菜園の始め方

手間をかけずに菜園を始める秘訣を見つけよう。場所の選び方、芝のはがし方、根覆い (sheet composting)のやり方など。

 水はけが良く、日が良く当たり、動かせない石のない、表土の豊かな場所を選ぼう。根覆いで、どんな芝も取り除いてしまおう。この簡単な方法は、新たに植床を作りたい場所に生えている芝の上にボール紙を載せ、上から厚くわらで覆うだけだ。

文:Barbara Pleasant

翻訳:浅野 綾子

 

 あなたは、しばらくの間、菜園に作り変えようと家の庭のある場所に目をつけている。天気予報では、週末はこれ以上ない良い天気になりそうだ。既に収穫を心に描いて、何を育てようかあれこれ頭の中で考えている。実際に土を耕して、夢の菜園を始める楽しみを味わえる丁度良い時が巡ってきた。でも、もしかしたら、どこからどうやって菜園を作り始めればよいのかわからないかもしれない。そんなあなたに、マザーがその方法を教えるよ!

良い場所を選ぶ。

 始めに、候補の場所について何点か考えてみて欲しい。雨が沢山降った後、どうなっているか見たことがあるだろうか。もし、水が地面に浸み込まず、もしくは数時間水がひかないのなら、その場所は水はけの問題があるかもしれない。日の当たり方を見ることも大切だ。というのも、ほとんどの野菜やハーブは、毎日少なくとも8時間の日照が必要だからだ。

 水はけが良く、十分な日当たりのある場所を決めたら、表土の深さを測ろう。場所によって5センチ強から1メートル弱あるかもしれない。尖った鋤を使って、菜園を作りたい場所に30センチの深さの穴を幾つか掘ろう。表土は大抵、心土よりも色が濃い。心土は表土よりもかなり固いことが多い。土が固くて、もしくは岩だらけで掘ることができないなら、鉄杭をあちこちに打ち込んで何に当たるか見てみよう。私は山地で新しく2つの菜園を始めているが、そこでわかったのは持ち上げられるだけの小さな岩なら動かせるが、大きい岩は動かせないということだ。

 辺りを見終わったら、動かせない大きな岩がある場所を避けて、表土が一番良い状態の場所を選ぼう。そして、菜園の大きさや形、どのように植えていくかを頭に描いてみよう。日の当たる場所に表土が少なかったり、大きな岩があり駄目だと思ったら、揚床を作ろう。地植えは、表土が深くまで続く場所に適することが多い。というのも、野菜の根は、表土深く入り込むほど、熱にやられずに済むからだ。でも、土が少ない場所でも、揚床を作れば野菜を育てることができる。(揚床での野菜作りの詳細はこちらをご参照。「Six Ways to Build Raised Garden Beds:揚床を作る6つの方法」) もし地植えに適する場所が見つかったのなら、次のステップは、植床を作る場所をきれいにすることだ。

 

芝や草木を取り除く

 野菜やハーブは、他の植物と一緒の場所で育つことを嫌う。木質の植物や生い茂る低木から手をつけて、その場所の全部の植物を取り除く必要があるだろう。作業の際、根など植物丸ごと取り除くことを忘れないようにしよう。もし、若木やとげのある低木が幾つもあるなら、「ブラッシュ・グラバー 【Brush Grubber:布団ばさみの形状にも似た木などをしっかりはさむ器具。チェーンをつないでひっぱることで使用する】) 」という道具を使うことを考えよう。トラクターや多目的小型トラックの付属品だ。もしくは、先の尖った根堀ぐわや、長刃のなた、斧を使おう。

 木質の植物を取り除いたら、手持ちの道具を考えてみよう。芝生状に草がびっしり生えた一面をはぐことも、先が平らの鋭利なシャベルを使えば難しくはない。もし大量の芝生をはがなければならないとしたら、作業の手間を考えるあなたはおそらく芝生カッターを借りてくることだろう。ただ、覚えておいて欲しい。芝生を細長く切っていくことは、始めの一歩にすぎない。切った後、その重い芝生をどかさなければならないのだ。その作業に意味があるのは、運ぶ芝生にふさわしい用途がある時だけだ。芝生カッターを使うと、1センチ強の良質の表土が無駄になってしまうことを頭に入れておこう。そこには、その場に生えていた草を何年もの間生かしていた有機物が含まれているのだ。その表土をそのままにしておきたいなら、芝など植物を覆ってしまうことで処理する「根覆い」と呼ばれる方法を選ぼう。

