電気芝刈り機器:庭で使おう。

 ガソリンで動く機械を使ったことがある方は思い当たると思うが、ここぞという時に限ってエンジンがかからないということが起こる。使えるようにするために、芝刈り機のスパークプラグや燃料フィルターを交換しなければならなかったり、汚れたキャブレターをきれいにしなければならなかったり 。これが電動式のものならそんな面倒はいらない。でも電動式モデルが選ばれる理由はそれだけではない。

 電動式なら始動時の問題が少なく、ガソリンやオイルで周りを汚すこともなく、排気ガスの匂いを嗅がずに済む。それだけでなくエネルギー消費が少なく懐にも優しい。電気モーターは内燃機関より効率面で優れているが、それはひとつにモーターの方がエンジンより熱として失われてしまうエネルギーの量が少ないことによる。

 下記に挙げたバッテリー駆動の芝刈り機はどれも、燃費の点でガソリン式の同等品よりずっと安上がりだ。動力機器を製造する米国のStihl社によれば、リチウムイオン電池で駆動する機種は、同社の同じ性能の電動でない製品のわずか8%しかランニングコストがかからないという。

 芝刈り機やチェーンソー、除雪機、薪割り機、粉砕機、さらにはトラクターであれ、新しく購入を検討しているなら、最も環境に優しい選択肢は電動式の製品だろう。近年のバッテリーの持ちの良さと軽量化のおかげで電動タイプはさらに魅力的になった。今や主流は軽さを誇るリチウムイオン電池で、これを搭載したずっとパワフルで実用的な芝や庭園用のコードレス機器が出てきた。以下にポイントとなる特徴と現在販売されている製品をまとめたので、じっくり楽しんでいただきたい。


購入する前に

 騒音。電動機器は通常、ガソリンエンジン式のものと比べて格段に静かだ。とはいえ、高速回転するパーツを持つブロワーや芝刈り機に囁き程度の静音性は期待できない。一方、電動チェーンソーは驚くほど音が小さく、お隣の「静かな日曜の朝のひととき」を邪魔することもない。電動除雪機も小型の電気トラックもご近所を気にすることなく何時間でも使える。

 パワー性能。メーカーは自社の電動機器を電圧(ボルト)と電流(アンペア)の組み合わせか、あるいはワット数で表している。例えば、家庭用コンセントに繋ぐほとんどの電動工具は、家庭用電源電圧、つまり120ボルトの交流(VAC)と特定の定格電流で動作する。似た製品同士を比較する場合、定格電流が大きいほどパワーがあると考えてよい。また、薪割り機などでは加えることができる圧力にも注目すること。一例として、電動薪割り機の最大破砕力は、4トンから20トンだが、どれほど効率良く作業をこなせるかを示している。このような数値を見ることで、電気とガソリンそれぞれの製品を比較することができる。

 ワット数で表されるモーターを、電流で表記された他の製品と比較する場合は、ワット数を電圧値で割るだけで良い。例えば、120VAC、4トン、1,500ワットの薪割り機は約13アンペアになる(1,500 / 120 = 12.5)。この公式は逆にワット数を求めるときにも使える:120ボルトのモーターに16アンペアが流れるなら、それは1,920ワットということになる。

 バッテリー。コードレス機器にとって、ここ数年のバッテリー技術の改善はめざましいものがある。特にリチウムイオン電池は、軽量、長寿命で、同じ容量なら鉛蓄電池より小さく軽い。とはいえ、少々値は張るが。

 ゴルフカート、フォークリフト、除雪機など、それ自体の重量が重いほどよいものは今後も重い鉛蓄電池が使われるだろう。芝刈り機やその他大型の機器の多くも同様だ。これらは安く長く使えリサイクルも可能で重いが、こういった特徴がトラクターなどには向いている。


