もっとレジリエントな農家暮らしを構築する

長年のエネルギーとレジリエンスの専門家は、あなたの家と土地に災害耐性を持たせる方法をアドバイスする。

 

自立と自給自足を尊重する人々にとって、レジリエンスは、家屋と農家暮らしに望ましい特性だ。

 

 将来、確実なことは、私たちは予測不可能、ということだけだ。新たな大暴風、地震、干ばつ、またはテロ事件がいつ起きるかはわからない。気候変動がより明らかになっている影響で、レジリエンスに対する関心は(特に海面変化と暴風による高潮に最も影響を受ける沿岸地域において)急速に膨らんでいる。自立と自給自足を尊重する農的生活者は、家や土地をもっとレジリエンスにしている。ところで、レジリエンスとは何だろう?The Resilient Design Institute【以下RDI】は、「レジリエンスとは、状況変化に適応し、ストレスまたは妨害に直面しても機能と活力を維持する、もしくは回復する能力」と定めている。いくらか、このレジリエンスは、気候変動の備えができていることを意味するけれども、レジリエンスの目標は、そのふくらむ心配を共有しない人々にも訴えなければならない。レジリエンスは、たとえ何が起こっても、家族を安全で、ゆるぎないものにしようとするものだ。

 

洪水レジリエンス

 レジリエントな農家暮らしを目指して努力するなら、洪水のリスクに対して、建物と菜園の配置を主な検討項目としなくてはならない。ハリケーン・アイリーンが国中で建物やインフラ、そして農地をめちゃくちゃにした直後に、妻と私は、南バーモントの農場を購入した。私たちが見つけた建物には、およそ4ヘクタールの農地があり、すべてがWest River川よりも45メートル以上高い所にある。最大雨量の時は、若干じめじめしたエリアはあるが、私たちの砂地は、アイリーンにひどく影響を受けた川沿いの低地よりもはるかにいいはず。

 洪水レジリエンス達成ために、丘の斜面の上に修復した古い離れから上った側に、溝を掘った。この溝は、激しい嵐の時、丘を下る水、もしくはまだ地面が凍っている春の雪解け水を捕える。自由排水の石と、下の排水タイルで、建物を乾燥した状態に保つ。過去に水害を被った1812年の納屋もまた、似たような排水のしくみを設置した。

 あなたの洪水リスクを調べるには、地域のFederal Emergency Management Agency(FEMA)の洪水マップを入手しよう。とにかく過去100年間の洪水地帯を避け、より遠く離れることをお勧めする(過去500年間の洪水地帯も避けよう)いくつかの地域では、FEMAの洪水マップが古く、もしくは異常気象で洪水が発生する可能性がある小さな水路や河川が考慮されていないことに注意しよう。洪水被害防止のために、機械設備および電気設備を地下室から出し、洪水が発生しやすい地域では1階より上に置く。これは、洪水が非常にまれな地域でも良い方法だ。非常に効率の良い家を建設することによって、機械式の冷暖房装置を必要最小限にすることができ、ほとんどの家の通常サイズのシステムよりも非常に小さなものを設置できることが多い。

 家の暖房システムは、エアーソース・ヒートポンプ(しばしば「ミニ分離」と呼ばれる)だ。屋内ユニットは、1階壁の高い所へ取り付けたが、屋外のユニットは、家の南側、基礎ブロックのかなり上に取り付けた。

 科学者たちが気候変動による激しい暴風雨を予測しているので、どんな新しい建物もほぼ全て、嵐抵抗用の最先端の施策で、設計や建築されている。これには、特に強力な構造フレーム、あおり止め金具【ハリケーンタイ】や様々なタイダウンベルトの使用、耐風規格の屋根板または金属屋根の設置、衝撃耐性のある窓または、屋外の暴風雨シャッターが含まれる。風レジリエンスとは、強い風で建物に倒れかかるかもしれない周囲の木々にも注意を払うことだ。リスクの高い木や枝を取り除くことを考えよう。

 風レジリエンスの特殊な側面は、竜巻と関係がある。竜巻(風速毎時400キロメートルを超える)に耐えるために家を設計することは、合理的ではない。しかし、FEMA ウインドゾーン4(中西部の多くにわたる、いわゆる竜巻街道)にある家屋用に、少なくとも緊急避難所を提供するために、増強された安全室を取り入れることは、理にかなっている。

 

パッシブサバイバビリティ【ゼロエネルギーでの生存性】

 レジリエンスの鍵となる原則は、停電中に家が十分に機能しなければならないことだ。パッシブサバイバビリティは、「停電の長期化や、暖房燃料が中断した場合に、住みよい環境の維持が確実であること」とRDIによって定義されている。

 

• 高断熱の建物(高水準断熱を含む);3重窓、ローエネルギーウインドウ;気密性の高い建築構造

 

• パッシブソーラーデザイン。より多くの窓の南側への配置、南側の窓でより多くの太陽エネルギーを得るための慎重なガラス選び、そして太陽熱を蓄えるための、断熱内部の熱容量。

