家を建てるのに最適な壁

ストローベイル、薪壁、コブ、圧縮土の壁は、木造の壁よりも持続可能性があるだろうか? この詳細解析で驚くべき結果が出ている。

 

 

 

 

持続可能な家の建築産業では、家を建てる予定の人々は環境に優しい選択をしたいと思っているが、どの家の作りも環境に良いと表示している建築産業の理解に苦しんでいる。私の様な環境意識の高い建設者にとって、持続可能な建築とは、エコシステムへの影響、カーボンフットプリント、建材の廃棄、エネルギーの効率、耐久性と家屋内の空気の質などの多くの要素を含むものだ。

 最終的には、これらの持続可能性への配慮は、労働力、建築規則への適合性、建材がどこで、またはどれだけ入手可能か、などの実際の問題と噛み合っていなければならない。建設者と未来の家主にとって助けになる一つの基準は、種類の違う建材に取り込まれたエネルギー量(EE:製品が調達、配送、設置されるあいだに投資された全てのエネルギー量)の環境への影響を比べること。さらには、持続性のある家の建設者が、建材の使用と廃棄、もしくは行き着く先に関連するエネルギーを全て含む時、やっとそれぞれの建材のライフサイクルを通した環境への影響の評価を達成する。

 現在、(自然の繊維と粘度質の土を混ぜた)コブ、圧縮土のブロック、ストローベイル、木造のどの建築工法でも、全ての基準において高い得点を示すものはない。そして取り込まれたエネルギーとライフサイクルの分析は建築現場特有の環境に左右される為、家の建設者はゴールに沿ったベストな選択と優先順位を決めなくてはならない。

 家の工法は、ほとんどの場合、家主である建設者が第一に話し合いたいことだ。そして、当たり前のことだが、壁が窓をサポートし、スペースを物理的に限定するドアが、家のエネルギー効率において重要な役割を果たし、建物の見た目の美しさも決定する。家主が彼らのアイデアを磨き、建設可能な家にする為に、これらの壁の工法と、従来型vs改良型の木造工法のチャートを作った。

 これらのチャートは5つの家の工法を11の基準で比べ、それぞれを他と比べて評価している。多くの人が、ストローベイルや、コブ、圧縮土のブロック等の代替壁の工法が、より持続可能な壁の素材だと推定するが、このチャートをよく吟味すると、改良された素材と一緒に使用した場合に木造工法がよい基準に達していることが理解できるだろう。

 

ストローベイル建築

 ストローベイル建築への関心が復活してから20年、代替建築と呼ばれるこのタイプを使用した家の数があっという間に増えた。ストローベイル建築は、総合的な規定のある数少ない代替建築の一つで、ストローベイルの壁を2015年に組み入れたInternational Residential Code(国際住居規定)もある。非主流派以下から主流に受け入れられた最も早い格上げ。

 ストローベイル建築では、作業者は、穀物(麦、米、オーツ、大麦やヘンプまでも)の余った茎を束ねて出来た四角い梱を積み上げ、壁を作っていく(上の写真を参照)。表面に出た部分はカバーする必要があり、粘土、石灰、またはセメント石灰の漆喰で、外側の構造を作り、隙間なく仕上げる。ストローベイルは簡単に色々な美的要素を取り込めて、丸くて曲線のある建物と同様に、直線的で四角い建物にも向いている。

 ストローベイル壁を正確に評価するの難しいだろう。なぜなら、多くの建築工法でストローベイルが取り入れられているが、素材やプロセスが全く違うのだ。例えば、シンプルで荷重に耐え得るストローベイル壁の工法では、建設者が、最小限の窓とドア枠、シンプルな木の桁、そして現場でとれた土の漆喰を選択した時に、良い評価となる(54ページの壁の工法チャートをご参照)。しかし、建設者が漆喰用の網、セメントベースの漆喰などの複雑な工法を使用すると、環境への影響と共に金銭や労働力の投入が著しく増える。

 つまるところ、ストローベイル工法では、従来型の建築方法よりも安価な資材に高い労働力を必要とするという組合わせが典型なため、労働力の調達先や価格によりコストにかなりの差が出るのだ。

 

コブの壁

 コブ建築は古代にルーツがあり、ほとんどの文化で、何かしらの形でこの建築工法が使用されてきた。コブは多粘土質の土、砂、(ほとんどの場合麦や草などの)自然の繊維の混合物だ。湿めらせた混合物は、密度があり、成形可能な素材で、建設者は手で形を作りながら壁を作っていく(下の写真をご参照)。このシンプルな工程はどの素材にも幅広く対応し、色々な気候の下で上手くいく。最後にコブの建設者は、粘土ベースの漆喰で保護層を塗り、壁を仕上げる。

 現在北米において、コブは文書化された建築基準に欠けているが、そのため建築基準適合性と労働投入の項目において得点が低いのだ。小さなコブ構造が法的に受け入れられているのは、建築物のサイズによって建築基準が免除されるからだ。コブはエネルギー効率でも悪い得点を得ている、そのため断熱材の追加が、全てではないがほとんどの気候で必要とされる。 

 効率への心配を解決するために、家を建てる人は、壁を二重にした構造に断熱材を間に入れるか、何らかのタイプの外壁用または内壁用断熱材を張り合わせる方法で、他の断熱材をコブ壁に入れ込むべきだ。断熱素材の選択は、コブ壁の評価を大きく変え、コストと環境への影響を共に著しく上げる。

 エネルギー効率の良いコブハウスの建設は確かに可能だが、機械設備を使うことによって必要な労働力を減らすことも可能だ。しかし、こういう領域の改善は、そもそも多くの家の建設者にとって魅力であった安価で低環境負荷という手軽さを軽減するだろう。

