普段使いのソーラークッキング

燃料を使わずにおいしい料理が作れる、ソーラーオーブンの作り方をご紹介。

 

簡単手作りソーラーオーブン2台で、ルバーブパイとアップルタルト作り。

 どこに行っても暑い夏の到来。夕食の準備のために、まさかストーブはつけられないだろう。室内の温度がますます上がってしまう。私のようなエアコン持たない派、あるいは節電派にとって、家の中で料理するのは苦痛そのもの。ならば、その熱の源をいっそ利用してはいかが?

 太陽光は、地球上で最も豊富にあるエネルギー源。毎日地表に届くそのエネルギーは840億キロワット時、世界中のエネルギー消費量の4倍以上に匹敵する。問題は、どうすれば効率よくそれを利用できるかだ。太陽光の恩恵にあずかるといっても、野菜の自家栽培、あるいは、カメラでの写真撮影で満足している人が大半だろう。食材を仕込んだ断熱ボックスに、その太陽光エネルギーを取り込む、それだけで調理できてしまうのがソーラーオーブンだ。

 ソーラーオーブンの原理は「集めて、変換して、封じ込める」とシンプルだ。太陽光(可視光線)が数枚の反射板に当たり、ガラス製の蓋を通って断熱ボックスの中に集まる。食材の入った鍋をそのボックスに仕込んでおくと、鍋が吸収した光は、より波長の長い赤外線、つまり熱に変換される。断熱材で熱を箱から逃がさず、波長が長いゆえに、ガラス蓋を通過して出ていってしまうこともない。結果的に、赤外線は箱の中を飛び回って、食材を加熱することになる。まばゆい陽射しの暖かい日に、車の窓を閉めきって置去りにしたことがないだろうか?であれば、ソーラークッキングの基本原理が分かるだろう。

 

ソーラーオーブンの作り方

 20年ほど前、友人のストローベイルハウス作りを手伝った時のこと。(「変わったこと」に私が夢中になっていると見た彼は)知り合いが、ソーラーオーブン製作のワークショップで指導していると言った。興味があったので、参加費50ドルを払って申し込んだ。3週間後に呼ばれたのは、ケンタッキーの林にある自作農場。そこにあったのは、山積みのベニヤ板、ダンボール、アルミ箔、ガラス。ソーラーオーブンの材料だ。インストラクターのマークとアンディは、NGOの支援を受けて、ペルーでソーラークッカーの作り方と使い方を指導して帰国したばかりだった。ペルーでは、多くの村で森林破壊が起きており、木材を燃やす調理法の代替案として、ソーラー調理法が役に立つらしい。

 当日は、手工具だけで「屋外調理装置」を自作した。ソーラークッカーの材料は安いものばかりで、設計もかなりシンプル。内箱と外箱を用意し、その隙間に2.5~5センチメートルの厚みの断熱材を詰めた箱型の本体と、内箱の蓋になる太陽光を通すガラス板が基本。さらに、ガラス面に対して直角よりも外側に傾けて4枚の反射板を取り付け、光を反射させて箱内に取り込む。これによって箱の中の温度は、調理が可能な温度まで上がるわけだ。ベニヤ板は、外箱の補強に使って耐久性を高め、新聞紙は丸めて断熱材にする。断熱材に使えるものは各種あり、おがくず、ニワトリの羽、ファイバーグラス・バッティングなどでもいい。大事なのは断熱を徹底すること。太陽がふいに雲に隠れても大丈夫なように、箱の中に熱をうまく閉じ込めるのが肝心だ。条件が整えば、私たちが製作したオーブンの庫内の温度は、1時間ほどで約  205℃ に上昇。これなら、蒸し焼きからビスケット作りまで何でもできる。たった50ドルにしては上出来だろう。さらに、私にはもっと幸せなことが待っていた。数年後、私はマークの妹と結婚し、ソーラークッキングを夫婦でするようになったのだ。

活用の基本

 ソーラークッカーを使いこなすコツはたったの3つ。

 太陽。影が差す場所を避けること。また、蓋に再生ガラスを使用する場合は、UV加工していないものを選ぶこと。

 時間。箱内の温度は一定ではないので、調理時間は従来のオーブンよりも長くなる。93℃程度以上あれば、食材の調理は可能だ。

 冒険心。天気が吉と出るか凶と出るかは、やってみなければわからない。

 お勧めは、最低30分間の余熱。オーブンを空のまま、または空の鍋を入れた状態で温めておく。オーブン本体の位置や向きを時々調整する人も必要だ。一定角度の反射板が太陽光を箱内に集光できるのは2時間、それを過ぎると反射角度が合わなくなるため、クッカーを動かさなければならない。ソーラークッキングは電気やガスのオーブンの2倍の時間がかかるが、30分おきにオーブンを動かしていれば、その時間はかなり短縮できる。

