菜園ノウハウ:食料保存する人の菜園

保存加工を念頭においた菜園計画で、あなたの家の食料備蓄を高めよう。冷凍、ビン・缶詰め、乾燥、発酵にぴったりの作物と品種を育てよう。

 いくつかのことを留意すれば、保存加工のための菜園計画を成功に導ける。保存加工目標を達成できるように、あなたの菜園の地図、植えようと思っている作物とその品種を書いておこう。更には、ビン詰めや保存加工作業をもっと手軽に楽しくできるよう、菜園の近くに収穫物用の屋外キッチンを作ることだってできる。

 

 

 私たちの菜園は、作物が成長する間、美しくみずみずしい自然の豊かな恵みを与えてくれる。そして、収穫が終わった後も、私たちの食料備蓄を高めてくれる潜在的な可能性があるのだ。あなたが自家菜園作物のビン詰め計画を作るとき、あなたは未来に備えている。冬の食卓をシンプルにし、ごみを減らし、節約する、そんな未来の計画でもあるのだ。

 保存加工を念頭に置いて菜園計画を作るとき、あなたの家族が好きなものと、ただ単に出されたから食べているものが何かを考えよう。次の年の食卓をあなたがどのようにしたいと思っているかについて家族と話し合おう。もし一年を通して、自給自足の菜食生活がしたいなら、ある特定の野菜について、家族が一週間に平均して何回食べるかを計算しよう。それからその数に52をかける(一年にある週の数)。そうしたら、その野菜をどの程度植えたらよいのか大まかな数字がわかるように、「Garden Planning: Guidelines for Growing Vegetables(菜園計画:野菜栽培ガイドライン)」にある、作物収穫高の表を見てみよう。もっと小さな規模で始めるなら、次に挙げる提案の中から、どれでも良いから試してみよう。最も簡単に栽培・保存加工できるものから、もっと技術の必要な、あるいは長期間手をかける必要のある栽培・貯蔵方法まで、提案をまとめてある。

 

簡単な栽培・保存計画

 保存加工の点から見て、他の野菜と比べて大幅に作業しやすいものがある。トマト、とうがらし、玉ねぎ、きゅうり、いんげん、夏かぼちゃ、葉物や人参から始めることをお勧めしたい。というのも、適切な品種を選べば、ここに並べた全ての野菜はほとんどの地域で簡単に栽培でき、数え切れない程あるシンプルな保存加工にふさわしいものだからだ。保存加工とは、冷凍、酢漬け、煮沸によるビン詰めなどだ。煮沸によるビン詰め、圧力によるビン詰めは、それぞれ異なるタイプの加工用具と、独自の安全性ガイドラインがある。ほとんどの初心者は煮沸によるビン詰めから始めている。

 私の好きな保存加工の一つは、トマトの皮をむいて刻み、とうがらしと玉ねぎいくつかを刻んだものと一緒に1クォート(約1リットル)の冷凍バッグに入れておくことだ。冬のチリペッパー風味の鍋料理を作りたいとき、私がすることといえば、ひき肉適量をきつね色に炒めてスパイスとこの冷凍野菜を入れるだけ。ピザ・パスタソースのビン詰めにもトマトとピーマン、玉ねぎを使う。トマトと玉ねぎの冷凍バッグはスープにも使える。ピーマンは「カルメン (Carmen) 」を試してみよう。たくさん収穫でき、香りも抜群に良い。

 保存計画のために何を植えるか決めたら、植える品種について強みと弱みを把握しておこう。例えば、

パスタやピザソースのためにスライシングトマト【生食やトマトソース用のトマトの主流タイプ】をたくさん使うとしよう。実がびっしり詰まった肉厚の水分の少ないペースト用の品種を選んだ場合と比べて、2倍以上の量を使うことになるだろう。スライシングトマトを使うなら、切ったトマトをソースのどろっとする濃さにするために、長時間料理しなければならなくなる。一方、「ローマ (Roma) 」、「アーミッシュ・ペースト (Amish Paste) 」、「ストライプ・ローマン (Striped Roman) 」のようなペースト用の違う品種を使えば、どれを使っても作業時間は大幅に短縮される(タイプ別のお勧め品種をもっと知りたいなら、「Best Tomato Varieties to Grow This Year(今年育てるのに最適なトマト品種)」を見てみよう)。また、保存加工作業を暑苦しいキッチンで一人でする必要はない。収穫と作業を分かち合えるビン・ビン詰めパーティ(屋外でも!)を計画しよう。

 さあ、あなたはトマトをどのくらい植える必要があるだろうか。トマトの品種や、生育環境によって、一苗当たり15~25ポンド(約7~11キロ)の収穫が見込める。だから、1年を通してあなたの家族が何ポンドのトマトを食べるかを基準に計算してみよう。何年も前、郊外に住んでいた頃、「ビッグ・ボーイ (Big Boy) 」品種のトマト8苗で、家族5人で1年間分の、まるごと冷凍やビン詰めパスタソースに十分な収穫を得られることがわかった。「Sustainable Market Farming(持続可能な市場向け野菜栽培)」の著者パム・ダウリング (Pam Dawling) は、100人分としてコミュニティー菜園にペースト用トマト品種を250苗とスライシングトマト品種90苗を植え、毎年、収穫から500ガロン(約1890リットル)のソースのビン詰めを作ったと記している。

