養蜂の始め方 : ぶんぶん存分に語る

ミツバチの巣があると、豊富なハチミツや蜜蝋が得られ、菜園の作物が益々受粉し、愉しいひと時が過ごせる。この記事では、養蜂の基本を語り、何を想定して、 養蜂場の世話に挑戦すれば良いのか、時間、機器、要する予算について説明します。

文:ハンナ・キンケイド (Hannah Kincaid)

 

翻訳:堀水 理佳代

 

 

 

どうりで沢山の人が蜂起して、養蜂一直線に突き進んでいるわけだこの小さな社交的な授粉者蜂の巣ひとつで、1年間金色の蜂蜜を約1827kg、加えて非常に有用な1kg程の蜜蝋を生産する。さらに、多くの作物が沢山の上質な果実を付け、多収量になるには、ミツバチ (学名: Apis mellifera) は欠かせない。このミツバチ粉の恩恵はますます重要になってきている、なぜなら、工業的農業の有毒な殺虫剤への依存で、ミツバチの食物を汚染し、その結果授粉者であるミツバチの数が減ったからだ。喜んで自農業をしている人や、裏庭ガーデニング愛好者などは、23週間毎、少しの時間を蜂の巣の手入れに費やすことで、文字通りの甘い報酬を得ている。

 

 家畜同様、蜂は世話と手入れが必要だが、酪農用のヤギ鶏より、養蜂に費やす時間は全く短い。養蜂があなたに向いているかどうかの決断を助けるために、養蜂の始め方、始めるのに必要な物や費用に関して知るべきこと、加えて、基本的な養蜂場の1年間の運営計画の概要を私達たち作成するに至り、Bee Culture蜂の文化)」誌で長い間編集を務めるキムフロッタムに、援助を求めた。

 

 

 

商売の道具

 

 まず、新しい巣枠で始めよう。安い中古の養蜂道具を探す方向に魅力を感じるだろうが、蜂は様々な病気に感染しやすく、古い道具にはその病原菌が残っていることがある。または、誰か捕まえた野生の群れの養育を勧められることもあるだろう。心配なのは野生の蜂の群れが特にアメリカ南部と西部で見られる凶暴なアフリカミツバチと交雑しいるかもしれないこと。小箱か、4枚群ほどの巣箱(nucleus colony: 通称「nuc」)で、大人しい蜂女王蜂付きで買おう(56ページの「どの蜂が自分に向いているのか?」参照)。

 

 巣のデザイン2つから1つを選ぶ。より一般的なラングストロース(発明者名により名付けられた)式巣箱は、積み重なった四角い箱の中に、引き出すことが可能な木製の巣枠が入っていて、前もって作られた基礎が枠に付き、その上に蜂が蜜蝋の巣を成形する様になっている(56ページ上部のイラストをご参照)。 ラングストロースの取り出せる巣枠のシステムは、巣の健康状態を監視するのを楽にし、また広く受け入れられているので、交換部品を探すのが簡単。杉のラングストロース式巣箱の組立て部品一式は、巣箱本体と、「スーパー」と呼ばれる蜂蜜保存の為の付属の箱2つ、そして30の巣枠(ひと箱につき10巣枠)と蓋、カバー、底板、ネジで成り立っており、約3万円はかかると見込んでおこう。

 

 

 

 よりシンプルなトップバー巣箱は、カップ状で蓋付の箱で、箱上部の内側に木の棒が何本か横に並んでいる(56ページ下部のイラストをご参照)。蜂は、その横棒から垂れ下がったU字型の巣を作る。組立てキットと設計図が約22,000円、自分で作るなら材料費に6,000円程かかるだろう。トップバー式巣箱はラングストロース式巣箱よりもおよそ20%少なく蜂蜜を生産するが、蜜蝋の収穫はしやすい。蜂蜜の生産が少ないにも関わらず、支持者は、トップバー式のデザインは優しくハッピーな巣環境をもたらし、可能な限り多量な蜂蜜を生産するよりも、むしろ保護や植物の授粉に関心をもつ養蜂家にとって、現実的な選択肢だと言っている。トップバー巣箱の詳細は「Keeping Bees: Using the Top-Bar Beekeeping Method(蜂を飼う:トップバー式を使う)」  http://goo.gl/7Xp9Q3 をご参照。DIYトップバー式巣箱の設計図もある。

 

 最初の1つか2つの巣箱に加えて、特別な養蜂の道具がいくつか必要になるだろう。燻煙器(2,400円)は蜂の防御反応を抑制するのに使われる。バールに見た目が似ている巣箱道具(1,200円)は、巣箱から巣枠を取り出すのに使用される。餌箱(1,800円)は、最初に蜂を新しい巣箱に導入した時と、植物からの蜜が十分とれない時期に、砂糖水で満たして巣箱に入れ、餌を蜂に供給する。ほとんどの養蜂家がフード付きの養蜂用の防御服(約8,400円)を始めに着る。手袋もついてくるはずだ。その後に、蜂の側にいるのに慣れたら、幾つかのパーツを取り除いて着ることもできる。全てを合計すると、おそらく最初の巣箱と基本の養蜂用備品(蜂は除く)に、24,000円から48,000円費やすことになるだろう。

 

 

 

 

どの蜂が自分に向いているのか?

