう!観察と交流はパーマカルチャーデザインの重要な原則だ。パーマカルチャーの概念は「パーマカルチャーデザインの原則」http://goo.gl/pJdfGq に概要がある。自然を師として活かすことは、周囲環境の価値を判断するのに役立つ。

 

2. 街で食物を育てる

 都市部の菜園家にとって最大の難関の 1 つに食物を育てる スペースを見つけることがある。コミュニティガーデンで情熱を もった菜園家と小さな区画の土地で隣り合うことは、学びを得 るための絶好の機会になる。隣人のボサボサな庭をフェンス 越しに見ることがあれば、その庭を生産的なものに変えるよう 申し出て恵みを共有することも出来る。垂直スペース(強い日 差しを浴る南向きの壁がプランターに植えた豆とトマトに最適 な微気候を提供)、平らな屋根、放置された区画を使用する。 私道の舗装を掘り返すこともできる。一部の都市では、景気の 低迷が素晴らしい未開発の区画をたくさん産んできた。それ らの多くを豊かな食物を育てる地区に変えることができる。

 小さなスペースでたくさん食物を育てられる。パティオまたは 駐車場は 1 日あたり約 6 時間日光が当たるが土がない。揚床 で庭を作るか、樽や収納箱の底にパンチで排水穴を空けて 植えることができる。20L のバケツに、ニンジン、西洋ネギ、ジャ ガイモをたくさん栽培することができ、レタスは小さな区画で一 生を過ごすことができる。柱状の果物の木は分岐せずにまっ すぐに育つと、小さなスペースに簡単に収まるだろう。作物を 育てるのに日影になる場所しかない場合、丸太や藁に新鮮な。

 食物を育てる方策として、わい性果樹、垂直菜園、耕作放棄 地の利用があり得る。

キノコを育てるために菌を植える。

 さあ始めよう! 生産的な小さな庭作りをする方法は、http://goo.gl/D2LkCc を参照。自家製のキノコの栽培の詳細は http://goo.gl/bStfsA を参照

 

3. 育てられない作物を調達する

 自家製の食物は、より持続可能なライフスタイルへの玄関口 になることがよくあるが、あなたが本当に作物を育てる余地が ない場所に住んでいる場合でも、健康的な食べ物を調達する ことができる。ファーマーズ・マーケット、地域支援型農業 (CSA)プロジェクトや地元のフード・コープは皆素晴らしい選 択肢。食品を共同購入するグループに参加したり、開始した りすることで、中間業者をカットして卸売業者から直接食料を 購入する。また、季節ごとの食べられる野草を見つけ、使われ ていない果樹から採集することも出来る。

 さあ始めよう! www.FallingFruit.org で公共の果樹や野草 の地図(あなたが知っているスポットの追加もできる)を見よう。

 

4. 小規模に堆肥化する

 コンポストは庭の天与の錬金術。「ゴミ」を肥沃な土壌に変えるトリック。午後にでも、3枚の木製パレットをハンマーで一緒にし、裏庭に簡単なコンポストを作る。害虫がわいたり神経質な隣人と格闘があった場合、蓋付き既製のプラスチック堆肥を購入する。蓋付きの大きなゴミ箱の底に排水穴を簡単に開けることでも良い。

 ミミズコンポストは小規模な堆肥化容器。室内に置き、小さめの野菜くずを、最高の土壌改良の1つである、ミミズ堆肥に変えることができる。

 さあ、始めよう!堆肥化のヒントの宝庫を http://goo.gl/dp5Hhq から掘り出そう。容器選択の情報源は「ベストなコンポスト選び」【その他「堆肥の作り方」で検索】 で。ミミズ を保つ最適な環境は http://goo.gl/bcpcUZ を参考に。

 

5. 都会で家畜を飼う

 動物は裏庭をミニ牧場に変え、窒素豊かな肥料を提供してくれる。裏庭ニワトリや裏庭ウサギは都会の農的くらし(Homesteading)では最も人気な動物であり、裏庭養蜂家も数を増やしている。冒険好きな都会のファーマーはヤギや豚まで手がけている。一部では、若鶏はよいが雄鶏は禁止という自治体もあるので、どの動物の飼育が許可されているのかお住まいの自治体に確認してみるとよい。他の人と協力して動物を育てることで、飼育の責務や負担が軽くなる。慈悲深く面倒を見ることができる動物の数だけ飼い、ニワトリが卵を産むのをやめた時に自分が何をするか考えるように(なぜなら、ニワトリはいずれ卵を産まなくなるから)。

 さあ始めよう!「裏庭ニワトリ基本書(Backyard Chicken Basics)」をのぞいて、手軽で持ち運び可能、天敵からも安全なニワトリ小屋を作る計画を立てよう。ウサギがなぜ小規模な農的暮らしに非常に有用なのか、そしてDIYウサギ小屋の作り方と必要な準備を知るため、「ウサギ:小規模農的くらしの頼れるお肉(Rabbit: A Great Meat Animal for Small Homesteads)」を参照。

 

6. キッチン・マジックを作る

 鍋とフライパン、チーズ用の薄布とこし器、ビン詰め用ビンとワインボトルを使って、かつてどの家でも普通に行われていたキッチン・マジックを再現してみよう。料理は節約になるし、どのような材料で作られているのか自己管理することにもなる。

