年中菜園:地域毎に

 秋霜が降りたからといって、菜園の新鮮な作物が食べられなくなるとは限らない。適切な作物と品種を選び、時期を延ばす方法をいくつか実施すれば、思っていたよりずっと長く季節の限界を越えられる。実際に、米国のどの地域の菜園家も年間を通して菜園を楽しみ、どの季節でも菜園の新鮮な食物を食べることができる。

栽培期間を最大限に延ばす最善の方法を学ぶため、東海岸から西海岸まで私たちが知っている中で最も冒険心があり成功している11人の菜園家と話をした。読者が住んでいる(もしくは住んでいる近くの)耐寒性区分、または読者と同じ地域の秘訣を試して、菜園のものを1年中食べるべく自分のやり方を確立するのに役立てよう!


太平洋岸の通年型菜園

1. ブリティッシュコロンビア州ソルトスプリング島(ゾーン8):昆虫学者で「バックヤード・バウンティ (Backyard Bounty)」の著者、リンダ・ギルクソン (Linda Gilkeson) は、耐霜性品種のケール、ニンジン、ビーツ、リーキ、パープル・スプラウティング・ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、その他たくさんの健康に良い葉物を越冬させる。「みんな3月になるまで元気に育つのよ」とギルクソンは言う。

 2月下旬から5月にかけて、耐寒性のカリフラワー(「アールスメール (Aalsmeer)」、「ガレオン (Galleon)」、「パープル・ケープ (Purple Cape)」)とブロッコリー(「カーディナル (Cardinal)」、「レッド・スピア (Red Spear)」、「ホワイト・スター (White Star)」)は、前年の6月下旬から7月初旬に蒔いた種から作物を実らせる。

 「香り豊かな根を食べるセロリアックは真冬の楽しみよ。しっかりマルチを敷いて放ったらかしにするだけでいいの。」とギルクソン(Gilkeson) はアドバイスする。ニンジンやビーツでも同じことができる。葉物野菜には、厚手のビニールシートをとっておいて、杭や低いトンネルで畝の上に掛ければ北極圏の突風から守ることができる。

2. オレゴン州コーバリス(ゾーン8):植物育種家で「ザ・レジリエント・ガーデナー・アンド・ザ・タオ・オブ・ベジタブル・ガーデニング (The Resilient Gardener and The Tao of Vegetable Gardening)」の著者、キャロル・デッペ (Carol Deppe) は、ケール、ビーツ、パープル・スプラウティング・ブロッコリー、サヤエンドウ (edible-podded peas)を含む多くの作物を越冬させる。けれども、1年を通して菜園のものを食べるお気に入りの方法は、自家製の穀物コーン、乾燥豆、冬カボチャなど、食料庫に確実な保存作物を詰め込んでおくことだ。ポレンタ【トウモロコシの粉を使ったイタリア料理】やコーンブレッドには、彼女が開発した早熟性で耐寒性の品種、「カスケード・ルビーゴールド (Cascade Ruby-Gold)」フリントコーンがお気に入りだ。ケーキやパンケーキ、菓子パン、パーチング【炒りトウモロコシ】 には「マジック・マンナ (Magic Manna)」フラワーコーンが彼女のお勧め。高品質のコーヒー・グラインダーやブレンダーはフラワーコーンを小麦粉と同じような歯ざわりの、きめ細かい粉に挽くことができる。彼女が住んでいる地域向けのお気に入りの乾燥豆は「ガウチョ (Gaucho)」ブッシュ(アルゼンチンの在来作物)と「ブラック・ココ (Black Coco)」だ。デッペは8月下旬、秋雨の前に成熟した植物上でさやが乾燥できるようなタイミングで種を蒔くことを勧める。

 北西部向けのデッペお気に入りの冬カボチャは「オレゴン州在来種、スウィート・ミート (Sweet Meat)」だ。これは、最大で11kgの甘くて乾燥した、味わい豊かな実を付ける。また、冬カボチャの「キャンディースティック・デザート・デリカタ (Candystick Dessert Delicata)」、 「デリカタ・ツエッペリン (Delicata Zeppelin)」、「ハニー・ボート (Honey Boat)」も栽培して保存する。どれも小ぶりで縞模様の実を付け、果肉はきめが細かく、甘く、乾燥しており、12月後半まで続く。 「キャンディースティック・デザート・デリカタ」の実は最大で3ポンドになり、肉厚でマジュールデーツ【なつめやし】のような風味がある。冬カボチャはふつう、大きな実を付け、保存がきき、保存するとより風味が増す。「秋野菜を食べ終わるまでは保存しておいて、それから長期保存の西洋カボチャ (Cucurbita maxima) やさらに長く保存できる東洋カボチャ (C. moschata) を食べるのよ」とデッペ。

