安全に癒す様々な治療薬にすぐに手を伸ばせるように薬効のあるハーブの庭を育てよう。
文: Richo Cech
翻訳:金広 まさみ
何年も前の凍るような冬の夜に、妻と私は玉ねぎ湿布で幼い娘の命を救った。娘はもがいて、夜中に目が覚めてうっ血でほとんど息ができなかった。とっさに考え、木製ドーム型移動式住居と庭にあったありふれた材料の助けで、娘の呼吸は1時間で普通に戻った。病気で危険な子供を、手近で簡単な材料で、すぐ助けられるのは貴重な技術だ。植物の直す能力を知っていて、自分に力を与える経験を直接して、私は薬効のあるハーブの種を見つけて、蒔いて育てることに人生を捧げてきた。よくある感染症や病気を治療するのに最も効果的だと発見した、治癒植物(すべて家で育てられる)の内いくらか紹介する。
耳の感染症の薬草療法
薬効のあるハーブを育て始めた頃の成功に鼓舞されて、私と妻はより注意深く自宅の薬局を整えた。耳の感染症は我が家でよくある悩みだったので、鼓膜が破れる深い感染症を避けるため、早く症状を治療することを学んだ。耳の感染症の最高の薬草療法は、生にんにくとモウズイカの花で見つかる粘液の抗生作用に頼るものだ。毎年、耳の感染症の兆候が最初に現れる時に塗るための新鮮なモウズイカ・にんにく耳油を作っている。
療法。油を作るには、ガラス瓶半分に生のモウズイカの花を入れ、皮つきのまま潰した生にんにくひとかけをその上に置く。ハーブを有機オリーブオイルで覆い、よくかき混ぜる。虫や破片が入らないように、清潔なモスリンか何枚か重ねた粗い綿ガーゼで瓶の口を覆って縛る。そして柔らかくするため外に出して日に当てる。1週間後、中身を清潔な粗い綿ガーゼで濾して、かすを沈殿させるため1晩そのままにしておく。翌朝、水と底に沈殿しているかもしれない不純物を取り除くため油を他の器に移す。移すには、粗い綿ガーゼのフィルターを通して油を清潔な乾いた容器に注ぐ。出来上がった油は、ラベルを貼ったガラス瓶で直射日光を避けて保存する。使うには、湯煎して油を少し温め、各耳に1滴塗る。耳の後ろの皮膚と首に、もう2、3滴擦り込む。このモウズイカ・にんにく耳油を耳の感染症の症状が消えるまで使う。
ギリシャモウズイカを育てる。オリンピアモウズイカ (Verbascum olympicum ) は、最初の年にフェルトのような葉の広いロゼットを作る2年生植物だ。次の春、総状花序の花が咲き、明るい黄色の枝つき燭台が立ち上がる。種は、土の表面に押し付けられるとすぐに芽を出す、光に依存して発芽するものだ。充分な日照を好み、干ばつに強く、ゾーン5~9【年間平均最低気温 -29~ -1℃の地域:アメリカの気候区分に基づく】で生い茂る普通の「雑草」だ。
尿路感染症の家庭療法
妻と私が最初に薬効のある植物の種を売り始めた時、人々はよく、ハーブで尿路感染症(UTI)を治療する方法を知っているか聞いた。時を経て、ほとんど直ぐ効く簡単な処方を開発した。それはアキノキリンソウの治癒効果のある葉と花に頼る。アキノキリンソウをもっとも肥えた植床で育てているネバネバのウスベニタチアオイの根と一緒にする。ジュニパーは、強力に防腐性のある紫のベリーで、処方を完成させる。
療法。UTIチンキを作るには、新鮮なアキノキリンソウの葉と花2カップ、刻んだ新鮮なウスベニタチアオイの根2カップ、生か乾燥のジュニパーのベリー1/4カップをブレンダーに入れ、覆う程ウォッカを入れる。十分原料をかき混ぜて2Lのガラス瓶に注ぐ。原料が確かに水に浸かっているようにするため、2週間毎日瓶を振る。そして何枚か重ねた粗い綿ガーゼで中身を濾してきれいな容器に入れる。布を絞って薬の最後の1滴まで出す。このチンキのかすを沈殿させるため1晩おく。そして、直射日光を避けるため琥珀色のガラス瓶に移し替えて保存する。UTIの兆候が始まったら、大きなコップに水を入れ、このチンキを2滴たらして日に5回飲む。また加工食品と砂糖を避ける。
アキノキリンソウを育てる。セイタカアワダチソウ(Solidago Canadensis) は、ゾーン4~9【最低気温 -34~ -1℃の地域:アメリカの気候区分に基づく】で生い茂る多年草だ。とても小さい種から育て始められるが、根差しで移植するのが最も簡単だ。アキノキリンソウは日当たりの良いところから半日陰でうまくいき、湿った土を好む。よく生え広がる。
ウスベニタチアオイを育てる。ウスベニタチアオイ (Althaea officinalis) は、ゾーン3~9【最低気温 -40~ -1℃の地域】でよく育つ多年草だ。種は蒔く前に傷付け処理 (中目くらいのサンドペーパーで軽くこする) が要る。そして温室内の浅い平箱か鉢で始め、丈夫な株にして庭に移植するのが最も良い。ウスベニタチアオイは日当たりの良い場所か半日陰で良く育つ。
