日照りや猛暑でも食料を育てる

水やりを抑える方法を、おすすめの早成りの多年草とともに役立てて、気温が上昇しても菜園を元気にできる。

 

ここ数十年の間に、食物栽培者として何かを学んできたとするなら、それは、天候の変化によって、われわれの庭や農地に、ひとつどころではない、何種類ものストレスが加わってきたということだ。「地球温暖化」ではその「新基準」を十分に言い表しているとはいえない。というのも、多くの食べ物が流され、農地は数々の壊滅的な洪水や凍結、干ばつ、山火事、熱波、バッタの大量発生、農作物の病害と、過去数年にわたりに見舞われてきたからだ。

 多くの農場経営者や園芸家が直面している矛盾した大問題とは、私たちがどのように、不確実なことに適応し備えるかだ。最初は、そうした疑問には答えようがないと思われるかもしれないが、世界のあらゆる地域の農場経営者は、何世紀にもわたって、より良質な農作物を選択し、日照りと風による最悪の影響を緩和する方策を打ち出すことで答えてきた。

 最もよく適応するには、1年生の異なる農作物が何千種類も必要だが、それらは農地で進化し、継続的に変化する気候状態の中で評価されるもので、新たな病原菌や害虫、雑草から受ける圧力に対応する種類である。だが、どの1年作物の種が、干ばつや熱波、深刻な嵐や、直面する他の天候災害にもっとも適切に立ち向かえるかを、一体どのように特定し選択すればよいのだろうか。

 

砂漠の植物に学ぶ

 既に暑く乾燥した状態に直面している南西部の園芸家、果樹栽培者として、私は身の回りに生えている砂漠に自生する野草からヒントを得ようと思い、干ばつに対処する方法はひとつではないことを確信した。ほとんどの種子カタログでは、「乾燥耐性」と「耐乾燥性」という言葉が言い換えられていて、よく、全ての砂漠植物に当てはまると誤用されている。耐乾燥性の多年生植物には、ナツメ、ビワ、マカダミアナッツ、桑の実、柿、ザクロなどが含まれる。本当の乾燥耐性とは、イナゴマメやナツメヤシのうように、根深で砂漠に耐えうる樹木という特徴があり、これらの樹木は、根を下に伸ばし、地下の帯水層に入り込むことで、雨が降らなくても何ヶ月も生き延びることができる。

 正確さを期するために、カテゴリーをもうひとつ提案する。多くの1年生草本植物と多年生草本植物には、日照りによる乾燥を避ける干ばつ回避機能がある。それらは、発芽のきっかけとなるのに十分な強さの降水と共にライフサイクルが始まり、やがて短い雨季が終わるとそのサイクルを終える。深刻な土壌と水の不足が再来する前に、果実を熟成させ、種子をばらまくことで、乾燥と日照りによるストレスを回避するので、広範囲の干ばつが実際に起こることはない。早熟で、旬の短い野菜や穀物の多くは、この干ばつ回避戦略を採用している。

 旬の短い作物は、水不足で気候が安定しない時期に重宝する。というのも、農地に移殖された後、90日どころか60日で成熟し、水とエネルギーを節約するので、同等な晩成の作物より20~25%少ない灌漑ですむかもしれない。「乾燥耐性作物と品種」の表で示しているのは、干ばつ、害虫、早期凍結、晩期凍結に抵抗せずに、それらを避ける早熟で耐熱性の品種。例えば、「Tarahumara Harinoso de Ocho」や「Onaveño」のような、ソノラ砂漠産の最盛期が短い

 フラワーコーンや、湿度が高く温暖なケベックのトウモロコシ「Gaspé Flint」でさえ、45日で房をつけて穂を出し始め、約60~70日で、挽いて粉にできる乾燥した完全に成熟したトウモロコシ粒になるだろう。

 南西の端から北東の端までのこれらの例で、全ての地域には、一般的な成長期に応じて早熟種がいくつかあることを強調した。

 

農作物の回復力

天候の予測が立たないとき、食糧生産の回復力を高めるもっとも効果的な方法:

 1. 単一栽培をなくす。同じ区画や農地に、同じ(または同類の)種の複数品種を育てる。開花時期や凍結・熱への耐性、必要な水分量などの異なる品種を混作することで、リスクを分散し、収穫全体の打撃による圧迫のほとんどを回避する。

 2.干ばつ除けを植える。混作する農作物の構成要素の中には、土壌の水分レベルが一時的に足りている短い雨季に発芽でき、早熟で生育時期の短い品種を含むべきで、それにより、灌漑の必要が減り、収穫不足の危険性が下がる。(おすすめの乾燥耐性作物と品種は「乾燥耐性作物と品種」を参照の。)

 3.多年生植物を含める。多様な生育習性を持ち、さまざまな植物群からなる、1年生種と多年生種の混作を活用すること。この方法により、より多くの雨と日光を集約的に取り入れる多種栽培を確立し、それに比例して地下水や化石燃料の使用量を抑える。例えば、果物や木の実、マメ科の植物の樹冠木の下に野菜を植えること (「帯状農法」として知られる技術) により、野菜が最高最低気温に晒されるのを和らげ、雹のような厳しい気候事象による潜在的な危険を最小限にする。チリ唐辛子のような、いわゆる陽性植物でも、メスキートやアメリカサイカチ、サクランボ、プラムの木の部分的な木陰で、実際によく育つ地域もある。

 その上、多様な作物を混作する ことで、地中の有用微生物も共有 する。天候による混乱という脅威 を回避するに足る回復力のある、 多様な農作物を栽培するためのモッ トーは、「1年生植物だけで育て ず、多年生植物を忘れずに。」

 4. 混作を試す。つる性の豆やス イカのような、つる植物種の多く は、既に数十年あるいは数世紀か けて、混作に適するよう選別され てきた。トウモロコシ、雑穀、モ ロコシ(ソルガム)の隣に植える と、茎をつたって真上に伸びてい く。これが、食用農産物のさらな る収穫を生む手助けとなり、農業 生態学者は「余剰収穫効果(over-

yielding effect)」と呼ぶ。この良い 例は、トウモロコシ、豆、カボチャ の3姉妹菜園だ。同じ土地で一緒に 育てたこの植栽の合計収量は、同 じ広さで個々に植えたいずれの収 量よりも、高くなることが多い。

 5. 微気候を活用する。自分の土 地に対する理解を深め、どんなわ ずかな微気候も有効活用する。言 い換えれば、ニーズを各作物の生 育環境と調和させることにより、 自分の土地の地形を有利に活用す る。

 6. 在来種を根付かせる。自分の 在来作物 (自分の菜園や農地特有の 自然な環境に適応する地元種) を作り出す。注意深く自分の菜園を観 察し、最も良く育つ植物の種を保 管することにより作り出す。


ゲイリー・ポウル・ナブハン (Gary Paul Nabhan)は、農業経済学者、民族植物学者で、主に南西部の砂漠中心のライター。地域の食料や在来種の種を守る活動のパイオニア。本稿は、彼の近著「Growing Food in a Hotter, Drier Adapting to Climate Uncertainty」より編集。



 

 Coping With Heat in the Garden: Drought-Tolerant Crops, Resilient Perennials and More

By Gary Paul Nabhan 

June/July 2014