お手頃で、持続可能な家の建築

ある建築者チームは、単純かつ費用効率がいい、カナダで最も環境に優しい家を建築した。

 

 

エンデヴァーハウスは、オンタリオ州における従来型の同程度のサイズの家屋に比べて大きな節約を成し遂げた。

文:Chris Magwood

翻訳:田村 香

 

数年前、オンタリオ州、ピーターバラ市街の空き区画で、私たちThe Endeavour Centre(同市に拠点を置く非営利の持続可能な建築スクール)の講師陣の間で面白くて、刺激的な議論が起こった。カナダで「最も環境に優しい」家を建築するには何が必要か?そして、既存の地域に溶け込み、さらに標準的なコストで、建築基準を満たすような家は可能なのか?

そのような家の設計と建築は、私たちの6ヵ月の持続可能な新建築プログラムの焦点となった。なので、2012年、そのような疑問に答えようと着手し始めた。8人の学生グループと、最高標準を満たす試みのための客員教授が私たち講師陣に加わって、私たちは住宅建築プロジェクトを思い描くことがでた。

 

持続可能住宅建築の目標

プロジェクトのどの構成要素についてもその持続性を仮定する準備がなかったので、最初から目標に達するには、たくさんの調査が必要だとわかっていた。家の材料や装置すべてを選ぶ際に、優先するべきと思う特質の大計画リストを作った:

・環境への影響。すべての選択が、可能な限り生態系に与える影響が少ないことを確実にしようと努める。

・内包エネルギーと炭素。内包エネルギーが最も低いという選択肢を常に選び、カーボンニュートラルな建築を目指す。

・エネルギー効率。私たちの建築は、条例におけるエネルギー効率の必要条件をはるかに上回り、さらにネット・ゼロ・エネルギー・ハウスであることを目標にする。

・室内環境の質。私たちは、屋内に使われる、疑わしい化学物質を含んだ材料をゼロにすることに取り組む。

・ゴミの発生量。私たちの目的は、建築計画で生じる典型的な埋め立てゴミの1割未満にすること。そして、できるだけ多くのものを、再利用と再生利用すること。

・条例の適合性。私たちの取り組みにおいて、いくつかの条例規定に挑むことになると心得る。しかし条例当局と協力して、プロジェクト全体が合法的で、公明正大であることを確実にする別の適合過程を使いたい。

・耐久性とメンテナンス。この家は、管理がしやすく、メンテナンスと機能維持のためにオーナーのどんな追加的な努力も必要としない家である必要がある。

・コスト。私たちの地域における従来型注文住宅の価格帯で家を維持したい。

・美観。家の外観は、隣近所のまねをせず、周辺の戦後バンガローばかりか、レンガと木の世紀の家とも調和する必要があった。内観は、すっきりしていて、開放的、そしてモダンな雰囲気にしたい。

 

Living Building Challengeに登録した時、これらの非常に高い希望を満たす正式な工程だと思った。2010年に初めて、Challengeに気付き、その熱意との直接的なつながりを感じた。私は、15年間、地域の非毒性の材料を生かしたネット・ゼロ・エネルギー&ウォーター建築の仕事をしている。そして出来る限り最小の環境影響で、出来る限り最高の建物を建築するための成文化された基準目標を見てうれしくなった。

 

持続可能な家の建築:設計のコンセプトから

というわけで、これらのすばらしい意識で、一体何をしたのか?プロジェクトは、Passive House Planning Package(建物の非常に精密なエネルギー・モデルを作製するソフトウェア)を介してデザインすることを含む慎重な計画過程から始めた。

従来の条例通りに建てられた家よりも消費エネルギーが75パーセント少ない目標(少々の追加コストで成し遂げられ、 エネルギーの節約を介して即座に投資回収ができることになる数値)を得るためにソフトを使う一方で、追加コストのため認定は求めなかった。これは、ネット・ゼロ・エネルギー手法を、入手可能な範囲に抑えることにもなる。

すぐに、家は形になり始めた。家の骨組みに、従来型と、ナチュラル建築の方法を混ぜて使った。;可能な限り高い標準を満たしたいつでもすぐ買える建材と製品を使用した。従来の建材の小売店から調達できなかい場合は、より良い選択肢を探しに他の場所へ行った。

 

エネルギー効率目標と、持続可能な建材

私たちは、化石燃料を必要としない家を建設するという意識的な決定をした。家の暖房と動力に用いられる電気は、屋根の上の、送電網と繋がった5キロワットの太陽光発電システムから来る。Bullfrog Powerとの契約は、私たちのシステムが電力を直接供給していないときでも、再生可能エネルギーの使用を確実とする。

三菱の空気熱源ヒートポンプは暖房とエアコンを建物に提供し、そして熱交換換気は、予熱された換気空気を供給する。

2つの太陽熱温水器は、家庭の年間給湯需要の約65パーセントを提供し、必要に応じて使うタンクのない電気ヒーターはその残りを提供。建物は雨水がすぐに使え、私たちは、もうすぐ、そのシステムを設置することを楽しみにしている。