 一部のアメリカ先住民族がしていたように、デッペは冬に使うために夏カボチャをスライスして乾燥もする。幅広く実験したところ、「コスタータ・ロマネスコ (Costata Romanesco)」と全てのゴールドズッキーニが乾燥させない場合でも乾燥させた場合でも食べるのに一番良いことが分かった。皮が柔らかく、種が小さく熟していない0.5~1.5kgの実を1cmの厚さにスライスするだけ。デッペはカボチャを先住民族が使っていたのを模した台の上で乾燥させるが、読者は食品乾燥機を使用して50℃~60℃に設定すれば良い。料理する時は、乾燥スライス全体を約45分間スープの中で戻す。早く料理をするには初めに乾燥スライスを細かく切る。

3. カリフォルニア州パロアルト(ゾーン9)。 「エディブル・ランドスケーピング (Edible Landscaping)」など多数の本の著者、ロザリンド・クリージー (Rosalind Creasy) は、海辺の菜園で冬を通してエンドウ豆、スカリオン (Scallion) 【ネギ】、タマネギ、レタス、ケール、ラディッシュ、カリフラワー、キャベツ、ブロッコリー、アジア系葉物、カラシ菜、チャ―ド、ビーツ、パースニップ【白ニンジン】、ニンジン、ソラマメ、小麦などを育てる。10月下旬に植えるビーツとチャ―ドは、夏にこれらの作物に害を与えることが多いハモグリムシを寄せ付けないという利点がある。低めの温度はコリアンダーにも最適だ。「多くの人がコリアンダーを夏に植えようとするけど、とうが立ってしまうの。」とクリージーは言う。「9月に植えれば、冬の間中収穫できるし、3月に花が咲いて菜園に益虫を引き付けてくれるのよ。」

 クリージーはめったに霜よけのクローシュや畝の覆いをかけない。「霜に弱い柑橘系の木を保護するために、木に昔風の白いクリスマスライトを吊り下げるの。ライトは木が凍らないのに十分なだけの熱を放出して、見た目も素敵よ。」

 クリージーは、菜園の夏のフレーバーを特製のミネストローネスープや、リンゴソース、トマトソース、マリナラソース、ランチェロソースにして、冬に使うために冷凍して保存する。彼女の凍った宝の山には、風味の良い焼きトマト、オリーブオイル漬けのハーブ、軽く砂糖を振ったブラックベリー、パルメザンチーズと重ねた刻みバジル、ライムジュース・キューブもある。


南西部での通年型菜園

4. アリゾナ州コーンヴィル(ゾーン8):アメリカ先住民族のコーンと豆の品種は南西部の暑く乾燥した条件にうってつけだと、シーズ・トラスト (Seeds Trust) の設立者、ビル・マクドーマン (Bill McDorman) は言う。シーズ・トラストはアイダホ州で始まったが、2005年以降アリゾナ州を本拠地としている。マクドーマンが栽培したり勧めたりする多くの品種は、この地域の厳しい環境でよく育つ性質により何世代にもわたって選ばれてきた。マクドーマンは穀物コーンを11月に収穫し、冬から春先にかけて使うために保存する。彼のお勧めは、トルティーヤに最適なフラワーコーンの「リオ・グランデ・ブルー (Rio Grande Blue)」だ。「コーンをもぎ取る前に茎に付けたまま乾燥させるんだ。完全に乾いていない時は、コーンの皮を剝いて完全に乾燥させて」とマクドーマン。「使う時まで穂芯から穀粒を取ってはだめだよ。これが秘訣さ。そうすると、お店で買うのとはまるで別物の食べ物になるんだ。」

 キャンディ・マウンテン (Candy Mountain) は早生の放任受粉品種で風味の良い、マクドーマンお気に入りのスイートコーンだ。冷たい土の中でのたくましい発芽力、そして早い時期のその生命力は、南西部や高度の高い他の多くの地域にとってキャンディ・マウンテンを特別なものにしている。豆の中でマクドーマンが気に入っているのは、今では「アナサジ (Anasazi)」として知られているものだ。これは、先祖から伝わるプエブロ・インディアンの古代遺跡の土器の中から見つかった種が起源だと信じられている品種の豆だ。「豆は最長10年保存でき、比較的早く煮え、クリーミーな舌触りで風味が良い。」とマクドーマン。彼はテパリービーン (Phaseolus acutifolius) も地域の宝だと考えている。アリゾナ州と北西メキシコの先住民族は、そこで生き抜くためにこれらの豆を栽培して選んだ。テパリービーンは短期間(60~80日)ででき、干ばつに強い。