 

 一般的な蜂の小箱は16,000円程、それに送料がかかり、大人の蜂1,360グラムと、別に包まれた女王蜂が含まれる。代案としてNucは、既に女王蜂を含めた蜂の群れが住み着いたラングストロース式巣箱用の巣枠で、あなたの巣箱の中にはめれば良いだけだ。Nucは既に活動している巣枠を含むため、小箱よりも少し値段が高い。一つのNuc に対し18,000円くらいかかり、郵送ではなく、取りに行かなければならない。

 

 自給農業を営む人や目的に見合う牛や鶏の品種が異なるように、特定のミツバチ種のいくつかが、自家養蜂家に向いている。フロッタムは、蜂の生産者は皆できる限り穏やかな蜂を生産するのに励んでいるが、カルニオラ(Carniola)産の蜂が、手に入れ易いイタリア産の蜂よりも大人しいと言う。他の種より害虫や病気に抵抗力がある蜂の種類もある。例えば、ミネソタハイジェニックイタリアン (Minnesota Hygienic Italians) 種と、バローアセンシティブハイジーン (Varroa Sensitive Hygiene: VSH) の特性を持つ蜂は、バローア・ダニ、アメリカン・フォール・ブロッド【蜂の子の病気:American foul brood】、チョーク・ブロッド【蜂のカビ病気:chalkbrood】に高いレベルでの抵抗力を持つ。

 

 

 

養蜂カレンダー

 

 蜂が配達される前に、経験のある養蜂家の後について、通常の蜂の行動や、巣の構造、また可能性のある侵入者、例えばダニ等がどんな姿をしているか認識できる様に予習しておこう。多くの地元の養蜂協会がワークショップを提供しているし、フロッタムはコツを学ぶのを助けてくれる、近所の養蜂家の師匠を探すことを奨めている。

 

 Backyard Beekeepers Association(裏庭養蜂協会)によると、蜂の巣の世話に、30時間使う計画をすべきだ。費やす時間が、花粉と蜜のとれ具合と相関する(菜園の忙しい時期は、養蜂の忙しい時期でもある)。 蜂を飼うと決めたら、天候が温かくなる時期に引き取りができるよう、冬に小箱またはnucの注文をしよう。うららかな春の日に、家の側の郵便局から、または地元の養蜂家から、あなたの小箱またはnucの準備が出来ているとの電話がかかる。その時までに、巣箱の組み立てを必ず完成し、すぐ新しい入居者が入れるよう準備をしておくこと。どのように蜂を巣箱に入れるのが一番良いのか注意書きをよく読み、女王蜂の巣箱を二つの巣枠の間に差し込もう。女王蜂の容器には小さい砂糖飴のプラグが端に付いていて、巣に女王蜂がすぐに入ってしまうのを防ぐ。2〜3日かけて、ミツバチたちは新しい家に定着し、同時に、飴をかじって女王蜂を彼女の私室から解放する。

 

もしnucを注文したならば、既に蜂と女王蜂が住んでいる巣枠を、空のラングスロース巣箱に移動する。蜂たちが巣にうまく入った後で、給餌器を設置しよう。

 

 蜂を巣箱に導入後1週間待ってから、初めの監視をする。目的は、女王蜂が卵を産んでいるか確認すること。少なくとも1週間か2週間に1度、巣全般の健康状態をチエックし、成長を観察しよう。蜂の生涯や1日に蜂が行う仕事を知っていくのは、蜂の健康と活力を評価する能力に欠かせない。

 

 天候が温かくなると、蜂の巣を訪れるのは、主に貯蜜の量を見ることと、活気のある健康な蜂が増えているかを確認するためになるだろう。寒い天候に向けて、風とネズミよけを入り口に設置する準備を始めよう。どの季節でも、花粉や蜜が少ない時には、花粉の代わりに蛋白質の補助食品を与え、蜜の代わりに砂糖水を与える必要がある。牛の干し草や、鶏の餌をいつも絶え間なく与えている様に、蜂のお腹が空いた状態にしてはいけない。

 

 

 

甘い報酬

 

 最初の年、蜂の群れは、収穫するのに十分な蜜を生産しないだろう。そこで注力すべきことは、引き続き巣箱の動きを学ぶこと。だが、2年目、そしてその後何年も、蜂蜜の収穫は9月頃に行なわれることになる。蜂蜜を収穫する時、冬の間蜂たちが食べるのに十分な餌を残

 

 

 

さなければならない。フロッタムによると、アメリカ北部の蜂の群れは、冬に向けて少なくとも45kgの蜂蜜の蓄えを必要とし、南部では22kg必要となる。

 

巣箱の奥行きと、デザイン、巣枠の数によるが、あなたの巣箱の重量は、冬の始め頃、全体で68kgから90kgであるべきだ(底、箱、巣枠、蜂、蜂の子、蜂蜜を含めて)。手から下げるバネ式の計量器を使用し、巣箱の重さを計り、もしこの重量よりも重ければ、過剰な蜂蜜を自分用に巣箱から取ることができる。

 

 蜂蜜は、少なくとも巣枠の2/3の巣穴が蜂蜜で満たされ蜜蝋で蓋がされると、収穫時期だ。簡単な収穫のテクニックは「ブラッシング」だ。収穫時期の巣枠を巣の上に持ち、優しくブラッシングして、できるだけ沢山の蜂を巣に戻し、巣枠を別の箱に入れる前に殆どの蜂たちが出た状態にすること。蜂蜜を巣穴から取り出すには、蜜蝋の蓋をナイフで切り落とし、手作業で巣穴を潰して漉すか、摘出の機械を使用する。

 

 養蜂の管理は、家族みんなが楽しめる活動だ。甘く金色の秘薬と万能な蜜蝋を満喫するだけでなく、菜園の収穫の増量に感謝し、忙しい蜜蜂たちの勤勉さに家族全員驚愕することであろう。

 

 

ハンナ・キンケイドは、マザーアースニューズの編集者。自家製の癒しの軟膏に蜜蝋を使い、パンプキンパンを焼いて新鮮な蜂の巣のスプレッドを塗っている。

 

 

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How to Start Beekeeping: What All the Buzz Is About

By Hannah Kincaid 

June/July 2015

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