DIY 温室で 冬も栽培

太陽で加熱する建物内で食べ物を育てると、室内電灯で同様にするよりも、はるかに生産的。しかも費用の安い資材でできる。

 文:Spike Carlsen

翻訳;市岡 秀俊

 

手頃な値段で温室を自作して、早春に苗を植え、晩秋に1、2ヶ月収穫期を伸ばすことは、誰にとってもそう難しいことではない。しかし冬の間中収穫が得られる温室を作るのは全く別の話だ。でもご安心を。今回紹介するプランはまさにそんな冬栽培用の温室について。手先の器用な菜園家なら基本的な工具とお手伝いの仲間がひとりいれば空いた週末を何回か使って取り組むことができる。

 近頃、冬でも人工の光を使って「室内で野菜を栽培できる」と謳う商品が増え、売れ行きも良いようだ。でも騙されてはいけない ー タダで得られる太陽光の代わりに、高い金を払って明るくもない電気の照明を使うなんて、持続可能なはずがない。今回紹介する小規模な温室は、南向きの透明な傾斜のある面から冬の陽射しと熱をふんだんに取り込み、北面と側面と屋根はしっかりと断熱され、日中蓄えた太陽熱を気温の下がる夜でも逃がさない。これらの工夫により、ほとんどの地域で、一年で最も寒く雪の多い時期でも暖房や照明を必要とせず、冬作物を育てるのに十分な室温を保つことができる。(飛切りの冬作物選びについては http://goo.gl/icXB8y をご参照。)

 

とりかかる前に

 これから紹介する温室は、2.4m 四方の小屋で太陽熱を取り込もうとするものだが、あなたのニーズや土地に合わせて好きにカスタマイズできる。ホームセンターで材料を買い揃えるのも良し、廃材を再利用するのも良し、近くのリサイクルコミュ二ティー「Habitat for Humanity ReStore」で調達しても、あるいはご自身でため込んでいる資材を使うのもまた良し。ただし扉の選定が先決。扉のサイズに合わせて間柱の間隔を決めなければならない。それからお住まいの自治体に問い合わせて、建築基準や建築許可について確認しておくこと。自治体によっては小規模建造物は許可はいらないというところもあるし、許可が必要なところもある。また、以下のカスタマイズのポイントについては、作り始める前によく考えておこう。

 土台:梁材を3段積んで温室の腰壁を作る。段を増やして、でこぼこした土地で水平を調整したり、屋根を高くしたり植え付ける空間を広げたりしてもよい。ここでは安価で扱いやすい梁用の角材を使ったが、2x6(ツー・バイ・シックス)材で腰壁を組む方が間に断熱材を入れられて良いかもしれない。

 壁の角度:南向きの壁は透明のポリカーボネート波板を使い、60度の角度に設置すると冬の太陽エネルギー(あるいは「ソーラーゲイン」)を最も多く取り込むことができる。お住いの緯度が高いほど、冬の太陽はより低くなる。コロラド州ボルダーのCeres Greenhouse Solutions (www.CeresGS.com) のリンジー・シラー(Lindsey Schiller)によれば、緯度に20度を加えた角度がベストだが、30度ずれていても実際には5から8パーセント程度のロスしかない。だから、60度の傾斜の南向きの壁であれば米国のほとんどの場所で有効と考えて良い。普通の垂直な壁でも、屋根を透明にすればほぼ同様の効果が期待できる。

 屋根の勾配:金属製の屋根の勾配は3/12(約14度)にするのが雨水の排水には良い。その土地ならではの事情や必要に応じて勾配を急にしたりなだらかにしたりするのは構わない。屋根の内側はポリスチレンで覆って金属の断熱の悪さを補うのが良いだろう。

 もし、(次ページにある写真のCeres Greenhouseの温室のように)垂直な南向きの壁を持つ手作り温室を建てたいなら、屋根をポリカーボネートにしてより多くの光を取り込みつつ断熱効果も高めるのが良いだろう。シラーは二重、三重構造のポリカーボネート板を勧めている。

