なぜ農的暮らしなのか。健康、思慮深さ、精神性。

オフグリッドの自立したホステルの運営はやりがいがある。

 

 

自給自足やシンプルな暮らしは多くの人が抱く夢だが、達成する人は何人かだけ。私の夫デニスと私はメイン州ディアアイルでそんな暮らしをしていて、そこにはオフグリットの家を建ててある。食料のほとんどを育てて保存し、太陽光発電が欠かせず、自身の木材を製材し、豚と鶏を育てて、夏の間 Deer Isle Hostel(ディアアイルホステル)を運営することで必要最小限家計をまかなっている。

 私は2008年にデニスがホステルを始めるのを助けるためにスウェーデンからメイン州に越してきた。当時、私は「自給農」という言葉が何を意味するのかさえ知らなかった。引越しに至る前は、スウェーデンで事務仕事をしていた。その状況では、職場、通勤電車、アパートでできた鉄格子に捕らえられた気持ちだった。振り返ると、あたかも体にしっくりくることの有り得ないセーターを着ているかのようで、それを捨て去った後にようやく、いかに不快にさせられていたのかが腑に落ちた。年月を経るにつれて、この暮らし方は益々納得できるものとなっていて、家で働いて私たち自身に必要なものを生み出す根本的な動機がみるみる明確になっている。

富の私的定義

 農的暮らしは自給自足で、自給自足を求めることは思慮深い行動だ。自身の食べ物を育て、自身のエネルギーを生み出し、通勤を避ける日々は、マネー経済への参加を辞退するためのチャンスだ。一般の経済システムでは、全てのものの価値がお金の価値で測られる。お金で価値を測るのは狭量な思考法で、他の価値を見落としている。例えば、多様性や精神的な健康などだ。

 農的暮らし人として、小規模生産用のホリスティックな仕組みを創り出すことができる。そこでは世界的な経済システムの条件が適用できない。まず、何よりも、自給農での時間はお金

に換えられない。この島でニンニクを売る場合でさえ、ドルで価値を決められないのが私に関わる前向きな影響。鱗茎を植えることで得た土とのつながり、ニンニク用の馬糞堆肥に集まる赤いコマツグミを眺める喜び、作物を掘り出してキレイにする間に芽生えた友情や交わした会話。

 

足を知る?

 足を知るということが21世紀の農的暮らしの大きな課題だ。これは、物資の蓄積と関わる時間の両方に当てはまり、大きいほど良いという現代の理想とは相反するものだ。農的暮らしの私たちの定義(大地に近い暮らしをして、要るものはほとんど家でまかなう)により、目標を妥協しかねないものなしで何とかするよう選択することがよくある。例えば、自身で作れるものを主に食べることで、品質を管理でき、食料を買うための賃金労働に依存していない。

 また、過去数年の間、ホステルを9月の初めに閉じてきた。近隣の他の季節ビジネスよりかなり早めだ。毎年、人が尋ねて言う。もう数週間続ければもっとお金を稼げるのにと。自ら望み、意図して、お金や物をためない選択をして、「足る」の幅を狭く保つことで、家計をまかなうのに、ほんの数ヶ月だけホステルを運営しているのだ。ホステルを閉じると、菜園の食べ物の収穫、家の修繕、静かな季節に暮らしを一緒に楽しむことに専念している。

 

自然との密なつながり

 農的暮らしの真髄として、私たち自身を自然界の一部だと認めるということがある。ただ単に知的な観点でのつながりを理解するだけでなく、精神的にあらゆる生物形態とその相互依存を受け入れるのだ。

 都市に住んでいた頃、食べ物は店から来て、蛇口から水が出て、自然は週末に訪れることが出来るようなものだった。私は、自然と私の食べ物と私自身とのつながりを真に理解するまでに、種、苗、果実、また種と見守って何年も過ごし、日照りの年や多雨の年を目の当たりにし、授粉者、花、捕食者、餌食を観察して来た。今では、私たちと大地との間の隔たりがいかに僅かであるか分かっている。

 

健康の改善

 農的暮らしは、私たちを基本に立ち返らせ、健康改善と維持の根本的な面に向けて動くよう促す。私自身の心身の健康は農的暮らしによるものと考えている。私の日々は、自然、自然の産物、お日様のリズムに囲まれて過ぎて行き、年月は四季の巡りに従っている。繁殖力のある環境に暮らし、私の身体は、細菌、菌類、その他の微生物を扱うように使われている。私の食す食べ物は、私と精神的につながっていて、私の身体に分かるようなものだ。

 

 デニスと私がしていることは、根本的に倫理に適っている。私たちは、自身に良く、また、周囲環境やそこに住む人々もより良くする暮らしをしているのだ。私にとって、農的暮らしは、現代社会の問題を打ち消すものではなく、むしろ、世界の難題と思われるもののいくらかに対して解決策を見つけ出す方法だ。もはや私は、同意できないものに対するただの傍観者ではなく、むしろ、建設的な影響となるような行動が出来て、この暮らし方でこの地球を前向きな影響を伴いつつ歩んで行けるようにするチャンスに注力出来る。

 

たのしい暮らしをつくる

マザーアースニューズ

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