 反射板は普通のアルミ箔、マイラー(デュポン製ポリエステルフィルム)テープ、アクリル製ミラーなど、反射力のある素材で覆う。ソーラークッカーの蓋は斜めにする必要があるが、これは最初からその設計にしてもよいし、ブロックなどを下に置いてクッカー自体を傾けてもよい。緯度や太陽赤緯(地球を中心に赤道方向を0度とした太陽の角度)により最適な角度が異なるが、北半球では、夏は30度、冬は60度といったところだろう。光の熱変換効率を上げるには、箱内底部に黒い耐熱塗料を塗るとよい。蓄熱性を高めるには、大きめの石やレンガなどを入れて熱容量を上げると効果的。日射しの強い快晴の日なら、米料理からパン丸ごと1個まで、2~3時間でたいてい何でもできてしまうので、クッカーの位置を調整するまでもない。

 

太陽で上手に

 私は直ちにこのオーブンを使い、その用途を研究した。米や麦や豆の調理には、ストーブの上に置いておく調理法に比べ、半量をほんの少しオーバーする程度の水で足りる。野菜はゆっくり均一に加熱すると、非常においしい料理になる。焦げ付くことはまずないし、焦げても表面だけ、鍋底にこびりつくこともまずない。パン・菓子パンや肉でもOK。ただし、高温を保つ必要があるので、しっかり計画して、良く晴れた日を選ぶことだ。 揚げ物をするには温度がやや足りないし、クッカーを開けて鍋中をかき混ぜるたびに熱が逃げてしまう。が、卵など、さっと作れる料理には向いているはずだ。

 調理器は、黒っぽい色のほうが機能性が高い。黒っぽい色の物体は、明るい色や光を反射する物体に比べ、太陽光の熱変換を楽に行える。お勧めは鋳鉄製、黒のホーロー、黒っぽい陶器などで、フタがあれば熱を閉じ込めることができる。ただし、色とりどりの野菜を調理する場合、透明なフタはNG。集めた強力な光線で野菜の色がとんでしまうからだ。

 私は、口の広い、1リットル弱のメイソンジャー(ガラス瓶)を数個用意し、(蓋も含めて)外側に黒い耐熱塗料を塗った。これが、米・豆料理用のジャーになっている。あっという間に加熱でき、大きさも十分、保存用の瓶の2倍のサイズだ。水の分量も含めて、瓶の容量の半分以上入れないこと。玄米1カップに対して水は1.5カップ、調理時間は70分だ。調理中、蓋は完全に閉めないこと。爆発のおそれがある。

 手作りオーブン第1号は5年間使い、その後妻と私の2人用にもっと大きいのに替えた。新しいオーブンは、盛り土して建てた我が家の屋根の上に置いた。我が家は林の中にあるため、屋根の上が唯一、太陽光を確保できる場所なのだ。ただし、家の裏から簡単に屋根に上れるので、クッカーの場所まで行くのは簡単。4月から10月までは、加熱料理のほとんどはソーラークッカーを使う。冬場は、この地域の日射は弱く、曇りがちで、クッカーを使うにはこころもとない。その頃までには薪ストーブを使い始めるので、冬の調理はそちらを使う。冬の間はソーラークッカーを保護するために放水シートを被せておく。ほんの少しお金をかけてちょっとしたコツを覚えれば、誰でも始められる調理法だ。

 

情報源

Build a Solar Cooker

Solar Cookers International: 

www.SolarCookers.org/Involved/Basics

Solar Cooker at CantinaWest:

 www.SolarCooker-at-CantinaWest.com

 

Buy a Solar Cooker

GoSun: www.GoSunStove.com

Solavore Sport: www.Solavore.com

SolSource: www.OneEarthDesigns.com

 

Sun Oven: www.SunOven.com

 

ジョエル・デュフール (Joel Dufour)はケンタッキー州フランクフォートに妻のクリスと建てた電力なしの家に住む。1994年以来ソーラークッキングをしている。カケーでニング機器を提供する会社 Earth Toolsを所有し運営している。

 

たのしく暮らそう。

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Everyday Solar Cooking

By Joel Dufour 

August/September 2015