 

根覆いで植床作り

 植物は光がないと生きていけない。だから、何かで覆い、光を奪ってしまえば死んでしまう。光を遮るボール紙や新聞を土の上に厚く敷く時、その上に、刈った草やわら、木のチップ、もしくはその場に生えていたものなら何でもよいから有機物をぎっしりと重ねよう。芝を切って取り除いたりするよりも根覆いの効果はゆっくりだが、特にボール紙で覆うときは土に特別な効果がある。

 この間芝を取り除いた時、ボール紙と、菜園の中で草が伸び放題になってしまった箇所をきれいにするために抜いた雑草を、交互に敷いていった。そして、根覆いした所に穴を開けてトマトを植えたところ、良く育った。他の場所で新しく植床を作った時、雑草やイラクサ類の草刈りを一生懸命やらなければならなかった。それから、ボール紙を積み、ブロックで固定し、ボール紙よりも多くの草取りした草で覆った。私が住んでいる所では、根覆いした3つの層は1栽培期で容易に分解される。加えて、光を遮るほかに、ボール紙は、ミミズ、コオロギ、サンショウウオなど菜園に一肌脱いでくれる生き物たちを呼んでくれることがわかった。

 ボール紙のマルチは、全米オーガニックプログラム (National Organic Program:NOP) 基準に則ったものだ。印刷は最小限の茶色のボール紙が望ましい。白や、光沢のあるボール紙と比べて、加工や漂白が少ないからだ。折りたたんだ新聞紙も選択肢の一つだが、ボール紙のほうが作業がしやすく、特に湿っている時は早く敷くことができる。

 コロラド州南部にあるワハトヤ・コミュニティー・ファーム (Wahatoya Community Farm) では、農家の人たちは、新しく開墾した場所に有機物の層を作るため、ボール紙を堆肥やわらと一緒に敷いている。マサチューセッツ州のシーズ・オブ・ソリダリティ・ファーム (Seeds of Solidarity Farm) では、最近、農家の人たちがボール紙や新聞紙で覆った植床の効果を調査した。ボール紙で覆った植床は、除草効果が長持ちし、干草で覆ったものと比べて土壌化学構造により好転が見られた。この計画のコーディネーターで農家のレイチェル・シェラー (Rachel Scherer) は、このボール紙システムを取り入れた農園は、機械に頼らず、フルタイムの農作業者1人だけでやっていくことができているという。

 この方法で植床を作る際は、まず、作りたい場所全体の芝をできるだけ時間をかけずに刈ってしまうこと。それから、同じ日に、その部分をボール紙で完全に覆い、その上をわらなどの有機物で厚く覆うことだ。芝が枯れてしまったら、植床部分の覆いを外し、作業を始めて土壌を改良していけば良い。

 

植床作り

 ここからはお楽しみの部分だ。常設の植床を作る。植床のサイズを決めるとき、90センチほどの幅であれば、カバーや他の装備をつける時に最も楽だということを頭の隅に置いておこう。

 オクラホマ州のアードモアにあるサミュニエル・ロバーツ・ノーブル・ファウンデイションズ・ファーム (Samuel Roberts Noble Foundation’s farm) では、調査員たちは、黒のビニールマルチや不織布などの被覆資材、その他栽培期を延長するための装備をつける際、1メートルかそれよりも狭い幅の植床が最も楽だという結論に行き着いた。その農場では、作業効率のために、揚床と地植えの植床の両方について、植床の幅は1メートル、植床の間の通路は50センチに落ち着いた。50センチの通路は、バケツや道具を運ぶのに十分な広さだが、カートその他の車輪がついた用具を使うには狭い。もし、手押し車やカートを使うつもりなら、操作を考えて通路を広くしても良いだろう。手持ちの道具を考えながら植床のサイズを決める時、植床や通路を全部同じサイズにする必要はないことを頭に置いておこう。