 近所で開催されている料理教室を活用し、キッチン・マジック友達を作り、持ち寄りパーティでレシピや料理のコツを共有しよう。そして、あなた特製の食べ物をつくるため時間とエネルギーを費やそう。自家製パンや自家製チーズは決して夢ではない。

 さあ始めよう!超簡単なチーズ作りは「チーズの作り方:基本編(How to Make Cheese: The Basic Steps)」を参照。アンドレア・チェスマン(Andrea Chesman)著「原点への回帰:伝統的キッチンの知恵(Back to Basics: Traditional Kitchen Wisdom)」はチーズ作りの基本事項を網羅している。パン作りには、こねないものからサワードウまでいろいろな選択肢がある。レシピは、マザーの「手作りパンの作り方ガイド(Homemade Bread Baking Guide)」を参照。

 

7. 食品を保存する

 地元農家の旬のもの、自分で育てた農作物など大量の食物を保存するには、冷凍させたり、乾燥させたり、缶詰(浸け型、圧力型いずれも)にするのがよい。近くのリンゴの木から果実を拾ったり、ファーマーズマーケットで大箱入りの超完熟トマトを手に入れたら、リンゴバターやトマトペーストの瓶詰めの方法を知りたくなるだろう。低温殺菌や冷蔵技術が普及する以前は、発酵が食品の主要な保存方法だった。チーズやザワークラウトは発酵食品の身近な例。

  さあ始めよう! 「食品保存テクニック集(A Collection of Food Preservation Techniques)」を読んで、ビン詰めやドライフード作り、冷凍、ピクルス浸けの方法を学ぼう。自家製ザワークラウトを作るには、「キャベツがあるって?ザワークラウトを作ろう!(Got Cabbage? Make Sauerkraut!)」を見て、そしてサンドール・キャッツ(Sandor Katz)の本「 ワイルドな発酵(Wild Fermentation)」でレシピを拡げよう。

 

8. エネルギー手段を見直す

 家持ちの人はもちろん、家を借りていても、家のエネルギーを節約するためにできることはたくさんある。冬期には、断熱窓シェードや透明なアクリルパネルを設置しよう。窓枠の隙間を埋め、暖房ダクトを覆おう。温度自動調整器は冬期はいつもより温度を下げ、夏期は上げてみよう。エネルギー効率の高い電球に取り替えよう。これらは2、3年でもとがとれる。太陽光をいつでもできるだけ活用しよう。可能であれば太陽温熱システムを導入し、とにかく物干ロープを張ろう。電気を一切使用しないソーラーオーブンでスープを作ったりパンを一斤焼いてみよう。簡単な箱からソーラー集熱器を作り、家の中にパッシブソーラーの熱を引き込もう。

  さあ始めよう!「ウチ暖房への手引き(Guide to Home Heating)」を精読してエネルギー効率の高い暖房設備の広範なリストを見てほしい。冷房設備については「自然冷房計画(Natural Cooling Strategies)」を参照。ドライフード製造器から水ポンプにいたるまで、印象的な DIY ソーラー案の一覧は、「太陽利用で建てよう(Build it Solar)」のウェブサイトを参照。

 

9. 都市の水道資源でやり繰りする

グレイウォーター(Greywater)は、洗濯機の脱水時や風呂場のシャワーやバスタブから流れ出る汚水度の低い水。低予算の配管工事で、この使用水をあなたの庭へ直接引き込むことが可能(ただし、石けんや洗剤が生分解性であることを確かめること)。グレイウォーターシステムを構築する前に、自治体の条例を確認しよう。グレイウォーターを再利用する最も簡単な方法は、排水溝にバケツを設置すること。くぼ地や土塁を作ったり、排水溝から雨水桶に汚水が流れるようにしたり、タンクを使ったりして、雨水を貯めよう。

  さあ始めよう!「洗濯から庭作りへ:水道水からグレイウォーターへ(From Laundy to Landscape: Tap Into Greywater)」からアイデアをもらい、グレイウォーター利用に取りかかってみよう。「雨水収集システムをつくろう(Build a Rainwater Harvesting System)」には雨水の利用方法が記載されている。

 

10. 移動をシェア

自転車通勤を精神のみならず身体の健康のために実践する。電動アシスト自転車は汗なし通勤を可能にし、特に高低差のある道には最適。それから、台車を取り付けよう。カーゴ自転車を使うと、2つの車輪でたくさん運べることを知るだろう。どうしても自動車通勤をしなくてはいけないのならば、自家製バイオディーゼル燃料を検討しよう。都市居住者であれば、使用済み植物油を喜んで提供してくれるレストランがきっと近くにあるはず。

  さあ始めよう!「カーゴ自転車ガイド(A Guide to Cargo Bikes)」を読み、人力交通を検索し、素早く記事をチェックしてみよう。「バイオディーゼル燃料:自家製燃料(Biodiesel Fuel: Homegrown Oil)」を読んで使用済み植物油から自家製燃料作りに挑戦してみよう。

現代の農的暮らしは、不景気時代思考への回帰ではない。禁欲的でも終末的でもある必要はない。むしろ、農的暮らしには、私たちが怠惰や悲観的思考から抜け出し、豊かで自信に満ちた思考へ転換させてくれるスキルや行動が満載。

 都市型農的暮らしは、単に拾ったリンゴから素敵なアップルパイを作り、パンクしたタイヤの修理方法を学ぶことではない。意味するところは、私たちの意識を高め将来のための保全や保護の倫理へ転換させてくれる様々な活動に従事することに他ならない。

  

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