庭で使う電動機器の種類:現行モデル

 電動薪割り機はパワフルなほど良い。また、この製品はプロ級の働きをする電動機器の代表格だ。小型の薪割り機は斧を数回振り下ろすのと大差なく、これでは割れない木には240VACのRamsplitter社製のような本格的な薪割り機が要る。この電動薪割り機はガソリンの代わりに電気を使うほかは、20トンの油圧式の一般的な薪割り機となんら変わらない。なお、240VACなので、一般的な家庭用コンセントでは使えず、240ボルトのコンセントに繋ぐ必要がある。

 排気ガスを発生しないので、物置や倉庫、車庫などの室内で使うことができる(暖房で閉め切っていてもよい)。さらにありがたいことに、耳を騒音から保護する必要もない。Log Splitters Direct では 、Ramsplitter、Boss Industrial、 Oregon、Earthquakeなど様々なメーカーのモデルをオンラインで比較できる。

 電動チェーンソーを選ぶ際、コード付きのものは広い場所で作業するには適さないだろう。そんなときはリチウムイオン電池の出番だ。私が試したことがあるOregon社の40ボルトのMAXコードレスチェーンソーは、同社のPowerNowリチウムイオン電池駆動のラインアップの一つで、バーの長さは約36cm、重さは約5kg。メーカーによれば、一回の充電で直径50mmから76mmの枝なら250本まで切ることができるという。

 実際に直径90cmほどのオークの木をこのチェーンソーで切ってみたところ、ガソリンタイプのチェーンソーの耳をつんざく高い騒音もガソリン臭もなく、快適そのものだった。バッテリーパックを2つ使ったが、さすがはリチウムイオン電池。使い切るまでほとんど回転が落ちることはなかった。

 このOregon社のチェーンソーはロープを使ったり木に登ったりする作業には重すぎるだろう。また「プロ仕様」でもないが、たまに自宅で木を切る程度のホームオーナーには申し分ない。

 電動チェーンソーを提供している他のメーカーには、Worx、Remington、それにStihlがある。果たして、毎年何立方メートル分も薪を割るような本格的な重作業で使われるチェーンソーが電動式に置き換わっていくのだろうか?答えはノーだが、数メートル四方程度を整地したり、ひとシーズンに1、2本の木を倒すくらいであれば電動チェーンソーで十分だ。

 電動除雪機。雪が自宅の周りを真っ白に覆ってしまった日のやかましいエンジン音ほど近所迷惑なものはない。電動式の除雪機はガソリン式のものより静かで、数社から電源コード有り、あるいはバッテリータイプの両方が発売されている。これらはいずれも軽量で、ブランド品のもので価格は約200ドル(Mantis、GreenWorks、Toro、Worxなど)から上は400ドルで15kgほどのSnow Joe社のiON 40ボルトコードレスモデルまで様々。

 電動芝刈り機は電動機器の中では特に人気がある。Black & Decker社の自走型の手押しモデル、DR Power Equipment社からは軽いNeuton CE6、Stihl社のリチウムイオン電池搭載のRMA 370、Toro社のコードレス e-Cycler、それにWorx社のコードレスのラインアップなど。

 運転席に乗るタイプにはMean Green 社のCXR-52 およびCXR-60, Cub Cadet社の斬新な超静音モデルのZT-S ZEROがある。ZEROは電動タイプのとしては唯一、運転席のハンドルで四輪操舵によるゼロターン走行できる【その場で360度回転できる】。

 電動トラクターは意外なことにあまり機種は多くないが、DIYを好む人々が従来の芝刈り用トラクターの電化に取り組んでいて、中には変換キット一式を提供するものもいる。標準的な動力取り出し装置(PTO)でアクセサリー類を動かす代わりに、変換キットでは別のモーターを使って芝刈りデッキ【刈刃を収納した部分】や耕耘、さらには除雪などの機能を持つアタッチメントを動かす。

 太陽光パネルを屋根に載せた、Free Power Systems社の四輪駆動の小型耕耘トラクターSun Horse 4812は、ピックアップトラックの荷台に載せることができる(作業中のSun Horseの動画はFree Power Systems のウェブサイトで見ることができる)。