 

 

材料リスト

・長さ2.4メートルの6×6材 12本

・長さ2.4メートルの防腐加工済みの2×4材 約20本

・長さ2.4メートルの防腐加工済みの4×4材 9本

・幅81センチ(32")または91センチ(36")の防風扉 2枚

・96センチ(38")×274センチ(9')のポリカーボネート波板 3枚

・96センチ(38")×244センチ(8')の屋根用の金属波板 3枚

・長さ3メートルの金属製の破風板 3個

・長さ3メートルの軒用 雨仕舞い 1個

・長さ3メートルの腰折れ屋根用金物 1個

・側面と背面用の防水被覆材

 

 

その他の建材として、発泡性面戸パッキン、8dおよび16dの亜鉛メッキ釘、10センチおよび30センチの木ネジ、皿ネジ、ネオプレンワッシャー付きのビス、押出法発泡材、コーキング材など。

 

 

 扉:温室には換気が欠かせない。たとえ冬でも良く晴れた日には室温が上がり過ぎて作物をダメにしてしまうことがある。今回の温室では両側面それぞれに防風扉をひとつずつ据え付ける。標準的な防風扉であれば、手頃な価格で設置もし易く、温室内への出入り口となるとともに作物に適度な風通しをもたらす(扉にある窓を上げたり下げたりして調整する。ほとんどの地域で毎日行う必要がある)。このタイプの防風扉は大体が幅81センチか91センチほど。側面を組む前に扉を購入または貰ってきて、それに合わせて間柱の間隔を調整する。

 採光と屋根:この温室には、南向きの壁に透明のポリカーボネート波板(Pro-Skyブランド)と、デザインが合う屋根用の金属パネルと縁取り材(Pro-Rib)が必要だが、豊富なデザインから選ぶことができる。ガラスは採光には良いが重く割れやすく、多層プラスチック板ほど断熱が良くない。ポリカーボネートは、割高だが、一層、二層、三層、さらには五層のものまであり、カッターや丸ノコで簡単に切ることができる。もし中古の透明プラスチックを使うつもりなら、プラスチックは経年劣化が大きいことに注意すること。ポリカーボネートなら10年保証のものがほとんどだ。(温室の採光に関しては、http://goo.gl/Xt5Fakをご参照。)

 自立型と連結型:今回の設計は、自立型の温室で南向きの採光壁と東西北面の断熱壁からなるが、少し修正して納屋や離れ、車庫や家の南面にくっつけて建てても良い。さらに、建物と接する面を一部開口して、熱が互いに行き来できるようにしても良い。既設の壁は温室の背面を支え、断熱にもなるし、背面壁自体がそっくり不要になるかも知れない。なかなか魅力的なアイデアだが、地域の建築基準だけはしっかり確認しておくこと。家のような建物が地盤の上に固定して建てられているのに対し、温室は地面に「乗っかってる」だけなので、両者を連結してしまうと建築基準に引っかかる恐れがある。

 

参考資料

ソーラー温室の基本:土台の断熱:Ceres Greenhouse Solutions; http://goo.gl/CL6RsK

一年中使えるソーラー温室の作り方:http://goo.gl/tmJPDS

温室暖房 お金のかからない3つの方法:http://goo.gl/M87qgM

寒冷地の温室:ミネソタ大学公開講座; http://goo.gl/xvYpFG

ソーラー温室:ATTRA; https://goo.gl/wCPnCE

サンルームとソーラー温室:太陽で作ろうプロジェクト(Build It Solar); http://goo.gl/gBWsQT

「The Earth-Sheltered Solar Greenhouse Book(地中シェルター型ソーラー温室ブック)」

マイク・エーラー(Mike Oehler)著。

 

南に面した垂直な壁のある温室を建てることにするなら、冬の日差しを取り込む透過性屋根を確実に取り付けよう。この Ceres Greenhouse Solutions のデザインのように。