 全ての代替の壁の工法の中でも、コブは建築許可申請に役立つデータが最も少ない。主要なコブの家のいくつかが将来を約束する前例を作ってきたのだが。  

 

薪壁(積み重ね壁)

 薪壁の建築は丸太や製材での建築に向かない木を活用している。建設者は短い丸太または割れた木を、長手方向が壁を横切る様に積み上げ、木の長さが壁の厚みになる(55ページの下の写真をご参照)。構造を支えるものとして、(粘土、石灰、コンクリートで作る)モルタルが木の周りを囲み、構造のベースを成す。モルタルが木の内側と外側の壁面から強化する。内側の壁は、後で断熱材を詰めることができるので木の周りの隙間をそのままにする。

 

 ストローベイルの建築物のように薪壁は、建設前と最中の建設者の判断に応じて、下記のチャートで得点幅が広がる。木の入手は環境に影響を与えるが、薪壁建設者のモルタル材料と断熱材の選択は持続可能性の要素に最も大きく影響する。

 薪壁は空気が漏れる傾向にあり、これはエネルギー効率に大きく影響する。十分なシール材を木とモルタルの無数にあるつなぎ目に封入するのは難しい。しかしどんな空気の漏れでも、壁に施した断熱効果を無効にする。壁の両面を漆喰(または他の被覆材料)でコートするのは断熱性能のレベルを大きく改良するだろう。しかし外観が変わり、費用が更にかかる。

 薪壁はどの建設基準からも正式に認められていないが、歴代から現代の前例が、多くの区域で許可の可能性に貢献している。

 

圧縮土のブロック

 現代の圧縮土のブロック(CEB) は、機械式または油圧式プレスを使い、粘土成分の少ない土を押さえつけて大きなブロックを作るもので、過去の版築建設技法を基にしている。多くの場合、建設者はブロックを作る機械を現場に持ち込み、現場の土をブロックの主成分として使用するが、商業的なCEB生産者もあり、ブロックを1カ所の工場で作り出荷している。形作られた後、圧縮土のブロックはコンクリートブロックのように並べられ、粘土または石灰ベースのモルタルで互いに接着される。

 CEBも版築の壁も両方とも、幅広く環境に影響(主にセメント使用量によって決まる)を与える。土の建築工法のご多分にもれず、CEBと版築は低い断熱能力を備えている。断熱の方策には、二重壁にして中間に断熱材を入れる(ブロックまたは版築の量が2倍必要となる)か、表面仕上げで保護された断熱材の層を内側か外側につける。しかしこのような方策も費用と環境に影響する。

 CEBや版築用の資材と専門労働力の入手性は北米において、場所によりかなり異なる。アメリカ合衆国の建築基準は、ニューメキシコ州などに歴史的ルーツのある、このスタイルの建築を承認する傾向がある。

 

セルロース充填の木造

 家を所有するほとんどの人は、在来の木組みの建築構造をよく知っている。この構造において、ツーバイフォーやツーバイシックスの材木が間柱を使った壁を形成する。建設者は間柱の間を断熱材で埋め、外側と内側の表面を被覆材料で覆う。別の木造工法では、二重の間柱壁を使用し、壁の厚みを増して断熱効果を高める。

 在来の木造工法は、特に建設者が持続可能な方法で伐採された材木を使用した場合、驚くべきほどに環境に優しい建設スタイルだ。持続可能な方法で伐採された材木をオンライン上で探すには、http://goo.gl/RhmjgXをご参照。木造の壁は、適度な構造の強度と建築基準の要求を満たすのに、比較的最小限の材料を使用する。

 環境の視点から見ると、従来の工法に付随する断熱と被覆の材料は、内包エネルギーと二酸化炭素において、プラスにはなっていない。幸運にも、環境に低い影響をもつ材料が存在し、改良された木造の壁の工法を可能にしている(56ページの「従来型 vs. 改良型木造工法」をご参照)。

 改良された木造のモデルでは、建築基準認証済みの工法に、高いエネルギー効率と低い環境負荷を維持するのに妥当な入手性と手頃な建材が備わっている。

 

柱目すべき建築工法

 54ページのチャートにあるように、高いエネルギー効率でありながら極力環境負荷が最低、低賃金、材料が最も手に入り易く、労働力が少なくて簡単に建築基準に受け入れられる組合わせを持つ、魔法のような建築工法などは存在しない。もしあれば、みんながその建築方法で建てるだう。シンプルなコブのコテージがニーズに合う家主がいるかもしれないし、ストローベールの家のほうが合う家主もいるかもしれないのだ。

 「壁の工法チャート」にある各カテゴリーで、低いところから高いところまでの影響範囲は、計画の段階では些細なことに見えた決断が、その工法の内包エネルギー、有毒性、エネルギー効率に関連して、重大な環境への影響をもたらす結果になることを示している。

 最後に、私たちは持続可能な建設者として、自然素材を経済的に活用する際、元々の工法を理解すべきだ。「従来型 vs. 改良型木造工法」のチャート(下)は、伝統的な木造工法において内包エネルギーを大幅に減らすことのできる選択肢を、詳細に説明している。改良された木造工法は、従来の建築基準に承認された工法を利用して、モダンでエネルギー効率が高く環境に優しい家を建てるために、環境負荷が低く低価格の資材を組合わせることができる。

 何より、家主が成功するには優先順位を見極め、特有のデータに沿って、情報に基づいた決定をしなくてはならない。あなたの選択が、コブのコテージであれ、環境に優しい木造の家であれ、最初の段階であなたが何を欲しいのかを知り、ゴールの優先順位を決め、目標に沿って決断をする。もし、環境に良い選択を望むなら、エコな建設者は先入観を捨て、現実を喜んで受け入れよう。

 

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Best House Framing Systems for Building a Home

By Chris Magwood 

February/March 2016