家庭用再生可能エネルギーの後付け―我が家の取り組み

メイン州にある我が家では、CO2排出量を減らすべく、地熱システム、太陽光温熱システムをはじめ様々な再生可能エネルギーを取り入れました。家庭用装置を改良していった結果、今では化石燃料に一切頼らずに消費電力のほぼ全てをまかなっています。

 

 ニューイングランドのReVision Energy社がデイヴィス氏宅に設置した、太陽光パネル39枚の据置型発電装置。家庭と電気自動車の充電のための電気需要が十分まかなえる発電量だ。

 妻のリーと私は2003年に退職し、今後何に取り組むか話し合いました。そして我が家の重要プロジェクトとして、化石燃料への依存度を大幅に減らすこと、その手段として、再生可能エネルギー源に切り替え、また家のエネルギー効率を高めようと決めました。このような目標をたてたのは、化石燃料の採掘・処理・輸送が環境に深刻な悪影響を及ぼしており、また化石燃料を燃焼させることで公害や気候変動を引き起こしていることを知ったのがきっかけでした。

 メイン州の中南部に位置するオロノは人口1万人の街。その郊外に私たち夫婦は住んでいます。家屋は200平方メートルほどの一階建てで、緩やかな丘の上の、干し草畑の先にあり、田舎道はここで行き止まりです。一方は森、もう一方は常緑樹の並木に守られ、家の裏手にはおよそ18x6メートルの畑が広がっています。ここに住んでもう42年になりますが、隣家まで800mという人里離れた環境が気に入っています。夏は過ごしやすく、冬は大変厳しいですが、幸い、晴天率の高い気候となっています。

 私はメイン大学の生物科学の教授として、退職まで33年間勤務しました。大学院生だった1950年代には環境運動に関わり、その活動の中で、再生可能エネルギーという選択肢が複数あることを少し学びました。しかし、家庭規模での再生可能エネルギーを実用面で理解するには、粘り強く、膨大な量の勉強が必要でした。私は、エネルギー関連会社に勤める知人や、周りにいる再生可能エネルギー装置を導入したホームオーナーなど多くの方々に相談し、疑問を投げ、時間をかけて調査しました。そして、貯蓄と退職手当の大部分を投じて、家庭用エネルギープロジェクトに取り組もう、と2人で決心したのですが、その時点では、自分の家と移動手段 (自動車) の消費電力をほぼ完全に再生可能エネルギーでカバーできるようになるとは、 まだ夢にも思っていませんでした。

 

薪ストーブで始めの第一歩

 実は退職のずっと前からプロジェクトは細々と始まっていました。灯油消費を減らすために薪ストーブを取り入れていたのです。メイン州ではよくあるスタイルで、我が家も居間に小型薪ストーブを1台置きました。薪ストーブの暖かさを居間以外でも感じられるように、居間の天井に首振り扇風機を取り付け、天井にたまる暖気が2本の廊下を通って家じゅうに行きわたるようにしました。

 1年でオーク材の薪を3.6立方メートル燃やせば、居間はいつでも快適で、灯油消費量は約20%減り、薪代と電気代 (扇風機) を差し引いて年$350(42,000円)ほど節約できました。年齢的に薪運びが難しくなり (2015年8月で私は84歳になります) 、この数年で、ついに薪ストーブを使い続ける訳にもいかなくなりましたが、薪暖房は、再生可能エネルギー活用の貴重な第一歩となりましたし、エネルギーは何もないところからは生まれない、労働を要するのだ、という考え方も教えられました。

 

太陽光発電に無理なく移行

 灯油式暖炉は、暖房の他に給湯にも使っていました。そして2007年、ついに家庭用再生可能エネルギーに本格参入。その第一歩として、南向きの屋根に、給湯用の太陽集熱器 (ソーラーコレクター) を2台設置しました。1台に22本の真空管がついているApricus製です。真空管内の液体が太陽集熱器によって高温に達します。管は屋根を伝って貯湯槽 (Stiebel Eltron製、容量約300リットル) に至り、高温の液体が貯湯槽に組み込まれた加熱コイルへと循環する仕組みで、タンク本体は家の地下に設置します。

 大きな貯湯槽ですが、曇りの日が何日も続いたり、同時に何人もの人がシャワーを浴びたりすると、ときにはお湯を使い切ってしまうことも。そのため、給湯で灯油が必要になることも、たまにありました。とはいえ、給湯コストは年間875ドル以上下がりました。設備全体にかかった費用は、Efficiency Maine (州のエネルギー効率化・再生可能エネルギー推進プログラムの担当機関) の奨励金を差し引き、10年完済として、8,395ドル。投資資金の回収まで、あと約2年を残すのみです。

 

エネルギー監査で熱漏れ対策

 太陽光温熱システムの開始と併行して、当時築35年になっていた家屋のエネルギー監査を行いました。冬に熱が一番逃げやすい箇所を突き止めるためです。自家発電に踏み切る前に、屋内の熱エネルギーの保ち方を知っておくのが賢いと思ったのです。公認のエネルギー監査サービスはおよそ300ドル。我が家の場合、大量の熱を外に逃がしていたのは、主に広間の天井と地下基礎の上部のあたりでした。   