 

「置く」基礎と側面の壁

 温室を建てる場所に、外縁が約2.6メートルの正方形で幅40センチ深さ20センチの溝を掘る。そこに砂利を入れ、長めの2×4(ツー・バイ・フォー)材に1200ミリの水平器をテープで止めたものを使って水平を確認し砂利を平らに均す。

 周囲が2.4メートル四方の腰壁を作る場合、防腐加工済みの6×6(シックス・バイ・シックス)の角材を水平を確認しながら並べ1段目を作る。角材の端同士を釘で打ち付け、対角線の長さを測り、正確に真四角になるようにする。この上に、イラストのようにコーナーの部分が交互に重なるようにして、角材をあと2段重ねる。それぞれ30センチの木ネジでしっかり固定する。

 次に、どこか平らなスペースで、イラストのような2×4材で側面の壁枠を組み立てる。間柱の間隔は扉のサイズに合わせて決めること。パーツの多くの端が斜めになっているので、ノコギリを入れる角度に気をつけること。

 側面を土台の外側に立てかけ、何本かの2×4材で仮止めする。どの方向にも垂直になるよう気をつけること。扉が開く部分の真下の角材に墨を付け、レシプロソーか手鋸でその部分を1段か2段(取り付ける防風扉の高さによる)欠き取る。扉のサイズと取り付け位置が正確にわかっているなら、あらかじめ開口部を避けて土台を組んでも良い。

 北側の背面を2×4材で組み立てるが、より断熱性を高めたければ2×6材を使って厚みを持たせると良い。壁を立てたまま組み立てても良いが、平らなところに置いて作業してから立てて位置合わせをした方が楽だろう。コーナー同士を釘で固定する。背面の内側に筋交いを仮止めし、壁を張る間、形が崩れないよう支えておく。

 温室内は湿度が高く結露しやすいことに注意すること。壁面で最も安上がりなのは外壁用のベニア板だが、数年で傷みが見られるようになる。シラーは耐水性のある外壁材を勧めている。ファイバーセメントの壁貼り用材、人造木材、プラスチックまたは金属シートのパネルなどだ。

 背面の壁を取り付けたら、残りの三面の壁を固定する前にそれぞれが真っ直ぐ立っているかもう一度確認する。壁板は土台の上面から7.5センチほど下にずらすと固定し易くなる。同時にイラストのように屋根板と正面の斜めの面からそれぞれ8センチほどはみ出すようにする。この部分が屋根の母屋(もや)と斜面の胴縁をしっかり固定するための面になる。

 

冬の温室栽培をもっと楽しむためのちょっとしたコツ

厳しい寒さと曇りがちの天気のため、栽培の苦労が台無しになることがある。日照不足をどうやって解消するか。以下のちょっとした工夫をお試しあれ。

 断熱:温室内といえども冬の間に一度も氷点下にならない地域はあまりない。しかし、しっかり断熱することで、氷点下になることを防ぎ、寒さに強い緑葉野菜、アブラナ科などの冬作物以外でも育てることができるようになる。そのためには、ポリスチレンの断熱材を土台に沿って並べ、周辺ぐるりと発泡材の板を埋めて、太陽で温められた温室内の土壌に冷気が入り込まないようにする。温室の土台の断熱方法と温室内を温かく保つ方法については、「ソーラー温室の基本:土台の断熱」を参照。

 サーマルマス:素材が持つ保温機能のことを「サーマルマス」という。温室のサーマルマスを増やすには大きな容器を用意すると良い。黒く塗った安いプラスチックの樽がお勧め。温室内のよく日の当たるところに置いて、水を満たしておく。容器が日中は太陽熱を蓄え、夜に少しずつ熱を放出してくれる。

 多層化:凍るほど寒い夜に、冷え切った温室内の作物を守るには寒冷紗のトンネルで覆うのが良い。ちょうど温室内温室という感じになる。軽い寒冷紗でも数度は温度を高く保つ効果がある。より分厚い防寒カバーなら4〜5度は温かくなるので高い霜除け効果も期待できる。