ジュニパーを育てる。コモンジュニパー (Juniperus communis) は、ゾーン3~9の様々な土壌で日当たりの良い場所に生い茂る、まっすぐ立った常緑の多年草だ。木は雌雄異株(各個体に雄と雌の球果を持つ)なので、ハーブ薬に使うベリーを得るには両性を育てなければならない。ジュニパーは、優れた目隠しの垣根と風除けになる。さらに、数本のジュニパーの木を1列に植えると沢山ベリーが成りやすい。緑のベリーは、1年たつと熟れて紫になる。だいたい秋に熟れるので、薬のためにベリーを収穫する時でもある。
切り傷と傷の薬草療法
切り傷を直ぐ治療すると、感染症のようなひどい合併症を避けられる。濃い緑で切れこみのある香りのよい葉を持つノコギリソウは、深い傷を治すのに選択するハーブだ。春に真っさらな苗床に種を押し付けながらノコギリソウを植える。2、3か月でツルを巻き、くっきりした白い花を高くつける準備が整う。
療法。潰したノコギリソウの葉で作った湿布を傷に直接塗ると治りが早くなる。他には、大きな洗面器に湯を満たし、エプソムソルトと数滴のキンセンカのチンキを入れる方法もある。傷を20分つけ、時々バケツの冷たい水に患部を入れる。清潔なタオルで軽く叩いて乾かし、傷を覆わず新鮮な空気に曝しておく。もし傷が深ければ、キンセンカにつけた後コンフリー湿布をする。
コンフリー湿布を作るには、深く掘って地面からコンフリーの根を取り除いて、十分洗う。根と新鮮なコンフリーの葉をブレンダーに入れ、混ぜるに十分なだけの水を加える。このゴム糊状のコンフリーのネバネバ5cmで傷をすっかり覆う。そして1時間か痛みが治まるまで、そのままにしておく。このような治療を2、3回した後には、感染症の危険から、組織の健康な再生に移り変わる。
キンセンカを育てる。キンセンカ (Calendula officinalis) は、アメリカ中でよく育つ、きれいな1年生の典型的な薬効のあるハーブだ。植物は育ちのよい自然生えで、植え付け後数年間は容易に自生する。早春の冷たい土で芽を出すのを好み、妙な形の種は菜園の畝と畝の間に約2.5cmの深さに蒔く。蒔いた後、土と種の接触を確実にするため、よく突き固めると、発芽率が増す。株間を少なくとも15cm離して間引く。キンセンカは、十分な日当たりと定期的な水やりを好む。
コンフリーを育てる。2種類の一般的な型のコンフリーがある:普通または「本当」のコンフリー (Symphytum officinale) とロシア交雑コンフリー (Symphytum x uplandicum) 。本当のコンフリーは、明るい紫の花と翼のような葉を持つ。ロシアコンフリーは、いかにも交配種の生長力で、本当のコンフリーより大きく早く育つ。両方とも望ましい薬効があり、土の中に残った根の小片から簡単に再生する。
風邪用のハーブ
何年間も、風邪やインフルエンザにかかっている人々にムラサキバレンギクのチンキを処方したが、いつももっと強力な何かを求めていた。自分でニワトコの木を育て、シロップのためベリーを収穫した後、探していたもの(風邪の素晴らしい予防薬と治療法)を見つけたと思った。ニワトコのシロップは、甘くておいしい薬なので、スポイトを持って子供たちを追いかけるかわりになり、瓶を常備していたので自己治癒していたわけでもないのだ!(簡単でおいしいニワトコシロップのレシピはMaking Elderberry Syrupをご参照。)
療法。風邪は確かに不快だが、もし感染症が深く肺に定着してもっと悪くなるとゴホゴホと空咳が始まる。伝統的な中医学はそのような状態ではオオグルマのチンキを必要とする。感染症と戦い咳を抑えると信じられているからだ。オオグルマのチンキを作るには、この記事の始めに示したUTIチンキの説明に従おう。ただし、きれいで乾燥した、すり潰したオオグルマの根だけを使うこと。
オオグルマを育てる。オオグルマ (Inula helenium) は、ゾーン3~8【最低気温 -29~ -7℃の地域】で育つ多年草だ。光が発芽を促すので、種を地表近くに蒔かなければならない。種を鉢か浅い平箱で始め、育ったら菜園に植替える。オオグルマは、湿った土と半日陰を好む。2年目の秋に、根を掘る。
ニワトコを育てる。セイヨウニワトコ (Sambucus nigra) は、木質の多年草で、多くの茎を持つ低木(時には小さな木と考えられる)だ。窒素が多い酸性土を好み、大木の下生えとしてよく育つ。種から始められるが、成熟までには数年かかる。そうするには、乾燥したベリーを一晩水に浸け、小さい黄褐色の平たい種を茶こしで擦り落とす。秋に浅い平箱か鉢に種まきし、よく根覆いをする。発芽は、春半ばから初夏に起こる。2組の本葉を見せたら個別の鉢に移し、1、2年育てて十分逞しくなったら植え替える。また、種苗場で育った健全なニワトコの苗を買って、時間の節約ができる。
たのしい暮らしをつくる
マザーアースニューズ
Growing Medicinal Herbs for Plant-Based Healing
By Richo Cech
April/May 2016
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