 トマトスープは、いろいろな品種のトマトの良さがまさに際立つ料理だ。冷凍用にたくさんのストックも作ることができる。「グリーン・ゼブラ (Green Zebra) 」は柑橘系の味わいがする。一方、「グレート・ホワイト (Great White) 」はいぶしたような風味を添える。乾燥トマトも試してみよう。ペースト用やミニトマトは特に乾燥に適している。けれども、そうではない「グリーン・ゼブラ」も乾燥してから層に重ねてキッシュやキャセロールにするのに最適なトマトだ。

 きゅうりは昔ながらのピクルスに向く野菜だ。「ピクルス用きゅうり」という名前に振り回されないように。どんな品種でもピクルスにできるし、どんな品種でも生で食べることができる。でも、まるごとディル風味のピクルスにするならピクルス用タイプが望ましい。というのも、成長してもビン詰め用のビンの中に納まる大きさだからだ。ハラペーニョ、セラーノやハバネロのようなとうがらしと一緒にピクルスにすることもできる。

 私の子供たちはいんげんの普通のビン詰め(圧力ビン詰めが要る)を全く好きにならなかつたが、歯ごたえのある、いんげん豆のディル風味の酢漬けはお気に入りだった。というのも、このいんげん豆の酢漬けは酸度があるために、傷む心配をせずに煮沸による ビン詰めができるのだ。これでいんげん豆に歯ごたえが残せる。

 とうがらし、夏カボチャ、ケールやコラードのような厚い葉の野菜はまさに乾燥に打ってつけだ。あなたが作ったとうがらしをスパイシーなメキシカンやイタリアン料理に使ったり、挽いて自家製調味料ミックスに加えてみよう。乾燥葉物や夏カボチャのスライスを乾燥させたものを戸棚の奥にしまっておいて、スープ、野菜のラザーニャやキッシュに入れたり、スナックに食べよう。夏カボチャは余分に植えなくてもきっと大丈夫だろう。たくさん実がつき、菜園家は使い途に迷うことがよくあるからだ。

 人参は冷凍に最も適した野菜の一つだ。「ボレロ (Bolero) 」、「ネルソン (Nelson) 」、「ナパ (Napa) 」のような、寸胴な形の豊産種のナンテス (Nantes) を育ててみよう。スライスしてから湯通しし、フリーザーバッグで凍らせば、冬を通してシチューや他の料理に使うことができる。春には、夏・秋を通して収穫したらすぐに食べられるように、少なめの人参を育ててみよう。秋には冷凍用にたくさんの人参を育てよう。

中級コース

 もう少し手間のかかる難しい栽培・保存加工計画に思い切って挑戦してみたいって?ナスととうもろこしは長期間の栽培作物で、十分な暖かさが必要だ。害虫や病気の問題もあるかもしれないが、収穫に恵まれれば焼いて香りいっぱいの冷凍バックができる。焼いたナスのディップ、焼きとうもろこしのチリソースを思い浮かべてみよう。様々な料理を活き活きとさせる冷凍パックだ。

 保存加工の選択肢を増やす、発酵や圧力ビン詰めにも挑戦したいと思っているかもしれない。食べた人が具合が悪くなったらと、発酵に挑戦するのは怖いという声をよく聞く。でも、「The Art of Fermentation(発酵という芸術)」の著者であるサンドル・カッツ (Sandor Katz) は、そう起こることではないと言う。発酵は古来の食料保存方法であり、カッツ曰く、実質上どんな野菜でも発酵できるという。ザワークラウト(発酵させたキャベツ)は伝統的な発酵人気料理。カッツは、セロリやラディッシュの発酵も勧めている。

 いんげんやとうもろこしなどの、酸度の低いビン詰め野菜のほとんどは店で買うことができる。あなたも自宅で圧力ビン詰め鍋を使って保存加工することができる。一種類の野菜でビン詰め作りに十分な量を用意できないって? それなら、ミックス野菜スープ用に数種類の野菜を合わせたビン詰めを作ってみよう。

 冬カボチャは冷蔵室で状態よく保存できるが、調理して裏ごしし、冷凍することもできる。裏ごしをスープやパイ、パン、アイスクリームのようなデザートにも使ってみよう。甘い実で完璧な裏ごしができる冬カボチャの「ウォルサム (Waltham) 」、セイヨウカボチャのバターカップ「バージェス (Burgess) 」を育ててみよう。

 できるときにはいつでも食料保存加工に取り掛かれるように、途切れず種をまくことをお勧めする。春に蒔けば、夏にはみずみずしい収穫が得られる。多くの地域では、秋の菜園もかなりの収穫が望める。例えば、春に植えたキャベツをコールスローで全部食べてしまったら、夏には、ザワークラウトやキムチ作りのために秋に収穫するキャベツの種をまくことができる。

 