 

• ゼロエネルギーの冷却対策。夏の日差しを防ぐための木やぶどうの日陰、窓の庇、慎重なガラス選び(特に太陽熱を制限するための東と西に面した窓での)、自然換気のための設計。

 

 私たちのレジリエントな農家暮らし(Leonard Farm【レナード農場】)で、築200年の母屋に厚さ30cmの壁をつくり、400mm幅の垂木で新しい屋根を加える大がかりな改築をした。新しい壁のため、180mmの空洞を作るために2×3【約51 × 76 mm】材の枠で囲み、スプレー式ファイバーグラス断熱材でそこを満たし、外部に150mmのコルク断熱層を追加した。歴史的な家を補完するための二重窓を設置(二重ガラスで、高太陽蓄熱、遮熱コーティングにアルゴンガス充填)したが、さらに、主要窓の外側に遮熱防風窓を加えた ― つまり私たちは、2つの遮熱コーティングを備えた3重窓を効果的に使用している。140平米の自宅は、十分に断熱されていて、5.28kWの空気熱源ヒートポンプたった1台で暖房している。氷点下でさえ、そのヒートポンプは家を暖かく保つ。私たちは、家で空調する必要はほとんどないけれども、空気熱源ヒートポンプにはその能力はある。

 

補足的な熱源

 寒冷地において、停電の長期化中に補足的に熱源を提供する手段がなければならない。農村地帯では、完全燃焼方式薪ストーブが、理想的。私たちの家では、市販で最も小さなものの一つ、Jøtulの薪ストーブがあり、私たちは、ごくまれにそれを使う。

 他の暖房システムの大部分は、電気に依存して作動するために、予備電源を持たない限り、それらのシステムをレジリエントだと呼べない。元々私たちは、ガレージの上のアパートで、ペレットストーブを持っていた。そして万が一停電になった時のために、車載用12Vのバッテリーで2台のファンを作動させるキットを購入した。

 Empire 製のシステムを含め、ガスウォールヒーターのいくつかは、電気なしで作動するが、これらは低効率モデルとなる傾向がある。健康と安全の理由から、排気管のない(ベント・フリー)ガス燃焼暖房設備をおすすめしない。

 

予備電源

 停電中に電気機器を操作できることは、とても好都合。さらにそれは、救いの手だ。電気を必要とするガスや石油の暖房設備に加え、すべての照明は実質的に電気で、農村地域のほとんどの家庭は、揚水のために電力が必要だ。ガスストーブは電気なしで機能可能だが、ほぼすべてのガスオーブンで点火する芯に電力が必要。

 ガソリン、プロパン、またはディーゼル発電機で従来の予備電源を準備できるが、これらのシステムは、燃料の入手性に依存していて、長期にわたる停止時に、燃料がなくなる可能性がある。

 バッテリー・バックアップ付きの太陽光発電システムは、最もレジリエントな予備電源の選択肢となる。オフグリッドの農家暮しにとって、バッテリーは、たいていシステムの一部だが、グリッド接続された【電力会社の送電網に接続されている】太陽光発電システムで、蓄電池設備を取り入れることは非常に珍しい。ひとつには、蓄電池設備が高価でメンテナンスが必要なため ― そして99.9%はただ居座っているだけだからだ。グリッド接続された太陽光発電システムに蓄電池を追加するには、通常は別のインバータを追加する必要がある ー 私たちがしなければならかったように。私たちは蓄電池設備を導入したいと思っていたが、コストがあまりにも高かった。私たちは、SMA(www.SMA-America.com)製の新しいタイプのインバータを選択した。これにより、停電時には電気グリッドから切り離すことができ、(日中は)インバータに直接接続したコンセントを使用できる。しかし、この仕組みは、夜に働かないので、すばらしい選択とは言えない。

 私は、新しいシボレーボルトを予備電源として使用できることを願っているが、その可能性を確認できていない。第一世代のボルトは、12Vのバッテリー(モーターを動かす高圧バッテリーシステムでなく)にインバーターを取り付ければ、そのように機能することができただろう。私はプラグイン電気自動車(EV)を予備電源用に使用することが最良の選択肢だと思う。なぜなら、それらのバッテリーは待機状態に留まることがほとんどないからだ。この使い方を簡単にするために、車両に直接インバータが組み込まれないかと私は思う。

 

レジリエントな給水

 バーモント州の農村地域では、ほとんどの家主にとって、停電の時、最大の困難は水へのアクセスだ。なぜなら 地方自治体の給水施設はなく、掘削した井戸と水中ポンプに依存しているから。私たちは家より高い位置に激しい干ばつ時以外はいつでも流れる水源を整備した。 また、井戸にハンドポンプを設置する予定だ。 今日の最先端の高性能ハンドポンプは、祖父母が使用していたサッカーロッドポンプと同じ原理だが、使用前に始動作業する必要性のない構成の精度設計だ。