 反射材:陽射しが少ないというお悩みがあれば、温室内を白く塗るか壁に沿って反射する素材を貼ってより多くの光を取り込めるようにすると良い。ホームセンターでロールで売られているアルミホイルが貼ってある断熱材はまさにうってつけだ。

 自動換気:私たちの設計では温室内の温度が上がり過ぎないように、防風扉の窓を開け閉めする必要がある。いちいち換気するのが煩わしければ、事前に太陽電池で自動開閉する通気口を調べておくと良い。

 

日中に太陽熱を吸収する黒い樽に水が満たされている貯水場。溜めた熱エネルギーは夜間に温室内に放出。コロラド・スプリングスのコロラド大学ソーラー温室。

 

適切な透過と断熱で温室がほとんど年中植物にも人にも快適になる

 

 

胴縁、母屋とパネル

4×4(フォー・バイ・フォー)材の胴縁を必要な長さ(ここでは2.4メートル)に切り、斜面の上部から60センチ毎に取り付ける。10センチの木ネジで2×4材の枠に胴縁を確実に留める。16dの釘を側面の壁の外から打ち込み、胴縁の木口を留める。屋根の母屋も同様に固定する。

 前面の透明な壁を、メーカーの施工手順に従って、推奨される留め具(私たちはネオプレン【強度があり耐久性に優れた合成ゴム素材】製のワッシャー付きのビスを使用した)を使って取り付ける。雪や雨が落ちるように波形を縦に配置する。発泡性の面戸パッキンを透明波板の縁に貼り、両端にはさらに破風(はふ)を取り付け、熱や湿気が入り込まないようにする。

 透明壁の上部の腰折れ部分の金物の長さを決めたら、屋根のパネルを張る。その際に前面の透明壁より少なくとも5センチ以上出るようにする。屋根と背面の壁の境をL型の金具で留め、屋根と側面の間は破風で塞ぐ。(外壁材を使うなら、L型金具を少し浮かせて外壁材を隙間にはめ込むようにする。)適宜、面戸パッキンを入れて隙間を作らないようにすること。

 

最後の仕上げ

 皿ネジで防風扉を取り付ける。ドアの把手とクローザーピストンを取り付ける。押出法ポリスチレン断熱材を背面と側面の間柱および屋根の母屋の間にちょうど入るようにカットする。その他、割れ目や隙間をコーキングや断熱材、発泡フォームで塞ぐ。同様に腰壁の内部もポリスチレン断熱材で断熱する。

 ベニヤ板張りの面をさらしたままでも、シートで覆ったりサイディングを被せたりして、見た目の良い仕上がりにしても良い。内装については、耐水性石膏ボード、シートパネル、羽目板ので壁を張っても良い。Ceres Greenhouse Solutions では、酸化マグネシウムボードを用いている。シラーは、繊維補強石膏ボード、杉材も、耐久性とカビ耐性のため、推奨している。

 温室内には通り道が欲しくなるもの。踏み石、ペーバー(舗装レンガ)、枕木など人の体重を支え、湿気に強いものを置くとよい。農的暮らしを実践するハーベイ・ユーザリィ(Harvey Usser)のお勧めはミミズコンポストの上にベニア板を敷き、上を歩けるようにすることだ(「温室で飼う鶏とミミズ」を参照)。

 どのように温室をカスタマイズしたとしても、かつてのオフシーズンが実りの冬となってたくさんの収穫を楽しめるようになることは保証しよう。

 

 

スパイク・カールスン(Spike Carlsen)は、北緯45度(ミネソタ)で、日々金槌を振っている。彼の役立つ設計案をもっと見るには、「The Backyard Homestead Book of Building Projects」をご参照。

 

Small-Greenhouse Plans for Winter Growing

By Spike Carlsen 

February/March 2016