 マクドーマンは冬を通じて新鮮なキクイモ、オレガノ、ニンニクを収穫し、さらに葉物も決して欠かさない。「野生カラシナは南西部のこの地域の周りならどこでもメスキートの木陰で育つんだ。だから僕はカラシナの仲間、『スローボルト (Slow Bolt)』ルッコラをメスキートの近くに植えている。植え直さずに何年もの間、新鮮な葉物を無限に供給してくれているよ。」

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中部大西洋岸の通年型菜園

8. ペンシルベニア州デヴォン(ゾーン7):寄稿編集者のウィリアム・ウォイズ・ウィーヴァー (William Woys Weaver) は温室用ビニールで覆ったトンネルの中でカラシナ、レタス、セロリアックを栽培する。野菜を越冬させるカギは、作物が根系をしっかり発達させられるように十分早く植えることだと言う。9月初旬までに植えれば、レタスは十分に根を張るので冬を乗り切ることができ、4月初旬までに再び力強く成長するだろう。

 ターニップ【カブ】、パースニップ、ウィンターラディッシュ、「グリーン・グレイズ (Green Glaze)」コラードは極めて寒さに強く、保護しなくても容易に冬を乗り切る。ウィーヴァーは秋と冬に無加温温室の中の大きな容器であまり馴染みのない食物をいくつか育てる。アンデスの野菜、オカ (Oca) は1月半ばまでに色鮮やかでしっとりとした塊茎の作物をたっぷりと実らせる。キクイモの親戚、ヤーコンもアンデス原産で、シャキシャキとした食感の甘くて栄養価の高い塊茎ができる。また、南アメリカのライチ・トマトも温室の容器の中で越冬させ、春に気候が暖かくなってきた時に菜園に移植する。

9. バージニア州ワーレントン(ゾーン7):農的な生活をする人 (Homesteader) で執筆者のハービー・ユーサリー (Harvey Ussery) は寒い季節のサラダに入れるチコリに夢中だ。「実に多様な品種があり(エスカロール、エンダイブ、赤チコリ、シュガーローフ)、ピンク、ローズピンク、サーモンピンク、緑、白などの美しい葉を付ける。レタスサラダよりずっとおいしい。私の味覚ではね。」

 ほとんどのアブラナ科にとって、この地域の暑い残暑はありがたくない。だが、「ヴェイツ (Vates)」ケール、いくつかのアジア系葉物、ターニップは頼もしい例外だ。代わりに、ユーサリーは秋と冬の保存作物の栽培に力を入れる。ニンジン、ターニップ、ルタバガ、ビーツなど密度の濃い根菜類は、それらを育てたまさにその場所で、きれいな藁や枯葉を厚く敷いた下で一番良く保存できる(甘さも一番良く保たれる)。雪とマルチを脇にどかして、作物を掘り出せば良い。

 「積み上げる」のもルタバガ、ターニップ、キャベツのもう1つの簡単な冬の保存方法だとユーサリーは言う。秋に凍結線の下まで穴を掘り、洗っていない野菜を入れて覆いをする。「私は60cm積み上げて、それをツーバイフォー材、ビニールシート、ストローベイル2、3個で覆う。」この昔ながらの方法は高い湿度を保つので、野菜のシャキシャキ感が保たれる。

 ユーサリーは、室内に冬カボチャ、乾燥コーン、ピーナッツ、タマネギ、ニンニク、ジャガイモ、サツマイモを保存する。 「保存カボチャの女王は東洋カボチャ品種。特に「セミノール (Seminole)」が気に入っている。すごく長持ちするし、スクワッシュ・バイン・ボーア【学名:Melitta curcurbitae】に耐性がある。」また、「テネシー・レッド・バレンシア (Tennessee Red Valencia)」ピーナッツも粘土土壌に耐性があり、非常にお勧めだと言う。収穫後、ユーサリーはピーナッツを風通しの良い場所に1か月置いてから冬の間それを保存しておく。「少量のピーナッツを30分くらい炒って、殻を剝いて食べるんだ。絶品だよ。」

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翻訳全文は今月末発行予定。

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Year-Round Gardening: Tips for Your Region

By Vicki Mattern 

August/September 2015