 Electric OX2は大型の牽引用の四輪駆動トラクターだが、その多用途モデル(Electric OX2 MP)は芝刈り用デッキや回転式の清掃ブラシや投雪やブルドーザーブレードのアタッチメントなどに対応している(詳しくはElectric Tractor 社のウェブサイトを参照のこと)。

 ニューヨーク州にあるHuguenot Street Farmは、往年の名機であるAllis Chalmers G トラクターの電化に成功した。一般に手に入るバッテリーとフォークリフトのモーター、ゴルフカート制御システム、それに組み立て用マウントを使って、この美しいクラシックトラクターを電気によって新しく生まれ変わらせることができる。自作の方法はFlying Beetのウェブサイトで学べる。

 Niekamp Tool社はAllis Chalmers Gを電化するためのキットとチュートリアルを提供している。バッテリーといくつかの部品は別途調達しなければならないが、キットにはベルハウジング【エンジンとトランスミッションを繋いでいるパーツ】のアダプタープレート、モータープレート、スタブシャフト、ベアリングのついたプーリー、パイロットベアリング、ネジとスペーサー、それにモーターカバーがついて595ドル。Niekamp Tool 社のウェブサイトでキットを探してみよう。

 Valley Oak Tool 社はFarmall Cub社のトラクターの電化を行っている。現在入手可能なElectric Cubを探すならValley Oak Tool社のウェブサイトで。そこには電化の手順の詳細とオンライン動画を見ることができる。

 再生可能エネルギーを自宅に導入していなくても、電気で動く機器に切り換えることで空気汚染や騒音を減らすことができる。電動機器を動かすのはほんのわずかな電気代で済み、エンジンのチューンアップや汚いオイル交換も必要ない。スターターコードを引いてエンジンをかける厄介な手順ともおさらばだ。


電動粉砕機

 電動粉砕機は小枝や落ち葉を粉砕して腐葉土や堆肥を作るのに使われる。電動モデルなら事前の準備も始動も大したことない。燃料の補給もエンジンの保守も不要だ。代わりに、丈夫な延長コードを粉砕機に繋いで(距離が離れていればより太いコードが必要になる)、スイッチを入れるだけ。

 選択肢の一つにPatriot Products社のCSV-2515がある。14アンペア, 120VACの電動チッパー・シュレッダーだ。同社によれば直径64mmまでの枝を裁断できるという。けたたましいエンジン音こそないが、回転する刃が枝を破砕する際にはかなりの騒音が発生する

Sun Joe offers a 14-amp chipper, too, although its Chipper Joe is smaller and can only handle branches and twigs of up to 1-1⁄2 inches in diameter.

Sun Joe社も14アンペアの粉砕機を発売しているが、Chipper Joe はより小型で、処理できるのは直径38mmまでの細枝に限られる。


太陽光による充電

 あなたがオフグリッドな暮らしをしてるか、石油やガソリンの業界に関わりたくないと考えているか、はたまた敷地の離れた一角で電動機器を使う必要に迫られているか、何れにしても小型の太陽光(PV)充電システムはそんなあなたにぴったりだ。

 大抵1000ドル以下のほどほどの投資で、小型のPV充電設備が手に入る。特に週末だけ電動機器を使う人にちょうどよく、数日かけてバッテリーに充電し、次回使う時までには充電が完了しているという具合だ。庭の物置の屋根に小さいPVシステムを設置すれば、全部の電動機器に充電でき、元が取れた後は「燃料代」はタダになる。太陽光充電設備の自作については 別の方法として、すでに系統連携のPVシステムを導入して光熱費をまかなっているなら、専用のシステムやバッテリーは必要なく、機器を直接コンセントに挿すことで太陽の恵みで充電することができる。


Electric Lawn Equipment: Take Charge of Your Yard

By Ted Dillard 

February/March 2015