多年草栽培と長期菜園計画

 ほとんどの多年生作物は収穫できるまでに2、3年かかるが、待つ価値はある。1つの苗から何年にも亘って果物や野菜が収穫できるようになるのだから。冷凍やビン・缶詰めが簡単にできるアスパラガスやルバーブを考えてみよう。ほとんどの人は、ルバーブパイの人気のおかげでルバーブが果物だと考えているが、実際は使い途の広い野菜なのだ。スープ、キャセロールやメインディッシュに趣きが出る。さらにはミックスドリンクにも良く合う。さわやかなルバーブのモヒートを思い浮かべてみよう。

 どの種類のベリーも全て、冷凍や乾燥、もちろんとびきりのジャムやシロップ煮にも打ってつけだ。ほとんどの品種は栽培が簡単で、年々増殖する傾向がある。菜園に植える場所が無いなら、あなたの土地全体を通しての食べられる造園作りとして、ベリーの低木と蔓の場所を確保しよう。

 保存加工用とは別に生で食べるいちごが欲しいなら、一季なり(June-bearers) の品種と四季なり(ever-bearers) の品種の両方を植えるべきだろう。ジューン・ベアラーは2~3週間かけて冷凍やジャム作りに完璧なたくさんの実をつける。一方、エバー・ベアラーは、2ヶ月間かけて徐々に実がなり、夏を通して生で食べるのに最適だ。

 桃やプラムのような核のある果物を植えるなら、種離れの悪い品種より良いものを選ぼう。生で食べるときには果肉が種のくぼみにへばりついても大して問題ではないが、保存加工作業に種離れの良い品種を使えば時間を大幅に節約できる。最終的には、種離れの悪い品種を使う場合よりも多くの果実をビン詰めや、冷凍、乾燥することができる。

 りんごの木を植える場合、よりかたくて乾燥に向く品種や、より軟らかくソース作りに向いている品種があることを覚えておこう。りんごは品種によって異なる時期に実をつけるから、あなたの保存加工の対戦予定に影響が出るかもしれない。例えば、「ロディ (Lodi) 」は早成りでソース作りに打ってつけのりんごだ。この品種からソースを作り、乾燥や保存にはシーズン後半に収穫する固めのりんごを使おう。

前年の経験を生かす

 菜園計画をいろいろ思いついたら、菜園日記に書いておこう。シンプルにらせんとじのノートに書いても、 MOTHER EARTH NEWS Vegetable Garden Planner(マザーアーズニュース野菜菜園計画)のようなパソコンのプログラムを使った詳細なデジタル日記と地図を使っても良い。私が菜園生活を日記にもっと早くつけ始めていたら、栽培学習曲線はもっとスムーズにカーブを描いていただろう。日記の中に、あなたが植えた品種を書いておこう。何をしたら上手に栽培できたのか、あるいはできなかったのかも書いておこう。栽培期間を通しての収穫を計量し、もしくは、少なくとも収穫量の大まかな記録をつけておければ理想的だ。そうすれば、それぞれの品種の収穫量と、特定の作物を上手く育てることができたかどうかがわかるだろう。また、ビン詰め、冷凍、乾燥、発酵させたそれぞれの作物について、きちんと保管できている量も書いておこう。これからの菜園計画を立てるときに参考にできる。時々キッチンの様子についても書き加えておこう。食料棚にずっと残ってしまっているもの、思っていたよりも早くに使ってしまいそうなものについての記録だ。

 考えうる最高の計画を立てたとしても、毎年どれかを作りすぎたり、少なすぎたりすることが出てくるはずだ。もし足りなくなるものがあったら、友達と交換したり、地元のファーマーズマーケットで足りないものを買って補充しよう。そうすれば食料棚や冷凍庫をまた満たすことができる。保存加工する作物を買ってはいけないというルールはない。一つ確かなこと。その年の冬に雪が舞った時、蓄えることができた全ての食べ物にあなたは感謝するに違いない。

 

食料保存加工計画情報

• Seed and Plant Finder(種苗検索:品種を探し出そう)

• Garden Planning: Guidelines for Growing Vegetables(菜園計画:野菜栽培ガイドライン)

• MOTHER EARTH NEWS Food Preservation hub(マザーアースニューズ食料保存情報ページ)

• Home Canning Guide: Learn How to Can Your Own Food(自宅でするビン詰め作業:自分用の食材をビン詰めにするには)

• How to Make Pickles(ピクルスの作り方)

• How to Dry Food: Reap the Garden and Market Bounty(乾燥食品の作り方:自宅菜園やファーマーズマーケットから自然の恵みを得よう)

• Pressure Canning Basics: Fearless Food Preservation(ビン詰めの基本:安心な食料保存)

• The Art of Fermentation(発酵という芸術) サンドル・カッツ著

デボラ・ニーマン (Deborah Niemann) は、食物栽培や、ありあわせ料理、お金をかけない幸せな健康的生活について執筆活動をしている。イリノイ州でAntiquity Oaks Farmを経営。「Homegrown and Handmade(自家栽培とハンドメイド)」の著者。

 

愉しい自給自足

マザーアースニューズ

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Garden Planning for Preservation: Best Foods to Freeze, Can, Dehydrate and Ferment

By Deborah Niemann 

February/March 2016