遺伝子組換えサケの現状

激しく論争されている遺伝子組換えサケ(史上初の遺伝子組換え動物)の米国食品医薬品局による承認は、表示ラベルにおけるガイドライン作成の進展を待つ間、行き詰まりを見せている。

 今までのところ、米国の法律は、遺伝子組換え作物についてラベル表示の義務を課していない。しかし、最近可決された法律により遺伝子組換えサケについては表示が必要になるかもしれない。

 2015年1月、米国食品医薬品局は、史上初の遺伝子組換え動物について人間が消費することを承認した。遺伝子組換えサケである。

 マサチューセッツ州を拠点とするバイオ産業企業のアクアバウンティー・テクノロジーズ ( AquaBounty Technologies) は、1990年代から遺伝子組換えサケに取り組み、承認手続きはどっちつかずの状態で数年が経過していた。多くの消費者や科学者、環境活動家が猛烈な反対で封じ込めようとする中、政府機関により安全性が念入りに検討されていた。

 「アクアアドバンテージ・サーモン (AquAdvantage Salmon) 」は、遺伝子が操作されていない養殖サケと比べて、半分の期間で市場に出荷できる大きさに育てるために遺伝子操作がされている。春と夏だけではなく、1年中成長ホルモンを分泌する新しいサケを作るために、アクアバウンティー・テクノロジーズ社は、キングサーモンの成長ホルモンとウナギのようなゲンゲ (ocean pout) の遺伝子を組み合わせた。懸念されるのは、研究室で遺伝子操作されたサケが海や川に逃げた場合、野生のサケの母数に悪い影響をもたらす可能性があるということだ。 遺伝子組換えサケは、逃げてしまった場合の生殖を抑えるために不妊化されているが、不妊化技術の効果は100パーセントではない。一部の科学者は、遺伝子組換えサケが逃げ出して、野生のサケと生殖しなかった場合でも、早期成長するこの大きな魚は野生のサケと食料や居住領域を奪い合うことで、野生のサケを脅かす可能性があるという。

 米国で売られている他の遺伝子組換え食料と同様、当初は遺伝子組換えサケについても、遺伝子組換えのラベル表示や他の何らかの表示は必要とされていなかった。遺伝子組換え作物のラベル表示を呼びかける米国内の団体であるジャスト・レイベル・イット (Just Label It) によれば、米国食品医療薬品局の11月の承認は、遺伝子組換えサケについて任意のラベル表示を奨励する内容を含んでいたという。しかし、経験に基づけば、任意の場合、企業側はそのようなラベル表示はしないだろう。

 2016年1月下旬現在、米国食品医療薬品局は、突如決定を変更した。遺伝子組換えサケの表示方法についてガイドラインを発表するまで、遺伝子組換えサケについて禁止を発令したのである。

 ワシントンポストの報道によれば、この禁止の発令は、最近米国議会で可決された連邦歳出法案の文言の影響を受けたものという。法案は、ラベル表示ガイドラインが作成されるまで、遺伝子組換えサケの販売を禁止するよう公的監視機関に命じていた。禁止の発令が出る前、アクアバウンティー・テクノロジーズ社は遺伝子組換えサケは2年位で米国内に輸入され販売ができるだろうと伝えていた(遺伝子組換えサケは米国での販売は承認されたが、米国内での生産は承認されなかった。そのため、遺伝子組換えサケはパナマから輸入されることになっていた)。この禁令を受けて、米国市場で実際に遺伝子組換えサケが販売できるようになるには、2年よりも大分長くかかるかもしれない。一部の食料雑貨店は、消費者の激しい反発を耳にし続けており、販売できる時が来ても、遺伝子組換えサケを店頭には並べないと話している。

 

シェリー・ストンブルックは、マザー・アース・ニューズの園芸部門の主任編集者。健康的で持続可能な食物を育てることに情熱を燃やし、余暇を使ってストーングラス・ファームズ・ソープ・カンパニー (Stonegrass Farms Soap Co.) を経営する。ツイッターやピンタレスト (Pinterest) でシェリーをフォローしよう。

 

文:Shelley Stonebrook

翻訳:浅野 綾子

 

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The Status of Genetically Modified Salmon

By Shelley Stonebrook 

April/May 2016