 監査結果にもとづいて、隙間の密閉と断熱工事を開始。二人とも屋根裏は使わないので、2008年に、屋根裏の床上に厚さ5センチの吹き付け式ファイバーガラスを張りました。(それ以前は、厚さ15センチの標準型ファイバーグラス・バッティングを床上に敷いていただけでした) これにより、広間の天井部の熱抵抗値 (R値) は20から60に向上。その差は即座に体感できました。2010年には、地階の天井の下側に厚さ7センチの発泡断熱材を追加し、コンクリート地下基礎の内部空間を、家屋周囲の地面から60~90センチの深さまで下げました。地下も広間も、冬場の温度が上がったことがはっきり体感できました。一連の工程にかかった費用 (エネルギー監査を除く) は、Efficiency Maineの奨励金を差し引いて2,407ドル。費用の回収期間については、プロジェクトの途中で地熱暖房に切り替え、さらに自家発電を始めたこともあって確定しにくいところですが、二つの工事を終えて迎えた初めての冬、月額暖房費は平均70ドル減りました。

 

地熱システムを設置

 2009年に地熱冷暖房装置を導入したことで、灯油を使用するものはほぼ全て手放しました。既存の住宅の場合、灯油に頼らない暖房手段は限られており、我が家にとっては、地熱方式がコスト面でも効率面でも最適だったのです。設計・施行はElco Electric of Bangor (メイン州)。地階には6トン型のヒートポンプClimateMaster、地中には水平型熱交換パイプ、という組み合わせです。パイプは全長およそ1,800メートルのポリエチレン製。らせんを引き伸ばしたようなコイル形で、家に面した干し草畑に、深さ1.8メートル、長さ60メートルの溝を3本掘って埋め込みました。

 床下の小型の電動ポンプ2基で、地下に埋めたパイプシステムからヒートポンプまで不凍液を循環させます。冬は、そのヒートポンプシステムで不凍液から取り込まれた熱が暖房となり、夏は、家にたまった熱を不凍液が取り込むことで、住空間の冷房の役目を果たします。地下のパイプの中にこの液体を循環させることで、季節に応じて、熱は地下から運ばれたり、逆に地下に運ばれたりします。強制通風装置に熱が送られたり、逆にそこからヒートポンプに熱が戻されたりすることで、冬には暖房、夏には冷房となるのです。暖かい期間に地中の蓄熱を引き出すという意味では、本質的にはソーラーシステムと言えます。現在まで我が家の冷暖房はこれ1つで済んでいます。 

 地熱システムにヒートポンプを導入し、次にこれを給湯システムに接続して、ポンプの稼働中に捨てられる熱を利用して給湯を補完できるようにしました。地熱システムを実際に使い始めたのが2009年8月。以来、灯油の出番は、悪天候時と、来客が多いときの給湯の予備燃料のみで、使用量は年間190リットルを下回っています。我が家の地熱システム導入にかかった費用は、Efficiency Maineの奨励金と連邦税控除を差し引いて25,495ドルでした。暖房と給湯用の燃料費は年間2,800ドル減りました。ただ、自家発電を始めた2012年になくなったヒートポンプ稼働に必要な電気代を加味していないので、全額返済には9年より若干長くかかりそうです。

 我が家が採用した水平型の熱交換パイプは、誰にでもおすすめできる訳ではありません。十分な面積と深さのある土地が、家のそばに必要です。土地の面積が足りない方や、深さが足りないという方には、井戸を掘って熱交換パイプを埋め込む、という方法があります。

私たちが地ヒートポンプを導入して数年後には、補助冷暖房用に、小分割型のダクトレスヒートポンプが発売されました。空気式ポンプで、一般的には熱交換器を屋外に置き、室内の壁面に設置したユニットとダクトでつなぐ仕組みです。我が家のような全館用ではなく、プロパンガス式の壁面型暖房で暖められるぐらいの広さの空間に適しており、夏はエアコン代わりにもなるというおまけつきです。電動で、プロパンガス暖房よりもエネルギー効率がよく割安ですが、メイン州のように冬が長く厳しい土地では、やはり地熱システムに軍配が上がります。

 

エコな電気を追求する

 地熱システム導入のおかげで、灯油はほとんど買わなくなりましたが、電気代は年間1,000ドル増。その大部分は、化石燃料による電気を電力会社から買う代金でした。2012年夏、私たちは新たに、自家発電用の太陽光 (PV) パネルを導入しました。Canadian Solar製PVパネルを39枚使う、9.36kwタイプの発電機です。これまでの電力消費量と当地の晴天率を検討した結果、ヒートポンプの稼働と、年間走行距離11,200km程度の、近距離圏用に使う電気自動車の充電も含め、我が家の電力消費の全てをこれでカバーできると判断しました。

 南向きの屋根は、このサイズのPVパネルを載せるのは難しく、また太陽熱温水器という先客があったことから、据置式のPVパネルを家の前の干し草畑に設置することにしました。総工費は28,790ドル (Efficiency Maine奨励金と連邦税控除差引後)。最初の2年で、電気代は年平均2,400ドル節約できました。2012年9月の稼働開始から12年で完済予定ですが、電気料金が値上がりすれば、さらに早まるかもしれません。。。

 

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A Renewable Home Energy Retrofit: How We Did It

By Ron Davis 

June/July 2015


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