「ナノテクノロジーは安全か?」

「ナノテクノロジー」は、ナノメートル(10億分の1m)の単位でものを操作する技術。10億分の1mとは、人間の髪の毛の10万分の1の細さ。

そもそも、ナノテクノロジーは人間や環境にとって安全なものなのか?

 実用化は未来の話に聞こえるが、実は科学者や商品開発担当者たちは1981年から実験を行っている。

現代の製造メーカーは、炭素、銀、二酸化チタンなどのよくある化合物から超微細な「ナノ粒子」を作り出す。その結果生まれるナノ材料が様々な利点を生み出す。硬化作用や抗菌作用、色づけが自在になるなどだ。しかしナノ材料は、操作前の元の化合物と比べ、異質のまた予期しない反応を示すこともある。例えば、二酸化チタンのナノ粒子を使ったラットの実験では、より粒子の大きい化合物を使用したときと比べ、43倍の肺炎の発症が確認された。「食品安全センター」によると、科学者たちはこのテクノロジーが人間の健康と環境へ有毒である可能性について理解し始めたが、常に競争相手を出し抜く方法を考えている企業たちはそんなことにほとんど関心を示さない。

 新技術の社会経済的及び環境的な問題について調査しているNPOのETCグループによると、ナノ単位の化学は、ヘルスケアや食品製造のあり方を変化させており、社会・環境への重大な影響をもたらす。食品添加物から日焼け止めまで、ナノ粒子を使った商品は多くの分野で現れてきている。この蔓延している粒子は、水道を汚染している。英国のプリマス大学の研究者によると、二酸化チタンの粒子が魚の酸素欠乏を引き起こし、結果的に筋肉の未発達と神経系への悪影響が確認されたとのこと。

 欧州とカナダはナノテクノロジーを規制する法律を施行しているが、米国では製造者が任意で従うガイドラインしか整備していない。米国の食品医薬品局(FDA)は、最新のガイダンスを2-14年6月に発行した。

それによると、企業は、製品を市場に供給する前に、FDAへ事前相談することを推奨しており、ナノテク製品については、ケースバイケースで、追加的な安全確認が必要となる可能性があると警告している。「FDAがナノテク製品に対してより慎重な見方が必要であると認識したことは評価できるが、より積極的なアプローチが求められる。現状のガイドラインでは、企業はFDAへ事前相談はするものの、FDAは商品の安全性について確認はしない。」と食品安全センターの上席政策アナリストのジェイディ・ハンソン (Jaydee Hanson) は指摘する。「ガイダンスのみでは、ナノテクノロジーの新たなリスクを説明するには十分でない。FDAは義務的な規則を発行するべきだ」と続ける。

 食品安全センターによると、食品や食品包装物に含まれるナノ粒子は、摂取、吸引、皮膚浸透をとおして、人間の体内に到達し得る。ナノ粒子は摂取された際、その小ささから、身体中を循環し、骨髄やリンパ節、脾臓や脳、肝臓、心臓などの敏感な部位へもたどり着くことができる。ナノ粒子の種類によっては、摂取された後、様々な器官や中枢神経系へ移行する力を持っている。例えば、銀や炭素のナノ粒子は、吸引した後に、身体の別の部分に現れる。

 既に市場に出回っているナノテク製品は、パーソナルケア製品、化粧品、殺虫剤、食品添加物、食品包装物、まな板、歯のインプラント、眼鏡、服、生地、絶縁体の一種、塗料、ボートの船体、スポーツ用品、コンピューターチップやその他電化製品、自動車部品など。日々、ナノテクのさらなる分野への摘要が広がっている。

 そしてこれら製品が生み出す収入はどのくらいなのか。20の政府系機関と私企業グループ共同で設立した全米ナノテクノロジーイニシアティブ (National Nanotechnology Initiative) によると、2009年には2510億ドル(約2兆5,000億円)であった経済効果が、2015年までには2兆4,000億ドル(約240兆円)に達するであろうと予想されている。換言すれば、ナノテクのパイの取り分は、これらの利益を妨げる規制も含めて、もはや小さい問題ではない。

 FDAは、2006年から2014年までを、ナノテクに関するガイダンスの起草から最終版の完成に費やしたので、義務的な規制の制定はこれより多くの年月を要することだろう。その間、企業は、ナノ粒子を含んだ製品を、通常の新商品と同様に消費者へ提供し、現状のガイドラインに基づき、ナノ粒子に関するラベル表記は一切されないだろう。あなたが買った食品や製品にナノ粒子が含まれているかについては、「一般消費財一覧 (Consumer Products Inventory)」や」無料アプリ「findNano」で確認できる。

Is Nanotechnology Safe?

By Shelley Stonebrook 

October/November 2014