 新しい植床は、通気と水はけを良くするためにある程度耕すことが必要だろう。この作業は、機械を使わず、農業用フォークを使って作業することをお勧めする。土が湿気を含みながらも水分でびっしょりになっていない時に一番目の植床を作ろう。土をやわらかくしながら、でも切り返さないようにしよう。残っている雑草や野菜などを手で抜いておこう。

 

土壌改良材で土を豊かに

 植床を作ったら、堆肥を入れよう。有機物で土をかさ増しし、「土壌食物網 (soil food web) 」として知られる、何千もの生き物に活力を与える。できるなら新しい植床に10センチ厚の堆肥を被せよう。多く聞こえるかもしれないが、堆肥を大量に投入することが、眠っている土を目覚めさせ、野菜作りの任務を活発にこなす準備をさせるために最適なのだ。植床一つや二つなら袋詰めの堆肥や自家製の堆肥を使えば良いだろう。それよりも多く作るなら、周りに聞いてみよう。地元の有機農家なら、どこに行けば一番良い地元産の堆肥が手に入れられるか知っている。大抵、環境に配慮している酪農場や養鶏場だ。

 この時、他の土壌改良材を入れることもできる。特定の気候の特定の場所の土によっては、特殊要求があることを覚えておこう。例えば、アラスカのほとんどの土は、リンやカリウムが少ないから、骨粉や緑色砂【海底自生鉱物であるグロコナイトを相当量含んだ砂】がお勧めの土壌改良材だ。でも、多くの地域では、大量の堆肥と、もしかしたらケルプ粉末【大型の海藻を焼いた灰】(微量栄養素のため)があれば、バランスの良い菜園が始められるだろう。土壌検査も、どの土壌改良材を入れるか判断するために良い案かもしれない。新しい植床を作り、堆肥を加えて2週間位経った時が、米国農務省の地域出張所 (local extension service) で土壌検査と分析をしてもらう良いタイミングだろう。土壌検査は、あなたの畑について、微調整が必要になるかもしれないpHについての重要な情報を提供することができる。(土壌検査・分析の詳細については、See Why and How to Test Soil for more on testing your soil:どうして、どうやって土壌検査をするのか、 をご参照。)

 畑の土がまだ手をかけなければならない状態でも心配はいらない。専門家によれば、本当に豊かな回復力のある土を得るには、多くの場合5年から10年かかると言う。そして、その方法は気候によって異なり得るという。けれども、有機物で土を豊かにしながら1栽培期を経ただけでも、土に大きな良い変化が見られるだろう。そして、その変化を見る間にも作物を育て続けることができる。あなたは、土や作物の世話をすることについて毎年深く学ぶだろう。そして収穫もあなたの思う通りになっていくだろう。

菜園作りの手短なアドバイス

・しっかり根付いた雑草や牧草を抜く時は、先の尖った道具を使おう。

・畑で作業する時は、土に湿気がある時にしよう。けれども水でびしょぬれになっている時は避けよう。必要なら作業場所を水で湿らせ、乾くまで少し待とう。固い土が軟らかくなり、作業し易くなる。

・根覆いで草の処理をする前に、草は低く刈っておこう。

・ボール紙や新聞紙は、土に敷く前に湿らせておこう。敷いた後は厚い有機物の層で覆うようにしよう。

さあ育てよう!

菜園の場所を決めたら、マザー人気の Vegetable Garden Planner(菜園プランナー)を使って、植床や植えたい作物の詳細を計画立てよう。菜園プランナーを使えば、あなたの畑がある地域に合わせた栽培期を知ることさえできる。

 

寄稿編集者のバーバラ・プレザントは、30年にわたり作物を栽培し、菜園作りの知恵を記事、本、ワークショップや講演会を通して伝えている。現在、バージニア州フロイドにある植床を手がけている。

 

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How to Start a Vegetable Garden

By Barbara Pleasant 

April/May 2016