 Bison Pump と Simple Pump の手動ポンプは、深さ100mから水を押し出すことができ、電動水中ポンプを収容する同じ井戸に設置されている。水抜き穴は、凍結深度よりもかなり下のパイプに穴開けされるので、水はこのレベルまで井戸に戻される。

 雨水利用システムは、もう一つの給水の選択となり得る。この場合、水を浄化するために、高効率フィルタに加え、紫外線またはオゾン処理が必要となるかもしれない。

 水のアクセスに関する問題は、人のゴミへの課題だ。最良の解決策は、水を必要としないコンポストトイレ。アドバンスド・コンポスト・システム(Advanced Composting Systems)およびクリヴス・マルチラム(Clivus Multrum)によって製造された製品のような、深い貯蔵容器を持つものは、ほとんどメンテナンスしなくても良好に動作する傾向がある。

 

レジリエントな食糧システム

 ほとんどのアメリカ人は、栽培されている場所から消費される場所まで数百マイル〜数千マイルも運ばれた食品に依存している。この食糧供給システムには、多くの脆弱性がある。ディーゼル燃料の不足や、長期のトラック輸送のストライキは、食糧輸送を中断させる可能性がある。長期的な干ばつは、食糧の入手可能性とコストに大きな影響を与える可能性がある。自然災害の際には、パニック買いから食料品店はよく空っぽにされる。

 もっとレジリエントな食糧システムは、地元産を中心に作られたものだ。自分自身の食糧を育て、地元の直売所や、地域支援農業プログラム(CSA)を支援することで、食糧生産が家庭に近づき、レジリエンスが高まる。

 家庭の食料貯蔵は、食品の安全性にとっても重要。乾燥した豆、小麦粉、全粒粉、ドライにした果物や野菜、缶詰の果物や野菜など、腐敗しないまたは長持ちする食品からなる、6週間分の食料を手元におくことをお勧めする。

 わが家は、トマトの1L瓶詰めを数十個と併せて小さめの瓶にジャム、塩漬けにしたトウガラシそしてビーツのを作った。新鮮な野菜や果物も数ヶ月間保管している。私たちは、地下貯蔵庫を持っていないが、CoolBotを設置する予定。(市販の窓用エアコンに0度に近い温度を維持させる特別なコントローラを使用する比較的新しいタイプのウォークインクーラー。) 

 長時間の停電時に食品をどのように調理できるかもまた、考えよう。私たちは、屋外のグリルだけでなく、調理ができるトッププレートの薪ストーブも持っている。また、熱電素子(熱エネルギーを電流に変換する装置)によって駆動して燃焼を助けるための小さなファンを備えたBioLite製の新型、屋外クックストーブもある。実際、この薪のクックストーブの調理台には、ストーブを操作しながら携帯電話を充電するためのUSBポートまで備わっている。

 

コミュニティレジリエンス

  レジリエンスは、個々の家や農家暮らし以上のもの;互いを知っている隣人は、不通時にうまく応答することができる強くて緊密なコミュニティだ。よりレジリエンスの高いコミュニティを構築するには、多くの方法があるが、ほとんどはあなたの隣人を知ることから始まる。持ち寄りディナーやその他のコミュニティ集会を開催すること。プロジェクトに一緒に取り組む方法を見つけ出そう — 農業であろうと、または季節のお掃除ウォーキングだろうと。

 

レジリエントな交通

 私たちがレジリエントな農家暮らしを作る場所を考えたとき、重要な考慮事項の1つは、私たちがブラトルボロ(食料品店やその他サービスがある最寄りの町)に自転車で行くことができるかどうかだった。妻と私は、車を使うことなく、町まで定期的に約10キロを自転車で走らせているので、本当に必要な場合は自転車に乗ることができる。もっと持続可能性のある(もっとレジリエントな)交通の必要性を物語るように、より歩行者に優しいコミュニティの創出を提唱する地元の計画委員会や団体に参加している。

 

すべてのまとめ

 私たちレナード農場では、幸運にもレジリエンスのパズルをたくさん組み合わせることができた。 私たちのレジリエントな農家暮らしは、レジリエンスのない隣村にある30の家庭の拠点としても役立つ。私たちがレジリエンスに重点を置いていることで最も良い点は、それが環境にも役立つということ。 私たちは、ゼロエネルギーをベースにした家を運用し、有機食品を有機的に栽培することによって、土壌と炭素隔離を改善している。

 このすべてが素晴らしい気持ちにさせる。 私たちは、長年説き勧めていたことを実践することができる。

 

アレックス・ウィルソン(Alex Wilson)は、グリーンビルディングの実践に関する情報の随一の提供者BuildingGreenの創設者で、2012年にはResilient Design Instituteを設立した。 彼はバーモント州ダーマーストンのレナード農場(Leonard Farm)に妻とともに住んでいる。

 

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By Alex Wilson

December 2016/January 2017