結局、年間光熱費で約1,500カナダドル以上稼ぐ家の建築に成功した。(すべての数値は、カナダドル。)同等の家より、エネルギーで70パーセント、水で71パーセント少ない。そして、建築過程において、建築の環境影響を47パーセント減らして、建設埋め立てゴミを89パーセント削減した。完全な内訳は、Calculating Energy Costs and How the Home Stacks Upの数値をみよう。

有毒または、疑わしい化学物質を含むどんな内装の材料でも、そして収穫または製造過程で環境劣化を引き起こす可能性があるどんな材料でも、なんとか除外することができた。建設現場の半径250キロメートルの範囲内で、90パーセントもの材料を調達した。

家は、新しい変な形にも見えない。屋根の太陽光パネルだけ離して設置した、木とシングルサイディングは、ピーターバラ周辺にとてもよく調和している。

「環境に優しい」家は、従来のものより高価で複雑だという考えが蔓延しているようだ。この家は、平方フィートあたり185カナダドルだった。これは、世界の中で私たちの地域で注文住宅を建築する平均的範囲内だ。家は、再生させるのも簡単。デザインまたは建設において、複雑になるものは何もなかった。そして、このタイプの建築は、単一家族住居にすること(このように)、、もしくは複合構造の使用に拡張することができる。小さな調整で、入手可能な住宅として届けられることだろう。

このレベルの環境性能で持続可能な家を建築することは、難しくはない。しかし、オーナー、設計者と建築業者が、明確な目標に向かい、チーム全体で巧みに作られた戦略を実行することが求められる。それは、すべての製品の研究と慎重な審査、そしてそれらが目標に合っていると確信するような材料、さらにエネルギー目標が満たされるための丁寧な建築が必要だ。しかし、その見返りは、手頃で、無毒の、地球にほとんど影響を与えない美しい家だ。

 

従来の建築資材

木製のトラス構造の根太 (open-web floor joists)。これらの梁は、木材を渡す根太 (solid-wood joists) より長いスパンを作り、より少ない建材を使うためにフィンガージョイント【指のようにジグザグに接合面を作り長手方向に接合する方法】を使う。

3重窓、ガラス繊維の窓枠。手頃でありながら、私たちのエネルギー目標にあった十分な熱特性となる Inline Fiberglassの地元で作った窓。

セルロース断熱材。天井(熱抵抗値が R-80 まである)で使われ、そして窓枠周辺で(R-40 まで)、新聞紙から再生されたこの断熱材は、環境影響が非常に低く、有毒な揮発性ガスが発生せず、しかも非常に手頃だ。

屋根のトラス。設計された屋根のトラス構造は、最小量の木材で最大の構造的能力を提供するために、森林管理協議会 (FSC) によって認証された供給者からの径の小さな材木を使う。

リサイクル品の乾式壁と低刺激性の目地処理材。非常に高い割合のリサイクル材の板を調達することができたところには、乾式壁を使用した。Murcoの目地処理材は、典型的な乾式壁の目地にある毒素や化学物質を全く含まない。

スチール屋根。地元のスチール屋根は、材料のリサイクル率が高く、他のタイプの屋根材より長持ちして、きれいな水を雨水タンクに提供する。

FSC認証の硬木の床材。地域産のカエデの床材は、FSC認証で、非毒性の工場仕上げ。

 

「代替」建材

Durisolブロックの基礎。地元産の断熱されたコンクリート型枠 (ICF) は、不要なウッドチップをコンクリートで固めて、Roxul の断熱材を挿入して作る。地階の壁は、それのみの簡単な手順でR-28を達成し、化学薬品不使用だ。

Poraverのスラブ構造断熱。私たちは、Poraver提供の地元で作られた発泡ガラスのビーズを、Poraverの不要なメタカオリンを主成分として使った自家製水硬性石灰の結合剤で貼り合わせた。結果は、しっかりしていて、耐水性があり、無化学薬品だ。

プレハブ方式のストローベイル壁パネル。これらのストローベイル壁は、工場で成形し、すぐに設置できる状態で運ばれてきた。それらは、R-30を達成している従来型のどんな壁よりもコストが低く、地元産で、無化学薬品の材料で作られた。また、それらは、床当たり1日で設置され、労働時間を短縮した。

硬木の下地床。ホルムアルデヒド接着剤を含まない合板や OSB ボードを見つけるのは不可能だとして、屋内の毒素をなくすために、地元産の松を使った。

粘土と石灰の漆喰。家の多くの壁は、乾式壁の代わりに粘土または石灰の漆喰を特徴としている。これら現場で混ぜた、つや仕上げは、美しくて、耐久性があるのに、環境影響が非常に低く、まったく毒素を含まない。

地元産のFSC認証された羽目板。家は、FSC認証された松の羽目板に、地元で加工され、無毒の塗料で仕上げられたニオイヒバの屋根板を混ぜた。

天然の粘土、石灰と油性塗料。表面塗料は、石膏や石灰もしくは天然油がベースの100パーセント無毒で生分解性の仕上げ塗料を提供するメーカーから調達した。

 

クリス・マグウッド (Chris Magwood) は、オンタリオで持続可能な建築を促進するエンデヴァー・センター (The Endeavour Centre) の創設者で責任者。マグウッドは、「Making Better Buildings」の著者。

 

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Building an Affordable, Sustainable Home 

By Chris Magwood

October/November 2016