いかにタイソン・フーズが小さな田舎町の息の根を止めるか

米国の農業に関する最大の迷信の一つに「農業は儲からない」というものがある。過去50年の間に小さな農業の町が寂れたのは、農業という非常に時代遅れのビジネスが利益を生まないからだ、と考える人は多い。これが本当なら悲しいことだが、現実はそうではない。農業は莫大な利益を生み出す。農業は、現代のビジネスの中で最も裕福で、最も生産性の高い部門の1つだ。ここで重要なのは、農業が儲かっているかどうかではなく、儲かった金がどこに行くのかという問題だ。

  タイソン・フーズが大規模養鶏施設を操業するアーカンソー州ウェルドロンのような町を訪れれば、農業が儲からないという考えが誤りであることが分かる。タイソンの施設などでは、1週間に約100万羽の鶏を屠畜することがある。巨大な屠畜場は立派な1つの工業機械だ。タイソンの施設は、単なる工場というよりは、小さな町の全経済が統合された一つの所有地であることから、ウェルドロンの住民から「The Complex(複合施設)」と呼ばれている。数万平米もの複合施設の中に、搬送ライン、飼料粉砕機と孵化場、屠畜場がある。この施設内だけで、大量の鶏が卵から飼育され、毎年数百万ドル相当の最終食品になる。

  それにもかかわらず、ウェルドロンの町自体は、経済的に苦しそうに見える。町の中心部にある小さな商店街では、多くの商業施設の窓やドアが板で塞がれている。土曜日の夜、ウェルドロンの目抜き通りはまるで見捨てられたかのように静かだ。繁華街にある新しいミニショッピングモールは空っぽで、付設の駐車場には黒いゴミ袋が散在している。町で唯一人々が集まる場所だったスコットカウンティ(Scott County)映画館は、改装したものの、4月に閉館した。閉館する前は、夜1回の上映を見に多くの客がこの映画館を訪れ、フランキー・ワトソン(Frankie Watson)という若い女性が客とおしゃべりしながらチケットを回収していた。「ウェルドロンの人々はあまりに貧しいので、2007年と2008年の大不況に気がつかず、そのあおりをほとんど受けなかった」とワトソンは言う。

  ウェルドロンのような小さな町の住民が、絶えず困難な状況におかれているのとは全く対照的に、田園地帯の周辺で操業するタイソン・フーズやその他の大手食品会社は富を築いている。2013年だけで、タイソンは7億7800万ドルの純利益を記録した。ちなみにこの年は、消費者が外食の回数を減らし、タイソンの利益の源である調理済み食品を買い控えた厳しい時期にあたるのだが、他の工業的農業企業もタイソンと同様に成功していた。

  本記事は、タイソン・フーズが現在の食品市場を支配する産業システムをどのようにして開拓したのかについて探った拙書「The Meat Racket: The Secret Takeover of America’s Food Business【ザ・ミート・ラケット:アメリカの食品業界の隠れた買収(仮題)】からのレポートを基にしている。現在では、ホーメル(Hormel)、スイフト(Swift)、カーギル、スミスフィールド・フーズ、フォスター・ファームズ(Foster Farms)をはじめとする多くの企業がタイソンのビジネスモデルを導入している。タイソンの事業は、このような産業のシステムが小さな町の経済に及ぼす影響だけでなく、一極集中化した食肉産業のより広い現実を投影している。

  ウェルドロンのような所で金が循環しておらず、フランキー・ワトソンや彼女が働いていた映画館に来たティーンエージャーたちの手元に金がないのなら、タイソンの施設が稼いだ金は一体どこへ行ってしまったのだろう。。。


和訳全文は1月末発行予定。


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How Tyson Foods Kills Small Rural Towns

By Christopher Leonard 

December 2014/January 2015